固定資産税の軽減措置とは?|家を建てる前に知っておきたい3つのルール
この記事では固定資産税が減額される条件、固定資産税の軽減措置についてわかりやすく解説します。[続きを読む]
マンションは、戸建てに比べて立地が良かったり、セキュリティがしっかりしていることもあり、マイホームとして購入される方も多いかと思います。
この記事では、マンションの固定資産税について、計算方法と値段の相場、戸建てとの違いを税理士の杉谷大輔さんに解説していただきます。
目次
固定資産税の税額は、固定資産税評価額に税率を乗じて計算します。
戸建ての場合はその土地及び家屋の固定資産税評価額をそのまま計算に使いますが、マンションの場合は土地も建物も「区分所有」ですから、マンションの土地及び建物の固定資産税評価額のうち、自分が所有する部分の割合を乗じた金額が固定資産税評価額となります。
マンションは建物を買うという意識が強いと思いますが、マンションが建っている土地に対する固定資産税も各所有者が負担することになるので注意が必要です。
マンションの固定資産税の計算方法について、固定資産税納税通知書に同封されている「固定資産税課税明細書」の抜粋を例に紹介します(横浜市のホームページを参考に作成しました)。
まず土地の計算方法から紹介します。固定資産税の計算で使うのは図の②、③、及び④の金額で、算定された固定資産税額が⑤の金額です。
②の金額はマンション全体の土地の価格です。③は固定資産税の課税標準額(税率を乗じる金額)です。②と③で金額が異なるのは、住宅の敷地である土地は固定資産税の課税標準額が6分の1になるためです(③を6倍すると②の金額になります)。
④は③を区分所有割合で按分した金額です。「区分所有割合」は、マンション全体の土地に占める各部屋の所有者が所有する割合で、マンションの購入契約書等に記載されています。そして、⑤は④に固定資産税の税率である1.4%を乗じた金額です。
次に家屋の計算方法を紹介します。固定資産税の計算で使うのは⑥の金額で、算定された固定資産税額が⑦の金額です。
なお、横浜市の場合、家屋については各個人が所有している面積と固定資産税評価額のみが表示されますが、マンション全体の面積と固定資産税評価額が記載されている自治体もあります。
⑥の金額は家屋の専有分にかかる価格及び家屋の課税標準額で、⑦は⑥に固定資産税の税率である1.4%を乗じた金額です。
この計算方法は新築マンションでも中古マンションでも同じですが、新築あるいは築浅のマンションは、固定資産税の軽減を受けることが可能で、この軽減を受けた場合は⑧に軽減税額が表示されます。
出典:横浜市HP
新築マンション(3階建以上の耐火構造または準耐火構造の住宅)の場合、新築されてから5年間は、床面積120平米分までの家屋に対する固定資産税額が半額になるのが原則です(土地にかかる固定資産税額は半額にはなりません)。
ただし、そのマンションが「長期優良住宅」の認定を受けたものである場合は、固定資産税が半額となる期間が2年追加されて7年間となります。
長期優良住宅の認定を受けているマンションは、たとえば三井不動産の「パークタワー東雲」や、東急不動産の「ブランズ麻布狸穴町」があります。購入を検討しているマンションが長期優良住宅の認定を受けているか否かは、マンションのホームページなどで確認することが可能です。
マンションを所有することによってかかる固定資産税額は、通常の規模のマンションであれば概ね毎年10万円から30万円程度と思われます。
いくつか例を出して固定資産税額を確認してみましょう。
たとえば、売値が4,500万円(消費税込み)の新築マンションを考えてみます。
4,500万円の内訳が以下の通りだとしましょう。
土地の固定資産税評価額は実勢価格の7割、建物の固定資産税評価額は建設請負価格の6割だとして、このマンションの固定資産税評価額を計算してみましょう。
この固定資産税評価額を元に固定資産税額を計算すると以下のようになります。
※1.4%……固定資産税の税率
※÷6……住宅用地の特例
さらに、建物分は新築住宅の特例によって固定資産税額が半額となるため、建物分の固定資産税額は126,000円と計算できます。以上より、このマンションの固定資産税額は土地建物合わせて145,600円となります。
売値が6,000万円(消費税込み)の新築マンションについて上記と同じように考えると、固定資産税評価額は土地が1,120万円、建物が2,400万円と計算されますから、固定資産税額は土地が26,100円、建物が336,000円です。
建物について、先ほどと同じく固定資産税額を半額にすると168,000円になるため、このマンションの固定資産税額は土地建物合わせて194,100円と計算できます。
ここまでは、土地と建物(消費税抜き)の割合が概ね1:2.5である新築マンションの固定資産税額を紹介しました。
「建物の固定資産税評価額」が「土地建物の合計額」に占める割合は建物が高層化すればするほど高くなるのが一般的ですから、東京23区のマンションの中には土地と建物の割合が1:10になっているものも存在すると思われます。
たとえば、先ほどと同じく売値が6,000万円(消費税込み)の新築マンションで、その内訳が以下の通りだとした場合の固定資産税額を計算してみます。
まず、このマンションの固定資産税評価額は以下の通りになります。
固定資産税額を計算すると以下の通りです。
先ほどと同じく建物は固定資産税が半額になるので、このマンションの固定資産税相当額は土地建物合わせて218,120円と計算できます。
この試算から、同じ売値6,000万円の新築マンションでも、土地の割合の高いマンションは土地の割合の低いマンションよりも固定資産税額が安いことが分かります(新築時で年間約24,000円の差があります)。
その理由は、全体に占める土地の固定資産税評価額の割合が高ければ高いほど小規模住宅用地の特例(住宅の敷地である土地は固定資産税の課税標準額が6分の1になる特例)の恩恵を受ける金額が増えるためです。
もっとも、建物の固定資産税評価額は経年により減価するのが一般的である一方、土地の固定資産税評価額は経年により減価しないため、長い目で見ると「土地の割合の高いマンションの方が固定資産税額は安い」と一概に言うことはできません。
まず、マンションの固定資産税額が上がる最も大きな原因は、新築住宅の固定資産税額の減額期間の終了です。
新築後5年(長期優良住宅の場合は7年)の間は家屋にかかる固定資産税額が半額となることを知らずに、新築後に初めて送付されてきた固定資産税納付書の金額を見て「毎年これくらいの金額を支払うのね」と思っていると、5年後に送られてくる納付書を見て仰天することになります。
その他、固定資産税額が上がる原因としては以下のものもあげられます。
なお、令和3年度(2021年度)に限っては、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、負担調整措置等によって税額が増加する土地に対して前年度の税額に据え置く(つまり、税額を増加させない)特別な措置が取られます。
マンションの固定資産税額が下がらない原因は、経年による減価よりも建築物価などの上昇幅の方が大きかったことや(この場合、固定資産税額は前年の金額に据え置かれます)、経年減点補正率が限度(20%)に達していることなどがあります。
新築マンションの固定資産税額は新築の戸建てよりも高いのが一般的です。
たとえば、売値6,000万円(土地2,700万円、建物3,000万円、消費税300万円)の戸建ての固定資産税額は170,100円ですから、先ほど計算した新築マンションの固定資産税額(194,100円、218,120円)と比べると、15%から30%ほど安いことが分かります。したがって、短期的に見ると、固定資産税の負担はマンションよりも戸建ての方が少ないと言えます。
もっとも、建物は経年により減価する一方で土地は減価しませんから、3年に一度の評価替えによって固定資産税評価額が減価する金額はマンションの方が多いのが一般的です。したがって、長期的に見ると、「固定資産税の負担はマンションよりも戸建ての方が少ない」とは一概に言えず、どちらの負担額が少ないかはその時々の建築物価の水準や土地価格によって変わると考えられます。
いかがでしたでしょうか。今回はマンションの固定資産税について解説しました。マンション購入などを考えている方、マンションの評価額の見方に疑問を持っていた方などなど、参考になりましたらうれしく思います。