Fintechが定着する社会、私たちの生活はどう変わる?

執筆
荒井薫
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。
★ お気に入りに追加
Fintechが定着する社会

前回の記事では、2020年に入って、潜在ニーズを捉えたビジネスモデルが確立するFintech2.0の時代に入ったことを説明しました。
では、そのFintech2.0が日本に定着をした時、私達の生活はどのように変わるのでしょうか?「便利になる!」「ポイント還元で得をする!」という耳に心地良い話が多いですが、実際にはどうなのでしょうか?

今回は、Fintech2.0が定着することことを想定して、多面的に分析をしてみたいと思います。

1.日本はFintechもガラパゴスなのか?

2015年からブームとなったFintechを背景に、Fintechベンチャーや新しいサービスが次々と生まれましたが、日本中に浸透して私たちの生活を劇的に変えたものは残念ながらまだありません。

今のところ、Fintechサービスは未だアーリーアダプターと都市部に限られています。
このまま日本では画期的なFintechサービスは生まれてこないのでしょうか?

一方で、諸外国を見てみると、潜在ニーズを掘り起こしてFintechによる新しいサービスが着実に定着している国が多々あるというのが現状です。
それに対して、日本は、独自の金融サービスの在り方で自己完結している感があり、大半の日本人はその環境に慣れているため、長い習慣を変えるほどの強いインセンティブがなかったと言えると思います。

従って、海外から持ち込まれたFintechのビジネスモデルは、日本においてそのまま通用する余地が極めて小さかったということになると理解できます。
にもかかわらず、多くのFintechベンチャーは、とりあえずニーズの有無は後回しして、供給側の理論をベースに展開したところが多く、結果的に、今までのFintechは空回りしてしまったというのが実情だと思います。

2.主たる国々で定着したFintechサービスについて

「ニーズ又は潜在的ニーズがなければ新しいFintechサービスは定着しない」、それは諸外国を見れば一目瞭然だと思います。海外はニーズ又は潜在ニーズがあるところに画期的なFintechサービスが生まれて定着しています。
では、いくつかの国の状況を見てみたいと思います。

2-1.イギリス

イギリスでは、銀行口座は原則として1人1つしか持てないことから、自分のライフスタイルに合った銀行を選ばないと、頻繁に使うサービスの使い勝手が悪くて何かと不便です。
けれども、銀行がすべてのサービスを均一に提供できるわけではなく、また、人々のライフスタイルも多様化する中で、銀行が相対的に得意としない金融サービスに関しては、Fintech企業に期待する潜在ニーズが大きかったと言えると思います。

そのようなイギリスで、劇的に存在感を示すようになった代表的なサービスとして、銀行より安い手数料で提供される海外送金サービスが挙げられると思います。基本的にアプリやWebで手続きが完了します。

イギリスにおいて、海外送金サービスを手掛けるFintech企業は多数ありますが、ほぼ世界中でサービスを展開していて、日本でも資金決済法に基づく登録を行っているTransferwiseが代表格かと思います。

また、仮想通貨を法定通貨に交換して、そのままブランドプリペイドカードにチャージして決済に使うサービスの多くも、イギリスで生まれています(Cryptopayなど)。
残念ながら、日本で正式に事業を行っている企業は現在はありません。

2-2.エストニア

エストニアは、デジタル国家構想に基づき、金融取引も含めたすべての取引や手続きのデジタル化を国家を上げての使命としています。FintechベンチャーではありませんがSkypeを生んだことを誇りにしている国であり、多くのITベンチャー、Fintechベンチャーが生まれています。

それらのベンチャーを国家として後押しするために、税務体系は極めてシンプルであり、原則として配当を行ったときのみ法人は課税されます。ですから、通常の税務申告は、取引のデジタル化が進んでいて企業は税理士が必要なくなったそうです。

しかしながら、人口が少ないエストニア内で、大きなニーズがあるわけではないので、多くのFintechベンチャーは、海外企業にデジタルバンクのパッケージシステムを提供するというようなビジネスモデルとなっています。

2-3.アメリカ

国土が広く、銀行規制が日本よりも厳しいアメリカでは、金融機関では取り組めない革新的な金融サービスが地域から生まれると共に、金融機関自身がFintechに積極的に取り組んでいるというのが特徴です。

代表的なサービスは、P2Pの送金サービスを行うVenmoです。「Venmo me, please.」という英語が定着しているほどです。

このVenmoに対抗して、多くの金融機関が参加してZelleという銀行口座を使った無料の送金サービスが2017年からスタートしています。
ZelleのVenmoに対する優位性は、銀行自身がサービスを行っているために、送金の着金が早いというところにあります。

日本と違い、健全なスケールメリットがあるマーケットが成立するのがアメリカの特徴と言えます。
Zelleの詳細については、英語版ですがこちらが参加銀行などについても詳しいのでご参照ください。

3.埋もれているはずの日本の潜在ニーズは何か?

日本では、従来、銀行が日本中均一なサービスを展開してきたこともあり、諸外国のように切実な潜在ニーズが見えにくい状況が続いてきました。キャッシュレス化が遅れているという背景もそれに拍車をかけていました。

けれども、昨年くらいから、Fintech企業の試行錯誤と銀行の弱体化という状況の中で、埋もれている潜在ニーズの芽が見えてきました。

3-1.潜在的ニーズとは何か?

Fintechにおける潜在的ニーズには2種類あると思います。

一つは、日本の金融サービスの中で、グローバルスタンダードの視点で、明らかに欠けているものです。

もう一つは、日本人のライフスタイルや置かれている状況から、日本人にとって必要になってきているのに、既存の金融機関では満足なサービスを提供できないものです。

3-2.潜在的ニーズ①(グローバルスタンダードとして必要なもの)

これが典型的と言えると思いますが、日本のクレジットカードは、グローバルスタンダードから見ると、「利用時のSMSが届かない」、「カードを使わない時に利用不可に出来ない」など、かなり不便なものでした。

日本人はそんなものか…と使っていても、VISAやMasterCardなどのカードブランドからすれば、日本だけ利便性の悪いカードを発行し続けるのは困るわけです。

その他にも、金融機関がユーザーに対して行うKYC(本人確認手続き)も、郵便物を使うなど旧態依然とした方法を使っています。
最近になって、アプリやWebだけで完結するe-KYCのシステムが日本でもと導入されています。

e-KYCが浸透すれば、ユーザーは煩雑な手続きから解放されて、またマネロン対策も強化出来ることになります。

3-3.潜在的ニーズ②(日本人が必要なもの)

また、日本人が置かれている環境の変化から重要性が増しているサービスとしては、より安価で客観性がある資産運用サービスが挙げられると思います。
これは、今後日本の銀行の体力が弱くなることで、顕在化してくるものと予測しています。

日本の銀行では、もはや預金は資産運用手段となり得なくなったことが原因の一つです。
そして、従来の金融機関は運用益を上回る手数料を平気で取るような投資信託を売りつけて、利用者の不信感を買っているためでもあります。

3-4.日本で有望なFintechサービスは何か?

このように見てくると、日本における潜在ニーズはおおよそ見えてきたような気がします。
では、ツボを外さなければ、劇的に私たちの生活が変わる可能性があるサービスはどのようなものでしょうか?

①個人送金サービス(P2P)

これは、今は未だ乱立状態のスマホ決済アプリが、スーパー金融アプリに生まれ変わった時に、一気に利便性が増すと思われます。

具体的には、LINE・PayPay連合や、アメリカのZelleのように主要銀行が同一サービスを展開するようなケースが考えられます。シェアリングやC to C取引が盛んになるためには、P2Pの送金サービスは必要不可欠だからです。

②海外送金サービス

金融庁は、資金決済法を改正して、今は100万円までと制限されている資金移動事業者への規制を緩和する方向です。e-KYCをシステムに組み込んだ、より便利な海外送金サービスが日本でも展開される可能性が高いでしょう。

これは、地銀などが海外送金サービスの縮小を相次いで打ち出していることからもわかります。イギリスのTransferwiseなどが日本でのサービスを本格化することも期待できると思います。

③リーズナブルで信頼できる資産運用サービス

老後資金2,000万円問題に端を発して、今、日本人は誰もが資産運用に目を向けています。
しかしながら既存の金融機関は、この分野でユーザー、特に若者の信頼を勝ち取れていません。これはニーズが顕在化しているのに対して、供給が追い付いていない分野です。

日本では未だフィナンシャルセミナーなどに関心が高まる程度ですが、アメリカでは、ミレニアム世代に向けた資産運用を提供するFintechサービスの規模がかなり大きくなっています。
最近話題になっているのは、Wealthfrontというベンチャーです。このようなサービスはアプリで取引が完結します。

必要とする資産運用以外にも口を出してくる既存の金融機関に対して不信感を持っている潜在ニーズは大きいので、日本でも似たようなサービスが提供されると資産運用のシーンは一新される可能性を秘めていると思います。

4.まとめ

Fintechサービスが大きく変わる可能性を秘めている最大の要因は、老後資金2000万円問題に悩む、資産運用を真剣に考えなければならなくなっている日本人のニーズではないかと推測しています。
多くのFintechサービスはスマホで完結することで、リーズナブルなコストでサービスを提供できる可能性が高いです。しかしながらその前提として、日本人が金融リテラシーとスマホリテラシーを上げることが必須になるでしょう。

株式投資や投資信託に対して未だ消極的な日本人は、やはり預金が一番安心出来るというのが実情です。そして、海外では、アプリですべてが完結することで相対的に高い利息が付くチャレンジャーバンクが伸長しています。

日本にもチャレンジャーバンクが生まれて、それは定着するのでしょうか?
最終的に銀行預金が安心出来る日本人には、潜在的にはチャレンジャーバンクと相性が良いようにも感じます。

そうなると、スマホリテラシーが高い若い世代は、チャレンジャーバンクの登場を期待したいところだと思います。

執筆
荒井薫
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。

Ad Exchange

この記事が役に立ったらシェアしてください!