無料送金アプリPring(プリン)とは?特徴や使用方法を解説
2019年から本格的にキャッシュレスが普及し始め、様々なキャッシュレス方法が開発されてきました。 今回は、その中でも…[続きを読む]
日本において、5年ほど前から突如ブームとなった「Fintech」
大企業もベンチャー企業も、事業モデルに「Fintech」を組み込むことで話題になり、株価が上がり、評判も上がりました。
昨年10月より、キャッシュレス決済に伴う還元策が施行されて、このFintechブームもすっかり収束した感があります。
結局、何が「Fintech」だったのでしょうか? そして、私達の生活にどのように溶け込んだのでしょうか?Fintechブームから5年が経った今、改めて考えてみたいと思います。
目次
アメリカやイギリスでは、2000年代に入ってから「Fintech」という言葉が使われていましたが、それは主に金融機関による技術革新を指していました。
日本に入ってきた「Fintech」は、2008年のリーマンショック後に新しく出てきた金融機関以外の企業が提供する最近のITテクノロジーを使った革新的な金融サービスを指します。
この記事では、「Fintech」を、2008年以降の金融サービス事業の革新的変化と捉えることとしたいと思います。
Fintechについて、その定義の詳細については、日本銀行のサイトが分かり易いと思います。
【参考】日本銀行:FinTech(フィンテック)とは何ですか?
皆さんは、Fintech企業と聞いてどの企業を思い浮かべますか?
おそらく、LINE PayやPayPay(ヤフージャパン)、メルペイなどQRコード決済サービスや、マネーフォワードやFreeeなどのマザーズ市場に上場している新興企業を思い浮かべるのではないでしょうか?
ここで挙げた企業以外にも健闘しているFintechベンチャーは数多く存在していますが、日本においては残念ながら、私達の生活を劇的に変えた革新的なサービスというには至らないというのが実情だと思います。
メインユーザーは、一部の熱心なアーリーアダプターや、QRコード決済であればポイント目当ての一部のマニアが多かったと思います。しかし昨年10月以降、キャッシュレス決済によるポイント還元策が始まって、QRコード決済がようやく一般のユーザーにも浸透してきたところという感じです。
日本のFintech企業が提供するサービスは、まだまだ多くのユーザーを捉え切れていないというのが実情です。
それに対して、海外ではFintech企業やFintechサービスが人々の生活を劇的に変えているケースが多数見られます。
アメリカにおいては、大学生を中心に若いユーザーにとって、なくてはならないサービスとなった「Venmo」という送金サービスがあります。今や、アメリカでは、「Venmo me, please.」と言えば、「(あなたが私に払うことになっている)お金を送ってね!」を意味するようになっています。
そして、中国では周知のことですが、Alibaba(アリババ)とTencent(テンセント)という2大巨人企業が運営する金融スーパーアプリである「Alipay(アリペイ)」と「WeChat Pay」は、中国では多くの人々にとって欠かせないサービスとなっています。
それ以外にも、海外には多くのユーザーの支持を勝ち取ったFintechサービスが存在しています。
これらのサービスに共通するのは、その国において、大きな潜在ニーズが存在していたということだと思います。言い換えれば、「こんなサービスがあったら便利なのに」というニーズを確実に掘り起こしたということです。
日本においては、2015年くらいからFintechブームが起こり、多くのFintechベンチャーが生まれて、大企業もFintechに参入をする動きが盛んになりました。既存の金融機関や金融関連企業は、Fintechベンチャーへの投資に熱心になり、多くのマッチングイベントが開催されました。
しかしながら、その多くは事業継続に必要なユーザー数を獲得することが出来なくて、事業モデルを変えていきながら試行錯誤を続けており、一部は事業廃止に追い込まれたりしている例が少なくないのです。
日本において、当初Fintechがふわふわとしたブームの域を超えられなかったのには、それなりに理由があり、必ずしもFintech企業のサービスの質が悪かったわけではありません。
一番大きな理由は、日本においては、既存の金融サービスだけで困る人がほとんどいなかったというものだと思います。それ以外にも、スマホ普及の遅れが挙げられます。Fintechサービスは、基本的にスマホを前提としてビジネスモデルが成立しています。それに対して、日本では、ガラケーと呼ばれる携帯の使い勝手がそれなりに良かったために、スマホの普及が諸外国に比べて遅れました。それも大きな要因の一つです。
そして、ブームに乗った多数のFintechベンチャーが乱立して供給過剰となり、結局ユーザー不在のブームの域を超えられなかったというところが実情です。
ここに来て、日本でもようやく潜在的ニーズを掘り起こし、既存の金融サービスを脅かす存在になり得る企業やサービスが出てきたように感じています。
言い換えれば、ようやく地に足が付いたFintechが出てきたというわけです。この流れを、一部のメディアではFintech2.0と呼んでいます。
つまり、単なるブームの域を越えなかったFintechサービスによる多くの試行錯誤の結果、根を張り、花を咲かせようという段階(FinTech2.0)にあることを意味します。その背景を説明したいと思います。
世界の国々で革新的なFintechサービスと言われているものには、共通の前提があります。その一つがキャッシュレスです。キャッシュレスが進むことで決済はデジタル化されるので、Fintechサービスと相性が良いということになります。
日本においては、昨年10月よりキャッシュレス決済によるポイント還元策を導入したことで、日本もいよいよ国をあげてキャッシュレスに本気で取り組むという姿勢が鮮明になりました。
東京がオリンピック誘致活動をしていた時、懸念点の一つとして、「ブランドカードで買い物が出来るお店が限られている」という指摘がオリンピック委員のメンバーから指摘されています。
オリンピックのスポンサーはVISA Worldwideですので、オリンピック会場は基本的にVISAカードしか使えません。そして、ロンドンオリンピックの時と同様に、これを機会にVISAタッチ(Contactless決済)を普及させる戦略です。オリンピックでは、普段日本に来ないような国々の方達も来日します。カード決済は必須となりますので、否応にも、カード決済は注目を浴びることになります。
供給サイドのオーバーでいわゆるFintech1.0の時代に苦労したFintechベンチャーでも、試行錯誤の中で生き残り、一定の存在感を出している企業が出て来ました。
例えば、pringです。pringは、マザーズ上場を果たしたメタップスの子会社だったのですが、メタップスとは一線を画して地味ですが着実に事業を拡げています。B to Bの領域に重点を置いてから強くなった感じがあります。
その他に、Kyashなど、Fintech2.0で花開く可能性が高い企業が生き残っています。
2-1でも説明をしていますが、Fintechサービスには幾つかの前提があります。その一つがスマホです。
例えば、欧州を中心に革命的な銀行として注目を浴びているチャレンジャーバンクは、リアル店舗を持たないだけではなく、スマホのアプリだけですべてが完結するようになっています。
このように、Fintechサービスの浸透にはスマホは必須です。
日本では、いわゆるガラパコス携帯のガラケーが中途半端に使い勝手が良く、スマホへの移行が諸外国に比べて遅れました。
2015年段階で、日本ではガラケー利用率が未だ40%もありましたが、2018年には20%を切りました。これで、スマホを前提にしたFintechサービスを提供することへの障害がなくなったと言えます。
最近になって、日本においても、三井住友銀行や三菱UFJ銀行が口座維持手数料を取ることを決めたり、新生銀行が自社のATMを持たなくなったりしています。
かつては、口座数の数で競い、サービスは横並びが当たり前だった日本の銀行も、全方位戦略は取れなくなってきました。
今後は、一般企業と同様に、戦略を差別化していく中で収益性の低いサービスを廃止することも十分あり得ると思います。このような状況もFintech2.0の追い風となっています。
さて、2020年になって、ようやく足腰がしっかりしたFintechサービスが出てくると予測して、それをFintech2.0と呼んでいるわけですが、どのような企業が有望なのでしょうか?いくつか挙げてみたいと思います。
Fintech2.0で台頭するサービスのキーワードは、「グローバルスタンダード」と「日本の独自性」の2つだと考えています。
先日、約30年ぶりにカードデザインを一新して、話題になったのが三井住友カードです。
元々、日本のクレジットカードは、グローバルスタンダードからはほど遠い、何かと不便な古いシステムでオペレーションされています。海外では、クレジットカードを利用したら即座にSMSで利用通知が届き、使わない時にはカード利用を停止することも可能なアカウントサービスなども浸透しています。
オリンピックスポンサーでもあり、VISAとも深い関係がある三井住友カードが、システムを一新して、一気にグローバルスタンダードなオペレーションを導入しました。カードデザインもエンボスレスとなり、カード番号が裏面に記載されるようになります。
オリンピックということで、VISAとタッグを組んで一気に存在感を上げる戦略だと思われます。
昨年経営統合を発表したヤフー(Zコーポレーション)とLINEですが、どちらのペイメントのシステムが主導するかはまだ見えないところがありますが、いわゆるスーパーアプリと呼ばれる金融サービスアプリとしては、一歩頭が抜けたことは間違いないでしょう。
PayPayとLINE Payでは、使っているシステムが全く違うので、システム統合は難しそうですが、サービスを連携させてそれぞれの強みを生かすことで、日本のニーズに合った、Alipay(アリペイ)やWeChat Payのようなスーパーアプリに成長出来るチャンスは大きいと思われます。
今後は、金融サービスのどこに力を入れていくのか注目をしたいと思います。
昨年10月に、金融機関のマネロン対策の状況を調査するために、金融活動作業部会(FATF)が来日しました。
その前の調査では、先進国の中でマネロン対策が大きく遅れていると指摘をされており、金融庁は銀行やカード会社に対して、厳しい事前指導を行っていました。
その結果、かなりの銀行で海外送金サービスを廃止する、または、マネロン対策を強化する取組みを行っています。
とはいえ、経済活動のグローバル化が進む中で、海外送金サービスの需要は大きくなる一方です。
それは、B to BとC to Cの両方の領域で切実です。金融庁も、資金決済法の改正を視野において、一定の規制の下、今より大きい金額の海外送金サービスを金融機関以外が行うことを許容するスタンスでいます。
従って、イギリスなどの海外プレイヤー(TransferWiseなど)が今後日本で事業拡大をする可能性が高いと思われます。マネロン対策に関しては、日本はそのノウハウが乏しいため、この領域については、海外企業の活躍が想定出来ます。
このように、オリンピックが行われる2020年は、Fintech2.0として将来の日本の金融サービスを劇的に変える可能性のある企業やサービスが生まれ、または、拡充される兆しがあります。
それは、これまでさしたる根拠もなく持て囃されていたQRコード決済のポイントお得感や、割勘アプリのように単独ツールのレベルではなく、私達の生活を一部変えてしまう可能性を秘めているものです。
Fintech2.0が浸透した時、私達の生活がどうなるのか?については、次の記事で詳しく説明したいと思います。