【従業員向け】年末調整の電子化の手順を徹底解説

2020年度(令和2年度)から、年末調整の電子化が始まりました。今までの面倒な書類作成が楽になることが期待されますね。

  • 年末調整の電子化で何がどう変わるのか
  • 電子化の具体的な手順

を従業員向けに徹底解説します。
これを読めば、電子化に対応できるようになるでしょう。

1.年末調整の電子化は2ステップ

一口に「電子化」といいましても、次の2つのステップがあります。

  • STEP1 控除証明書を保険会社等からデータで取得
  • STEP2 控除申告書や控除証明書を勤務先にデータで提出

年末調整 電子化

電子化を行うためには、保険会社や勤務先がそれぞれ電子化に対応している必要があります。

それぞれのステップについて詳しく解説します。

(1)STEP1:控除証明書を保険会社等からデータで取得

生命保険料控除、地震保険料控除等を受けるためには、保険料を支払ったことを証明するための控除証明書が必要です(下にサンプル掲載)。

生命保険料控除証明書

従来は、保険会社等からハガキで控除証明書が自宅に郵送されてきました。
今後は電子化により、データで取得することができるようになります。

データ取得方法にも2種類あります。

  • ①保険会社ホームページのお客様ページからダウンロードする
  • ②マイナポータル連携で一括取得する

①保険会社ホームページのお客様ページからダウンロードする

保険会社のホームページに「お客様ページ」が用意されている場合には、そのサイトにログインして、お客様ページからデータをダウンロード可能です。
具体的な方法は、保険会社にお問い合わせください。

②マイナポータル連携で一括取得する

マイナポータル」というサイトを利用してデータを取得します(マイナポータル連携)。
これに対応している保険会社は、2021年10月時点で20社程度です。国税庁のサイトに掲載されています。

【参照】マイナポータル連携可能な控除証明書等発行主体一覧

さらに、マイナポータルを利用するには、マイナンバーカードが必須です

こちらの方法は、やや難易度が高いですので、後述の「マイナポータル連携で控除証明書を取得する方法」で詳細に解説します。

 

どちらの方法も、現時点では、対応しているのは一部の保険会社のみです。
対応しているかどうかわからない場合には、ご自身が加入している保険会社等にお問い合わせください。

(2)STEP2:申告書や控除証明書を勤務先にデータで提出

年末調整で提出必要な書類は下記の2種類です。

  • 控除申告書(全員が提出)
  • 控除証明書(保険料控除を受ける場合に提出)

下図は保険料控除申告書のフォーマットです。

保険料控除申告書 令和3年度

従来、年末調整の時期になると、勤務先から控除申告書が配布されますので、その書類に記入して、控除証明書を添付して勤務先に提出していました。
電子化により、控除申告書と控除証明書をデータで提出できるようになります。

後述の「年調ソフトで年末調整提出用データを作成する方法」で、利用方法を詳細に解説します。

ただし、勤務先の給与システムが、このデータに対応している場合のみ利用可能です。
2021年10月時点では、対応している企業はまだ少ないのではないかと思われます。

電子化による年末調整書類の提出を希望の方は、まずは、勤務先にお問い合わせください。

(3)どちらか片方だけでも可能

ご説明したとおり、年末調整の電子化は、2STEPに分かれていますが、どちらか片方だけでも可能です。

たとえば、保険会社は対応していないが勤務先は対応している場合には、控除証明書がハガキ等で郵送されてきますので、そのまま勤務先に提出します。申告書はデータで提出します(下記②のパターン)。

逆に、保険会社は対応しているが勤務先は対応していない場合には、控除証明書をデータで取得しますが、勤務先には「QRコード付き証明書」(後述)を作成して紙で提出します。また、申告書は従来どおり紙で提出します(下記③のパターン)。

以上をまとめると、年末調整のデータ取得・提出には4パターンあることになります。

取得 提出 利用ソフト・システム等
控除証明書 控除証明書 控除申告書
データ データ データ マイナポータル
年調ソフト
書面 書面 データ 年調ソフト
データ 書面(※) 書面 マイナポータル
QRコード付証明書作成システム
書面 書面 書面 なし

※QRコード付き証明書

電子化している箇所・されていない箇所が入り混じり、ややこしくなっています。

(4)クラウド給与システムを利用している場合

勤務先が、人事労務freee、MFクラウド給与等のクラウド給与システムを導入している場合、申告書の提出は紙ではなくインターネット(WEB)上で行っていることと思います。

これは、今回、国税庁が実施する年末調整の電子化とは異なりますが、ある意味、すでに部分的に電子化がされていることになります。

この場合は、申告書はWEB上で提出しますが、控除証明書の提出は、紙またはデータの両パターンがあります。勤務先の指示に従ってください。

2.マイナポータル連携で控除証明書を取得する方法

控除証明書をデータで取得する方法として、

  • 保険会社等のサイトからダウンロードする
  • マイナポータル連携で取得する

の2種類がありますが、ここでは、後者の「マイナポータル連携でデータを取得する」方法について解説します。

(1)準備するもの

マイナポータル連携にあたって必要になるものは、次の3つです。

  • ①マイナンバーカード
  • ②パソコン+ICカードリーダライタ、または、スマートフォン
  • ③生命保険などの証券番号の分かるもの

①マイナンバーカード

マイナポータル」を利用するためには、マイナンバーカードに搭載されている利用者証明用電子証明書(ICチップ)が必要です。

②ICカードリーダライタまたはスマートフォン

マイナンバーカードの情報を読み取るために、パソコン+ICカードリーダライタ、または、対応するスマートフォンが必要になります。

パソコンはWindows, MacどちらでもOKです。

対応するスマートフォンの機種は次のURLで確認することができます(Android端末とiPhone端末どちらとも対応)。
iPadおよびApple Watchは利用できません。

【参照】マイナンバーカードに対応したNFCスマートフォン一覧

③生命保険などの証券番号の分かるもの

マイナポータル連携には生命保険などの証券番号が必要です。契約書など証券番号が分かるものを準備しましょう。

(2)マイナポータル連携の方法

①マイナポータルAPのインストール

マイナポータル」にアクセスします。

初めて利用するときは、ログインしようとするとポップアップ画面が表示されますので、案内に従って、「マイナポータルAP」と呼ばれるソフトをインストールします。

②民間送達サービスの開設

マイナンバーカードを利用してマイナポータルにログインします。

「もっとつながる」メニューから民間送達サービス(民間企業からお知らせやデータを受け取る機能)の開設を行います。

民間送達サービス機能には「MyPost」と「e-私書箱」の2種類がありますが、現在、控除証明書の受け取りで対応しているのは、「e-私書箱」のほうです。

「e-私書箱」の「つなぐ」ボタンを押すと、「e-私書箱」のサイトに飛びます。案内に従って、マイナンバーカード登録を行います。

【外部リンク】マイナポータルサービストップ

③保険会社と民間送達サービスの紐づけ

「e-私書箱」のメニューに表示されている、それぞれの保険会社のリンクから、それぞれの保険会社のサイト等に飛び、加入している保険情報とマイナポータルの民間送達サービスを紐づけます。

保険会社によって方法が異なりますので、それぞれの保険会社等にお問い合わせください。

保険会社へは、マイナンバーカードの電子証明書を登録するだけで、マイナンバーカード情報を提供するわけではありません。
一度、設定を行った保険会社については翌年以降の作業は必要ありません。

詳細手順を画面つきで解説

ここまでの、マイナポータル連携について、以下の記事で、実際に連携を行った時の画面つきで、詳細手順を解説しています。

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3.年調ソフトで年調調整提出用データを作成する方法

年末調整に必要なデータを、専用ソフトで作成する方法を解説します。

年末調整ソフト 年調ソフト

なお、企業によっては、独自のソフトを利用することもありますので、その場合は会社の指示に従ってください。

(1)準備するもの

パソコンまたはスマートフォン

パソコンまたはスマートフォンがあれば、利用できます。

通常は会社で作成しますので、Windowsパソコンを利用することが多いでしょう。Windows 10以降対応です。

(2)年調ソフトでの入力

①年調ソフトのダウンロードとインストール

国税庁のホームページから「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」をダウンロードします。Windows版、Mac版、Android版、iOS版があります。

Windowsの場合、ダウンロードしたZIPファイルを解凍しインストールします。

②基本項目を入力

氏名・住所・家族構成などの個人情報を入力します。
会社の情報も入力しますが、会社から電子ファイルでもらっている場合には、「給与支払者の情報のインポート」を行います。

保険会社等から控除証明書を電子ファイルでダウンロードしている場合には、控除証明書のインポート処理を行います。
マイナポータル連携を行っている場合は、ここでマイナポータルから直接連携も可能です。

③年末調整関連書類データの作成

各種申告書の記載事項を入力していきます。入力の順番は、次の通りです。

  1. 扶養控除等(異動)申告書(当年分)
  2. 扶養控除等(異動)申告書(翌年分)
  3. 基礎控除申告書
  4. 配偶者控除等申告書
  5. 所得金額調整控除申告書
  6. 保険料控除申告書
  7. 住宅借入金等特別控除申告書

④提出データの作成、提出

提出用のデータ(zipファイル)を作成し、電子署名またはパスワードを付けて勤務先にデータで提出します。

保険会社より控除証明書を紙でもらっている場合には、紙の控除証明書を勤務先に提出します。

詳細手順を画面つきで解説

ここまでの、年調ソフトのインストールと利用方法について、以下の記事で、実際に入力を行った時の画面つきで、詳細手順を解説しています。

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4.QRコード付き証明書を作成する方法

控除証明書をデータで取得したが、勤務先が対応していないので書面で提出する場合、国税庁の「QRコード付証明書システム」を利用して、QRコードが付いた証明書を作成・印刷して提出します。

【参照】国税庁:QRコード付証明書等作成システムについて

作成する方法を簡単に解説します。

(1)準備するもの

会社で作成するのであれば、どちらも揃っていることがほとんどでしょう。

パソコン

Windows 8.1、Windows 10、または、Mac OS 10.12以降のパソコンを利用します。

プリンタ

A4サイズ用紙に印刷可能なプリンタを用意します。

(2)QRコード付証明書の作成

①事前準備セットアップ(ソフトのインストール)

国税庁のホームページから「事前準備セットアップ」をクリックし、ソフトをダウンロードします。Windows版、Mac版があります。

Windowsの場合、ダウンロードしたEXEファイルをクリックしインストールします。

②証明書の読み込み

QRコード付証明書システム」にアクセスします。
保険会社等から入手した証明書データ(XMLファイル)を読み込みます。必要な分だけ読み込みます。

③証明書の印刷

PDFファイルを作成し、印刷します。
QRコードが欠けていないことを確認します。

5.年末調整電子化の確認ポイントまとめ

以上、年末調整の電子化について、従業員が行う作業内容を解説してきましたが、ある程度、複雑ですの、特に重要な確認ポイントをまとめておきます。

STEP1 控除証明書のデータを取得

電子データを配布している保険会社のみ可能です。次の2つの方法があります。

  • ①保険会社ホームページのお客様ページからダウンロードする
  • ②マイナポータル連携で一括取得する

保険会社ホームページからダウンロードする方法は、ログインID・パスワードがあれば簡単に可能です。

マイナポータル連携で一括取得する方法は、マイナンバーカードを用意し、マイナポータル連携を行うという、やや複雑な手順になります。

STEP2 控除申告書をデータで作成・提出

勤務先が電子データに対応している場合のみ可能です。
国税庁ホームページより年末調整ソフトをダウンロードして利用します。

下記の点をあらかじめ勤務先に確認しておくと良いでしょう。

  • 勤務先(給与支払者)の情報
  • マイナンバー記入は必要か?
  • 出力ファイルは、電子署名付与かパスワード付きのどちらか?
  • ファイルの提出方法
服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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