確定申告が必要な人/不要な人/必要はないがするとお得な人
確定申告の対象者がどんな人か、次の3つに分類して、まとめました。 確定申告が必要な人(しないといけない人) 確定申告…[続きを読む]
会社勤めの方は通常、勤務先で年末調整を行うことで所得税と住民税の金額が確定します。
したがって、確定申告について意識することは少ないのではないでしょうか?
しかし、会社員の方の中には確定申告をすべき人、または、した方がお得なケースもあるのです。
年末調整と確定申告の違いを解説したうえで、確定申告が不要なのか必要なのかについて、ケース別にわかりやすく解説します。
目次
まずは混同しやすい年末調整と確定申告について、それぞれの概要と相違点を確認しておきましょう。
年末調整とは、会社員の1年間の所得税を確定させるための手続きです。
毎月の給与から控除されている所得税額は、あくまで概算の金額です。配偶者控除や扶養控除、保険料控除などの各種控除の金額を年末調整書類に記入し、勤務先に提出することで、正確な1年間の所得税額が確定します。
その確定した所得税額と、毎月控除されていた源泉所得税額との差額を調整する、というのが年末調整の一連の流れです。
年末調整の対象者は、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していることが前提となります。具体的に対象となるのは次のケースです。
要するに、年末時点で会社勤めをしている方は基本的に年末調整の対象となるということです。ただし一部例外もあるので、それについては後述します。
また、少し特殊なケースですが、年末ではなく年の途中に年末調整を行わなければならない人もいます。
上記いずれかのケースに該当する方は、年の途中時点で年末調整が行われます。逆に言えば年の中途で退職した人で上記に該当しない人は、年末調整の対象に含まれないこととなります。
会社員でも、以下に該当する人は年末調整の対象にはなりません。
また、上記以外でも、2か所以上の会社から給与を受け取っている方は注意が必要です。
その場合、メインの勤務先では扶養控除申告書を提出のうえ年末調整を行うこととなり、もう一方の勤務先では年末調整を行わないこととなります。
これについても後述しますが、2か所以上から給与収入を得ている人は、別途、確定申告が必要となります。
所得税の確定申告とは、個人が納税すべき所得税額を税務署に申告する手続きのことをいいます。
確定申告では給与所得以外の、事業所得や不動産所得等についても合わせて計算を行い、所得税額を確定させます。
確定申告は主に個人事業者や給与収入以外の収入がある人が行うものです。
普通の会社員は年末調整で所得税額が確定するため、確定申告をする必要はありません。
ただし、会社員のうち以下に該当する人は確定申告を行う必要があります。
【会社員のうち確定申告の対象になる人】
普通の会社員でも、給与収入が2,000万円を超える人は年末調整ができないため確定申告を行う必要があります。
それ以外では「年末調整をしなかった場合」「本業の会社以外に収入がある場合」には確定申告をする必要があると考えて良いでしょう。
ここまで年末調整と確定申告の概要を簡単に説明してきましたが、それぞれの相違点を表で整理しておきましょう。
年末調整 | 確定申告 | |
---|---|---|
時期 | 11月~12月頃 | 翌年2月16日~3月15日 |
書類の提出先 | 勤務先の会社 | 所轄の税務署 |
対象となる所得 | 給与所得 | 給与所得 事業所得 不動産所得等 (全10種類の所得) |
控除の種類 | 扶養控除 障害者控除 寡婦控除/寡夫控除 勤労学生控除 基礎控除 配偶者控除/配偶者特別控除 生命保険料控除 地震保険料控除 社会保険料控除 小規模企業共済等掛金控除 住宅借入金等特別控除 |
(左記以外に) 雑損控除 医療費控除 寄附金控除 特定支出控除 |
上の表を見ると、年末調整よりも確定申告の方が控除の種類が多いことが分かります。
後述しますが、年末調整を済ませた人も、確定申告を行うことで、控除を追加し、所得税の還付を受けられる場合があります。
年末調整を行った人であっても、確定申告を行うべき、または行った方が得になるケースもあります。該当するものがないかどうかチェックしてみてください。
まず初めに、確定申告を行ったほうが特になるケースです。
各種控除の中には、確定申告でのみ適用可能な控除がいくつかあります。知っていないと損をしてしまいかねないので、以下の制度に該当していないかどうか確認しておきましょう。
医療費控除は、その年の医療費や一定の医薬品の支払いが一定金額を超える場合に適用できる所得控除です(保険金などで補填された金額を除く)。
医療費控除には配偶者や扶養家族等の医療費も含めることができます。
制度の適用には細かい規定があるため、詳細は別記事「医療費控除とは?」でご確認ください。
公益財団法人や認定NPO法人、政治活動に関する寄付金などを支出した場合、確定申告を行うことで寄附金控除を受けることができます。ふるさと納税もこの寄附金控除に該当します。
なお、ふるさと納税は一定の要件を満たしていれば、「ワンストップ特例制度」を活用することで確定申告不要となるケースもあります。
【関連記事】[図説]ふるさと納税の確定申告書の書き方と記入例
住宅ローンを組んでマイホームを購入したり、家の増改築を行った場合には、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。
この控除は、控除を受ける最初の年については確定申告書を提出する必要があります。
初年度に確定申告を済ませれば、2年目以降は年末調整でこの控除の適用を受けることができます。
【関連記事】住宅ローン控除とは?
雑損控除とは、自然災害や盗難等によって所有している資産に損害を受けた場合に適用できる控除です。
なお、損害を受けた資産が「生活に通常必要でない資産」である場合には、雑損控除の適用を受けることはできません。
特定支出控除とは、簡単に言えば会社員に認められた経費です。会社員が次の支出をした場合、確定申告により一定金額を控除することができます。
【特定支出の内容】
適用できる金額に要件があったり、会社の証明が必要だったりと一定のハードルはありますが、対象となる人は活用すべき制度です。
この場合は先ほどのケースとは違い、必ず確定申告をしなければなりません。該当するかどうかしっかり確認しておきましょう。
給与収入が2000万円を超える人は、勤務先の会社では年末調整を行うことができません。会社から交付される源泉徴収票を元に、自分自身で確定申告を行いましょう。
2か所以上の会社に勤務している人は確定申告をする必要があります。メインの勤務先を「主たる給与」、それ以外の勤務先を「従たる給与」といい、従たる給与について確定申告をしなければなりません。
主たる給与については年末調整を行うため確定申告は不要ですが、確定申告の際にはその主たる給与の金額も合算する必要がありますので、源泉徴収票を保存しておきましょう。
報酬による副業収入や不動産収入を得ていたり、特定口座以外で株式を売却し利益を得た人など、給与収入以外の所得が20万円を超える人は確定申告をしなければなりません。
多少特殊なケースとなりますが、以下に該当する方も確定申告を行う必要があります。
次のいずれかのケースに該当する方は、確定申告を行う必要があります。
上記のケースは、いずれも前職の収入について年末調整が行われていません。したがって前職の収入について、自分で確定申告を行わなければなりません。
年末調整で控除できるものをうっかり忘れてしまった場合、確定申告をすることで還付を受けることができます。例えば次のようなケースです。
生命保険料控除や住宅ローン控除は、証明書を紛失してしまって年末調整に間に合わなかったり、うっかり記入漏れしてしまうこともあるかと思います。
また、その年中に結婚したり、両親に仕送りをしているのに扶養家族欄に書き忘れてしまうことも考えられます。
このようなケースでは、自身で確定申告を行うことで、それらの控除を受けることが可能です。
勤務先の何らかの都合によって、または自分の責任等により、年末調整すべき人が年末調整をしなかった場合、確定申告をしても良いのでしょうか?
年末調整をすることは会社側の義務であり、年末調整をしなくても労働者側に罰則の規定はありません。
年末調整で全て済ませることが原則ではありますが、年末調整できなかった場合には自分で期日までに確定申告をすればあなた自身に問題は生じません。
最後に、もう一度、年末調整と確定申告の違いについて、簡単にまとめます。
年末調整 | 確定申告 | |
---|---|---|
誰が | 勤務先 (会社員は書類を記入) |
自分で |
いつ | 11月~12月頃 | 翌年2月16日~3月15日 |
どこで | 勤務先の会社 | 所轄の税務署 |
対象の収入 | 給与収入 | すべての収入 |
控除 | 扶養控除 配偶者控除 生命保険料控除 など ※漏れたら確定申告でも可能 |
雑損控除 医療費控除 寄附金控除 特定支出控除 ※確定申告でのみ可能 |