新聞がなぜ軽減税率の対象になるのか?

新聞

軽減税率が適用される対象品目は、飲食料品と「新聞」となっています。

なぜ飲食品以外で新聞だけが特別に軽減されるのでしょうか?

1.軽減税率とは

2019年10月1日から消費税率が10%になりました。それに合わせて、低所得者に配慮するという観点から、軽減税率制度が導入されました。

この軽減税率制度とは、「飲食料品」と「新聞」に限り適用される消費税率を8%に軽減する制度です。詳細は下記記事を参照してください。

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なお、ここで言う「新聞」は、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞です。

新聞の種類としては、一般紙、スポーツ紙、業界紙、政党機関紙などが挙げられます。

ただし、対象となるのは週2回以上配達される「定期購読の新聞」に限られますので、コンビニなどで購入する新聞や、インターネットで読む電子版の新聞などは「対象外」です。

2.新聞が軽減税率の対象になる理由

「なぜ新聞だけ軽減税率が適用されるの?」と疑問を持った人もいるでしょう。

対象品目に生活必需品である飲食料品が定められているのは大いに理解できますが、飲食料品以外にある唯一の品目が新聞なので、とても目立ちます。
いったい何故、新聞が軽減税率の対象なのでしょうか。

たとえば、「一般社団法人 日本新聞協会」では、下記のような見解を発表しています。

  • ニュースや知識を得るための負担を減らすため
  • 活字文化の維持・普及のため
  • EU加盟国でも、新聞の税率を下げている国が多数ある

【参考】なぜ新聞に軽減税率が必要なのですか?|Pressnet(一般社団法人日本新聞協会)

2-1.新聞には公共性があるという意見

新聞の使命はニュースを伝えることであり、人々は新聞を読むことで世の中の情報を知ることができます。
世の中の出来事にいつも注目し、埋もれているニュースを掘り起こし、それを毎日まとめて届ける新聞には、他の情報手段にはない公共性と役割がある、といった意見です。

2-2.活字文化の維持・普及のためとの意見

新聞を読むことで知識を付けることができます。新聞を読む人が減ってきている現代において、活字文化を維持し、更に普及させていくためには軽減税率は必要不可欠だ、といった意見です。

2-3.EU加盟国での取り扱いの引用

新聞を軽減税率の対象とすることは、既に多くの国で行われています。
更に欧州には、「書籍、雑誌も含めて、新聞は思索のための食料や栄養源」という考え方まであり、その思索の食料を得るためにかかる負担を軽減する役割を果たすのが、軽減税率だ、といった意見です。

実際、新聞の税率を標準税率より下げている国は、EU加盟国内にも多数存在します。

国名 標準税率
(%)
新聞の税率
(%)
オーストリア 20 10
ベルギー 21 0
ブルガリア 20 20
クロアチア 25 5
キプロス 19 5
チェコ 21 10
デンマーク 25 0
エストニア 20 9
フィンランド 24 10
フランス 20 2.1
ドイツ 19 7
ギリシャ 24 6
ハンガリー 27 5
アイルランド 23 9
イタリア 22 4
ラトビア 21 12
リトアニア 21 9
ルクセンブルク 17 3
マルタ 18 5
オランダ 21 6
ポルトガル 23 6
ポーランド 23 8
ルーマニア 20 5
スロバキア 20 20
スペイン 21 4
スウェーデン 25 6
イギリス 20 0
アイスランド 24 11
ノルウェー 25 0
スイス 8 2.5

【出典】軽減税率の取り組み|日本新聞協会(欧州諸国付加価値税一覧)

2-4.日本新聞協会の声明

上記以外にも、日本新聞協会は軽減税率を求める声明を出し、早くから政権に訴えていました。
その声明を要約すると、

  • 新聞の人々の生活への密着度は、衣食住の必需品につぐ重要さがある。
  • 日本の民主政治が、高い水準を維持し発展している要因の1つに新聞の存在がある。
  • 新聞は、表現の自由の保障が生み出している機能を備えており、それが害される要因に対しては、国の特別扱いを受けることができるはずだ。
  • 現在の新聞に対する様々な法的取扱いの根拠が、軽減税率適用の根拠と同じである。
  • 多くの諸外国において既に新聞に対する消費税減免制度が導入されている。
  • 新聞は、誇るべき日本の文化である。

【参考サイト】新聞への消費税軽減税率適用に関する意見書

3.軽減税率の疑問

軽減税率に対して、多くの人が持つであろう疑問点を挙げてみます。

書籍・雑誌等にはなぜ適用されないのか?

書籍や雑誌等も新聞と同じ活字媒体であり、人が知識を得ることができるものです。
しかし、時には暴力や性的な表現を含む「有害図書」があり、それらには軽減税率を適用すべきではない、との意見があります。
「有害図書か、そうでないかの線引きが難しい」との理由から、書籍や雑誌等に軽減税率を適用する案は見送られています。

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テレビなどにはなぜ適用されないのか?

知識という意味では、テレビ、ラジオ、インターネットなども重要な媒体です。
しかし、有害なものとの線引きが書籍などに比べて更に難しいとの理由から、こちらも適用されていません。

軽減税率導入により減る税収はいくらなのか?

軽減税率を導入することによる減収額は、1兆円程度であると公表されています。
この大きな穴を埋めるために、たばこ税増税などが検討されています。

まとめ

新聞だけが特別に軽減税率を適用されることに、違和感を覚える方は少なくないでしょう。

現代では、新聞のみならず、書籍・雑誌・テレビ・インターネットなど様々なメディアがあり、公共的に有益なものも多数あります。
書籍や雑誌にも軽減税率を適用すべきだ、との意見も出ています。
Pressnetで公表されている「1世帯当たりの新聞発行部数」も、2000年頃には「1.13」だったものが、2018年には「0.70」まで大きく下落しています。

もはや新聞だけを取り上げて、「低所得者の生活必需品」とは言えない時代に差し掛かっているかもしれません。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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