【2024年版】出生数の推移と予測、70万人割れ決定
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ここ最近、出生数が急激に減少しており、政府による最小の予測を下回るものとなっています。2024年の出生数の70万人割れは決定となりました。
もし、現在の少子化の勢いが止まらないと、将来の出生数はどうなるのか、独自で検証してみました。
目次
1.【2024年12月】出生数の状況
厚生労働省が発表した人口動態統計速報(2024年12月)によると、2024年12月の出生数は59,411人であり、2023年11月の出生数61,745人と比較して3.8%減少となりました(速報値は外国人を含む)。
2024年1月から12月まで(2024年の1年間)の累計では720,988人であり、前年同期間758,631人の累計と比較して、5.0%の減少です。
【参照】厚生労働省:人口動態調査
単月 | 2024年12月 59,411人 |
2024年12月 61,745人 |
▲3.8% |
---|---|---|---|
12月までの累計 | 2024年1月~12月 720,988人 |
2023年1月~12月 758,631人 |
▲5.0% |
過去1年間 | 同上 | 同上 | 同上 |
出生数の減少率は5~6%程度であり、少子化の勢いは止まるどころかさらに勢いづいていることがわかります。
なお、ここにあげた数値は速報値であり外国人を含んでいます。
2023年の場合、外国人を含んだ速報値は758,631人でしたが、日本人だけの確定値は727,277人でしたので、速報値に占める日本人の割合は約95.9%です。
これを2024年に当てはめると、2024年の1年間の出生数の予測は約69.1万人であり、日本人だけの出生数の70万人割れは決定となりました。
2.出生数の推移と予測(1980年~2070年)
過去の出生数の推移と将来の予測をグラフにしました(クリックで拡大できます)。
1980年~2023年までが実績値です。2024年~2070年までが予測値です。
赤い線が独自予測の値、それ以外が政府(国立社会保障・人口問題研究所)が予測した値(2023年予測)です。
政府の予測では、出生数が高位、中位、低位の3パターンがあります。
【参照】国立社会保障・人口問題研究所:日本の将来推計人口(令和5年推計)
独自予測では、2024年12月時点の過去1年間の出生数減少率5.0%を、将来の全期間にあてはめることで予測しました。
(正しい予測ではなく簡易的な予測です。)
政府(国立社会保障・人口問題研究所)の予測と比べると、圧倒的に速いスピードで出生数が減少することがわかります。
3.出生数60万人割れ、50万人割れ、40万人割れはいつ?
独自予測では、出生数60万人割れは2027年、50万人割れは2031年、40万人割れは2035年です。
独自予測および政府の予測を表にしておきます。
独自予測 | 政府予測 | |||
---|---|---|---|---|
高位 | 中位 | 低位 | ||
70万人割れ | 2024年 | 2075年 | 2043年 | 2023年 |
60万人割れ | 2027年 | 2101年 | 2052年 | 2040年 |
50万人割れ | 2031年 | - | 2070年 | 2050年 |
40万人割れ | 2035年 | - | 2086年 | 2059年 |
30万人割れ | 2041年 | - | 2112年 | 2079年 |
20万人割れ | 2049年 | - | - | 2100年 |
10万人割れ | 2062年 | - | - |
独自予測は正確な予測ではなく、現在の少子化のトレンドを将来の全期間にわたって適用しただけですので、40万人割れ以降は、あくまでも参考としてとらえてください。
4.政府の予測が実績とあまりにも乖離しすぎている
独自予測の値は厳しすぎるかもしれませんが、一方で、政府の予測は実績とあまりにも乖離しすぎています。
高位、中位の予測は論外ですし、低位の予測でさえ、「70万人割れ:2023年」が現実的であったのみで、「60万人割れ:2040年」や「50万人割れ:2050年」は、現在のトレンドと大きく外れています。
再度グラフをあげておきますが、政府予測値が最も不可解なのは、2024年にいったん出生数が回復することを前提としており、その後も、緩やかに減少していくことです。図では、短期間ですが、V字回復しています。
出生数の減少が大きくなり始めたのは2016年からで、その傾向は止まらずずっと続いています。「出生数の減少は新型コロナウィルス感染症が原因だから、感染が止めば出生数の減少は止まる」とも言われていましたが、実は、新型コロナウイルス感染症の以前から急激な少子化は始まっていたのです。
この傾向が、2024年に突然逆転して出生数が回復する、とは誰も考え難いでしょう。現在の社会情勢から考えても、出生数が回復する要因はまったく見えません。
にもかかわらず、政府はなぜこんな予測をしているのか非常に疑問といえます。
5.間違った予測は、将来の日本に甚大な影響を及ぼす
出生数予測が間違っているだけであれば、そこまで大きな影響ではないでしょう。「すいません、予測が的中しませんでした」と言って、弁解すれば済む話です。
しかし、問題点は、この出生数の予測をもとにして、将来の人口予測が作られ、さらに、政治・経済・環境などあらゆる分野での政策や予測に利用されていることです。
大元の出生数の予測が大幅に間違っていたら大変なことになります。
6.年金財政に甚大な影響
2024年、年金の財政検証が行われました。出生数、死亡者数、経済成長率、労働参加率、外国人の入国者数など様々な要因を変化させた検証が行われています。
この中でも特に大きな影響を及ぼすのが出生数でしょう。
日本の年金制度は「賦課方式」と呼ばれており、原則的には、現役世代が支払う保険料を年金受給者に支給します。現状、運用した積立金が約250兆円あり、この積立金を取り崩すことも可能ですが、完全に取り崩した後は、現役世代が支払う保険料に頼らざるを得ません。
一部、国庫負担もありますが、その国のお金も、もともとは、税金などを通して国民が出したお金です。
税金や保険料を支払う現役世代(若い世代)が圧倒的に減ってしまえば、年金財政は非常に厳しくなるでしょう。
たとえば、財政検証では、最悪のケースとして、出生数低位、1人当たり経済成長ゼロケースを想定し、2059年に国民年金の積立金がなくなり、国民年金の支給額が大きく減ると予測しています。所得代替率(現役世代の手取りに対する年金支給額の割合)は50%程度から30%台に落ち込みます。
ただ、この財政検証に利用されている「出生数低位」の予測は、近年の出生数減少の傾向とは大きく乖離しています。
もし減少率5%程度の出生数減少が今後もしばらく続いた場合、国民年金の支給額が大きく減るタイミングは早まる可能性があります。