配当金にかかる税金、配当所得とは?
配当所得は十種類ある所得の一種であり、税金(所得税と住民税)が課されます。どんな所得か、どのように課税するか、控除は…[続きを読む]
「老後資産2,000万円不足」が話題になり、投資がブームになりつつありますが、その中でも一番お手頃で、少額から始められる投資信託(ファンド)がより多くの人の注目を集めているのではないでしょうか。
投資信託には、「毎月分配型」、「毎月決算型」、「一年決算型」など、この他にもいろいろな種類があります。
投資信託の話で必ず話題にのぼるのが、「投資家へ支払われる分配金」です。この「分配金」の所得税は、株式の配当金と同じく「配当所得」として課税されます。しかし、株式の配当金とは少し違った課税方式になっています。
この記事では、投資信託から投資家へ支払われる「分配金」の税金について詳しく説明します。
目次
分配金に税金がかかる理由は、まず分配金の仕組みを理解しなければなりません。
投資信託は、投資家から集めた資金を使い株式や債券など、様々な資産に投資して利益を得ています。資産から得る配当金や利息などの「インカムゲイン」や、株式や債権などの価格変動がある資産の売買を行うことで得る「キャピタルゲイン」が投資信託の主な収入源になります。
それらの利益に、過去から繰越された利益を加えたものが投資家へ「分配金」として分配される仕組みになっています。
投資信託を始める前にチェックしていただきたいのが投資信託の種類です。投資信託の種類は、「分配型」と「再投資型」に大きく分類されます。
「毎月分配型」や「年1回分配型」などが該当します。投資信託で決められている日に分配金を現金で受取ることができます。「毎月分配型」であれば、毎月決まった日に現金を受取ることができるので、投資家にとっては安心感を得ることができます。
「再投資型」は、分配型と同じ用に分配金は支払われますが、その分配金は自動的に同じ投資信託の購入に充てられます。分配型のように現金を受取ることはできません。しかし、複利効果が期待できるため、分配型より利益を得ることが可能です。
複利効果とは、元本に分配金を加えた合計額が新たな元本となり、分配金を増加させていくことを言います。複利効果を利用するためには、ある程度の時間が必要になるため、中長期的に投資をされる方に向いている投資信託です。
投資信託には2種類の分配金があるのをご存知でしょうか。
「普通分配金」と「特別分配金」です。「普通分配金」は、いわゆる通常の分配金で、投資信託が利益を得て、その利益から投資家に支払われる分配金です。それに比べ「特別分配金」とは、投資信託が十分に利益を得ることができない場合に、利益ではなく元本の一部を投資家へ支払われる分配金のことを言います。「普通分配金」は利益の分配、「特別分配金」は投資した金額の一部の払戻しと理解してもらえると良いでしょう。通常は、「分配型」の投資信託について「特別分配金」が発生します。
この2つの分配金ですが、「普通分配金」は所得税が課税されます。「普通分配金」は利益の分配なので、利益には税金を払わなければいけません。
一方、「特別分配金」には所得税は課税されません。「特別分配金」は投資金額の一部の払戻しになるからです。銀行に預けたお金を引出した時に、税金がかからないのと同じことになります。
「普通分配金」は、所得税の「配当所得」に該当します。「配当所得」については、こちらをご覧ください。
分配金には、所得税が課税される「普通分配金」と、所得税が課税されない「特別分配金」があることをご紹介しました。この2つの分配金ですが、同じ投資信託の同じ分配金であっても、各投資家によって異なります。
「個別元本」とは、投資信託の取得金額を保有口数で割った金額です。つまり、平均取得価額のことを言います。しかし、「個別元本」には手数料が含まれていないため、正確には平均取得価額ではありません。投資家によって購入時期、購入金額が違うため、「個別元本」も投資家によって異なります。
投資信託の基準価格とは、投資信託の値段のことで、多くの場合は1口あたり、または1万口あたりの値段のことです。投資信託が保有している株式や債券などの資産に、利息や配当金などの利益を加えた金額が投資信託の基準価格と言います。
投資信託の基準価格が個別元本より高く、さらに、投資家に分配を行った後でも個別元本より高い場合は全て「普通分配金」となります。
投資信託の基準価額が、個別元本を下回っている場合は全て「特別分配金」となります。投資信託を購入した金額よりも安くなっているので、投資信託からの分配金は、投資した金額の払戻しとなります。
分配前の投資信託の基準価格は個別元本を上回っていたが、分配後に個別元本を下回った場合は、個別元本までの分配を「普通分配金」、下回った部分を「特別分配金」として分配金を分類しなければいけません。
分配前の投資信託の基準価格は1口あたり9,500円だったが、分配金1,000円行い、分配後は1口あたりの基準価格は8,500円となった場合:
投資家Aさんの場合は、「②投資信託の基準価格≦個別元本の場合」に該当します。分配金1,000円全てが「特別分配金」になります。
投資家Bさんの場合は、③のケースに該当します。Bさんの個別元本9,000円までは「普通分配金」、9,000円を下回るものは「特別分配金」となります。
Aさんの個別元本9,000円-分配後の基準価格8,500円=500円(特別分配金)
残り500円が「普通分配金」となります。
投資家Cさんの場合は、「①投資信託の基準価格≧個別元本の場合」に該当します。分配金1,000円全てが「普通配当金」になります。
「普通分配金」は税金がかかるとご紹介しましたが、投資信託の分配金の納税については「源泉分離課税」を選択することができます。具体的には、証券会社で「源泉徴収有り」の「特定口座」を開設することで、「普通分配金」から20.315%の源泉所得税を自動的に差引き、納税を完結することができます。もちろん選択制度ですので、確定申告で他の所得と通算して所得税の計算をすることもできます。
この「源泉徴収有り」の「特定口座」を利用している場合には、「分配金(源泉徴収前)は変わらないのに、分配金の手取り額が減る場合」があります。
これは、投資信託の基準価格が上昇し、個別元本を上回ったため、「特別分配金」から「普通分配金」に変わり、「源泉徴収」が天引きされたことにより手取り額が減ってしまう場合です。
投資信託の価格が上がっている証拠ですので、手取り額が減っていることに落胆する必要はありません。
先ほどご紹介したとおり、投資信託の普通分配金については「申告分離課税」で申告納税を完了することができます。証券会社の「源泉徴収有り」の「特定口座」を利用することで20.315%が差引かれます。
この制度は選択制度ですし、「源泉徴収有り」の「特定口座」を利用していても、確定申告を行うことにより、他の所得と合算して所得税を計算することができます。他の所得と合算することにより、「特定口座」で天引きされた源泉所得税を還付できる場合もありますので検討が必要です。
一般的には、普通分配金(配当所得)を合わせた課税所得金額が695万円以下であれば税率が20.315%より低くなるため、「確定申告をしないこと」を選択するよりも、「確定申告を行う」方が有利になると言われています。
合計所得が695万円を超えている場合であっても、高額の医療費の支払いがあり、医療費控除が受けられる場合など、「確定申告を行う」方が有利になる場合もありますので検討が必要です。
注:確定申告をした場合で、別に住民税の確定申告を行い、配当所得については「確定申告をしないこと」を選択することができます。その場合は、課税所得金額が900万円以下であれば「確定申告をしないこと」を選択するよりも有利になります。
投資信託の分配金の確定申告には次の書類が必要になります。
上記以外に、金融機関等から借入を行って投資信託を購入している場合は、保有期間に応じた借入金の利息が必要経費として認められますので、借入金の利息がわかるものが必要です。
具体的な申告書の記載方法については、こちらで詳しく説明しています。
分配金の課税方式についての疑問は解消できましたか?
投資信託の分配金は、株式の配当金とは少し異なり、「税金がかかる配当金」と「税金がかからない配当金」があることを覚えておきましょう。「特定口座(源泉徴収あり)」にある投資信託から受取った分配金は、確定申告することにより還付を受けられる場合が多くあります。
配当所得を確定申告で申告する方が有利なのか、それとも確定申告をしない方が有利になるのか、ご自分の状況をよく把握して、一番いい方法を検討するといいでしょう。