後期高齢者でも医療費控除は受けられる?

高齢者

高齢になればなるほど、医療費が増えやすくなります。

75歳になると健康保険から後期高齢者医療制度に切り替わりますが、変わらず医療費控除が受けられるのでしょうか。

この記事では、後期高齢者医療制度の概要と、医療費控除を受ける方法について解説します。

1.後期高齢者医療制度の概要

まずは、後期高齢者医療制度の概要や自己負担割合などの基本的な内容を把握しておきましょう。

(1)後期高齢者医療制度とは

後期高齢者医療保険制度とは、75歳以上の方、または65歳以上の方で寝たきり等の状態にある方が加入する医療制度です。

75歳の誕生日を迎えた時点でそれまで加入していた健康保険等から脱退し、後期高齢者医療保険制度に加入することとなります。

保険料の支払方法には年金からの天引きや口座振替、納付書による現金納付などの方法があります。

自己負担割合

後期高齢者医療保険制度に加入している方の医療費自己負担割合は以下の通りです。

区分 自己負担割合
現役並み所得者 3割負担
一般 1割負担

本人、または同一世帯内の後期高齢者の中に収入が大きい人(住民税の課税標準額が145万円以上の人)がいる場合、現役並み所得者に該当し、自己負担割合が3割となります。ただし、次の条件のいずれかに当てはまる方は「一般」区分となります。

  • 後期高齢者が1人の世帯で、年収が383万円未満の場合
  • 後期高齢者が1人の世帯で、同一世帯内の後期高齢者以外の70歳以上の方との年収の合計額が520万円未満の場合
  • 後期高齢者が2人以上の世帯で、年収が合計520万円未満の場合

なお、2022年10月1日から後期高齢者のうち、一定所得金額を上回る人を対象に、窓口負担割合は2割に引き上げられました。2割負担になるのは次のような人です。

  • 住民税課税所得(※1)が28万円以上の方(窓口負担割合が3割の方を除く)
  • ただし、課税所得が28万円以上でも、年金収入とその他の合計所得金額の合計が200万円未満(被保険者が2人以上の世帯は収入の合計が320万円未満)であれば1割

※1 住民税納税通知書の「課税標準」の額(前年の収入から、給与所得控除や公的年金等控除、所得控除(基礎控除や社会保険料控除等)を差し引いた後の金額)

(2)後期高齢者制度における医療費控除

医療費控除は確定申告で利用できる控除の一種です。後期高齢者の医療費控除と、一般の医療費控除で異なる点はあるのでしょうか?

結論から言うと、後期高齢者医療制度に加入している方でも医療費控除は通常どおり利用することができます

支払った医療費のうち自己負担部分が医療費控除の対象です。

また、後期高齢者に該当する両親などを扶養している方で、その両親の医療費を支払っている方は、両親の医療費を医療費控除に含めることが可能です(同一生計の医療費はまとめて計算可)。

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2.後期高齢者が医療費控除を受ける方法は?

ここからは後期高齢者の方が医療費控除を受ける方法について、具体的に解説していきます。

(1)後期高齢者の医療費控除の受け方

後期高齢者に該当する方のうち、年金や給与収入から源泉所得税が天引きされている方は、医療費控除を利用することで税金の還付を受けられる可能性があります。

医療費控除の受け方や必要書類、書類の書き方については通常と異なる点はありません。領収書または医療費通知を参照しながら医療費の明細書を記入し、確定申告書と併せて提出しましょう。

なお、子供の扶養に入っており、医療費を子供に負担してもらっている方は、その子供が確定申告で医療費控除を申告することとなります。本人と子供の両方の確定申告で医療費控除を利用することはできません

下記記事で、明細書と確定申告書の書き方を説明しています。

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(2)後期高齢者の医療費通知(医療費のお知らせ)の使い方

後期高齢者に該当する方には、お住いの都道府県の後期高齢者医療広域連合から「医療費通知(医療費のお知らせ)」という書類が送付されてきます。

この「医療費のお知らせ」を確定申告書に添付することで、医療費の明細書の記入を省略することができます。しっかりと保管しておきましょう。

注意点

医療費通知は都道府県によって送付される時期・回数が異なり、場合によっては11月・12月分の医療費が記載されていないこともあります。その場合は領収書を参照しながら11月・12月分の医療費を明細書に記入しなければなりません。

また、様々な理由により一定の医療費が記載されていないこともあります。万が一に備えるためにも「医療費通知があるから」と領収書を捨ててしまわないよう注意が必要です。

(3)後期高齢者の家族の分の医療費を合算して申告したい

生計を一にしている家族の中に後期高齢者がいる場合、世帯の中で最も高収入な方が合算して医療費控除を申請するのがお得です。

3.高齢者の医療費のうち医療費控除の対象になるものは?

後期高齢者の方の医療費控除の対象となる医療費は、通常の医療費控除と異なる点はありません。

(1)医療費控除の対象となる通常の医療費

まず、下記に挙げるような通常の医療費は問題なく医療費控除の対象となります。

  • 医師や歯科医の診察料、入院費用
  • あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費用
  • 通院等のために利用する公共交通機関の交通費
  • 治療や療養のための医薬品の購入費用
  • 扶養家族の医療費

上記はほんの一例です。医療費控除の対象となる医療費についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

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(2)高額医療費は医療費控除の対象?

高額な医療費を支払った場合に「高額療養費」の支給を受けている場合には、支払った医療費から支給された高額療養費を差し引いた金額が医療費控除の対象となります。

(3)介護保険サービス費は医療費控除の対象?

また、介護保険サービスのうち「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「通所リハビリテーション」などは医療費控除の対象となります。

ただし、以下のような費用は医療費控除の対象とはなりません。

  • 生活援助中心の訪問介護
  • 認知症高齢者グループホーム
  • 有料老人ホーム など

介護保険サービスについては対象となるものとならないものの区別が難しい部分があります。詳細は別記事で解説していますので、気になる方は参考にしてください。

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4.よくある質問

ここからは後期高齢者医療制度に加入している方が確定申告をする際に、よくある質問をまとめました。

サービス付き高齢者向け住宅は医療費控除の対象?

バリアフリー構造の住宅に住みながら介護・医療等の生活支援サービスを受けられるサービス付き高齢者向け住宅、いわゆる「サ高住」に支払う費用は医療費控除の対象とはなりません

サ高住の費用は医療費ではなく、あくまで「住宅としての費用」という取り扱いになるためです。

後期高齢者の医療保険料は保険料控除の対象?

医療費控除とは別ですが、支払った保険料については社会保険料控除が受けられます

年金からの天引きや、口座振替・納付書等により支払っている後期高齢者医療保険料は、確定申告や年末調整で社会保険料控除の対象となります。控除の対象となるのは確定申告を行う年の前年、1月~12月までに納付した金額となります。未納がある方はその未納分については控除することはできません。

なお、後期高齢者医療保険料で社会保険料控除の申告をするにあたって証明書や領収書等の添付書類は必要ありません。

まとめ

後期高齢者医療制度であっても、通常どおり医療費控除が適用されます。

医療費控除を受けるためには確定申告が必要になるため、あらかじめ領収書の整理等を済ませておきましょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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