扶養控除は学生の子供のアルバイト収入に要注意!定額減税に影響も
大学生などの子供がいて扶養控除を受けている人は、子供のアルバイト収入に要注意です。
子供のアルバイト収入が103万円を超えると扶養控除を適用できなくなります。さらに、2024年は定額減税にも影響します。
扶養控除を受けるための子供の収入の条件について、また、ラインを超えてしまったらどうすればいいか? などを解説します。
目次
1.扶養控除の条件
扶養控除の対象となる家族の条件は次のとおりです。
- ①その年の12月31日時点で16歳以上の6親等内の血族及び3親等内の姻族であること
- ②年間の給与収入が103万円 (所得では48万円) 以下であること
- ③扶養する人と生計を共にしていること
自分の子供であれば、①の条件はまったく問題ありません。
③の条件については、子供が一人暮らしをしていても、その子供に生活費や教育費を送っているなどして生計が同じであれば大丈夫です。
問題となるのは、条件②の収入(所得)の条件です。
(1)子供のアルバイト収入103万円以下が必須条件
子供を扶養にするには、その子供のアルバイトの給与収入が103万円以下であることが必須な条件です。もし103万円を1円でも超えてしまうと、扶養控除を受けられなくなります。
収入は、1月1日~12月31日までの1年間の合計です。
(2)家庭教師など直接契約の場合は所得48万円以下が条件
学生に人気のバイトである家庭教師には、主に2つの形態があり、それぞれ所得の種類が異なります。
- 「家庭教師のトライ」など事業者に雇用されて派遣される場合 → 給与所得
- 親と直接契約する場合 → 事業所得または雑所得
事業者を介さずに、親と直接契約するパターンでは、個人事業主として報酬を受け取る形になり、事業所得または雑所得になります。
この場合は「収入103万円以下」ではなく、「所得48万円以下」であることが条件です。
所得とは
所得とは、収入から経費を引いたものです。
仮に、家庭教師の報酬が10,000円だったとして、交通費や文房具代・テキスト代などで2,000円かかったとしたら、所得は、10,000-2,000円=8,000円となります。
家庭教師の場合、経費としてかかるものは少ないため、直接契約の場合の「所得48万円」という基準は、「給与収入103万円」よりも厳しいものとなるでしょう。
事業所得か雑所得か
所得にはいくつかの種類がありますが、家庭教師の報酬は、次のどちらかになります。
- 事業所得:本業として生計を立てている場合、青色申告であれば最大65万円の控除あり
- 雑所得:副業の収入、特別控除はなし
事業所得の場合、青色申告をしていれば最大65万円の控除がありますので、「所得48万円」の基準はクリアしやすくなります。
しかし、事業所得として税務署で認められるには、本業であって、それで生計を立てられる程度の収入があることが条件となります。
学生の場合は、そもそも学業が本業ですし、親の扶養に入っているのであれば、アルバイトで生計を立てているとは言い難いですので、事業所得にするのは難しいかもしれません。
その場合は、雑所得になります。特別な控除はありませんが、かかった経費は引くことができます。
事業所得と雑所得のどちらになるかは、最終的には、子供が住んでいる場所を管轄する税務署の判断になりますので、税務署にお問い合わせください。
2.子供の扶養控除を受けられないとどうなる?
子供が扶養から外れてしまい、扶養控除を受けられなくなると、その分、税金(所得税と住民税)が増えてしまいます。
特に大学生の一般的な年齢である19~22歳の場合は、控除額は63万円ですので、これを受けられないと、かなり税金がアップします。
仮に次の条件で、扶養控除を受けたときと受けないときで税金がどれだけ変わるかを、年収別にシミュレーションしてみます。
- 社会保険:協会けんぽ加入(東京)、介護保険あり
- 労働保険:一般の事業
- 配偶者あり(配偶者控除なし)
- 子供1人(19歳)
年収 | 扶養控除なし のときの税金 |
扶養控除あり のときの税金 |
差額 |
---|---|---|---|
300万円 | 111,400円 | 25,200円 | 86,200円 |
400万円 | 200,300円 | 114,200円 | 86,100円 |
500万円 | 303,700円 | 215,100円 | 88,600円 |
600万円 | 430,300円 | 322,000円 | 108,300円 |
700万円 | 565,800円 | 456,500円 | 109,300円 |
800万円 | 801,200円 | 627,500円 | 173,700円 |
900万円 | 1,073,400円 | 899,800円 | 173,600円 |
1000万円 | 1,358,600円 | 1,184,900円 | 173,700円 |
扶養控除を受けられないと、年収が低い場合でも、税金が8万円以上アップします。年収が高い場合には、税金が17万円以上もアップします。
(1)定額減税に影響も!
2024年(令和6年)の定額減税では、1人当たり4万円、税金が安くなります。扶養している子供の分も合わせて控除されます。
ところが、子供が扶養から外れてしまうと、子供の定額減税4万円分は、親の税金からは控除されなくなります。
すでに、6月からの給料や賞与(ボーナス)で控除されている人は、年末調整で追加で税金を徴収されることになります。
子供が扶養から外れた場合は、子供自身に所得税や住民税が発生していますので、子供の給料から4万円分が減税されます。
ただ、アルバイト程度の収入だと、4万円分は控除しきれないでしょう。その場合、2025年(令和7年)になってから、控除しきれなかった分に相当する金額の給付金を市区町村からもらえます。ただ、まだいつになるか、どういう手順になるかわかりません。
子供が扶養から外れることで、2024年は定額減税にも影響して面倒くさくなることを覚えておきましょう。
3.子供のアルバイト収入が基準を超えてしまったら?
子供のアルバイト収入が給与収入103万円(または所得万円)を超えてしまったら、残念ながら、その年は扶養控除を受けることができません。年末調整や確定申告では、子供を扶養に入れないで申告してください。
あなたが会社員で、もし今まで子供を扶養に入れていて毎月の源泉徴収の金額を減らしていた場合には、年末調整の際に、追加で所得税を払うことになります。
(1)年末調整で誤って申告したら、後日、会社を通して調整する
会社員・公務員の場合は年末調整を行います。その際、子供のアルバイト収入が103万円を超えていることを知らずに、扶養親族の欄に記入してしまうかもしれません。
子供が給与収入をもらっている場合は、その子供の勤務先が税務署や市区町村にいくら支給したかを報告します。そして、税務署や市区町村が誤りに気付いたら、会社に「扶養控除の見直し」の通知をしてきます。あなたは会社から連絡を受けて、扶養控除の誤りに気付くことになります。
会社で年末調整を行っている場合は、会社が正しく納税する義務を負っていますので、会社に正しい「扶養控除等申告書」を再提出します。税務署への納税は会社が代わりに行いますので、後でその分を給料から天引きされるでしょう。
延滞税や加算税などのペナルティは発生しません。
(2)確定申告で誤って申告したら、後日、修正申告して納税する
個人事業主・自営業の場合は、確定申告を行います。会社員・公務員の方でも、2カ所以上で働いていたり、医療費控除などを受ける場合は、確定申告を行います。
確定申告を行って、そこで、誤って子供を扶養に入れてしまった場合ですが、税務署や市区町村で誤りに気付くのは、早くても4月から5月くらいにかけてでしょう。誤りを指摘されたときには、すでに確定申告の期限を過ぎていますので、修正申告が必要になります。
足りない分を納税するほか、延滞税や過少申告加算税などのペナルティが発生します。
4.子供の扶養控除の誤りを防ぐために
以上、子供のアルバイト収入が基準を超えてしまっていることに気づかずに、年末調整や確定申告で扶養にしてしまうと、それなりに大変になることがわかったと思います。
子供の扶養控除の誤りを防ぐためには、子供に扶養控除の条件を教え、収入103万円(または所得48万円)を超えないようにアルバイトするよう、言い聞かせておくことが大切です。
ただ、子供がもっと働いて収入をたくさん得たいということであれば、扶養控除をあきらめる代わり、子供への仕送りの金額を減らして、自分で頑張って稼ぐようにさせるのも一つの手でしょう。