iDeCo(個人型確定拠出年金)の年末調整の方法|必要書類と書き方

iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後資金を準備するためのものでもあり、会社員に人気の節税方法でもあります。この記事では、iDeCoの控除を年末調整で申請するやり方をお伝えします。

この記事ではこんな疑問にお答えします!

  • iDeCoに加入している場合、年末調整で何かしなくちゃいけないんだっけ?
  • iDeCoの控除を受けるにはどの書類に何を書けばいいの?
  • 年末調整でiDeCoの控除を申請するとどのくらいの還付が受けられるの?

1.iDeCoの控除は年末調整で申請できる|会社員・公務員

(1)iDeCo(イデコ)で受けられる控除

みなさんご存じの通り、iDeCo(イデコ)は「個人型確定拠出年金」と言われる老後資金のための貯蓄制度です。このiDeCoは毎月掛け金を支払い、積み立てを行うことで、運用益を老後に受け取れる他に、掛け金を支払った年の税金を節税することができます。

支払った掛け金は「小規模企業共済等掛金」に該当し、支払った額全てを所得から差し引くことができます。つまり、積み立てを行っているのにも関わらず、支払った額だけ課税される所得が減り、所得税と住民税が少なくなる、税務上たいへん優遇された制度です。

しかし、iDeCoに加入しただけで自動的に税金の優遇が行われるのではなく、年末調整や確定申告で手続きを行う必要があります。手続きは難しいものではなく、会社員や公務員の方の場合は勤務先で行われる年末調整で手続きすることができます。

(2)iDeCoの控除は年末調整と確定申告のどっちが必要?

iDeCoの控除を受けるためには、年末調整と確定申告のどちらかで手続きを行うことになります。所得(収入)の種類によって年末調整で手続きを行える場合と確定申告で手続きを行わなければならない場合があります。

年末調整でiDeCoの所得控除が受けられる人

会社などに1年を通して勤務している方や年の途中で就職して12月末まで勤務している方は年末調整の対象になります。ただし、1年間の給与の総額が2,000万円を超える方は年末調整自体の対象になりません。

確定申告でiDeCoの所得控除を受ける人

自営業者やフリーランスなどの個人事業者、不動産貸付業を営んでいる方など、給料収入以外の収入があり年末調整を行っていない人は確定申告でiDeCoの所得控除の手続きを行います。会社員などで年末調整をしたがiDeCoの所得控除を受けていなかった方は、確定申告を行うことで所得控除を受けることができます。

2.iDeCoの年末調整でいくら節税できる?|還付金・控除額のシミュレーション

iDeCoに加入することで所得税と住民税を節税することができます。支払った掛け金の額が所得控除になりますが、職業や会社の企業年金制度によって毎月の掛け金の上限があります。

iDeCoの掛け金の上限

職業等 掛け金の上限
会社員(企業年金なし) 月額23,000円(年額276,000円)
会社員(企業型確定拠出年金のみ) 月額20,000円(年額240,000円)
会社員
(確定給付企業年金のみに加入、
または確定給付企業年金と
企業型確定拠出年金の両方に加入)
月額12,000円(年額144,000円)
公務員 月額12,000円(年額144,000円)
個人事業主 月額68,000円(年額816,000円)

上限額の掛け金を支払った場合には、どれくらいの税金が節税できるのでしょうか。会社員(企業年金なし)と公務員の場合で見ていきましょう。

iDeCoによる節税額(所得税+住民税)

年収 会社員(企業年金なし)
月額23,000円
(年額276,000円)
公務員
月額12,000円
(年額144,000円)
400万円 41,700円 21,700円
600万円 55,900円 29,200円
800万円  84,000円 43,800円
1,000万円 84,000円 43,800円

※扶養親族なし、保険料控除なし、社会保険料は従業員負担15.75%で計算しています。

iDeCoによる節税額は、年収が高いほど効果的です。年収600万円の会社員の場合55,900円の節税が可能です。20年間掛け金を支払い続けると55,900円×20年=1,118,000円もの税金が節税できます。

3.iDecoの年末調整に必要な証明書

(1)iDecoの年末調整には「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要

年末調整でiDecoの控除を受けるためには「小規模企業共済等掛金払込証明書」を勤務先に提出しなければなりません。この書類は、iDeCoの加入者が1月1日~12月31日までに支払った掛け金の総額が記載されています(下図サンプル)。

iDeCo 小規模企業共済等掛金払込証明書

通常は10月下旬ごろに証明書が国民年金基金連合会から送付されてきますので、なくさないように保管しましょう。勤務先から年末調整についての資料の収集が行われる際に、生命保険控除証明書などと一緒に提出することになります。iDecoへの加入が10月以降の場合は、加入した翌月下旬ごろに証明書が発行されます。

(2)年末調整までに証明書が届かないときは?

小規模企業共済等掛金払込証明書が届かない場合は、まず発送スケジュールの確認をしましょう。発送スケジュールは確定拠出年金サービス㈱のホームページで確認することができます。

それでも届かない場合は「小規模企業共済等掛金払込証明書再発行申請書」を国民年金基金連合会に提出し、再発行することになります。

4.iDeCoの年末調整の書き方

(1)iDeCoの控除に必要な書類は「給与所得者の保険料控除申告書」

年末調整でiDeCoの所得控除を受けるには勤め先から配布される「給与所得者の保険料控除申告書」の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に1年間の掛け金の合計額を記載して勤務先に提出する必要があります(下図の色をつけた部分)。

保険料控除申告書 令和5年度

(2)iDeCoの年末調整を書くとき、証明書のどの部分を見ればいい?

「給与所得者の保険料控除申告書」の記入の際には国民年金基金連合会から届いた「小規模企業共済等掛金払込証明書」をお手元に用意しましょう。小規模企業共済等掛金払込証明書は、1~9月までと10~12月までに支払った掛け金が記載されています。この合計金額を「給与所得者の保険料控除申告書」に記載します。

保険料控除申告書に転記するのはここ

iDeCoの年末調整(出典:みずほ銀行)

保険料控除申告書の記入例

iDeCoの年末調整

転記したら「給与所得者の保険料控除申告書」に「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付して勤務先に提出すれば手続きは終了です。

5.iDeCoの控除申請が年末調整に間に合わない時

「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届いてないことに気付くのが遅かった場合や、11月~12月に新規加入手続きを行った場合などは、通常の年末調整の手続きに間に合わないことがあります。

その場合は、ひとまず所得控除を行わないところで年末調整を行い、証明書が届いた時点で勤務先に年末調整のやり直しをしてもらう方法があります。(1月末まで)

1月末までに間に合わなかった場合や勤務先で年末調整のやり直しをしてもらえなかった場合は、自分で確定申告を行うことになります。発行された源泉徴収票(iDeCoの所得控除なし)と小規模企業共済等掛金払込証明書を用意する必要があります。

6.iDeCoと年末調整のよくある質問

Q.iDeCoの所得控除を年末調整で申請するのを忘れたらどうすればいいですか?

翌年1月末までであれば、勤務先で年末調整のやり直しをしてもらうことができます。それもできない場合は、確定申告を行って所得税の還付を受けることになります。

Q.iDeCoの所得控除はパート・アルバイトでも年末調整で申請できますか?

iDeCoの所得控除は、雇用形態に関わらず年末調整で申請することができます。ただし、パートやアルバイトで年間収入が103万円以下のため所得税が発生しないケースでは、申請しても所得税の還付はありません。

Q.専業主婦ですがiDeCoに加入しています。夫の年末調整で控除を受けられますか?

iDeCoの所得控除は、契約者本人の所得控除しか認められていません。そのため、配偶者の年末調整で所得控除を受けることができません。生命保険控除などと異なりますので注意が必要です。

Q.iDeCoに「事業主払込」で加入しています。年末調整では何もしなくてよいですか?

事業主払込とは、勤務先が従業員の給料からiDeCoの掛け金を天引きして勤務先が直接国民年金基金連合会に支払う方法です。年末調整時には勤務先が年間の掛け金を把握しているため、従業員は特別な手続きをする必要はありません。

まとめ

iDeCo加入者の方が年末調整を受ける際の対応内容をお伝えしました。最後に内容をおさらいしましょう。

この記事の重要ポイント

  • iDeCoの掛け金は全額が所得から控除される(節税できる)
  • 年末調整でiDecoの控除を受けるためには「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要
  • 控除を受けるためには「給与所得者の保険料控除申告書」の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に1年間の掛け金の合計額を記載して勤務先に提出する
服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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