コロナ禍でキャッシュレスの流れが加速する世界

執筆
荒井薫
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。
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キャッシュレス

先日、久しぶりに駅に行ったら、PASMOのチャージで困っている高齢者の方を見かけて、思わず声を掛けてしまいました。すでに12,000円チャージされているPASMOに、もう1万円チャージしたかったそうです。

「PASMOのチャージ限度額は2万円なので、8千円しかチャージできませんよ」と説明をしたら、「そうだったのですね、知らなかったです。そこの成城石井でお買い物してからチャージします」と話されていました。

そして、スーパーなどでは、高齢者の方がクレジットカードを使うのを見かけるようになりました。今までのキャッシュレスとは違う流れを作ったコロナ禍による新しいキャッシュレスの世界を解説したいと思います。

1.現金は汚い? 現金は汚い!

最後に残った関東圏と北海道も新型コロナによる非常事態宣言が解除されます。けれども、私たちは、心身共に疲弊した自粛生活を、レベル感は変ってもしばらくは続ける必要があります。

さて、そのような「Withコロナ(コロナとの共生生活)」の生活で、今までと確実に変わると思われる価値観があります。
それは、「キャッシュレスの意義」です。コロナ禍によって、多くの人が「現金は汚い!」ということを改めて認識している実態が明らかになっています。

では、実際に現金はどれほど汚いのでしょうか?
これに関しては、実は随分前から研究機関が実証をしています。参考になるニュース記事等を、本記事の最後にリストアップしておきますので、興味のある方はそちらをご覧になってください。ざっくりと結論だけを記しますが、「現金は、手すりや私達の手や指よりも多くの細菌が寄生している」そうです。

ですから、アメリカでは、今年の3月に、世界中から集められてくる古い米ドル札の処理を行う作業に変更を加えたそうです。具体的には、処理の前に10日ほど放置期間を設けたそうです。

世界中を巡る米ドル札は、他の紙幣よりも多種多様な細菌の宝庫となっていることが分かっています。欧州に比較してキャッシュレスの浸透が今一つ遅れていたアメリカも、コロナ禍で、キャッシュレス化のスピードが更にアップすることが予想されます。

1-1.日本でもコロナ禍で再認知された現金の汚さ

日本では、つい最近まで、キャッシュレス決済を利用するのは、「ポイントが付いてお得」であることが大きなインセンティブとなっていました。

けれども、今回のコロナ禍で、長く続いた「ポイントがお得だからキャッシュレス」という思考が一新される可能性が高くなっています。

バンドルカードというユニークなVisaプリペイドカードを発行している株式会社カンムという会社が、タイムリーな調査を行いその結果を広く公表しています。
この調査によると、ほぼすべての人が衛生に関する意識が高まったとする中で、半数以上の人が「お金の取扱いに関する意識が変わった」と回答しているそうです。

具体的に意識が変わったこととして、

  1. 硬貨を触る時
  2. ATMを触る時
  3. 紙幣を触る時

この3つを挙げる人が多い結果となっています。
そして、その対策としては、「手を洗う、消毒をする」が一番に挙げられていますが、2番目に「キャッシュレス決済にする」が挙げられています。

長い間、日本のキャッシュレス決済手段は、ポイント競争の副産物として発展してきました。それがキャッシュレス手段の乱立に繋がり、いかにお得なキャッシュレス決済であるか!を競い合ってきました。しかしながら、コロナ禍は、そのようなポイント競争の存在感を一気に減退させました。それを意識してかどうか、最近では、キャッシュレス決済のインセンティブであるポイントの改悪が続いています。

この5月から、au Pay以外のほぼすべての主要なキャッシュレス決済手段のポイントが改悪されています。

1-2.従来から「現金は汚い」が共通認識だった欧米

欧米に海外旅行に行って、買い物をした時のことを思い起こしてみてください。
日本人は、少額決済だとつい現金を使う癖がついていますが、海外でお釣りを手渡しされたことがありますか?恐らく、欧米でお釣りを手渡しされたことがある人は、ほぼ皆無ではないでしょうか?

欧米では、お金をなるべく長い時間持たないようにする習慣が定着しています。
ですから、レジにトレーがあろうがなかろうが、現金決済の場合には、支払の現金も置くもの、お釣りも置くものであり、手渡しをするという習慣にはなっていません。

EUが共通通貨ユーロを導入した理由は色々多岐に渡りますが、その中の一つに「貨幣と紙幣の発行者の管理コスト」を削減することも大きな理由の一つでした。
この発行者の管理コストの中に、先に述べたように、一定期間使われた紙幣や貨幣を集めて廃棄して新しいものに置き換える作業も入っています。この作業は、危険作業として広く認知をされています。

そして、欧州のスーパーでは、少額貨幣を自動で数えて紙幣に変えてくれる機械が置いてあるところがあります。これも、なるべくお金を何度も長く触らなくて済むようにするようにするためのサービスでもあるそうです。(欧州には、バスカーと呼ばれる路上で芸を披露してチップを貰って生活をする大道芸人が多いからだそうです)

2.どのキャッシュレス手段を使うべきか?

このように、コロナ禍は、私達に「現金は汚い」ということを再認識させたわけですが、今までのようにポイントを貰うことをインセンティブとは考えない場合、どのキャッシュレス決済を使うのが良いのでしょうか?

その判断基準としては、「安心、安全、簡単」がキーワードになると考えています。

① 安心

安心とは、「なるべくどこでも使える決済手段であること(汎用性)」であり、それは、その決済手段の認知度に比例するものとだと考えられます。ご高齢の方が現金の代わりにPASMOを使うことを選択するのは、PASMOが広く認知されている決済手段だからであることが大きな理由であると考えられます。

② 安全

安全とは、「万が一何かあった場合に、スムーズに対応してもらえる決済手段であること」であり、それはその決済手段を発行する企業が信用出来るかも大切ですが、併せて、トラブルがあった場合の対応ルールが明確であることが重要です。

③ 簡単

簡単とは、「その決済手段を使う時、なるべくスムーズに使えること」であり、この意味では現金に勝るものはないわけですが、現金をなるべく使いたくないとなると、セカンドベストを選ぶ必要が出てくることになります。

この3つのポイントを主眼に置いて、自分の生活圏において、どの決済手段の使い勝手が良いのかを考えて決めれば良いことになります。
そして、使い勝手が良い決済の中で、2つくらいに決済手段をまとめると、利用履歴や利用額を確認する際にストレスなく扱えると思います。

交通系ICカード&スマホ決済

このように考えていくと、多くの人が、交通系ICカードを買い物にも積極的に使うようになっているものと思われます。

1つ注意しないといけないのは、交通系ICカードはチャージ限度額が低く、高額決済には向かないということです。
PASMOを例に挙げて、ポイントを簡単に説明したいと思います。

『PASMOのチャージ限度額は、20,000円です。そして、バスなど一部では、残高が10,001円以上の場合には追加チャージが出来ないところがあります。また、クレジットカードと紐づけて利用するオートチャージの場合には、1日にPASMOオートチャージができる限度額は10,000円、1ヶ月の限度額は50,000円となっています。』

現在PASMOにチャージできる場所が多くなっていますので、詳細は、PASMOサイトの「PASMOにチャージする」をご確認下さい。

また、PayPayに代表されるスマホ決済は、クレジットカードと紐づける場合、現金を予めチャージする場合、本人確認をしている場合などケースによって利用限度額が違ってきますので注意が必要です。

このように考えると、持っているのであればクレジットカードやデビットカードが、「簡単と安心」という意味では使い勝手が良いと考えられます。

3.海外での動向

さて、同じコロナ禍にある海外、特に欧米ではどのようになっているのでしょうか?
ここでは、キャッシュレスが全般的に進んでいる欧州の動向を説明したいと思います。

まず、欧州においては、かなり前から、決済をする時に、お客様のカードをお店の人が触ることは厳しく禁止されていました。
ですから、カードであっても、スマホであっても基本は同じで、お買い物の時には、自分で決済端末を操作することになります。

ですから、この「操作」をなるべく「簡単」にすることに注力してきた歴史があります。
そして、その結論が、『タッチ決済』です。

けれども、『タッチ決済』そのものについては、実は日本の方が歴史は長いのです。
それは、世界でいち早く導入された交通系ICカードのSuicaです。
Suicaと同様に、「かざす」だけで決済が出来ることが、「安心、安全、簡単」にキャッシュレス決済をすることであるという認知が欧州では浸透しています。

その結果、コロナ禍に見舞われた最近では、Visaやマスターカードは、Pin番号の入力なしのタッチ決済で決済できる上限金額を上げています。詳細はマスターカードのプレスリリースを見ると、国による違いが詳細に分かりますが、ユーロ圏で従来の2倍の50ユーロ、イギリスでは30ポンドから45ポンドに上げられています。
https://newsroom.mastercard.com/eu/press-releases/mastercard-enables-contactless-limit-raise-across-29-countries-and-champions-permanent-increase/

現在、欧州で発行されているVisaやマスターカードなどのブランドカードには、ほぼ100%タッチ決済機能が付いています。
そして、日本でも、既に導入をしているマクドナルド、ローソンなどに加えて、イオンやセブンイレブンでも導入が決定されています。
(詳細はこちらをご参照ください。https://www.visa.co.jp/pay-with-visa/featured-technologies/contactless.html#4

4.まとめ(キャッシュレス決済加盟店の発想の転換期を迎えた日本)

このように世界でも日本でも、キャッシュレスの浸透が一段と進んでいる状況ですが、実は、日本では、キャッシュレスを積極的に導入しようと舵を取る企業と、足元の資金繰りが厳しいために、お客様に現金決済をお願いしている小規模店舗を中心とした企業とに二極分化しています。その理由として、

  • ①日本は、加盟店への入金が遅い(最大2か月前後)
  • ②決済手数料が高い

の2つが挙げられています。①は、加盟店を管理するアクワイアラーを賢く選択すれば、現在は、早ければ翌営業日や2日後に入金をしてくれるアクワイアラーも沢山あることを調べていない企業の怠慢が指摘できると思います。

②については、コロナ禍のどさくさに紛れてなのか、消費税増税緩和策であるキャッシュレス決済ポイント付与施策の終了が近くなったせいなのか、ポイント付与率を下げる又は無くす決済事業者がここ最近急激に増えているため、ある程度問題が解消するかもしれません。

ポイント還元で1%支払えば、決済手数料が1%高いのはある意味当然であり、日本では3%を超えると言われている決済手数料も2%台に下がる環境が整ってきました。

欧州のように1%台とするためには、複雑な日本独特の決済慣行を改める必要もあります。
そこが一気に進んで、日本もグローバルスタンダードの国に仲間入り出来るかもしれないところまで来ているかもしれません。

そして、キャッシュレスでは、お店では、今まで掛かっていた見えないコストが削減できるメリットも多々あります。
企業が、今回のコロナ禍でそのコストに気が付けば、売上高の1%程度は事実上そのコスト削減で相殺出来ると思われます。

コロナ禍で、大きく流れが変わったキャッシュレスのトレンドに、今度も注目していきたいと思います。

【参考記事、参考ニュース】

執筆
荒井薫
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。
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