【国際比較】コロナ禍に対応する大学生緊急支援策

学生支援

緊急事態宣言は解除したものの、セカンドウエーブが来るかもしれない緊張感が漂っています。今回の新型コロナウイルスの影響で社会全体かなり大きいインパクトを受けましたが、勉学に集中できる環境にいるべき学生も、経済的困難に直面せざるを得なくなってしまいました。

この中、政府や大学も様々な支援を実施してきました。大学は独自に学生に5万円の現金給付をしたり、Wi-Fiルーターの貸し出しをしたり、オンライン授業に対応したりしました。政府も、「「学びの継続」のための学生支援緊急給付金」を閣議決定しました。

ここでは、アメリカ、ドイツ、中国及びスウェーデンにおける学生支援緊急政策をあげて、比較してみたいと思います。最後に、日本の緊急支援策をもまとめてあります。

1. 日本の学生支援緊急給付金の対象と要件

 

「学生支援緊急給付金」の対象について、文部科学省が明示しているものは以下になります:

  • 家庭から多額の仕送りを受けていない
  • 原則として自宅外で生活をしている(自宅性も可)
  • 生活費・学費に占めるアルバイト収入の割合が高い
  • 家庭の収入減少などにより、家庭からの追加的給付が期待できない
  • アルバイト収入が大幅に減少していること
  • 既存の支援制度と連携を図っていること

しかし、申請できるかどうかは、あいまいな基準が設けられています。

Q&Aには、実際の審査に際しては、学生へのヒアリングなどを通じ、大学側が学生などの実情に寄り添った形で総合的に判断」するとされています。(なので、自分が対象に入るか迷った場合は、諦めず、まず大学に自分の状況を伝えてみましょう!)

そもそも、日本の大学生は、人によって様々な事情を持っています。大学に入ってから、自分で家賃を負担している人、バイトで学費を稼いでいる人、自宅生ではあるが学習費などは仕送りとバイトで自己管理している人等、家庭の収入減が突然絶えてしまった場合困る学生が多く生じるのが事実です。この状況は、留学生も同じです。

そこで、国民を安心させるためにも、学生支援緊急給付金はとても必要性があるものだと言っていいでしょう。そしてその基準も決して一概には決められないのです。

2. 各国の学生支援事情

それでは、他国においては、この状況はどうなるのでしょうか。ヨーロッパでは学費がそもそもかからない大学が多いですし、一方でアメリカでは学生ローンをほとんどの人が背負っています。同年代の学生達がどんな生活をしているのか、少し覗いてみましょう

2-1.アメリカ

アメリカは、学生ローンの利用率も利用総額も非常に高い国です。連邦準備委員会による消費者信用報告書によれば、現在4400万人を超えるアメリカ人が総額15600億ドル(約170兆円)(一人当たり400万!)を借りているようです。

今回の学生支援も、もちろん学生ローンの負担を考慮して、学生ローンの返済猶予が考えられています。

特に収入に困っている学生には、大学の審査によって各学生に事情によって受けられる支援金が設けられています(CARES act, emergency federal aid)これはほとんど日本の学生支援緊急給付金と同じ仕組みです。

2-2.ドイツ

ドイツは大学の学費は無料だとよく言われますが、それは公立の場合であって、私立だと一年で40万~120万と日本より高い場合もあります。一方、生活費や滞在費で平均10万円とも言われています。このように、学生の負担もけっして軽くないのです。

また、ドイツの大学は、「卒業が難しい」のが有名で、学校の授業一コマに百時間の勉強時間が推奨されているみたいです。就職するのであれば、ドイツの学生はかなり本格的な長期有給インターンシップに参加するのが基本になっています。

新型コロナウイルスの影響で、インターンシップに参加できず収入が得られなかった学生もたくさんいます。そのために、連邦教育研究省は,ドイツ復興金融公庫(KfW)と連携し,パンデミックのため職を失った学生(ドイツ国内の大学に通う1844歳までの学生)のための,650ユーロを上限とした無利子融資を提供しています。これは、留学生も申請が可能です。

2-3.中国

中国の大学は日本と比べても、学費や生活費がはるかに安いです。国立、公立大学が多く、学費が年に8~10万円程度、学校が提供する寮は学校に近く宿泊料もほとんどの大学寮は年に2万円で格安です(四人部屋が基本)。

また、もしバイトするとしても、収入は、家庭教師ですと1時間1000円~3000円になりますが、それ以外1時間300円前後と、自立できる程度にはなりません。なので、学生のほとんどは家庭の経済状況がよほど難しくない限り、バイトせずに学業に集中します。そのため、学生への支援対策はほとんどされていません。

2-4.スウェーデン

スウェーデンは、ドイツが公立のみ学費ゼロなのと違って、公立も私立も大学の学費がかかりません。その上に、家庭の経済状況によって平時から補助金が与えられるので、学生の経済状況はとくに大きなコロナの影響は得てないようです。

それでも、今回のコロナに影響された学生のために、学生支援給付金や学生ローンが簡単に申請できるようになっています。スウェーデンでは(ヨーロッパ全体の傾向でもありますが)、学業といっても三週間以上のコースだけでも、学生支援金を得ることができます。すでに貯金がある人や、他の仕事もしていて安定な収入がある人も、条件を満たしたらローンを組むことができます。

学業以外に、学生のスタートアップファンドを組んだ学生については、今回の新型コロナウイルスの影響で返済が難しくなった場合に対応して、返済猶予申請などの政策が積極的に取られています。

3.日本の学生支援策概要

中国やスウェーデンなど、学生の負担がもともと高くない国は、学生支援策も成立されていなく、学生の負担が非常に高いアメリカなどは、学生の退学を防ぐ為に、様々な対策が打たれていることがわかります。

日本の学生は、学費がそれなりにかかり、且つ、その一部を親が負担し、さらに在学中に自分でバイトをして生活費・学費を稼ぐ人が多いです。だから、親の仕事や自分のバイトの収入減で、退学や生活困難に陥る可能性があり、それを防ぐ支援策が用意されています。

学生支援緊急給付金

経済的に困窮している学生を救済するために、政府は、519日、学生に最大20万円を給付することを決定しました。いろいろと要件がありますが、最終的には「審査する学校が、経済的理由により修学の継続が困難であると認める者」が対象になるので、要件を厳格に満たさなくても、各自の事情を総合的に見て判断されるので、一度大学に連絡してお問合せするのがおススメです。

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各大学では、できるだけ学生がコロナの影響で経済的に困ったり、退学などしないように、ネット環境整備のための給付金や、緊急の奨学金の新設など様々な対策を打っています。

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ローン

教育ローンには日本政策金融公庫が運営する「国の教育ローン」というものから、銀行などが運営する教育ローンまで様々なものがあります。必要な額や使用用途の条件、借り入れの際の利率などに着目して決定するとよいでしょう。

奨学金

日本学生支援機構奨学金と民間の奨学金があります。給与型と貸与型があるので、自身の状況に応じて無理なく申請してみましょう。

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服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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