【従業員向け】年末調整の電子化の手順を徹底解説
2020年度(令和2年度)から、年末調整の電子化が始まりました。今までの面倒な書類作成が楽になることが期待されますね…[続きを読む]
年末の忙しい時期に行われる「年末調整」。
従業員は必要書類を用意し記入、会社側は数値の入力やチェックなど非常に大変な作業です。
そんな年末調整ですが、2020年分(令和2年分)の年末調整からマイナンバーを利用した電子化により、今までの手続きをネット上で完了させることができるようになりました。
これにより従業員と会社の両者の負担が大幅に減るというのが大きなメリットです。
2021年分(令和3年分)からは、紙の書類でも押印が不要になり、電子化が一歩ずつ近づいてきています。
この記事では、マイナンバーを利用した年末調整の電子化について、以下の疑問点を解決します。
目次
電子化した年末調整とはどのようなものでしょうか。
まずは、国税庁が発表している‟マイナンバーを活用した年末調整の電子化のイメージ図”を使い、大体の流れをご紹介します。
まず、従業員は各種控除証明書等をマイナポータルを使ってデータで取得します。
その後、取得したデータを国税庁および民間が提供する年末調整用のソフト(年調ソフト)を使って控除申告書に入力し、会社に提出します。
勤務先(会社)は、提出されたデータをチェックするだけで済みます。
詳しい流れは「年末調整はどう変わる?今までとの比較」で解説しています。
従業員は、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」というサービスを通して年末調整に必要な生命保険料などの控除証明書、住宅ローンの残高証明書をデータで取得できます。
従来は書類で受け取っていたものですが、電子化によってデータを活用できることになります。
「年調ソフト」は「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」の略です。
年調ソフトを使えば、データで取得した控除証明書等を利用し、年末調整の必要書類を簡単に作成することができます。
年調ソフトは10月に国税庁や民間会社からリリース予定です。
マイナポータルについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
これまでは、従業員が生命保険料控除や住宅ローン控除などを受けるためには以下のようなステップが必要でした。
「手作業で記入」、「書類のチェック」など従業員と会社の両方に負担がかかることがわかります。
年末調整の電子化によって、従来の手続きよりも簡単に年末調整ができるようになります。次の4つのステップで年末調整が完了することになります。
提出書類の作成や会社側のチェックなどがネット上で行えるため、従業員と勤務先の両方にメリットがあります。
具体的なメリットは次の章で説明します。
マイナンバーを利用して年末調整を電子化することで、年末調整の対象になる従業員、年末調整を行う会社の双方にとって大きなメリットが生まれます。
従来は、会社から配布される「扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」に手書きで記入・押印し会社に提出しなければなりませんでした。
電子化することにより「年調ソフト」に入力し、データを会社に送るだけになります。
申告書に手書きで記入する必要も、給与担当者に直接申告書を提出する必要もありません。
記入ミスがあっても再度書類を提出する必要はなくなり、非常に便利です。
また、年調ソフトはスマートフォンのアプリにも対応予定ですので、手軽に年末調整のデータを作成することができます。
年調ソフトで作成したデータで翌年も変わらないものは、翌年以降も利用可能です。
扶養家族等に変更がなければ再度データを入力する必要はありません。
従来の年末調整では、
「生命保険料の控除証明書を紛失して生命保険料控除が受けられなかった」
「再発行に時間がかかるため確定申告をして下さいと会社から言われた」
など控除証明書の紛失による問題はたびたび起こっていました。
電子化することで、従業員へ控除証明書がデータで届くため紛失の心配がなくなります。
年末調整の電子化では、従業員がパソコンやスマートフォンを利用してデータを作成しなければなりません。
そのため、インターネット環境が整っていない場合や、デジタル機器の取扱いが得意ではない場合は、電子データを作成することが困難です。
年末調整のやり方が全く新しくなるため、従業員も制度を理解する必要があります。
従業員から年末調整関連の書類をデータで受け取ることができます。
年末調整の電子化に対応したソフトを導入している場合は、そのままデータを取り込むことができます。
直接データを取り込むことで、従来よく起こっていた入力ミスなどの問題が発生しません。
今までは添付された控除証明書等を確認し、間違いがあれば従業員に問い合わせる必要がありました。
電子化により控除証明書が給与ソフトと連動するため書類を確認する手間が省けます。
また書類の場合フォーマットがバラバラでしたが、データではフォーマットが統一されわかりやすいです。
年末調整関連書類の電子化により、紙の書類を取扱う必要がなくなります。
そのため、書類を保管する場所は必要ありません。
年末調整の電子化は、従業員がインターネットを通じて行う作業が多くあります。そのため、インターネット環境がない従業員や、デジタル関係に強くない従業員へのフォローが必要になります。
年末調整のデータは重要な個人情報のため、セキュリティの強化を行い、情報漏えいについて十分気をつける必要があります。
年末調整の電子化には、新たに給与システムの改修が必要になります。導入にあたってはシステム改修費用が発生する場合があります。
従業員側で準備が必要なものと、実際の年末調整の方法については、下記の記事に移動しましたので、こちらをご覧ください。
会社では、従業員が作成した年末調整関連書類データを受け入れるための準備が必要になります。
従業員が年調ソフトで作成した年末調整関連書類データの取り込みを行い、自動チェック、所得税の年税額を計算する機能が必要になります。
団体(扱)保険に加入している場合などは「従業員が入力する画面に団体(扱)保険料データを表示する機能」などを追加で改修する必要があります。
2021年3月までは、従業員が年調ソフトを利用して作成したデータを会社で受け取るためには、あらかじめ所轄の税務署へ「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出する必要がありました。
しかし、2021年4月からは、この書類の提出が不要になりました。
マイナンバー利用の年末調整の電子化は従業員が準備、設定する項目が多くあります。従業員の中にはマイナンバーカードを持っていない人もいるため、早めから年末調整の電子化を周知徹底する必要があります。
目安としては、年末調整を行う2ヵ月前までにマイナポータル連携方法や年調ソフトの導入方法などを従業員へ周知しましょう。