令和元年(平成31年)分給与所得者の保険料控除申告書の書き方(記入例つき)

確定申告 社会保険料控除

会社勤めの方は、保険料控除申告書を会社に提出することで、支払った生命保険料、地震保険料、社会保険料、小規模企業共済等に基づいて、ある程度、所得税が減税になります。

保険控除申告書は平成30年から大きく変わりましたが、令和元年(平成31年、2019年)分は前年度と変わりません。
なお、平成31年分の保険料控除申告書というものはなく、令和元年分の保険料控除申告書という表記になっています。

本記事では「令和元年分 給与所得者の保険控除申告書」の作り方をご説明いたします。

1.保険料控除申告書

年末調整では次の3つの書類を勤務先に提出します。

  • ①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • ②給与所得者の配偶者特別控除申告書
  • ③給与所得者の保険料控除申告書

1-1.何のために記入するの?

年末調整において、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除を受けようとする場合に、記入して勤務先に提出する必要があります。

これらの控除は所得控除といい、所得金額から控除することができます。よって、課税所得を減らすことになり、結果的に所得税を減らす効果があります。

生命保険料控除と地震保険料控除は、支払った保険料を一定の計算式に当てはめて計算した金額が控除額となります。
社会保険料控除と小規模企業共済掛金控除は、支払った金額がそのまま控除額となります。

1-2.対象の保険等がなくても提出するの?

保険料控除申告書は、年末調整において生命保険料控除などを受けようとする場合に、提出するものとされています。
よって、該当する保険料等の支払いがなく、元々これらの控除を受けることができない場合には提出する必要はありません。

しかし、税法上は提出の必要がなくても、勤務先によっては空欄のまま提出するなどの場合もあるので、提出するかどうかは勤務先の指示に従うようにしましょう。

2.書き方

それでは、具体的な書き方を1つずつ詳しく解説していきます。

2-1.申告書

平成30年度から、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」という別々の申告書に分かれました。令和元年分は平成30年分とほとんど変わりません。

令和元年分
令和元年 保険料控除

令和元年分保険料控除申告書はこちらから入手することができます。
【出典】国税庁

2-2.書き方詳説

(1)給与支払者(勤務先)の情報

平成30年分保険料控除申告書

これらの部分については、既に情報が印字された状態の申告書が配布される場合が多いです。
通常、会社側で記入する欄ですが、下記の内容になります。

①:勤務先の所轄税務署名を書きます。あなたの住所地の所轄税務署ではありませんので注意しましょう。

②:勤務先の名称を書きます。名称とは、株式会社などの法人であれば会社名、個人事業者であれば屋号または事業主氏名をいいます。

③:勤務先が書きますので、空欄のまま提出します。

④:勤務先の住所を書きます。支店や営業所など本社以外の勤務である場合においては、本社の住所を書きます。

令和元年分給与所得者の保険料控除申告書 記入例

(2)あなたの情報

平成30年分保険料控除申告書

⑤:あなたの氏名とフリガナを書きます。㊞にはシャチハタではない印鑑を押します。実印である必要はありません。

⑥:あなたの住所を書きます。

令和元年分給与所得者の保険料控除申告書 記入例

(3)生命保険料控除の情報

生命保険料控除は、保険契約の種類に応じて「一般の生命保険料」、「介護医療保険料」、「個人年金保険料」の3つに分けられており、合計で最大12万円の所得控除を受けることができます。
これらを記入する際には、保険会社から発行される控除証明書を手元においてから書き始めましょう。

3つの保険料のどれに該当するかは、控除証明書に記載されています。内容の記入は一見難しそうですが、ほぼ控除証明書の内容を転記していくだけなので大丈夫です。
控除証明書は毎年秋頃に、加入している保険会社から郵送で届くので、この時まで大切に保管しておきましょう。

生命保険料控除について詳しくはこちらをご確認ください。

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(a)一般の生命保険料

控除証明書に区分として「一般の生命保険料」「一般」「一」「生・一」などと記載されているものが該当します(以下は控除証明書の一例)。

生命保険料控除証明書

⑦:保険会社や共済組合の名称を書きます。正式名称で書きますが、長くて入りきらない場合には略称で書いても差し支えありません。

⑧:保険等の種類を書きます。控除証明書に記載されている内容を転記します。例えば、「定期」や「終身」などです。
名称が長くて枠に書ききれない場合は省略形でも構いません。(「定期生命共済」→「定期」)

⑨:保険期間または年金支払期間を記載します。控除証明書に記載されている内容を転記します。例えば、「終身」や「〇年」などです。
控除証明書によっては「保険料払込期間」が記載されているものもありますが、それではありませんので、ご注意ください。

⑩:その保険の契約者の氏名を書きます。基本的にはあなたの氏名となります。

⑪:その保険の保険金等受取人の氏名を書きます。控除証明書に記載されていない場合には、保険証券を確認しましょう。控除を受けるためには、保険金等の受取人はあなた本人または配偶者や親族であることが必要です。

⑫:あなたと⑪の人との続柄を書きます。例えば、奥様である場合には「妻」と書きます。

⑬:保険控除証明書に記載されている区分を転記します。「新・旧」とは、適用される制度が新制度なのか旧制度なのかという意味です。新制度と記載されている場合には、「新」に〇を付けます。

⑭:控除証明書に記載されている「控除対象保険料」を転記します。

⑮:⑭に書いた金額のうち、⑬で「新」に〇を付けた金額の合計を書きます。

⑯:⑭に書いた金額のうち、⑬で「旧」に〇を付けた金額の合計を書きます。

⑰:⑮の金額を次表の算式に当てはめて計算し、算出された金額を書きます。
例えば、⑮の金額が25,000円であった場合には、25,000円×1/2+10,000円=22,500円となります。

計算式Ⅰ保険控除

⑱:⑯の金額を次表の算式に当てはめて計算し、算出された金額を書きます。
例えば、⑯の金額が60,000円であった場合には、80,000円×1/4+25,000円=45,000円となります。

計算式Ⅱ保険控除

⑲:⑰と⑱の金額の合計を書きます。

⑳:⑱と⑲の金額を比べて、大きい方の金額を書きます。

令和元年分給与所得者の保険料控除申告書 記入例

(b)介護医療保険料

控除証明書に区分として「介護」「医療」「介護医療」「生・介」などと記載されているものが該当します(以下は控除証明書の一例)。

生命保険料控除証明書

基本的な書き方は、一般の生命保険料と同じです。

平成30年分保険料控除申告書

㉑:控除証明書に記載されている「控除対象保険料」を転記します。

㉒:㉑の金額の合計を書きます。

㉓:㉒の金額を次表の算式に当てはめて計算し、算出された金額を書きます。
例えば、㉒の金額が80,000円であった場合には、80,000円×1/4+20,000円=40,000円となります。

計算式Ⅰ保険控除

令和元年分給与所得者の保険料控除申告書 記入例

(c)個人年金保険料

控除証明書に区分として「年金」「個人年金」などと記載されているものが該当します(以下は控除証明書の一例)。

生命保険料控除証明書

基本的な書き方は、他の生命保険料と同じです。

平成30年分保険料控除申告書

㉔:保険金等受取人の氏名の下に、その保険契約の年金支払いが始まる日を書きます。日付は控除証明書に記載されています。

㉕:控除証明書に記載されている「控除対象保険料」「申告額」等を転記します。
配当金が支払われている場合は、支払った保険料ではなく、その保険料から配当金を引いた金額になります。

㉖:㉕に書いた金額のうち、「新」に〇を付けた金額の合計を書きます。

㉗:㉕に書いた金額のうち、「旧」に〇を付けた金額の合計を書きます。

㉘:㉖の金額を次表の算式に当てはめて計算し、算出された金額を書きます。
例えば、㉖の金額が100,000円であった場合には、40,000円となります。

計算式Ⅰ保険控除

㉙:㉗の金額を次表の算式に当てはめて計算し、算出された金額を書きます。
例えば、㉗の金額が10,000円であった場合には、10,000円となります。

計算式Ⅱ保険控除

㉚:㉘と㉙の金額の合計を書きます。

㉛:㉙と㉚の金額を比べて、大きい方の金額を書きます。

令和元年分給与所得者の保険料控除申告書 記入例

(d)生命保険料控除額

平成30年分保険料控除申告書

㉜:⑳、㉓、㉛の各控除額の合計を書きます。これが生命保険料控除額の金額となります。

令和元年分給与所得者の保険料控除申告書 記入例

(4)地震保険料控除の情報

地震保険料控除は、地震保険契約を結び保険料を支払っている場合には、最大5万円の所得控除を受けることができます。
記入の際には、生命保険と同様に地震保険料の控除証明書を手元に置いてから書いていきましょう(以下は控除証明書の一例)。

地震保険料控除証明書

地震保険料控除について詳しくはこちらをご確認ください。

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平成30年分保険料控除申告書

㉝:保険会社などの名称を書きます。正式名称で書きますが、長くて入りきらない場合には略称で書いても差し支えありません。

㉞:控除証明書に記載されている内容を転記します。例えば、「地震(建物)」や「地震(家財)」ですが、「地震」のみでも差し支えありません。

㉟:控除証明書に記載されている内容を転記します。基本的に1~5年です。

㊱:その保険の契約者の氏名を書きます。控除を受けるためには、あなた又はあなたと生計を一にする親族であることが必要です。

㊲:その保険契約の対象となっている家や家財を利用している人の氏名を書きます。

㊳:あなたと㊲の人との続柄を書きます。例えば、あなた自身である場合には「本人」と書きます。

㊴:控除証明書に記載されている区分を転記します。
地震保険料である場合には、「地震」に〇を付けます。旧長期損害保険料である場合には、「旧長期」に〇を付けます。

㊵:控除証明書に記載されている「控除対象保険料」を転記します。
加入時に一括で支払った保険料全額ではなく、保険期間で割った金額が、控除対象になっています。
なお、地震保険は火災保険と必ずセットで加入しますが、控除対象となるのは、地震保険の部分の保険料のみです。火災保険の部分の保険料は控除対象になりません。

㊶:㊵に書いた金額のうち、㊴で「地震」に〇を付けた金額の合計を書きます。

㊷:㊵に書いた金額のうち、㊴で「旧長期」に〇を付けた金額の合計を書きます。

㊸:㊶の金額をそのまま転記します。

㊹:㊷の金額が10,000円以下の場合は、㊷の金額をそのまま転記します。
もし、㊷の金額が10,000円を超える場合には、㊷×1/2+5,000で算出された金額を書きます。

㊺:㊸と㊹の合計を書きます。これが地震保険料控除額の金額となります。

令和元年分給与所得者の保険料控除申告書 記入例

(5)社会保険料控除の情報

給与から天引きされている社会保険料以外に支払った社会保険料がある場合は、その支払った金額を記入します。

たとえば、20歳以上の子どもを扶養しており、子どもの国民年金保険料を代わりに支払った場合が該当します。

社会保険料についても控除証明書が届くので、それを見ながら記入していきます。
社会保険料とは、国や公的な機関に支払う次のようなものをいいます。

  • 健康保険料、厚生年金保険料
  • 国民健康保険料(税)、国民年金保険料
  • 後期高齢者医療保険
  • 介護保険料
  • 雇用保険料
  • 国民年金基金掛金
  • 厚生年金基金掛金
  • 公務員共済掛金

社会保険料控除について詳しくはこちらをご確認ください。

平成30年分保険料控除申告書

㊻:自分で直接支払った社会保険の種類を書きます。例えば、「国民年金」や「国民健康保険」などです。給料から差し引かれた社会保険料は記載しません。

㊼:社会保険料の支払先を書きます。例えば、国民年金であれば「日本年金機構」、国民健康保険であれば「○○県○○市」などです。

㊽:保険料を負担すべき人の氏名を書きます。例えば、子供が負担すべき国民年金を親であるあなたが支払った場合、ここには子供の名前を書きます。

㊾:あなたと㊽の人との続柄を書きます。例えば、子供である場合には「子」と書きます。

㊿:控除証明書に記載されている金額を転記します。

51:㊿の金額の合計を書きます。これが社会保険料控除額の金額となります。

令和元年分給与所得者の保険料控除申告書 記入例

(6)小規模企業共済等掛金控除の情報

小規模企業共済や企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金、心身障害者扶養共済などの掛金を支払った場合、その支払った全額の所得控除を受けることができます。
上記他の控除と同様に控除証明書が届きます。

企業型確定拠出年金に加入していて給与から天引きで支払っている場合は、会社が金額を把握していますので、記載不要です。
個人的に、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している場合は、記入します。

小規模企業共済等掛金控除について詳しくはこちらをご確認ください。
【参照】国税庁:小規模企業共済等掛金控除|所得税

平成30年分保険料控除申告書

52:控除証明書に記載されている種類に応じた金額を書きます。

53:52の金額の合計を書きます。これが小規模企業共済等掛金控除額の金額となります。

令和元年分給与所得者の保険料控除申告書 記入例

 

まとめ

支払った保険料に応じて所得税の減額を受けるためには、保険料控除申告書の提出が必要ですので、会社・団体にお勤めの方は、必ず提出するようにしましょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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