基礎控除引き上げ「178万円の壁」vs「123万円の壁」

年収の壁 123万円の壁 178万円の壁
【最新情報】
・年収の壁を160万円に引き上げる案が衆議院で可決されました。(2025/3/4)

国民民主党が、所得税・住民税の基礎控除額を75万円引き上げ、「103万円の壁」を「178万円の壁」に引き上げる案を国会で提示しました。
それに対して、自民・公明の与党は「178万円の壁」引き上げを拒否、「123万円の壁」を提示し、2025年税制大綱に盛り込みました。

もし、基礎控除額が引き上げられたら、「178万円の壁」と「123万円の壁」、それぞれでいくら減税されるのかを検証しました。

1.[年収別]178万円の壁による減税額

所得税・住民税の基礎控除を75万円引き上げた場合と現状のままの場合で、税金負担がどのくらいで、いくら減税されるかを、年収別にシミュレーションしてみました。

[前提]
・給与所得のみ
・協会けんぽ・東京
・控除は基礎控除・社会保険料控除のみ
・税率・保険料は2024年12月時点

介護保険なし(年齢40歳未満)の場合

給与年収 現在の税金負担 基礎控除
+75万円
での税金負担
減税額 年収に対する
減税割合
2,000,000 88,800 5,000 83,800 4.19%
3,000,000 170,600 57,300 113,300 3.78%
4,000,000 261,000 147,700 113,300 2.83%
5,000,000 383,500 249,600 133,900 2.68%
6,000,000 513,200 361,600 151,600 2.53%
7,000,000 689,100 499,100 190,000 2.71%
8,000,000 924,900 696,700 228,200 2.85%
9,000,000 1,199,300 971,100 228,200 2.54%
10,000,000 1,487,000 1,258,900 228,100 2.28%
12,000,000 2,102,600 1,851,500 251,100 2.09%
15,000,000 3,247,600 2,919,900 327,700 2.18%
20,000,000 5,387,600 5,059,900 327,700 1.64%

介護保険あり(年齢40歳以上65歳未満)の場合

給与年収 現在の税金負担 基礎控除
+75万円
での税金負担
減税額 年収に対する
減税割合
2,000,000 86,300 5,000 81,300 4.07%
3,000,000 166,800 53,500 113,300 3.78%
4,000,000 256,000 142,700 113,300 2.83%
5,000,000 375,500 243,600 131,900 2.64%
6,000,000 503,400 351,800 151,600 2.53%
7,000,000 672,200 487,900 184,300 2.63%
8,000,000 904,900 676,700 228,200 2.85%
9,000,000 1,177,400 949,200 228,200 2.54%
10,000,000 1,462,700 1,234,500 228,200 2.28%
12,000,000 2,071,100 1,820,000 251,100 2.09%
15,000,000 3,194,200 2,866,500 327,700 2.18%
20,000,000 5,329,600 5,001,900 327,700 1.64%

2024年の平均年収は約450万円ですので、平均的に11~13万円くらい減税されることになります。

年収に対する減税割合で見ると、低所得者ほど減税割合が大きく、手取りの割合が増えることになります。

高所得者ほど優遇されているという意見がありますが、日本の所得税は累進課税制度で、高所得者はもともと多額の所得税を課されていますので、減税額が大きくなるのは当然といえます。

参考までに、年金受給者の減税額については、次の記事をご覧ください。

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▷年収別にいくら減税されるのかシミュレーション

ご自身の年収や家族構成では、「178万円の壁」でいくら減税されるのか、計算シミュレーションできるツールを用意しました。ご自由にご利用ください。

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2.[年収別]123万円の壁による減税額

自民党・公明党が提示している「123万円の壁」引き上げは、基礎控除を10万円引き上げ、給与所得控除の最低額を55万円→65万円に引き上げるというものです。

基礎控除10万円引き上げは所得税のみの適用です。

給与所得控除の最低額を55万円→65万円に引き上げについては、所得税は2025年から適用、住民税は2026年からの適用となります。そのたね、2025年中は、所得税と住民税で控除額が異なることになります。

【160万円の壁で、衆議院で可決】
2025年3月4日、与党が提案した、年収の壁を160万円に引き上げる案が国会の衆議院で可決されました。
非常に複雑な内容ですが、主な特徴は、
・年収の壁を160万円に引き上げ
・年収200万円以下の人は基礎控除を95万円に引き上げて恒久的に減税
・年収200万円超~850万円以下では、2年間限定で基礎控除を4段階で上乗せ
となります。
詳細は、こちらの最新記事をご覧ください。
【最新情報】 ・衆議院のHPに、年収の壁の修正案が掲載されました。(2025/3/13) 年収の壁「103万円の壁」…[続きを読む]

こちらの記事では、どの年収でも年収の壁を123万円に引き上げた前提でシミュレーションをしています。

所得税・住民税の給与所得控除と基礎控除をそれぞれ10万円引き上げた場合と現状のままの場合で、税金負担がどのくらいで、いくら減税されるかを、年収別にシミュレーションしてみました。

[前提]
・給与所得のみ
・協会けんぽ・東京
・控除は基礎控除・社会保険料控除のみ
・税率・保険料は2024年12月時点

介護保険なし(年齢40歳未満)の場合

給与年収 現在の税金負担 基礎控除+10万円
での税金負担
減税額
年収に対する
減税割合
2,000,000 88,800 83,700 5,100 0.26%
3,000,000 170,600 165,500 5,100 0.17%
4,000,000 261,000 255,900 5,100 0.13%
5,000,000 383,500 373,300 10,200 0.20%
6,000,000 513,200 503,000 10,200 0.17%
7,000,000 689,100 668,700 20,400 0.29%
8,000,000 924,900 904,400 20,500 0.26%
9,000,000 1,199,300 1,178,800 20,500 0.23%
10,000,000 1,487,000 1,466,600 20,400 0.20%
12,000,000 2,102,600 2,079,100 23,500 0.20%
15,000,000 3,247,600 3,213,900 33,700 0.22%
20,000,000 5,387,600 5,353,900 33,700 0.17%

介護保険あり(年齢40歳以上65歳未満)の場合

給与年収 現在の税金負担 基礎控除+10万円
での税金負担
減税額
年収に対する
減税割合
2,000,000 86,300 81,200 5,100 0.26%
3,000,000 166,800 161,700 5,100 0.17%
4,000,000 256,000 250,900 5,100 0.13%
5,000,000 375,500 365,300 10,200 0.20%
6,000,000 503,400 493,200 10,200 0.17%
7,000,000 672,200 651,800 20,400 0.29%
8,000,000 904,900 884,500 20,400 0.26%
9,000,000 1,177,400 1,156,900 20,500 0.23%
10,000,000 1,462,700 1,442,300 20,400 0.20%
12,000,000 2,071,100 2,047,600 23,500 0.20%
15,000,000 3,194,200 3,160,500 33,700 0.22%
20,000,000 5,329,600 5,295,900 33,700 0.17%

年収400万円以下の人は、わずか5,100円しか減税されません。年収500万円、600万円の人で年間約1万円、年収700~1000万円の人で年間約2万円の減税です。

これでは、ほとんどの人が減税の恩恵を感じることはないでしょう。

▷給与所得控除が増えるのは年収190万未満の人だけ

今回、給与所得控除が改正されますが、全体で10万円増えるのではなく、最低額の55万円が65万円になるだけです。

この改正で給与所得控除が増えて減税されるのは年収190万円未満の人だけです。
年収190万円以上の人には、給与所得控除については、まったく恩恵がありません。

3.「178万円の壁」と「123万円の壁」の比較

「178万円の壁」と「123万円の壁」を年収別に比較しました。

どの年収でも、「123万円の壁」のほうは「178万円の壁」と比較して減税額が非常に少ないです。もはや比較にならないレベルです。

介護保険なし(年齢40歳未満)の場合

給与年収 178万円の壁
の減税額
123万円の壁
の減税額
2,000,000 83,800 5,100
3,000,000 113,300 5,100
4,000,000 113,300 5,100
5,000,000 133,900 10,200
6,000,000 151,600 10,200
7,000,000 190,000 20,400
8,000,000 228,200 20,500
9,000,000 228,200 20,500
10,000,000 228,100 20,400
12,000,000 251,100 23,500
15,000,000 327,700 33,700
20,000,000 327,700 33,700

▷介護保険あり(年齢40歳以上65歳未満)の場合

給与年収 178万円の壁
の減税額
123万円の壁
の減税額
2,000,000 81,300 5,100
3,000,000 113,300 5,100
4,000,000 113,300 5,100
5,000,000 131,900 10,200
6,000,000 151,600 10,200
7,000,000 184,300 20,400
8,000,000 228,200 20,400
9,000,000 228,200 20,500
10,000,000 228,200 20,400
12,000,000 251,100 23,500
15,000,000 327,700 33,700
20,000,000 327,700 33,700

4.給与所得控除・基礎控除とは?

今回、「給与所得控除」と「基礎控除」の2つが登場していますが、それぞれ意味合いが異なります。

▷給与所得控除とは

「給与所得控除」とは、簡単にいうと、給与をもらって働いているサラリーマンの経費のようなものです。

給与収入から「給与所得控除」を差し引くと、「給与所得」になります。

給与収入-給与所得控除=給与所得

所得税計算 給与所得控除

フリーランス・個人事業主だと、収入から「経費」を差し引くと所得になりますが、この「経費」に当たるものが「給与所得控除」です。

所得税計算 所得控除

サラリーマンの経費を計算することは難しいため、次の表のように、年収ごとに一律でいくらと決まっています。

給与収入額
(単位:円)
給与所得控除額
162.5万以下 55万
(65万に引き上げ予定)
162.5万超 180万以下 給与収入額×40%-10万
(65万に引き上げ予定)
180万超 360万以下 給与収入額×30%+8万
(最低65万に引き上げ予定)
360万超 660万以下 給与収入額×20%+44万
660万超 850万以下 給与収入額×10%+110万
850万超 195万(上限)

給与所得控除の詳細はこちらをご覧ください。

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▷基礎控除とは

「基礎控除」とは「所得控除」の一つです。

所得税の計算では、さきほどの図のように、「所得」から「所得控除」を引いて、課税される所得(税金がかかる所得)を計算します。

所得税計算 給与所得控除

「所得控除」には、有名なものとして、配偶者控除、扶養控除、医療費控除などがありますが、基礎控除もこの仲間です。

▷基礎控除は、所得税48万円・住民税43万円

基礎控除は、所得2,500万円以下(給与収入2,695万円以下)の人であれば、誰でも利用できます。

金額は、所得によって少し異なりますが、所得2,400万円以下(給与収入2,595万円以下)の人は全員一律で、所得税は48万円、住民税は43万円です。

所得2,400万円を超える人の割合は、わずか0.3%程度ですので、日本で収入のある人のほぼ全員が、基礎控除を受けていると考えて良いでしょう。

▷基礎控除の歴史

基礎控除額は、物価の上昇とともに、少しずつ上がってきましたが、近年は、大幅な物価の上昇はなく、基礎控除額も一定でした。

所得税の基礎控除額の変遷
期間 基礎控除額
1970年(昭和45年) 18万円
(17万7500円)
1971年(昭和46年)
※同年に改正があり適用せず
19万円
(18万7500円)
1971年(昭和46年)~1972年(昭和47年) 20万円
(19万5000円)
1973年(昭和48年) 21万円
(20万7500円)
1974年(昭和49年) 24万円
(23万2500円)
1975年(昭和50年)~1976年(昭和51年) 26万円
1977年(昭和52年)~1983年(昭和58年) 29万円
1984年(昭和59年)~1988年(昭和63年) 33万円
1989年(平成元年)~1994年(平成6年) 35万円
1995年(平成7年)~2019年(令和元年) 38万円
2020年(令和2年)~ 48万円

※カッコ内の金額は法律施行の年度のみ適用
※2020年(令和2年)に基礎控除額が38万円→48万円に引き上げられたのは、物価の要因ではなく、給与所得控除額が10万円引き下げされたため、整合性をとるためです。

1970年代は、経済状況に対応するために、毎年のように基礎控除が改正されました。1971年(昭和46年)には2回も改正されました。

基礎控除について、さらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

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5.国民民主党は103万円の壁→178万円の壁を提案

国民民主党は、基礎控除額を75万円引き上げる政策を提言しています。


具体的にどう引き上げるかは今後の検討だと思われますが、仮に、所得税も住民税も一律で引き上げるとしたら、このようになります。

  • 所得税の基礎控除:48万円→123万円
  • 住民税の基礎控除:43万円→118万円

今までは、所得48万円以下(給与年収103万円以下)の場合は所得税がかからず、これを超えると所得税が発生するため「103万円の壁」と呼ばれていました。

基礎控除額を75万円引き上げると、所得123万円以下であれば所得税がかからなくなります

給与年収で考えた場合、現在の103万円に75万円を足すと178万円になるため、「178万円の壁」に移動すると言われているようです。

▷正確には178万円ではなく187.2万円

ちなみに、「178万円」は正確には正しくありません。

なぜかというと、「178万円」というのは給与年収のことを指していますが、「基礎控除75万円引き上げ」というのは、所得のことを指しています。所得を給与年収に換算するときは、単純に75万円を足すだけではダメだからです。

「給与収入」から「給与所得控除」を引くと「所得」になります。

給与所得控除

給与収入-給与所得控除=給与所得

ここで、「給与所得控除」は単純な数値ではなく、給与収入によって次のようになります。

給与収入額
(単位:円)
給与所得控除額
162.5万以下 55万
162.5万超 180万以下 給与収入額×40%-10万
180万超 360万以下 給与収入額×30%+8万
360万超 660万以下 給与収入額×20%+44万
660万超 850万以下 給与収入額×10%+110万
850万超 195万(上限)

給与収入が103万円のときは、単純に55万円を引いて、給与所得=103万円-55万円=48万円という計算をすれば良かったのですが、給与収入が162.5万円を超えると計算方法が変わります。

さらに、途中計算での特殊な端数処理の影響を考慮すると、所得が123万円以下となる給与収入は187万1,999円以下となります
187万2,000円だと、所得が123万円を超えてしまいますが、ここでは簡略化するため、「187.2万円の壁」または「187万円の壁」としておきます。

ただ、国民民主党は「基礎控除等の合計を103万円から178万円に引き上げます」と主張しています。

「基礎控除額を75万円引き上げます」とは言っていませんので、もしかすると、給与所得控除の金額も変更するのかもしれません。

それであれば、「178万円の壁」で問題なさそうです。

▷「178万円」の根拠

「178万円」という数字はどこから出てきたのでしょうか?

国民民主党の説明によると、「ここ30年くらいで、最低賃金が1.73倍に上がっているので、壁も1.73倍に引き上げる必要がある。103万円×1.73=178万円」とのことです。

実際、1995年の全国加重平均の最低賃金は611円でしたが、2024年は1,055円であり、約1.73倍に上昇しています。

「基礎控除」には、最低限行きていくのに必要な収入には税金をかけないという意味合いもありますので、最低賃金があがったのであれば、それに比例して、基礎控除を引き上げるのも当然という考え方です。

6.自民・公明は103万円の壁→123万円の壁を譲らず

一方、自民党・公明党の与党は、「178万円の壁」は税収減が大きすぎるとして、「123万円の壁」を提示し、2025年度税制大綱に盛り込みました。実現はほぼ確実でしょう。

具体的には、給与所得控除を10万円引き上げ、基礎控除も10万円引き上げることで、「103万円の壁」→「123万円の壁」にします。

2025年は所得税のみ、2026年以降は所得税と住民税の両方に適用される予定です。

▷「123万円」の根拠

自民・公明の説明によると、「食料や光熱費、家賃など生活に身近な物価が、1995年以降2割上がった」とのことです。

103万円×1.2=123.6万円ですが、1万円以下を切り捨てて、123万円としたようです。

消費者物価指数は、2020年7月を100とした場合、各品目ごとに次のように上昇しています。

  1995年10月 2024年10月 上昇率
食料 86.3 120.4 39.5%
光熱費 80.1 111.1 38.7%
家賃 99.7 100.5 0.8%

家賃は0.8%のみの上昇ですが、食料と光熱費は40%近く上昇しています。
食料や光熱費が支出に占める割合が多い家庭は、より厳しくなっています。

もし、1995年からの物価上昇率を根拠にするのであれば、103万円×1.4=144万円程度が適切かもしれません。

7.今後はどうなる?「178万円の壁」の実現は?

国民民主党は「178万円の壁」を提案しましたが、自民・公明の与党に「123万円の壁」で押し切られる形となりました。
国民民主党が試算していた減税額にはほど遠く、雀の涙ほどの減税額となりました。

現状、政権を握っているのは自民・公明であり、その与党の意向が反映される形となります。国民民主党は、2024年10月の衆院選で躍進しましたが、議席数は28であり、法案を通すには力が及ばないということでしょうか。

日本は民主主義で、国会議員は選挙で国民から選ばれますので、決めているのは国民です。自民・公明が議席数を215まで減らして過半数を割り込みましたが、それでも最大の党であることに変わりはなく、そういう選択をしたのは国民です。与党は「国民が決めた」と弁明することでしょう。

ただ、2024年の衆院選の時点では、年収の壁の引き上げ論争がここまで盛り上がっていませんでしたが、衆院選後、178万円引き上げによる減税額が多くの国民に知られることになりました。

直近では、2025年7月に参院選が行われる予定であり、約半数の124議席が改選予定です。もし、ここで自民・公明が大敗し、国民民主が大幅にご席を伸ばすようなことが起これば、「178万円の壁」の実現は現実味を帯びてきます。

2025年のうちに再度、所得税法を改正し、2025年の年末調整に間に合わせることも不可能ではないでしょう。

一方で、国民民主の得票が伸びなければ、178万円への引き上げはなく、123万円への引き上げのままにとどまるでしょう。

いずれにしても、今後どうなるか、「178万円の壁」が実現するかは、国民の決定に委ねられています

8.住民税非課税の「100万円の壁」が「110万円の壁」に?

「年収の壁」の引き上げで、住民税非課税のボーダーライン(基準)も変わるかどうかですが、おそらく、2026年からこの基準が変わると考えられます。

所得税の「103万円の壁」とは別に、住民税非課税のラインは100万円(※)であり「100万円の壁」と呼ばれたりしています。

※東京都23区など1級地の場合。地域によって、93万円、96.5万円など、金額が異なります。詳細は「93万円の壁・96.5万円の壁・97万円の壁」をご参照ください。

この「100万円の壁」というのは、扶養家族がいない人の場合で、扶養家族の人数によって、次のようになります。

世帯の人数 所得 給与収入(年収)
1人(単身) 45万円 100万円
2人(扶養1人) 101万円 156万円
3人(扶養2人) 136万円 205万円
4人(扶養3人) 171万円 255万円
5人(扶養4人) 206万円 305万円

基準となっている「所得」は、基礎控除を差し引く前の金額です。

今回、住民税については「給与所得控除」の最低ラインを55万円→65万円に引き上げます。
すると、住民税非課税のラインが10万円増えます。つまり、「100万円の壁」が「110万円の壁」になります。

あくまでも予想ですので、詳細はわかりませんが、今後の報道が注目でしょう。

9.扶養控除のボーダーラインは変わる?

学生を中心に、家族の扶養に入るために、年収103万円以内に抑えて働いている人も多いです。

実は、基礎控除を引き上げただけでは、扶養控除のボーダーラインは変わりません

なぜなら、扶養控除のボーダーラインは「所得48万円」ですが、「住民税非課税」のところで説明したように、基礎控除の金額を引き上げても「所得」には影響しないからです。

ただ、これでは、「年収103万円の壁」を引き上げる意味がほとんどありませんので、実際には、基礎控除だけなく、扶養控除のボーダーラインも引き上げる必要があります。

2025年から、大学生の年齢に当たる19~22歳の子どもを扶養する親の扶養控除(特定扶養控除)の年収ボーダーラインを150万円に引き上げる予定です。

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監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を1000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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