年末調整はなぜ必要? 一から解る簡単解説

この記事では「年末調整って結局何なの」「どうして必要なの」という疑問を解決していきます。

1.年末調整とは?

皆さんは、「年末調整って何?」と聞かれたらどう答えるでしょうか。

毎年うけえていても今いちよくわからないという方も多いかと思います。

Googleで「年末調整」と調べてみると、国税庁の「年末調整がよくわかるページ」というページが出てきます。

さて、年末調整とはいったいなんなのか。上記ページによると……

年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続です。

という説明が出てくるのですが、この説明では正直何を言っているのか分からないと感じる方も多いのではないでしょうか。少なくとも私は初めて読んだときよく意味が解りませんでした。

そこで上記の説明を究極ざっくりした言い方で言い換えると、

年末調整とは税金をなんやかんやする手続きです

となります。

だいぶすっきりしましたが、今度はざっくりしすぎて「年末調整とはなんなのか」という問いの答えには足りません。

なのでもう少しだけ詳しく言い換えると、

年末調整とは、所得税をぴったり払うための手続です

と言えます。

キーワードは「所得税」と「ぴったり払う」です。

この2つのキーワードを理解できれば、年末調整とは何か、何故必要なのか、という疑問もスッキリ解決するはずです。

2.年末調整は所得税に関する手続き

まずは一つ目のキーワード「所得税」について。

先ほど「年末調整とは税金をなんやかんやする手続き」だと言いましたが、日本にはたくさんの種類の税金があります。

  • 日本に住んでいたら払う住民税
  • 車を持っていたら払う自動車税
  • 土地やマイホームを持っていたら払う固定資産税

などなど、いろいろな税がありますが、このうち年末調整に関係するのは所得税です。

所得税というのはざっくり言うと、

日本でお金を稼いだら払わないといけない税金

です。

この「所得税」は、自動車税や固定資産税などと違って、支払金額が印刷された請求書や納付書が家に送られてくることはありません。

それならどうやって払うのかというと、自営業の人たちなら税務署で確定申告をするわけですが、私たち会社員は基本的に確定申告をすることはありませんよね。

どうして確定申告をしなくていいのかというと、私たちのお給料からはあらかじめ所得税が天引きされているからです。会社の経理の人が、私たちのお給料から所得税をあらかじめとりわけて、毎月、私たちの代わりに税務署に払っておいてくれているんですね。これを「源泉徴収」といいます。

3.年末調整は所得税をぴったり払うためにする

続いて二つ目のキーワード、「ぴったり払う」についても見ていきましょう。

先ほど「年末調整とは所得税をぴったり払うための手続き」とお伝えしましたね。

「ぴったり払う」というのは、払い過ぎも払わな過ぎもない、ということです。

例えば飲み会の前にとりあえず一人5000円を幹事に渡してあったとして、最終的なお会計で飲み代が一人3900円だったとなれば、1100円を返してもらわないといけないですよね。逆に飲み代が一人6000円になってしまったら、追加で1000円払わなければいけないはずです。この飲み代と同じことが、所得税にも言えます。

前章で、

  • 私たち会社員の所得税は給料から天引きされている
  • 税金を支払う手続きを会社が代わりにやってくれている

と解説しましたが、実を言うと、毎月の給料から天引きされる所得税の金額は、正確な金額ではありません。「たぶんこのくらいだろうなあ」という概算の金額なんですね。

ですから、源泉徴収だけでは所得税をぴったり払うことはできません。つまり、源泉徴収だけではどうしても、所得税の払い過ぎや払わな過ぎが発生してしまうのです。そして、その帳尻を合わせる手続きが年末調整です。

だから「年末調整とは所得税をぴったり払うための手続き」と言えるのです。

4.源泉徴収だけでは所得税をぴったり払えない

ここまでの解説を聞いて、「だったら最初からぴったりの金額で天引きしてくれればいいのでは?」と思う方もいるでしょう。

ですが、飲み代が飲み会が終わってお会計になるまで確定しないように、所得税の金額も年末になるまで確定しません。

というのも、所得税の金額は、その人が1月1日から12月31日までの1年間で稼いだお金の総額をもとに計算されます。ですから本来、年末になるまで所得税の正確な金額は分からないわけです。

毎月のお給料を払う段階ではまだ、所得税の正確な金額なんてわからないけれど、その人の月収からだいたいの所得税額を予想して、天引きが行われるわけです。

そのためどうしても、源泉徴収だけでぴったりの所得税額を天引きすることはできず、年末調整が必要になるわけです。

こう説明すると、「それなら正確な所得税額がわかってから天引きしたらいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、所得税は年額で十万を超えるような金額です。所得税額が確定したあとにまとめて天引きするとなると、12月や1月のお給料から十数万ガツンと一括で天引きされることになってしまいます。物入りな時期に手取りがそんなに減ってしまったら大変ですよね。

まとめ

最後に、ここまでのお話をまとめます。

年末調整とは簡単に言うと、

所得税をぴったり払うための手続き

です。

逆に言うと、年末調整をしなかったり年末調整でミスをしてしまうと、所得税をぴったり払えないことになります。

税金をぴったり払えないというのはつまり、税金を払いすぎて損をしたり、税金を払わな過ぎて意図せず脱税をしてしまうということ。どちらにしても困りますよね。

払わなくていい税金を払って損をするのも最悪だし、知らないうちに脱税していたなんていうのも最悪です。

もしも年末調整の制度が無かったら、会社員は自分で確定申告をして、年末の物入りな時期に十数万の税金を自分で納めなければいけません。

ということで今回は年末調整とは何なのか、どうして必要なのかについて簡単に解説しました。

年末調整の受け方、書類の書き方については以下の記事をぜひご覧ください。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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