消費税申告書の書き方をわかりやすく解説【個人事業主向け・簡易課税版】
インボイス制度の導入で、個人事業主の方でも消費税申告が必要になる方が増えています。初めての消費税申告でも解りやすいよ…[続きを読む]
この記事では、インボイス制度によって確定申告にどのように変わるのか、変更点を解説します。
目次
インボイス制度が確定申告に与える影響は事業者ごとの事情によって異なります。直接的な影響をまったく受けない事業者もいれば、多大な影響を受ける事業者もいます。
多大な影響を受ける事業者、たとえばインボイス制度開始に合わせて適格請求書発行事業者登録番号(以下、「登録番号」といいます)を取得して免税事業者から課税事業者へ転換した事業者の場合、2023年分以降の確定申告では消費税の申告納付を新たに行う必要が生じることから、2022年分以前の確定申告よりも手間がかかります。
インボイス制度による影響は、従来から消費税の課税事業者であった事業者にも及びます。
主な影響は以下の2点です。
なお、登録番号を取得していない課税事業者もいますが、説明を簡単にするため、この記事では登録番号を取得している課税事業者(消費税は原則課税)を前提に解説します。
また、課税事業者の場合、発行した領収書や請求書のうち適格請求書に該当するものの写しについて保存義務が課せられる点も去年からの変更点です。
受け取った領収書や請求書の保存義務は従来からありましたが、インボイス制度によって課税事業者が発行した適格請求書の写しの保存義務が新設されました。
以下、2023年分の確定申告に対する影響について、登録番号を取得して免税事業者から課税事業者へ転換した事業者、免税事業者のままでいる事業者、元から課税事業者であった事業者に分けてそれぞれ解説します。
登録番号を取得して免税事業者から課税事業者へ転換した事業者は、2023年分の確定申告から消費税の申告と納税を行う必要があります。
消費税の申告納付の期限は毎年3月31日までです(振替納税を選択する場合は、概ね納期限の1か月後に指定口座から引き落としされます)。
「消費税の申告」というと非常に手間のかかるイメージがありますが、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者へ転換した事業者が適用を受けることのできる「2割特例」を使えば、複雑な計算を行う必要はありません。
2割特例とは、簡単にいうと「売上げに係る消費税額の80%を仕入れにかかる消費税額とする」という特例です。
たとえば次のような事業者の場合、この事業者の売上に係る消費税額は50万円、仕入れに係る消費税額は40万円(=50万円の80%)となりますから、この事業者が3月31日までに納付すべき消費税額は50万円から40万円を引いた10万円と計算できます。
このように、2割特例においては、売上げに係る消費税額(及び売上に係る対価の返還等の金額)だけ計算すれば、納付すべき消費税額を簡単に計算することが可能です。
消費税の申告書は、所得税の申告書と同じく確定申告書等作成コーナーで作成することができます。
所得税の確定申告書と同じく、案内に従って数字を埋めるだけで申告書が作成される仕組みとなっているため、消費税の申告書を初めて作る方は確定申告書等作成コーナーの利用をおすすめします。
2割特例の適用を受ける事業者が、確定申告書等作成コーナーを利用せず、自力で消費税の申告書を作成する場合は、次の申告書及び付表を作成する必要があります。
申告書及び付表は、付表6で売上げに係る消費税額と仕入れに係る消費税額を計算し、それを第2表へ転記し、それをさらに第1表へ転記する流れで作成するとよいでしょう。具体的な流れは、国税庁が出している2割特例用のパンフレットで詳しく解説されています。
また、消費税申告書の作成方法は以下の記事で詳しく解説しています。
参考:国税庁パンフレット 2割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き
2023年分の申告書を作成するにあたっては、特に次の2点にご注意ください。
とりわけ、2023年分の確定申告においては、2023年1月1日から9月30日までは免税事業者であるにもかかわらずその期間分の金額も含めて申告書に記載するというミスが生じやすいので注意が必要です。
前掲の国税庁パンフレットでは、申告書の書き方を具体的な数値例をもとに説明していますので、このパンフレットを読みながらご自身の申告書を作成することをおすすめします。
免税事業者のままでいる事業者はインボイス制度による影響を受けません。
消費税の申告書の作成は不要ですし、所得税申告書の作り方も従来と同じです。また、消費税の申告を行わないことから、仕入れ先から受領した領収書や請求書が適格請求書の要件を満たすかどうかの確認も不要です。
インボイス制度がもともと課税事業者だった事業者へ及ぼす主要な影響は次の3点です。
1点目について、インボイス制度によって消費税申告書及び付表の様式が変わりました。
付表2-3に、下記2点のの記入欄が追加されたことから、確定申告に向けてはこれらの数字を集計する必要があります。
2点目について、2023年10月以降に行った取引では、登録番号を持たない事業者からの仕入れに関しては仕入税額控除が制限され、制限された分の金額が必要経費算入額もしくは固定資産等の取得価額に算入されることとなりました。
この制限は徐々に大きくなり、2026年9月30日まではインボイス制度開始前の80%、2029年9月30日までは50%しか仕入税額控除を受けることができなくなり、2029年10月1日以降は仕入税額控除できる金額がなくなります。
2023年分の確定申告においては、2023年10月以降に行った取引のうち免税事業者からの仕入れに関して、たとえば請求書等に記載された消費税額の80%を仮払消費税に計上し、残額を必要経費もしくは固定資産等の取得価額に算入するなどといった経理処理を行い、仕入れに係る消費税額を調整する必要があります。
3点目について、適格請求書発行事業者は課税事業者からの要求があったときに適格請求書の発行義務を負い、合わせて発行した適格請求書の保存義務を負います。
領収書や請求書をこれまで発行していなかった事業者であっても、今後(特に確定申告の時期)は適格請求書の発行依頼が取引先から来ることが想定されるため、必要事項を網羅した適格請求書を発行できるような事前準備が必要です。