年末調整・確定申告の「保険料控除」とは?金額や対象となる保険
年末調整で保険料控除を適用すると節税になります。保険料控除の種類と、対象となる保険を詳しく解説します。また、対象にな…[続きを読む]
社会保険や生命保険など、保険に加入し、「保険料」を支払っている場合、確定申告か年末調整のいずれかで「保険料控除」を利用し、税金の負担を軽くすることができます。
この記事では、確定申告で保険料控除を利用する方法について解説していきます。
目次
確定申告で保険料控除を受けるためには、確定申告書にご自身の収入などの必須項目に加えて保険料控除の控除額(前年の間に支払った保険料を元に計算した金額)を記入して税務署に提出する必要があります。確定申告書の記入方法については後ほど詳しく解説します。
「保険料控除」は支払っている保険料の種類によって控除額の計算方法が変わります。申告書にはご自身で控除額を計算する必要があります。
それぞれの控除額の詳しい計算方法は以下の記事を参考にしてください。
ここからは確定申告書で保険料控除を利用するための申告書の書き方を詳しく解説していきます。
確定申告書は第一表と第二表のセットになっていて、第一表は以下のようにいくつかのエリアに分かれています。
保険料控除を受けるには「所得から差し引かれる金額」エリアの各欄に保険料控除の金額を記入します。
「所得から差し引かれる金額」エリアには以下4つ、保険料控除用の記入欄があります。
なお、年末調整で上記の控除を受けていても受けていなくても、確定申告書に記載する金額は変わりません。年末調整で控除を受けた方も確定申告書に再度全ての保険料控除の金額を記載しなければなりません。「年末調整で控除を受けたから確定申告書には記載する必要はない」と勘違いしないよう注意しましょう。
では、記入する保険料の金額や種類はどのように確認したらよいのか、それぞれの保険料の確認方法を簡単に解説します。
会社員や公務員の方など、源泉徴収票に社会保険料の金額が記載されている方は、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄の金額をここに記入します(下図の緑色の四角)。
個人事業主やフリーランス、又は会社員でも給与から社会保険料が天引きされていない方は以下の方法で社会保険料の支払額を確認します。
国民健康保険の支払額の証明書が自治体から届いている方は、その証明書の金額を記入すればOKです。もし証明書が手元になく、かつ領収書を紛失してしまった場合、お住いの市区町村に電話などで問い合わせましょう。前年中に支払った国民健康保険の支払額を教えてもらうことができます。
小規模企業共済等掛金控除に該当する掛金の支払いには3種類あり、それぞれ以下の書類で記入する金額を確認します。
上記のうち企業型確定拠出年金の金額の確認方法が少しわかりにくいかもしれません。企業型確定拠出年金の掛金を給与天引きで支払っている方は、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄の上部「内」と記載されている部分に支払った掛金の金額が記載されます。ここで前年中に支払った企業型確定拠出年金の掛金の金額を確認することができます。
生命保険料控除には以下の3種類があります。
それぞれの支払金額、保険の種類、新旧の区分は生命保険会社から送付される「控除証明書」で確認することができます。控除証明書は毎年10月頃に送付されますが、紛失してしまった方は早めに再発行を依頼しましょう。
なお、控除証明書には「証明額」と「申告額」という2つの金額が記載されています。「証明額」には控除証明書が発行された時点での支払額が、「申告額」には年末までに支払う予定の保険料の金額が記載されています。したがって控除証明書発行~年末までの間に生命保険を解約した方以外は、「申告額」の金額を記載してください。
地震保険料控除の対象となる保険には「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の2種類があります。それぞれの区分と支払金額は、損害保険会社から送付される「地震保険料控除証明書」というハガキで確認することができます。
第二表には保険料の種類ごとに、より詳細に金額を記載します。金額や保険の種類はさきほど説明した書類で確認してください。
「保険料控除等に関する事項」エリア「社会保険料控除」の欄に下記を記入します。
「保険料等の種類」欄
社会保険料の種類を記入します。会社員の方で、源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄に金額が記載されている人は、ここに「源泉徴収分」とだけ記入してください。
「支払保険料等の計」欄
それぞれの社会保険料の前年中の支払金額を記入します。
「うち年末調整等以外」欄
「支払保険料等の計」に記入した金額のうち、年末調整や公的年金等の源泉徴収で控除を受けていない金額を記入してください。
したがって年末調整などで控除を受けている人はこの欄は空欄となります。年末調整で社会保険料控除を受けていない人は、「支払保険料等の計」の金額と同額を記入します。
基本的な書き方は、「⑬社会保険料控除」と同じで、記入する欄も同じです。
「保険料等の種類」欄には、「小規模企業共済」「個人型確定拠出年金」などと、掛金の種類を記入します。
「保険料控除等に関す事項」エリア「生命保険料控除」の欄に下記を記入します。
「新生命保険料」欄
「旧生命保険料」欄
「新個人年金保険料」欄
「旧個人年金保険料」欄
「介護医療保険料」欄
「保険料控除等に関する事項」エリア「地震保険料控除」の欄に下記を記入します。
「地震保険料」欄
「旧長期損害保険料」欄
ここまで確定申告書を手書きで作成する場合の記入方法をお伝えしましたが、確定申告書はPC・スマホを使ったオンライン入力でも作成できます。
国税庁HPの「確定申告書作成コーナー」にアクセスし、表示される質問に答えていくと確定申告書が完成します。
保険料控除については「所得控除の入力」の画面で前年に支払った各種保険料を入力すれば、手書きの場合は自分で行う控除額の計算なども自動で行ってくれるため便利です。
「所得控除」の入力画面で利用する控除を選び「入力する」をクリックします
各保険料控除の入力画面で必要な情報を入力します
確定申告書作成コーナーについては下記の記事でも詳しく解説していますのでぜひ併せてご覧ください。
確定申告書の用意ができたら、本人確認書類と各種控除の証明書を添付し、確定申告期限(例年3月15日、土日祝の場合は翌月曜日)までにお住まいの地域の税務署に提出します。提出は税務署の窓口でも行えますが、郵送やオンライン(e-Tax)でも可能です。
保険料控除を受ける場合、税務署に提出しなければならない証明書については、下記の表にまとめてあります。保険料の種類ごとに必要な書類とその入手方法、添付方法などを確認しましょう。
保険の種類 | 添付 | 証明書の名称 | 入手方法 | 原本orコピー | 添付方法 |
---|---|---|---|---|---|
社会保険料控除 | |||||
健康保険・厚生年金・雇用保険 | 不要 | - | - | - | - |
国民健康保険 | 不要 | - | - | - | - |
国民年金 | 必要 | 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 | 10月~11月頃に郵送される | 原本 | 「添付書類台紙」に貼って提出 |
国民年金基金 | 必要 | 社会保険料控除証明書 | 10月~11月頃に郵送される | 原本 | 「添付書類台紙」に貼って提出 |
介護保険料・後期高齢者医療保険 | 不要 | - | - | - | - |
小規模企業共済等掛金控除 | |||||
小規模企業共済 | 必要 | 小規模企業共済掛金払込証明書 | 10月~11月頃に郵送される | 原本 | 「添付書類台紙」に貼って提出 |
企業型確定拠出年金 | 不要 | - | - | - | - |
個人型確定拠出年金(iDeCo) | 必要 | 小規模企業共済等掛金払込証明書 | 10月~11月頃に郵送される | 原本 | 「添付書類台紙」に貼って提出 |
生命保険料控除 | |||||
一般の生命保険・介護医療保険・個人年金保険 | 必要 | 生命保険料控除証明書 | 10月~11月頃に郵送される | 原本 | 「添付書類台紙」に貼って提出 |
地震保険料控除 | |||||
地震保険料 | 必要 | 地震保険料控除証明書 | 10月~11月頃に郵送される | 原本 | 「添付書類台紙」に貼って提出 |
なお、上記の表で「添付書類の提出が必要」となっているものについても、年末調整で控除を受けている場合は添付書類は不要となります。
e-Taxで電子申告をする場合、上記で解説した添付書類は以下のいずれかの方法により税務署に提出します。
e-Taxで電子申告を完了したらメッセージボックスを確認しましょう。「受付結果の通知」という通知が届いているので、そこから「申告書等送信票(兼送付書)」を印刷し、添付書類と共に管轄の税務署に郵送してください。
e-Taxで電子申告を行った方は、書面を郵送で提出する方法に代えてイメージデータ(PDF形式)で提出することが可能です。提出方法は下記のe-Taxサイトで確認してください。
e-Tax:よくある質問「申告等データを送信する際に、併せて「添付書類のイメージデータ」を送信したいのですが、どうすればいいですか。」
e-Taxで電子申告を行う方は、保険料控除の証明書の記載内容を入力し、確定申告書と併せて提出すれば添付書類の提出を省略することが認められています。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作成する場合は申告書の作成手順に従って必要事項を入力します。e-Taxソフトで作成する場合は「社会保険料等に係る控除証明書等の記載事項」という書類を作成し、確定申告書と一緒に送信してください。
ただし、添付書類を省略した場合も控除証明書を5年間保存しておく義務があるので注意が必要です。
確定申告で還付金が生じた場合、確定申告書を提出してからおおむね1か月~2か月程度で還付金が指定口座に振り込まれます。確定申告シーズンは繁忙期となるため、還付には2か月ほど要することが多いようです。
できるだけ早めに還付金を受け取りたい方は、確定申告期間が始まる前に還付申告を済ませるのがおすすめです。
還付申告の場合、1月1日から確定申告書を提出することができます。確定申告期間(2月16日~3月15日)より前に申告を済ませれば繁忙期を避けることができるため、少し早めに還付金が振り込まれる可能性があります。
前述の「確定申告書作成コーナー」を利用すればスマホでも確定申告書を作成することができます。また、マイナンバーカードと、マイナンバーカードの読み取りに対応したスマホをお持ちの方か事前に税務署でIDを取得されている方なら、作成した申告書をスマホでそのまま提出することも可能です(e-Tax)。
Android端末の方はGoogle Playで、iPhone端末の方はApp StoreでマイナポータルAPをインストールし、確定申告書作成コーナーにアクセスしたら「作成開始」をタップします。
そうするといくつかの質問が表示されるので順に答えましょう。
答えていくと最後に申告書の提出方法の選択しが出てくるので、スマホでオンライン提出したい方(マイナンバーカードの読み取りができる方)は一番上のe-Tax(マイナンバーカード方式)にチェックを入れましょう。
※税務署で事前にIDを取得している方は二番目のe-Tax(ID・パスワード方式)を利用することも可能です。
「次へ」をタップするとログイン画面が表示されるのでマイナンバーカードを読み取ってログインします。この時、マイナンバーカードを暗証番号(利用者証明用電子証明書のパスワード)が必要です。
「ログイン認証に成功しました。」というメッセージが表示されたら読み取り完了です。初めてe-Taxを利用する場合はその後そのまま、表示に従って利用者情報の登録にすすみます。詳細はガイドラインをご覧ください。
なお、マイナンバーカード方式もID・パスワード方式も利用できない方は提出方法で「書面」を選べば、申告書の作成のみスマホで行うことも可能です(スマホで作成したデータを印刷して郵送で税務署に提出する)。この場合マイナポータルAPのインストールも不要です。
上記の準備をして確定申告書の作成にすすんだら、控除の入力画面から前年に支払った保険料を入力していきます。
上図赤枠部分をタップするとそれぞれの保険料の入力画面に進みます
最後に、確定申告と保険料控除についてよくある質問と回答をまとめましたので参考にしてください。
保険料控除を入れずに確定申告をしてしまった場合、確定申告期間内(3月15日まで)であれば確定申告書を再提出すればOKです(記入漏れの部分だけでなく、必要事項は全て記入しましょう)。確定申告期限後に漏れに気付いた場合は「更正の請求」という手続きで保険料控除を申告します。
年末調整で入れ忘れてしまった保険料控除がある場合、確定申告をすることでその保険料控除を受けることができます。
現在無職の方でも、前年中に給与収入があり、給与から源泉所得税を天引きされている人は還付を受けられる可能性があります。前年中に給与収入がなかったり、給与収入があっても給与から源泉所得税を天引きされていない人は還付を受けることはできません。
年金受給者でも確定申告で保険料控除を受けることができます。確定申告の方法はこの記事で解説した内容と同様です。年金から介護保険料が天引きされている方は「公的年金等の源泉徴収票」に記載されている介護保険料の金額も控除することができます。申告し忘れないよう注意しましょう。
配偶者の国民健康保険を支払っている場合、その支払金額は控除の対象となります。また、生命保険料控除は「契約者」ではなく「支払者」が控除の対象者です。したがって配偶者名義の生命保険料でも、実際に支払っている人が保険料控除を利用できることになります。