固定資産税の軽減措置とは?|家を建てる前に知っておきたい3つのルール
この記事では固定資産税が減額される条件、固定資産税の軽減措置についてわかりやすく解説します。[続きを読む]
土地や建物といった不動産を所有していると、毎年「固定資産税」の支払いが必要になります。この記事では固定資産税の計算方法や支払い金額の目安・相場を税理士事務所代表の杉谷大輔さんに解説していただきます。
目次
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地と家屋(マイホーム)を持っている人が市区町村に支払う税金です(事業を営んでいる方に対しては、事業用資産にも課税されます)。この固定資産税の金額は毎年どのように決まるのでしょうか、そして10年、20年と支払い続けるといくらぐらいの負担になるのでしょうか。
固定資産税の金額は以下の式で計算します。式に出てくる「課税標準額」とはその年の1月1日における土地や建物の価値(評価額)として市区町村長が定める金額です。また、「税率」はほとんどの市区町村で標準税率である1.4%が採用されていますが、条例によって1.4%を超える税率を設定している市区町村も存在します。
たとえば、土地の2021年1月1日における評価額が1,000万円で税率が標準税率のときは、その年の固定資産税の金額は14万円となります。1年あたり14万円ですから、たとえば同じ土地を10年間所有し続けた場合の固定資産税額はトータルで140万円です。10年間支払うと自動車が1台買えるくらいの税金と考えると、固定資産税の負担感がわかりやすいのではないかと思います。
固定資産税は「課税標準額×税率」で決まるとお伝えしましたが、ではこの「課税標準額」はどのように決まるのでしょうか? そして実際の固定資産税の相場はどのくらいなのでしょうか?
建物の課税標準額の相場は実勢価格の5割から7割と言われています。たとえば、実勢価格が2,000万円の建物であれば、課税標準額は1,000万円から1,400万円程度で、これに対する固定資産税額は年間14万円から19.6万円程度です。
建物の課税標準額は、原則として※1以下のように計算します。
「再建築価格」は課税対象の家屋と同じ建物を新たに建築する場合に必要となる建築費をいい、「経年減点補正率」は家屋が建築されてから年数が経過することによって生じる減耗による減価を示した率をいいます。経年減点補正率は年を追うごとに下がりますが、その下限は0.2です。
なお、建物の課税標準額は3年に一度見直されます(これを評価替えといいます)。
※1 正確には、経年減点補正率に加えて積雪・寒冷地補正率、損耗減点補正率及び需給事情による減点補正率を乗じて「評点数」を求め、1円に物価水準による補正率及び設計管理費等による補正率を乗じて求める「評点一点当たりの価額」を「評点数」に乗じた額が建物の課税評価額ですが、細かすぎるので、本記事では建物の課税標準額を再建築価格に経年減点補正率を乗じた金額として説明します
たとえば、2010年に2,000万円で建築した建物の2020年における課税標準額を考えてみます。
仮に、再建築価格(=この建物を2020年に建てる場合の建築価格)が2,000万円、経年減点補正率を0.6とすると、この建物の課税標準額は2000万×0.6で1,200万円と計算できます。
建物にかかる固定資産税額は課税標準額に税率を乗じて計算しますから、標準税率1.4%を使った場合のこの建物の固定資産税額は16万8千円です。
建物にかかる固定資産税額の平均について、総務省の「平成28年度 固定資産の価格等の概要調書」によれば、木造住宅1平米あたりの評価額の全国平均値は22,405円とのことですから、たとえば建物の床面積を150平米とした場合の課税標準額は約336万円で、固定資産税の金額は年間約4万7千円と計算できます。
土地の課税標準額の相場は実勢価格の約7割と言われています。
土地は使用により減価しませんから、建物と違って「経年減点補正率」は使いません。土地の課税標準額は以下のように計算します。
「路線価」は建物と同じく3年に一度見直され、その土地付近の地価公示価格などに応じて上昇または下降します。
土地にかかる固定資産税額の平均について、先に紹介した総務省の統計によれば、宅地1平米あたりの課税標準額の全国平均値は12,407円とのことですから、たとえば土地の面積を150平米とした場合の課税標準額は約186万円で、固定資産税の金額は年間約2万6千円となります。
前章で、固定資産税の金額を決める「課税評価額」や「路線価」は3年に一度見直されるとお話ししました。この価格の見直しを「評価替え」といい、評価替えを行う年度を「基準年度」といいます。直近の基準年度は2021年度で、次回の基準年度は2024年度です※2。
建物の評価替えは、3年間の建築物価の動向等を反映して定められた補正率を乗じて新たに再建築価格を算出し、これに経年減点補正率等を乗じて評価額を算出します。一方土地の評価替えは、3年ごとに地価公示価格などを基にして評価額を算出します。
この評価替えによって固定資産税の金額がいつ、どのように変化するのかお話しします。
※2 固定資産税は毎年課税されるものですから、その評価も毎年行うことが理想です。ただ、毎年全ての土地建物に対して調査を行うのはコストや手間の観点から現実的ではないため、3年ごとに価格を見直すこととされています。
前章でお伝えした通り、建物の固定資産税評価額は「再建築価格」に「経年減点補正率」を乗じて計算します。「経年減点補正率」は建物が建築されてから年数を経るにつれ下がっていくので、再建築価格に変更がなければ建物の評価額は毎年下がるのが原則です。
もっとも、経年減点補正率は0.2が下限ですから、0.2が適用される年数以降は固定資産税評価額に動きはなくなります。
建物にかかる固定資産税の金額の推移について、次のモデルケースを用いて簡単に紹介します。
2021年に東京都で木造2階建ての一戸建て(建物面積120平米)を3,000万円で建築した場合※3、2022年以降の固定資産税額は次のとおりです(固定資産税はその年の1月1日時点の所有者に課税されるため、新築年である2021年には課税されません)。
年 | 経年減点補正率 | 固定資産税評価額(円) | 固定資産税額(円) ※特例適用前 |
固定資産税額(円) ※特例適用後 |
---|---|---|---|---|
2022 | 0.8 | 24,000,000 | 336,000 | 168,000 |
2023 | - | 24,000,000 | 336,000 | 168,000 |
2024 | - | 24,000,000 | 336,000 | 168,000 |
2025 | 0.67 | 20,100,000 | 281,400 | 281,400 |
2026 | - | 20,100,000 | 281,400 | 281,400 |
2027 | - | 20,100,000 | 281,400 | 281,400 |
なお、物価の急激な上昇などによって再建築価格が大幅に上昇したときは、経年減点補正率を乗じたとしても新しい基準年度における評価額が前年度の評価額を上回ることもありますが、こういった場合は前年度の評価額が据え置かれる(つまり、評価額が上がらない)措置が取られています。
また、建物の固定資産税額は、建物を増改築したり一部取り壊しをしたりすると変わります。建物の増改築や取り壊しを行った場合は、工事が完了次第市区町村の税務担当課へ連絡するようにしましょう。
※3 このモデルケースでは以下の条件で計算しています
・認定長期優良住宅には該当しない
・再建築価格は永久に3,000万円から動かないものとする
・経年減点補正率は2018年4月1日から適用されるものを使用する
・固定資産税の減額特例(2005年1月2日から2022年3月31日までに新築された住宅は原則3年間固定資産税が半額になる)の適用を受ける
・延床面積1平米当たり再建築費評点数別区分は53,000点以上83,000点未満とする
土地の固定資産税評価額の基となる「路線価」も、建物と同じく原則として3年に一度評価替えがされます。主要な街路の路線価は標準的な宅地の地価公示価格や鑑定評価価格などを基に求められ、その他の街路の路線価は主要な街路の路線価を基にして幅員(道の横幅)や公共施設からの距離等に応じて求められます。
なお、基準年度以外の年度でも地価の下落があり、価格を据え置くことが適当でない区域の土地の価格については、基準年度以外でも価格が下方修正されることがあります(基準年度以外の年度で上方修正されることはありません)。
固定資産税には、一定要件を満たせば適用を受けることのできる軽減措置や減免制度が用意されています。軽減措置や減免制度の代表例は次のとおりです。
対象資産 | 効果 |
---|---|
住宅用地 | 家屋の延べ床面積の10倍まで、課税標準額が減額になる ・200平米まで:通常の課税標準額6分の1 ・200平米超:通常の課税標準額3分の1 |
新築家屋 | 要件を満たすと次の年の間、床面積120平米までの部分に係る固定資産税額が2分の1となる ・3階建以上の耐火構造または準耐火構造の住宅:5年間(認定長期優良住宅の場合は7年間) ・上記以外の住宅:3年間(認定長期優良住宅の場合は5年間) |
既存家屋 | 耐震改修工事などを行うことで、工事が完了した年の翌年度の固定資産税額が減額される (床面積120平米または100平米まで) |
詳しくは以下の記事で解説していますのでぜひ併せてご覧ください。
固定資産税は、同一の人が同一の市区町村において所有する資産の課税標準額の合計額が一定の金額(これを「免税点」といいます)に満たなければ課税されません。資産ごとの免税点は次のとおりです。
資産 | 免税点 |
---|---|
土地 | 30万円 |
家屋 | 20万円 |
償却資産(事業用資産) | 150万円 |
これらの条件に当てはまる資産は、たとえば土地であれば北海道の原野、建物であれば土地に固着したかなり古い倉庫、償却資産であれば店舗用機械が考えられます。
いかがでしたでしょうか。この記事では、固定資産税の金額がどのように決まっているのか、相場や平均がどの程度の金額なのかお伝えしました。これからマイホームの購入をお考えの方は税金負担の相場を、既に資産をお持ちの方は今後の固定資産税額の推移などを見通していただけたかと思います。
記事中にもいくつか例が出てきた通り、固定資産税の負担は決して軽いものではありません。現金納付をされている方や少しでも税金負担を軽くしたい方はキャッシュレス決済の利用も検討されることをおすすめします。
なお、本記事でもいくつかの計算例は提示しましたが、減税制度の適用などもふまえた固定資産税額の具体的なシミュレーションをお求めの方は以下の記事もぜひご参照ください。