[図解]10種類の所得と計算方法
所得税では、利益のことを「所得」と呼びますが、所得には10種類あります。それぞれ、どんな種類の所得があって、どのよう…[続きを読む]
新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年のオリンピック・パラリンピックは2021年に延期されました。
オリンピックは、2021年7月23日(金)開会式~8月8日(日)のスケジュールで予定されています。
また、パラリンピックは、2021年8月24日(火)開会式~9月5日(日)のスケジュールで予定されています。
日本人の活躍が期待される中、ちょっと気になるのが金メダル、銀メダル、銅メダルのメダリストの賞金・報奨金事情です。
オリンピック選手・パラリンピック選手はメダルを獲得するといったいいくら賞金・報奨金をもらえるのでしょうか?
そして、その賞金・報奨金に税金(所得税)はかかるのでしょうか?
目次
オリンピック選手は入賞すると、JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)や競技団体から賞金や報奨金を受け取ることができます。JOCから支払われる報奨金はメダルによって金額が決まっていますが、各競技団体からの報奨金はそれぞれの団体によって異なります。
オリンピック選手がオリンピック競技で入賞をすると、JOC(日本オリンピック委員会)から報奨金を受け取ります。その金額は入賞した順位によって異なり、下記のように決まっています。
なお、1992年のアルベールビル冬季五輪から金メダル300万円、銀200万円、銅100万円が支払われることになり、2014年のソチオリンピックまでは金メダルの賞金額は「300万円」でした。しかし、2016年のリオオリンピックから賞金額が「500万円」に増額されています(銀と銅は据え置き)。これは金メダルの価値を高めるために、JOCが配慮をしたからです。
また、2021年の東京オリンピックではさらに賞金額を増額させる予定となっています。
オリンピック選手が入賞をすると、JOCの報奨金に加えて、各競技団体からも賞金・報奨金を受け取ることができます。ただし賞金額は競技種目によって異なっており、種目によって最大で3,200万円から、0円までと大きな差があります。なお、各競技の金メダル報奨金は下記の通りです。
金メダルのケース
・水泳…3,200万円(スポンサー企業も含め)
・自転車…3,000万円(日本競輪選手会より)
・陸上競技…2,000万円(日本陸業競技連盟より)
・マラソン…1億円(日本記録突破にて)
・テコンドー…1,000万円(国際クラブより)
・ゴルフ…1,000万円(日本ゴルフ協会より)
・バドミントン…1,000万円(日本バドミントン協会より)
・馬術…1,000万円(日本馬術連盟より)
・卓球…1,000万円(日本卓球協会より)
・テニス…800万円(日本テニス協会より)
・ライフル…500万円(日本ライフル射撃協会より)
・レスリング…300万円(日本レスリング協会より)
・バレー…300万円(日本バレーボール協会より)
・ボート…300万円(日本ボート協会より)
・サッカー…150万円(日本サッカー協会より)
・カヌー…100万円(日本カヌー協会より)
・体操…50万円(日本体操協会より)
・柔道…0円
金メダル | 銀メダル | 銅メダル | |
---|---|---|---|
フィギュアスケート | 500万円 | 200万円 | 100万円 |
スピードスケート | 500万円 | 200万円 | 100万円 |
ショートトラック | 500万円 | 200万円 | 100万円 |
アルペンスキー | 300万円 | 200万円 | 100万円 |
ジャンプ | 300万円 | 200万円 | 100万円 |
ノルディックスキー複合 | 300万円 | 200万円 | 100万円 |
クロスカントリー | 300万円 | 200万円 | 100万円 |
フリースタイルスキー | 300万円 | 200万円 | 100万円 |
スノーボード | 300万円 | 200万円 | 100万円 |
カーリング | なし | ||
アイスホッケー | |||
ボブスレー | |||
スケルトン | |||
リュージュ | |||
バイアスロン |
たとえば、金メダルの期待がかかる、小平奈緒(スピードスケート女子)選手、羽生結弦(フィギュアスケート男子)選手は、もし金メダルであれば、JOC報奨金500万円+各競技団体500万円=計1千万円を獲得することになります。
前回のソチの金メダルに輝いた羽生選手は計600万円の報奨金を獲得しています。報奨金の使い道について聞かれた羽生選手は、自身も東日本大震災で被災しただけに「震災関連で寄付しようと思っています」と表明して話題になりました。
パラリンピック選手がパラリンピック競技で入賞をすると、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)から報奨金を受け取ることができます。その金額は入賞した順位によって異なり、下記のように決まっています。
これは2014年のソチパラリンピックから適用された金額です。北京パラリンピックでは金メダルが100万円、銀メダルが70万円、銅メダルが50万と決められていました。けれども、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが決まったことで、新たな協賛企業が増えると期待できたため今大会から増額に至ったのです。
パラリンッピック選手がもらえる報奨金は、オリンピック選手がもらえる報奨金よりも低い金額ですが、これは報奨金の支払元が異なるからです。オリンピック選手は、JOC(日本オリンピック委員会)から報奨金を受け取るのに対して、パラリンピック選手は、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)から報奨金を受け取ります。
障がいのある/なしに関わらず同じスポーツ選手なのだから賞金は一緒でも良いのではと意見もありますので、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)では、この差を埋めるために「将来的にはオリンピックと同額を目指す」としています。そこで、日本障がい者スポーツ協会では協賛企業を増やしたり、ブランド価値を高めることに尽力しています。そのため、将来的にはパラリンピックの報奨金も増えることが期待されています。
障がい者スポーツ大会にはパラリンピックのほかにもいくつかの大会があります。例えば、スペシャルオリンピックス(知的障害者向けスポーツ大会)やデフリンピック(聴覚障害者向けスポーツ大会)です。
これらのスポーツ大会でも賞金は少ないです。そのため、もしパラリンピックだけオリンピックに賞金を近づけるのであれば、障がい者スポーツ大会内で賞金に差が生まれてしまうでしょう。パラリンピックだけでなく、他のスポーツ大会も含めて包括的に検討していく必要もあるようです。
オリンピック・パラリンピックでメダリストに輝けばJOC・JPSAや競技団体から賞金や報奨金を受け取れるのですが、こうした賞金には税金(所得税)が課されるのでしょうか?
賞金や報奨金は、一般的には「一時所得」として見られるため課税対象として扱われます。
ただし、オリンピックの賞金・報奨金に限っては、現在、所得税法により特別に「非課税」とされています。
まず、平成6年の税制改正によって、スポーツ振興を目的に「オリンピックのJOCからの報奨金」が非課税とされました。1992年(平成4年)のバルセロナオリンピックで、当時まだ中学生だった岩崎恭子選手が金メダルを取りましたが、受け取った報奨金に課税されたことで、国民から「かわいそう」という声があがり非課税にする検討がなされたという経緯もあります。
また、平成21年には「パラリンピックのメダリスト」が日本障がい者スポーツ協会(JPSA)から受け取る賞金も非課税対象として扱われるようになりました。こちらは障害者スポーツの振興を奨励するために制度化されています。
加えて、平成22年の税制改正によって「JOCに加盟している競技団体からの奨励金」も非課税対象になりました。ただし、JOCに加盟していないその他の競技団体から支払われる賞金・報奨金については非課税とならず、所得税がかかります。
JOCに加盟している競技団体はJOCのHPに掲載されています。
【外部サイト】JOC:加盟団体一覧
また、オリンピック・パラリンピック選手が所属している企業から独自に支給される報奨金も非課税とならず、こちらは給料として扱われ源泉徴収されます。
オリンピック・パラリンピック報奨金の非課税措置については、当初は租税特別措置法で規定されていましたが、現在は所得税法の本則で規定されています。
所得税法第9条1項14号
「オリンピック競技大会又はパラリンピック競技大会において特に優秀な成績を収めた者を表彰するものとして財団法人日本オリンピック委員会(平成元年八月七日に財団法人日本オリンピック委員会という名称で設立された法人をいう。)、財団法人日本障害者スポーツ協会(昭和四十年五月二十四日に財団法人日本身体障害者スポーツ協会という名称で設立された法人をいう。)その他これらの法人に加盟している団体であつて政令で定めるものから交付される金品で財務大臣が指定するもの」
競技団体からの報奨金は大きな金額が支給されることもありますので、オリンピック・パラリンピックの賞金・報奨金には次のとおり非課税枠が設けられています。この非課税枠は、JOCからの報奨金でも、JOC加盟の競技団体からの報奨金でも同じです。
JOCがリオオリンピックから金メダリストの報奨金を500万円に引き上げたことで、もし金メダルの非課税枠が300万円で同じままであれば、金メダリストは200万円分が課税対象になります。ただ、所得税法では特に非課税枠の規定はしていませんので、500万円丸ごと非課税になる可能性もあります。
仮に所得税がかかったとしても、一時取得には特別控除額50万円があり、さらに一時所得を他の所得と合算するときには、一時所得の半額のみを他の所得と合わせますので、一般的な給与所得や不動産所得などと比較すると、それほど大きな税金はかかりません。
オリンピック・パラリンピックに関連する賞金や報奨金について、JOCおよびJOC加盟団体から支払われる報奨金については基本的には非課税です。ただし、非課税枠が設けられており、それを超える分は課税対象となります。
オリンピック・パラリンピックの報奨金と税金の関係について、税金豆知識として覚えておくといいかもしれません。