デジタル通貨のメリットは?電子マネーとの違い【2020年版】

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2020年は、遅々として進まなかった日本のキャッシュレスが一気に進んだ1年でもありました。このような形でキャッシュレスが浸透するとは、1年前には想像していなかったことでもあります。

そして、キャッシュレス先進国である中国に関しては、デジタル人民元の運用テストが話題になりました。中国は、来年も引き続きデジタル人民元の発行に向けて着々と準備を進めていくことでしょう。
しかしながら、デジタル通貨については、具体的な活用方法などについての話題がなく、今のところ漠然としたイメージが先行しています。

今回は、デジタル通貨のメリット、デメリットをもう少し踏み込んで、電子マネーとの違いも含めて、わかりやすく解説します、また、Go To トラベルなど具体的な活用方法について考えてみたいと思います。

1.2020年のデジタルを振り返る|2021年は通貨元年となるのか?

日本では、2020年は、キャッシュレス決済が決定的に浸透した1年でもあったと言えます。
では、2021年は、Fintech全般についてどのようなトレンドやサービスが盛り上がるのでしょうか?最近話題になるトピックスから、生体認証決済、デジタルバンクなどと共に、注目度が急上昇しているのが、「デジタル通貨」です。

ここで、「デジタル通貨」とは何か?について、改めて確認をしておきましょう。

「デジタル通貨」とは、デジタル(電子情報)の形で発行される通貨を指します。貨幣や紙幣のように物理的な形で発行されている現金と同じように買い物をしたり、送金したりすることができるものです。
そして、国家が持つ通貨発行権に基づいて発行されるものは法定デジタル通貨と呼ばれ、ドルやユーロなどの法定通貨を保有して、それを裏付けとして民間企業が発行するものは単にデジタル通貨と呼び、両者は区別されています。

なお、一般的に電子マネーと呼ばれているものも、その価値はデジタルの形で記録されているので、広義の意味ではデジタル通貨ですが、デジタルの形で発行されるものではないので、ここでは別の概念のものと考えた方が理解し易いので含まれないものとします。

では、2020年にデジタル通貨に関して、どのようなトピックスがあったのか振り返ってみましょう。

①10月には日銀から、日本においても法定デジタル通貨の具体的な取り組みに着手するという趣旨の報告書が発行されました。

【参照】日本銀行:「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」の公表について
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel201009e.htm/

この報告書では、具体的な発行時期などについては明言していないものの、日本として法定デジタル通貨である中央銀行デジタル通貨の発行を行うための必要なプロセスについて、具体的な構想が記されています。併せて、法定デジタル通貨に求められる必要要素が挙げられています。この必要要素を見ると、電子マネーとは一線を画したものであることが理解出来るはずです。

詳しくは、当サイトで分かり易い説明記事を書いていますので、そちらをご参照ください。

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②中国主要都市におけるデジタル人民元の数回に渡る実用テストの実施

【参照】Reuters:デジタル人民元実証実験、専門家は評価 消費者は冷淡
https://jp.reuters.com/article/china-currency-digital-idJPKBN2750UP

2020年にデジタル通貨の注目度が一気に上がった決定的な要因は、中国全土の主要都市において、法定デジタル通貨であるデジタル人民元の実証実験が相次いで行われたことにあります。2019年までは、法定デジタル通貨の発行に向けて先頭を走っていたのは、eクローネの発行が秒読みに入ったと思われていたスウェーデンでした。そのスウェーデンでは、2020年に入ってからは、法定デジタル通貨の発行に対するトーンが下がっています。

それに代わるように、中国のデジタル人民元が台頭を現してきたのが2020年の最大の特徴です。今年、発行に向けた具体的なプロセスを報告書として発表した日本に対して、中国では2014年からデジタル人民元の発行準備を着手していました。実用化実験まで、実に5年以上の月日を掛けていたのです。この事実から、デジタル通貨の発行が一筋縄ではいかないことが理解出来ると思います。

デジタル人民元については、当サイトの以下の記事をご参照ください。

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③リブラをディエムに名称変更へ、発行裏付け通貨はドル単独に変更

【参照】Yahooニュース:Facebookのリブラ、「ディエム」に名称変更 ── その背景と意図
https://news.yahoo.co.jp/articles/a326c76019ead430edcf042a054e3f6a3c2a4bec

2019年に民間企業として初めて通貨発行権を持つ国家を脅かすほどの存在感を現したのが、Facebookが発表したリブラ構想でした。しかしながら、リブラ構想は、世界中の主要国家から警戒されて、その発行準備が遅れています。

2020年12月には、発行に際して裏付けとなる資産を複数通貨の組み合わせからアメリカドルだけに変更して、名称もディエムへと変更されました。これは、リブラに対して強硬な反対意見を表明したEUに対する配慮と思われます。しかしながら、当面は発行されることがないであろうデジタル米ドルに代わって、ディエムが実用化される可能性は高くなったと言えるでしょう。

④EUがデジタル通貨規制案の具体的な検討に着手

【参照】日本経済新聞:EUがデジタル通貨規制案 事前承認や罰金制導入
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64215040U0A920C2MM8000

ディエムやデジタル人民元の実用化が見えて来た中で、EUは、国家としてデジタル通貨をどのように規制するかについて、世界に先駆けてその具体的な案を提示して検討に入りました。デジタル通貨は、影響力が大きい国家や企業が発行主体者である場合に、その経済圏を構築するであろうことが予測されています。これに対して、EUが国家としてあるべき規制案についてはリードを取ろうとしていることが顕著になっています。

このように、今年はデジタル通貨に対する多種多様な動きに沸いた1年でした。
この流れを受けて、2021年がデジタル通貨元年になる可能性は充分にあると考えます

2.デジタル通貨は電子マネーと何が違うのか?

先に説明をした通り、デジタル通貨は、紙幣や貨幣の代わりにデジタル(電子情報)として発行されるものです。けれども、それだけであれば、クレジットカードやプリペイドカード、アプリ決済のような電子マネーが数多く存在しています。今のところ、中国でのデジタル人民元の実用テストにおいても、既存の電子マネーとの決定的な違いは見出されていません。

では、デジタル通貨は、既存のキャッシュレス決済手段によるキャッシュレスとどこが違うのでしょうか?
この点に関しては、未だに実用化されているものはないので、デジタル通貨に関する多々ある説明から導き出される仮説を整理したいと思います。

2-1.通貨に情報を付けることが出来る

デジタル通貨は、紙幣や貨幣に印刷印字してある通貨として必要な情報以外に、必要に応じて付加することが出来るデータフィールドを持ちます。そして、このデータフィールドの一部はブロックチェーンで管理されるようです。

ブロックチェーンで管理される情報には、取引ログを記録することが出来ます。それは、デジタル通貨が決済や送金で保有者が移っても、通貨そのものに埋め込まれている情報なので、利用者を追ってサーバーまで戻らなくても通貨のデータを読めば、そのログを把握することが出来るということになります。
このような機能は、例えば、送金に伴うマネロン管理や脱税者や違法事業者の摘発などに機能を発揮出来るものと期待できます。

2-2.清算手続きが不要

日常生活においては、恐らく、これが一番重要で便利な特徴だと思います。
キャッシュレス決済を導入すると、小規模店舗等では、資金繰りが悪化すると言われています。これは、キャッシュレス決済で受け取った電子マネーをそのまま仕入の支払いや、従業員の給与として支払いをすることが出来ないからです。
PayPayにしても、クレジットカードにしても、お店で利用されるとそれはお店にとって債権となります。数日後、又は1か月後など一定期間後にお店の銀行口座に入金となります。

それに対して、デジタル通貨は、受け取ったものは通貨なので、そのまま仕入の支払いや給与の支払いに使うことが出来ます
中国の実用テストによると、デジタル通貨専用のWalletがスマホにダウンロードされて、そのWalletでデジタル通貨は管理されます。つまり、このWalletを持っている人や企業であれば、そのデジタル通貨は紙幣や貨幣のように使うことが出来るわけです。

この点が、既存のキャッシュレス決済手段との最大の違いになります。

2-3.通貨データを活用して目的に応じた制約や情報を付けることも可能

この機能は、海外ではクレジットカードやプリペイドカードで運用されているのですが、日本ではほとんど活用事例がありません。
良く使われる制約条件は、大きく利用使途、利用期限及び利用地域です。
これは、一定期間内に一定地域で利用を想定している補助金や助成金などの政府からの給付金への活用が見込まれると思われます。また、受取人以外は外すことが出来ない鍵のような機能を付けることが出来れば、海外送金を安全に行い、かつマネロン対策に活用することも可能だと思われます。

中国では、来年は、このようなデジタル通貨が持つデータフィールドの利用方法について、実用テストが更に進むことが予定されています。

3.デジタル通貨はこんな風に使われる?

前述したデジタル通貨の機能は、具体的にどのように使われるのでしょうか?
最近身近に起こっている問題を使って、デジタル通貨を使うとその問題を回避することが出来ることを分かりやすく説明したいと思います。

3-1.Go Toトラベル

Go Toトラベルについては電子マネーを使った不正が相次ぎました。デジタル通貨では、これは回避できるのでしょうか?

①Go Toトラベルの35%旅行代金補助金

これは、旅行が完了した分の補助金を膨大な事務局費用を使って人を雇用して清算手続きが行われています。もし、デジタル通貨を利用することが出来れば、旅行が予約された段階で補助金相当額のデジタル通貨を宿泊施設や航空会社などに送金しておき、実際に旅行が完了した段階でそのデジタル通貨をアクティベーション出来るような機能があれば、何度も旅行情報をやり取りする必要はなくなり、事務局費用は大幅に削減することが可能だと思われます。

②地域クーポン

こちらは、実際に旅行に行かない人が不正にクーポンを入手しているというのが問題になっています。クーポンについては、実際にチェックインをしないとそのクーポンをアクティベーション出来ないようにデジタル鍵を活用すれば不正利用は防げるのではないでしょうか?

また、そのデジタル通貨に利用可能期限を付けたり、デジタル通貨に旅行者の定性情報(男女別、年齢、住所等)を特定できるIDを付すことも技術的には可能です。このような付加的情報は、クーポンの利用実績を分析するのにも役に立つと思われます。なにより、デジタル通貨なので、どのお店でも利用できるというのが最大の利点です。

3-2.コロナ対策の持続化給付金

こちらも不正受給が問題になっています。デジタル通貨であれば、その利用使途に制限を付けることも技術的には可能です。
アメリカやイギリスでは、既にブランドプリペイドカードに補助金相当額や税金の還付金などをチャージして、そのカードを補助金の受取者に送るという方法が普及しています。その補助金の目的に応じて、例えば、アルコール販売店では使えないようにしたり、カリフォルニア州でしか使えないようにするということは、既に一般的に実施されています。

また、景気刺激策として給付金を支給する場合には、それが貯蓄されてしまうことが必ず問題になりますが、利用期限をデジタル通貨に設定することで、景気刺激策としての実効性を高めることが可能になると思われます。

4.デジタル通貨のメリット&まとめ

デジタル通貨の最大の特徴は、デジタル(電子情報)のデータフィールドを活用して、

  • ①ログを取ることが出来る、
  • ②通貨に一定の制約を課す

ことが出来ることです。
そして、これらのデータフィールドの設定は、その発行者が持つ権限となります。さらに、データの設定内容は紙幣や紙と違い、誰でも確認することが出来ないものでもあります。

ですから、もしそのデジタル通貨が、ある経済圏でかなりの割合を占めるようになると、そのデジタル通貨はその経済圏に対する影響力が巨大になります。ですから、EUなどは、Facebookが提唱したディエム(旧リブラ)の発行には強い懸念を示しているわけです。EUが、域内でのデジタル通貨の発行は許可制にしようとしているのは、そのような懸念があるからだと思われます。

最初に説明をした通り、デジタル通貨については、法定デジタル通貨と民間が発行するデジタル通貨があります。法定デジタル通貨は国家の通貨発行権に基づくものであるので、国際機関やEUであっても制約を課すことは難しいですが、民間のデジタル通貨に対して一定の制約を設けようとしているのは、上述した2つの特徴が大きく影響していると思われます。

今の段階で、デジタル通貨について、付加的なデータフィールドを活用した実用テストは行われていませんが、中国では2021年に実施予定で、日本では、民間企業が参加する実用テストを実施する計画があります。

【参照】読売新聞:「デジタル通貨、30社超が参加し実証実験へ…3メガ銀・JR東・セブン&アイなど」
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20201118-OYT1T50284/

これは、デジタル通貨の本格的な運用に向けた実用テストが2021年以降に行われるということであり、その意味で、2021年はデジタル通貨元年になる可能性が高いと考えているのです。引き続き、デジタル通貨については動向を注視したいと思います。

執筆
荒井 薫(あらい かおる)
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。
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