源泉徴収で乙欄の人は年末調整をしないでいい? 確定申告は必要?
「アルバイト・パートでも年末調整をする」と聞いて、会社に年末調整について確認してみたら「乙欄の人は年末調整をしません」と言われたことありませんか?
この記事では「乙欄って何?」「なぜ乙欄だと年末調整しないの?」という疑問に解りやすくお答えします。
目次
1.源泉徴収の甲欄・乙欄の違い
「甲欄」「乙欄」という用語は、会社が源泉徴収をするうえで必要なものです。
会社員やパート・アルバイトの人たちは、特に知る必要はありませんが、知っておくと、源泉徴収や年末調整の仕組みがもっとよくわかるでしょう。
(1)源泉徴収と年末調整の関係
まずは、簡単に、源泉徴収と年末調整の関係について触れておきます。
源泉徴収とは、毎月の給料から所得税を天引きする制度です(日雇いの場合は、その都度)。ただ、所得税は1年間の収入に対してかかる税金ですので、毎月、天引きされる所得税は仮の金額です。
そこで、年末になると、会社は1年間に払った給料額をもとに、本来の所得税の金額を計算し、今まで天引きした所得税の合計と比較します。
もし、天引きした金額が多ければ差額を返金しますし、天引きした金額が少なすぎれば追加で税金を天引きします。これが年末調整です。
・天引きした金額 > 本来の所得税の金額 → 追加で天引き
(2)甲欄と乙欄の違い
会社がいくら源泉徴収するかは、国税庁が発表している「源泉徴収税額表」を見ればわかります。源泉徴収税額表には、いくつかの表がありますが、通常の毎月の給料で利用するのは、こちらの月額表です(図は令和4年版ですが、令和6年以降も金額は同じです)。
上のほうを見ると「甲」「乙」と書いてありますが、これが「甲欄」「乙欄」のことです。
「甲欄」は扶養親族の人数によって源泉徴収の金額が違います。扶養親族が0人でいなくても、1ヶ月の給料が88,000円未満だと源泉徴収は0円で天引きされません。
一方、「乙欄」の金額は、甲欄に金額に比べると、けっこう高いです。1ヶ月の給料が88,000円未満でも、給料の3.063%が徴収されます。
(正確には、社会保険料を引いた後の金額をもとに計算しますが、乙欄の人は、社会保険に入っていないことが多いですので、今回は省略します。)
乙欄よりも甲欄のほうが有利に見えますね。ただ、この表にあるのは、前もって天引きする仮の所得税です。年末調整や確定申告をすれば、精算して、最終的にはどちらでも同じ所得税になります。
(3)勤務先が1箇所なら甲欄、2箇所以上なら1箇所以外は乙欄
さて、甲欄と乙欄のどちらで天引きされるかですが、簡単な決まりがあります。
会社に「給与所得者の扶養控除等申告書」という書類を提出した人は、「甲欄」を利用して天引きします。
この書類を提出していない人は「乙欄」を利用します。
「給与所得者の扶養控除等申告書」とは、こんな書類です。扶養している家族(配偶者・子供・親など)がいるかどうかを記入するものです。
「それなら、この書類を提出すればいいだけじゃない?」となりますが、扶養控除等申告書を提出できるのは、1箇所の会社だけです。
給料をもらっている勤務先の会社が1箇所だけなら、この書類を提出できますので、甲欄を利用して源泉徴収されます。
でも、給料をもらっている勤務先の会社が2箇所以上ある場合は、この書類を提出できるのは、どこか1箇所の会社のみです。
通常は本業の会社(一番たくさん給料をもらうところ)に提出します。それ以外の、いわゆる副業の会社には、提出できません。
そうすると、本業の会社では甲欄で、副業の会社では乙欄で源泉徴収されます。
2.年末調整するのは甲欄だけ、乙欄は年末調整しない
甲欄と乙欄の違いがわかったところで、本題ですが、年末調整をするのは甲欄の人だけです。乙欄の人は年末調整をしません。
なぜかというと、甲欄の人は、その会社でしか給料をもらっていないので、会社が払った給料で所得税を計算すれば、本来の所得税が計算できます。
でも、乙欄の人は、複数の会社から給料をもらっていますので、全部、合計しないと本来の所得税を計算できません。ただ、年末調整をする時点では、他の会社で年間にいくらもらったかは確定しませんので、所得税を計算できないのです。
それに、働く人からみても、他社でもらっている給料の金額を伝えるのは気がひけると思います。もし、こっそり副業をやっているなら、伝えなくないですよね。
なので、乙欄の人は会社で年末調整をしません。その代わり、翌年3月15日までに自分で確定申告をします。それぞれの会社から「源泉徴収票」が発行され、そこにいくら給料をもらって、いくら所得税を天引きされたか記載されていますので、その情報をもとに確定申告をします。
本業の会社では甲欄で源泉徴収されていて年末調整をしますが、それだけでは所得税は確定しませんので、結局、確定申告をします。
【参考】日雇いバイトは丙欄
日雇いバイトで毎日ごとに給料をもらう場合は、別途、「日額表」という表の「丙欄」を利用して源泉徴収します。
1日の給料が9,300円未満であれば、源泉徴収額は0円ですので、天引きされません。それを超えると、わずかな金額ですが、天引きされます。
丙欄の人も1年中働くわけではないので年末調整をしません。天引きされた所得税を取り戻すには、自分で確定申告をします。
3.扶養控除等申告書は忘れずに提出しよう
「扶養控除等申告書をどこの会社にも提出していない」という人は、おそらく、すべての会社で乙欄で所得税を天引きされています。仮の税金とはいえ、毎月、かなり高い金額が引かれているはずです。
これは大変もったいないですので、どこか1つの会社には、扶養控除等申告書を提出するようにしましょう。そうすれば甲欄に変わりますので、毎月引かれる所得税が少なくなります。
扶養控除等申告書の用紙は会社に連絡すればもらえます。国税庁のHPからもダウンロードできます。
具体的な書き方などは、「給与所得者の扶養控除等申告書の書き方(記入例つき)」をご覧ください。
乙欄は年末調整しないについてのFAQ
乙欄とは何ですか?
源泉徴収の税額表には甲欄と乙欄があります。扶養控除等申告書を提出していれば甲欄で、提出していなければ乙欄で源泉徴収します。
乙欄は甲欄より不利なのですか?
乙欄は甲欄よりも高い金額ですので、給料をもらうとき一時的には多くの税金が引かれてしまいます。しかし、年末調整や確定申告をして年間の所得税を確定させれば、最終的にどちらでも同じ所得税になります。