【2025年】年金受給者の年収の壁、155万・168万・211万⋯

2025年、所得税改正により、年金生活者の年収の壁も一部が変わります。しかし、住民税の壁は変わりません。

変わるものと変わらないものがあり、非常にややこしくなりますので、年金受給者の年収の壁をすべて、わかりやすく解説します。

1.住民税非課税の年収の壁:155万円・211万円⋯

年収の壁として、最も重要で、かつ、インパクトが大きいのが、住民税非課税となる年収の壁です。

住民税非課税になると、たくさんのメリットがあります。ここにあげたのは一部です。

  • 介護保険料が軽減される
  • 国民健康保険料や国民年金の負担料が軽減される
  • NHKの受信料が免除される(障がい者が世帯内にいる場合)
  • 入院時の食事代の減免が受けられる。(自治体による)
  • 健康診断やがん検診の料金減免などが受けられる(自治体による)

住民税非課税の年収の壁については、2025年時点で改正はありません。2024年以前と同じままです。

(1)住民税非課税の所得条件と、年収の壁の金額

住民税非課税となる所得の条件は、独身の方(単身者)が45万円夫婦2人の場合が101万円です(東京23区など1級地の場合)。

参考までに、家族がいる場合は、このような式で計算します。

35万円×(本人、同一生計配偶者および扶養親族の合計数)+31万円

また、公的年金には公的年金等控除額があり、年金収入から差し引くことができますが、その控除額は、65歳未満が最低60万円65歳以上が最低110万円です(年金収入に比例して増えます)。

独身/夫婦2人、65歳未満/65歳以上のそれぞれのパターンを組み合わせると、住民税非課税となる年金収入の金額は、次の表のようになります(夫婦2人の場合、扶養している人の年齢です)。

  65歳未満 65歳以上
独身 105万円 155万円
夫婦2人 171万円(※) 211万円

※正確には、1,713,334円

この金額以下であれば、住民税非課税となります。

よく登場する「155万円の壁」「211万円の壁」は、このような意味です。

  • 155万円の壁:独身の場合の住民税非課税となる年収の壁
  • 211万円の壁:夫婦2人の場合の住民税非課税となる年収の壁

(2)地域によって異なる年収の壁

住民税非課税となる年収の壁(所得条件)は、お住まいの市区町村によって異なります。

主に、1級地、2級地、3級地の3つに別れています。65歳以上の住民税非課税となる年金収入は、このようになります。

区分 65歳以上の
住民税非課税の年金収入
市区町村の例
1級地 155万円 東京都23区、大阪市、札幌市など
2級地 151.5万円(152万円※) 伊勢原市、奈良市、那覇市など
3級地 148万円 秩父市、阪南市、栃木市など

※所得では41.5万円ですが、1万円未満を四捨五入して42万円としている自治体もあります。

「級地」の詳細と、それぞれの市区町村がどの区分に当たるかは、Wikipediaの「級地制度」を参照してください。

65歳未満の場合

65歳未満の場合の、それぞれの級地ごと、世帯の人数ごとに、住民税非課税となる年収の壁です。
(1万円未満は切り捨てていますので、正確な値ではない箇所もあります。)

世帯の人数 1級地 2級地 3級地
1人(単身) 105万円 101万円 98万円
2人(扶養1人) 171万円 159万円 147万円
3人(扶養2人) 218万円 201万円 184万円
4人(扶養3人) 264万円 243万円 221万円
5人(扶養4人) 311万円 285万円 259万円

65歳以上の場合

65歳以上の場合の、それぞれの級地ごと、世帯の人数ごとに、住民税非課税となる年収の壁です。
(1万円未満は切り捨てていますので、正確な値ではない箇所もあります。)

世帯の人数 1級地 2級地 3級地
1人(単身) 155万円 151万円 148万円
2人(扶養1人) 211万円 201万円 192万円
3人(扶養2人) 246万円 233万円 220万円
4人(扶養3人) 281万円 264万円 248万円
5人(扶養4人) 316万円 296万円 276万円

2.所得税がかかる年収の壁:155万円・205万円⋯

(1)所得税が非課税となる年収の壁:155万円・205万円

2025年所得税改正で、所得税がかかる年収の壁が、大幅にアップします。

今まで、所得税の基礎控除額は、ほぼ全員同じで48万円でしたが、これが最大95万円に引き上げられます。

基礎控除額は所得(収入)によって、階段状になります。

  • 所得132万円(65歳以上の年金収入242万円)以下であれば、基礎控除額は95万円
  • 所得132万円(65歳以上の年金収入242万円)を超えると、基礎控除額は88万円(2年間限定で、2027年以降は58万円)

基礎控除額が引き上げられることによって、年金生活者の場合、所得税が発生しない年収の壁もアップします。

  2024年以前 2025年以降
65歳未満 108万円 155万円
65歳以上 158万円 205万円

2025年12月分の年金で、税金が戻って来る

新しい所得税法が施行されるのは2025年12月からですので、実は、2025年11月までは、古い所得税法により、毎月分の年金から所得税が引かれています(源泉徴収)。つまり、本来より多く税金が引かれています。

そこで、2025年12月分の年金支給のとき、今まで引かれすぎた所得税が調整され、通常、税金が戻ってきます(還付されます)。

(2)基礎控除額が満額となる年収の壁:212万円・242万円

こちらは、新たに登場する、年金生活者向けの年収の壁です。

所得132万円を超えると、基礎控除額が95万円から、58万円(2027年以降)に減りますので、超えた瞬間、手取りが約2万円減ります。

所得132万円の年金収入は、

  • 65歳未満:212万円(正確には、2,126,667円)
  • 65歳以上:242万円

です。これが年収の壁です。

3.税金の扶養の年収の壁:118万円・168万円

(1)扶養に入るための年収の壁も10万円アップ

税金には、もう一つ重要な壁として、扶養に入るための条件としての年収の壁があります。

アルバイト・パート等、働いている人にとっては「103万円の壁」と知られてきました。これを超えてしまうと、扶養控除を受けられなくなって、扶養している人の税金が高くなるという、あの悪名高き壁です。

また、扶養をしている人の住民税非課税の計算にも利用しますので、壁を超えてしまうと、住民税非課税にならなくなる場合もあります

これは、「103万円」というのは給与収入のことですが、所得の条件では「48万円以下」という条件でした。

これが、2025年から「58万円以下」に変わります。

年金受給者の年金収入でみると、65歳未満が「118万円の壁」、65歳以上が「168万円の壁」に、それぞれ10万円ずつ引き上げられます。

  2024年以前 2025年以降
65歳未満 108万円 118万円
65歳以上 158万円 168万円

(2)配偶者は、壁を超えてもあまり影響なし

扶養している夫(妻)が、住民税非課税でない場合は、配偶者である妻(夫)は、上で説明した壁を超えてもあまり影響はありません

妻(夫)の所得58万円(65歳以上の年金収入168万円)以下の場合、夫(妻)は、配偶者控除(通常38万円)を受けることができます(年金生活者ですので、夫の所得900万円以下という前提)。

もし、その壁を超えても、所得95万円(65歳以上の年金収入205万円)以下の場合、まったく同じ金額(通常38万円)の配偶者特別控除を受けることができます。

下の図を見てもらうとわかりますが、所得95万円(65歳以上の年金収入205万円)以下であれば、「源泉控除対象配偶者」という扱いになり、年金が支給されるときの源泉徴収でも、差し引かれる税金が安くなります。
(カッコ内の数値は給与収入ですので無視してください。)

※配偶者の種類については「用語解説」をご参照ください。

夫(妻)の配偶者控除・配偶者特別控除の金額に影響を及ぼさないための、妻(夫)の年金収入の範囲はこちらです。

  2024年以前 2025年以降
65歳未満 108万円 155万円
65歳以上 158万円 205万円

4.健康保険料減免の年収の壁:168万円⋯

会社を退職した人や、自営業の人は、74歳以下であれば、国民健康保険に加入します。75歳以上であれば、後期高齢者医療制度に加入します。

どちらも、そこそこ高い保険料が発生しますが、年金収入が一定金額より低い場合は、その収入に応じて、均等割が、2割、5割、または7割、軽減されます

所得を基準に計算するのですが、このような式になります。

  均等割の
軽減割合
世帯全員の所得合計
1号減額 7割 43万円+(年金受給者等(※)の合計数―1)×10万円
2号減額 5割 43万円+(年金受給者等(※)の合計数―1)×10万円
+30.5万円×国保加入者数
3号減額 3割 43万円+(年金受給者等(※)の合計数―1)×10万円
+56万円×国保加入者数

※年金受給者等とは、給与収入55万円超、公的年金等収入が65歳未満は60万円超/65歳以上の人は125万円超

所得では、ややこしいですので、年金収入にすると、こちらの表のようになります。
(夫婦2人とも65歳以上で、年金収入あり、夫の年金収入は125万円超、妻の年金収入は125万円未満を想定)

均等割の
軽減割合
独身 夫婦2人
7割 168万円 168万円
5割 198.5万円 229万円
2割 224万円 280万円

5.社会保険の扶養の年収の壁:180万円

60歳を過ぎても、夫(妻)が会社勤務で厚生年金に加入している場合は、妻(夫)は社会保険の扶養に入ることができます。すると、国民健康保険料の負担がなくなります

60歳未満のパート主婦にとっては「130万円の壁」と呼ばれており、超えたら、社会保険の扶養から外れて、かなり高い保険料を払わなければならず、非常に悪名高き壁です。

ただし、60歳以上の方の場合の年収条件は180万円未満、つまり「180万円の壁」です。まあまあ大きい金額ですので、これを超えないようにすれば、社会保険の扶養に入っていられます。

なお、この「180万円」には、原則的には、交通費(通勤手当)も含みます。

監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を10年以上担当。
税金やお金に関することが大好きで、関連記事を2000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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