インボイス登録番号検索ツール(逆引き・市区町村対応)【2024年11月4日データ更新】
名称(会社名)から検索(逆引き)、登録番号から検索(順引き)の両方に対応しています。逆引きでは、都道府県・市区町村ま…[続きを読む]
建設業やひとり親方はインボイス制度の影響を大きく受けるものと考えられます。では、具体的にどのような影響があり、それに対してどのように対応すればいいのでしょうか?
この記事では建設業、ひとり親方それぞれについて、インボイス制度の影響とその対策について解説します。
目次
インボイス制度が与える影響について、発注側である建設業者と、受注側であるひとり親方それぞれに考えられるリスクを挙げていきます。
インボイス制度が始まると、消費税の仕入税額控除を受けるためには適格請求書(インボイス)の保存が必須となります。インボイスは課税事業者しか発行することができないため、工事を委託する下請け業者が課税事業者であるかどうかを確認する必要が生じます。
ここで問題となるのが、工事を発注する下請け業者にいわゆる「ひとり親方」が多い建設業者です。
詳細は後述しますが、様々な影響が生じる可能性があります。
工事を受注する側であるひとり親方は、売上が1,000万円以下である「免税事業者」に該当する方が多いと考えられます。
免税事業者のままではインボイスの発行事業者に登録することができず、発注者である建設業者は仕入税額控除を受けることができません。
仕入税額控除を受けることができない建設業者は、ひとり親方に対し、
といった要求を行う可能性があります。
インボイス制度への登録は任意ですので、上記の要求を断ることはもちろん可能です。
ですが、建設業者としては「どうせ発注するならインボイスを発行できる人に頼もう」と考え、取引を停止される恐れがあります。
ひとり親方がインボイス発行事業者でなかった場合、消費税の納税額が大きく増える可能性があります。その場合に考えられる対応は以下の通りです。
それぞれの対応について、注意点を解説します。
まず考えられる方法として、下請けであるひとり親方にインボイス発行事業者に登録するよう促すことが考えられます。下請業者がインボイスを発行してくれれば問題の多くは解決します。
ただし、適格請求書を発行するよう強引に要請することは下請法・独占禁止法に違反する恐れがあります。あまり強硬な態度に出るとそれ以外のリスクが生じることを理解しておきましょう。
下請けのひとり親方がインボイスを発行できない場合、発注元の建設業者の消費税の納税額は増えることになります。その対策として「インボイスを発行できないなら、消費税分を値下げしろ」と交渉することが考えられます。
ただし、下請け業者に対してこのような要求をするのは「消費税の転嫁拒否」に当たり、これも下請法や独占禁止法違反となる可能性があります。この点も頭に入れておきましょう。
下請けであるひとり親方がインボイス発行事業者に登録しないからと言って、強制的に登録させたり、値下げを要求することは問題であると解説しました。
ではどうすればいいのか、ということになりますが、今のまま変わらず取引を続けるというのが現実的な対策かもしれません。
というのも、冒頭で「仕入税額控除を受けるためにはインボイスの保存が必須」と解説しましたが、これには経過措置が設けられています。
インボイスの保存がなくても、2023年10月1日から3年間は80%、その後3年間は50%の仕入税額控除を受けることができます。少なくともインボイス制度開始から3年間は納税額への影響が少なく済むため、その間にひとり親方と交渉を重ねたり、その他の対策を講じるといった対応も考えられます。
ひとり親方がインボイス発行事業者に登録しないのであれば、いっそのこと自社に雇い入れるという方法もあります。
ひとり親方を雇い入れることのメリットは「自社の業務一本に集中してくれる」という点です。
一方でデメリットは「社会保険料の負担が増える」という点です。ひとり親方にとってもメリット・デメリットある話なので独断でできる対策ではないですが、手段の一つとして検討してみても良いでしょう。
なお、ひとり親方の中には、実態としてその建設業者の従業員であるにも関わらず、業務委託契約を締結して個人事業主として活動するいわゆる「偽装ひとり親方」もいます。
外注か給与かは明確な線引きがあり、税務調査でも厳しくチェックされるポイントです。ひとり親方を従業員同様に扱っている場合は否認されるリスクがありますので、この機会に従業員として雇用契約を結ぶことを検討しても良いでしょう。
従来の下請け業者がインボイス制度に登録してくれない場合、それ以外の業者に変更することが考えられます。
新たな下請け先がインボイス発行事業者であれば、消費税関連の問題は解決できます。ただし、新しい業者との取引は価格面や能力等、それ以外のリスクも考慮する必要があります。税務面を考えすぎて本業に支障が出ては元も子もありませんので、下請け業者の変更も慎重に検討する必要があります。
まずはインボイス制度開始前の早い時期から、下請け業者に対して「インボイス発行事業者に登録したか」を確認する必要があります。継続的に取引がある業者については早急に確認を取りましょう。
建設業界では特に小規模な事業者が多く、取引先が免税事業者である可能性も高いです。
もしインボイス発行事業者に登録していないひとり親方がいた場合、上述の対応のいずれかを選択する必要があります。
インボイス発行事業者に登録しているかどうかは、下記のツールでも確認が可能です。
インボイス制度開始後は、請求書への記載事項が追加されます。従来使用していた経理システムがインボイス制度に対応していない場合、システムを新たに導入する必要が生じます。
また、自社で記帳業務を行っている場合、インボイス制度対応の会計ソフトを導入する必要も生じます。この点については顧問税理士に相談することをおすすめします。
建設業者とひとり親方との取引では、慣習として請求書を発行しないケースが存在します。
そのような場合、インボイス制度開始後は「取引の度に必ずインボイスを発行する必要性」を周知する必要があるでしょう。
その際、インボイスの記載事項も併せて説明し、確実に正しいインボイスを発行してもらえるよう備えておくと安心です。
インボイス制度に関して、ひとり親方が取るべき選択肢は大きく分けて以下の2つです。
問題はどちらを選ぶべきなのかという点ですが、それぞれのポイントを解説していきます。
ひとり親方が消費税の課税事業者となってインボイスを発行できるようになれば、問題の多くは片付きます。この場合のデメリットは言うまでもなく、消費税の納税負担が生じるということです。
また、消費税の課税事業者となった場合に、従来の請負価格に消費税を上乗せできるかどうかも確認すべきポイントです。
この辺は発注者との力関係や慣習によりほぼ言い値で請負価格が決まっているケースもあり難しいところですが、同業のひとり親方に相談するなどして今後の対応を検討しましょう。
一方、課税事業者となってインボイスを発行すれば、発注元である建設業者から取引を停止されるリスクからは逃れられます。
取引停止が最大のリスクですので、消費税を負担してでもインボイス発行事業者に登録するのが現実的な対策かもしれません。消費税の負担がどの程度になるか気になるところかと思いますが、その点について以下簡単に説明します。
この期間については「2割特例」という消費税計算の特例が設けられています。インボイス制度を機に課税事業者となった方の多くはこの2割特例を適用できますが、細かい適用条件は国税庁ホームページを参照してください。2割特例の計算式は以下の通りです。
例えば税抜売上高が800万円の場合、消費税額は800万円×10%×20%=16万円ということになります。
2割特例が終了した後は、通常の消費税計算を行います。消費税の計算方法には「原則課税」と「簡易課税」があり、有利な方を選択することができます。ただし、簡易課税を選択する場合には事前に税務署への届出が必要となります。
原則課税の計算式を最大限簡単に示すと、以下の通りとなります。
ここでは課税仕入れの概念には触れませんが、基本的には「仕入や経費支払いの際に支払った消費税額」が控除できると考えてください。
一方、簡易課税の計算式は「材料等を自分で負担する請負」といわゆる「手間請負」によって変わります。
不安な方は上記の計算式で、消費税納税額の目安を把握しておきましょう。
免税事業者のままでいる場合、大きなリスクとして取引先が減ったり、消費税分の報酬の減額等が考えられます。
ただし、経過措置としてインボイス制度開始から3年間は仕入税額控除が8割認められるため、発注者側も許容してくれる可能性がゼロではありません。
また、発注者が消費税の簡易課税を選択している場合もインボイス制度に登録しなくて済む可能性があります。発注者と交渉する際はこの点も含めて相談すると良いでしょう。
なお、以下の場合はひとり親方がインボイス発行事業者に登録する必要性は薄いと言えます。
発注元が売上1,000万円以下の小規模事業者だったり、一般消費者からの受注が多い場合はインボイス制度との関係性は薄いため、課税事業者とならずに済む可能性があります。気になる方はインボイス制度が始まる前に発注元の建設業者に問い合わせてみましょう。
ひとり親方がインボイス発行事業者でなかった場合、消費税の納税額が大きく増える可能性があります。その場合に考えられる対応は以下の通りです。
インボイス制度に対応するには次のような準備が必要です。