【2025年】新たな年収の壁現る!110万・123万・150万・160万・200万

年収の壁 2025年

2025年、所得税改正により、103万円の壁が160万円の壁に引き上げられる予定です。
それに伴って、他にも新たな年収の壁(110万円・123万円・150万円・160万円・200万円など)が次々に現れました。

新しく出現した年収の壁の内容と、影響が受ける人、その影響度などを、わかりやすく解説します。

1.103万円の壁の引き上げとは

新たな年収の壁について解説する前に、まず、現在の年収の壁「103万円の壁」について、おさらいしておきましょう。

(1)103万円の壁には2種類の壁がある

103万円の壁は、所得税のボーダーラインです。103万円の壁には、次の2種類の壁があります。

  • ①所得税がかかる
  • ②税金の扶養から外れる

①所得税がかかる

年収103万円を超えること所得税がかかります。ただ、年収103万円を超えても影響は小さいです。

所得税は、103万円を超えた分に対してかかります。103万円を超えても、年収が低いうちは、所得税の税率は5%です。
仮に年収104万円になっても、かかる所得税は500円です。500円の所得税がかかっても、収入は増えたのですから、そこまで大きな問題ではないでしょう。

(104万円ー103万円)×5%=500円

②税金の扶養から外れる

103万円の壁は、こちらの影響のほうがかなり大きいです。

たとえば、学生アルバイトで、バイトの年収が103万円を超えると、親の扶養に入っている場合、親の扶養から外れます。親が扶養控除を受けられなくなり、税金が数万円から十数万円の範囲で増えてしまいます。

大学生のケースで、親が扶養控除を受けたときと受けないときで、税金がどれだけ変わるかを、年収別にあげておきます。

給与年収 扶養控除なし
のときの税金
扶養控除あり
のときの税金
差額
200万円 86,300 11,000 75,300
300万円 166,800 80,600 86,200
400万円 256,000 169,800 86,200
500万円 375,500 270,700 104,800
600万円 503,400 394,100 109,300
700万円 672,200 530,200 142,000
800万円 904,900 731,200 173,700
900万円 1,177,400 1,003,700 173,700
1000万円 1,462,700 1,289,000 173,700
1200万円 2,071,100 1,878,200 192,900
1500万円 3,194,200 2,936,900 257,300
2000万円 5,329,600 5,072,300 257,300

扶養控除を受けられないと、年収が低い場合でも、税金が8万円以上アップします。
年収が高い場合には、税金が17万円以上もアップします。

(2)103万円の壁の種類と影響

103万円の2種類の壁の影響を整理します。

壁の種類 影響度 103万円を1万円だけ
超えたときの増税額
①所得税がかかる 低所得者:小さい
高所得者:大きい
1,500円
(本人)
②扶養から外れる 大きい 8~33万円
(親など)

「①所得税がかかる」については、低所得者には影響は小さいですが、高所得者には影響が大きいです。
年収103万円を1万円だけ超えたときの、本人の増税額は、所得税と住民税を合わせても1500円です。

「②税金の扶養から外れる」については、非常に影響が大きいです。年収103万円を1万円だけ超えたときの、親などの増税額は、8万円から33万円にもなります。

(3)103万円の壁の引き上げ内容

103万円の壁は、2種類の壁ごとに、それぞれ別々の金額に引き上げられます。

壁の種類 壁の年収 割合
①所得税がかかる 年収200万円以下:160万円
それ以外:123万円
→約16%
→約84%
②扶養から外れる 大学生:150万円
その他:123万円
→約4%
→約96%

「①所得税がかかる」については、年収200万円以下の人だけが、160万円に引き上げられます。それ以外の人は、123万円の壁になります。
参考までに、給料をもらっている人のうち、年収200万円以下の割合は約16%です。160万円の恩恵を受けられるのは、6人に1人くらいです。

「②税金の扶養から外れる」については、大学生だけ150万円ですが、それ以外は123万円です。
大学生というのは、正確にいうと、19歳から22歳までの扶養家族のことです。大学生でなくても構いません。
19歳~22歳の割合は、全人口の約4%です。残りの96%は、123万円の壁ということになります。

2.160万円の壁とは

次に、年収160万円の壁とは、どんなものか、簡単に見ておきましょう。

(1)基礎控除の引き上げ

103万円壁→160万円の壁の引き上げでは、基礎控除を、48万円から95万円に引き上げ、給与所得控除を、55万円から65万円に引き上げます。両方を足すと、160万円になります。

年収の壁 160万円の壁

ただし、160万円に引き上げるのは、年収200万円以下の人だけです。それ以外の人は、基礎控除は58万円に引き上げられますので、実質、123万円への引き上げです。
さらに、2年間限定で、年収によって、基礎控除の上乗せがあります。

年収の壁 160万円の壁 基礎控除

2027年以降は、年収200万円を少しでも超えると、基礎控除が95万円から58万円に減りますので、ある意味、200万円の壁が出現します。

年収の壁 160万円の壁 基礎控除

(2)給与所得控除の引き上げ

給与所得控除は、最低額が55万円で、年収に比例して少しずつあがっていきます。

年収の壁 給与所得控除

最低額55万円→65万円に引き上げられます。年収190万円以下の人だけ、給与所得控除が増えます

年収の壁 給与所得控除

(3)年収ごとの控除が増える金額

基礎控除と給与所得控除を合計したとき、年収ごとの控除が増える金額は次のようになります。

年収 基礎控除 給与所得控除 合計
~162.5万円 47万円 10万円 57万円
162.5万円~190万円 47万円 0~10万円 47~57万円
190万円~200万円 47万円 0 47万円
200万円~ 10万円 0 10万円

(4)基礎控除の引き上げは所得税だけ、住民税はそのまま

今回の改正で、基礎控除が引き上げられるのは、所得税だけです。住民税の基礎控除は、今までどおり、43万円のままです。住民税の給与所得控除も、2026年から最低額が65万円に引き上げられますので、少し減税になりますが、金額は少ないです。

年収の壁 所得税と住民税の違い

3.新たな年収の壁

ここまでの内容を踏まえて、2025年に新たに登場する、主な年収の壁は次の5つです。

他にもたくさんの壁がありますが、重要度は小さいため、省略します。

(1)110万円の壁

重要度
改正前 100万円の壁

あなた本人への影響

影響度:◎

年収110万円を超えると、住民税がかかります(住民税非課税でなくなります)

住民税非課税の場合は、給付金をもらえたり、国民健康保険料・国民年金保険料の減免を受けられたりと、多くの優遇措置がありますので、住民税非課税でなくなる影響は非常に大きいです。

「住民税」は、一定の収入をお持ちの方全てが支払う税金です。それでは、住民税がかかる「一定の収入」とはいくらなのでしょ…[続きを読む]

もともと、100万円の壁でしたが、10万円あがって110万円になります。

110万円の壁については、政府や自治体から正式な発表はまだありませんので、実際の内容が異なる可能性があることをご了承ください。

従来、独身の場合、住民税が非課税になる所得は45万円でしたが、これに給与所得控除の最低額55万円を足すと、100万円になりました。

今回の改正では、住民税も給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられますので、住民税が非課税になる年収は110万円となります。

所得45万円+給与所得控除65万円=110万円

住民税非課税の基準は地域によって違う

住民税非課税の基準となる年収は、地域によって違います。

東京都23区、大阪市など都心部では、もともと100万円でしたが、地方では、93万円、96.5万円、97万円のところもあります。

区分 均等割の基準年収 市区町村の例
1級地 100万円 東京都23区、大阪市、札幌市など
2級地 96.5万円(97万円※) 伊勢原市、奈良市、那覇市など
3級地 93万円 秩父市、阪南市、栃木市など

※96.5万円の1万円未満を四捨五入して97万円としている自治体もあります。

それぞれ10万円増えて、103万円、106.5万円、107万円になります。

93万円の壁とは
年収の壁一覧表、100万・103万・106万・130万・150万・201万 | ZEIMO
103万、106万、130万、150万、201万円の壁などたくさんあり、それぞれ賞与や通勤手当を含むのかも違います。…[続きを読む]

(2)123万円の壁

重要度
改正前 103万円の壁

親への影響

影響度:◎

扶養から外れる壁です。
年収123万円を超えると、あなたを扶養している親が扶養控除を受けられなくなります
。すると、親の税金負担が8~33万円程度増えて手取り額が減ってしまいます。

もともと、103万円の壁でしたが、20万円あがって123万円になります。

なお、大学生(19~22歳)の場合、年収123万円を超えると、親は従来の「扶養控除」を受けられなくなりますが、新設される「特定親族特別控除」(仮称)を受けられるようになります。年収150万円以下であれば、従来の扶養控除63万円と同じ金額の控除を受けられます。
よって大学生だけは、次で説明する「150万円の壁」になります。

配偶者への影響

影響度:なし

年収123万円を超えると、あなたの配偶者から配偶者控除がなくなります。

たとえば、パート妻の年収が123万円を超えると、夫が配偶者控除を受けられなくなります。
しかし、妻の年収が160万円以下なら、同じ金額の配偶者特別控除を受けられますので、ここは心配する必要はありません。

(3)150万円の壁

重要度
改正前 103万円の壁

親への影響

影響度:○

大学生(19~22歳の扶養家族)の場合の、実質的に扶養から外れる壁です。

子供の年収123~150万円の範囲では、新設される「特定親族特別控除」(仮称)で、親が満額63万円の控除を受けられます

子供の年収が150万円を超えると、次の表のように扶養控除が段階的に減ります。

扶養控除+特定親族特別控除
特定扶養親族の給与年収
()内は合計所得金額
控除額
所得税 住民税
150万円以下
(85万円以下)(※)
63万円 45万円
150万円超~155万円以下
(85万円超~90万円以下)
61万円 45万円
155万円超~160万円以下
(90万円超~95万円以下)
51万円 45万円
160万円超~165万円以下
(95万円超~100万円以下)
41万円 41万円
165万円超~170万円以下
(100万円超~105万円以下)
31万円 31万円
170万円超~175万円以下
(105万円超~110万円以下)
21万円 21万円
175万円超~180万円以下
(110万円超~115万円以下)
11万円 11万円
180万円超~185万円以下
(115万円超~120万円以下)
6万円 6万円
185万円超~188万円以下
(120万円超~123万円以下)
3万円 3万円
188万円超~
(123万円超~)
0万円 0万円

※年収123万円以下(所得58万円以下)は扶養控除、年収123万円超~年収150万円以下(所得58万円超~所得85万円以下)は特定親族特別控除
※住民税の扶養控除額が変更されるのは2026年(令和8年)の支払いからです。

(4)160万円の壁

重要度
改正前 103万円の壁
150万円の壁

本人への影響

影響度:○

160万円の壁には2種類の壁がありますが、本人への影響は「①所得税がかかる」です。

所得税がかかるのは、もともと、103万円の壁でしたが、57万円あがって160万円になります。

所得税は、160万円を超えた分に対してかかるようになりますが、160万円を超えても、年収が低いうちは、所得税の税率は5%です。
仮に年収161万円になっても、かかる所得税は500円です。影響はあまりないでしょう。

配偶者への影響

影響度:○

配偶者への影響は「②配偶者特別控除が減る」です。

従来、配偶者の年収が103万円を超えると38万円の配偶者控除を受けられなくなりますが、その代わり、年収150万円までは、同額の配偶者特別控除を受けられました。

年収150万円を超えると配偶者特別控除が段階的に減りました。
そのため、150万円の壁と呼ばれていました。これが、10万円あがって160万円になります。

配偶者特別控除
配偶者の給与年収 納税者本人の給与年収
1,095万円以下 1,095万円超
1,145万円以下
1,145万円超
1,195万円以下
123万円超160万円以下 38万円 26万円 13万円
160万円超165万円以下 36万円 24万円 12万円
165万円超170万円以下 31万円 21万円 11万円
170万円超175万円未満 26万円 18万円 9万円
175万円以上180万円未満 21万円 14万円 7万円
180万円以上185万円未満 16万円 11万円 6万円
185万円以上190万円未満 11万円 8万円 4万円
190万円以上197.2万円未満 6万円 4万円 2万円
197.2万円以上201.6万円未満 3万円 2万円 1万円
201.6万円以上 0万円 0万円 0万円

本人の年収が1,095万円以下で、かつ、配偶者の年収が160万円以下なら、満額の38万円が控除されます

(5)200万円の壁(200.4万円の壁)

重要度
改正前 なし(新設)

本人への影響

影響度:○

今回の改正で、完全に新たにできる年収の壁です(正確には、200.4万円の壁)。

年収200万円以下の場合、恒久的に基礎控除が95万円になります。
一方、年収200万円を超えると、当初の2年間は基礎控除の上乗せがありますが、2027年以降は、58万円になります

正確には、200.4万円未満の場合が基礎控除額95万円で、200.4万円以上の場合が基礎控除額58万円になります。
これは、給与所得が単純に年収に比例せず階段状になっているためです。

年収の壁 160万円の壁 基礎控除

その結果、年収200万円を超えた瞬間に、(95万円-58万円)×税率5%=18,500円、手取りが下がります。

年収202.1万円以上になると、元の手取り額に回復しますので、そこまで影響は大きくありませんが、200万円を超えると基礎控除が一気に下がるため、意識されやすい壁といえます。

▷年収の壁 まとめ

新たな年収の壁をまとめます。下の図のような対応になります。

年収の壁

4.その他の新たな年収の壁

その他にも新たな年収の壁が大量にありますので、ここで簡単に紹介します(既存の壁は省略します)。

188万円の壁

大学生(19~22歳の扶養家族)の場合、年収188万円を超えると、親が特定親族特別控除を受けているとき、控除がなくなって0円になります。

給与所得控除65万円+所得123万円=188万円

ただ、大学生の年収が150万円からあがっていくと、控除額は段階的に少しずつ減らされていきますので、大きな影響はないでしょう。

242万円の壁

65歳以上の年金生活者の場合、年金収入242万円(所得132万円)を超えると、基礎控除額が95万円から58万円に一気に減り(2027年以降)、手取りが2万円程度減ります。

公的年金等控除110万円+基準の所得132万円=242万円

年金収入は、年間で変わりませんので、少しだけ242万円を超えた人は自分ではどうしようもなく、ちょっと損をしてしまうかもしれません。

475万円の壁

2025年・2026年の2年間は、給与年収475万円を超えると(正確には475.2万円以上)、基礎控除額が88万円から68万円に減り、手取りが約1万円減ります。
(所得336万円=年収475.2万円)

年収を1万円増やせば手取りは回復しますので、大きな影響はありません。

どちらかというと、年末調整や確定申告をする際に、この年収を境目にして、基礎控除額が異なりますので、間違える可能性があります。
年収は、年末調整の書類を提出して、12月最後の給料が支給されるまで決まりませんので、最終的に、記入した基礎控除額と異なるケースが生じ、会社の経理担当が修正することになるでしょう。

665万円の壁

2025年・2026年の2年間は、給与年収665万円を超えると(正確には6,655,556円を超えると)、基礎控除額が68万円から63万円に減り、手取りが約1万円減ります。
(所得489万円=年収6,655,556円)

ここも、475万円の壁と同様な内容です。

850万円の壁

2025年・2026年の2年間は、給与年収850万円を超えると、基礎控除額が63万円から58万円に減り、手取りが約1万円減ります。
(所得665万円=年収850万円)

ここも、475万円の壁と同様な内容です。

2545万円の壁

給与年収2,545万円を超えると、基礎控除額が58万円から48万円に減り、手取りが約4万円減ります。
(所得2,350万円=年収2,545万円)

手取り額の減少幅は大きいですが、この年収になると、4万円程度の減収はほとんど気にならないレベルかもしれません。

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監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を1000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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