給付金10万円は子供に渡すべきか?
新型コロナウイルスの影響が続く中で政府は1人あたり10万円の「特別定額給付金」の支給を決定し、世帯を基準に大人・子供問わず1人10万円を受け取れます。
この給付金について「子供にも支給される10万円を渡すべきか」と悩むご両親の方がいらっしゃいます。
1人につき10万円支給されるとはいえ、子供にとっては大金です。
ここでは、給付金の目的や考え方、ケース別の使い方についての解決策を提案していきます。
目次
1.給付金の目的は?
給付金を子供に渡すべきかどうか考える前に、まず、そもそもどういった目的で今回の給付金が支給されるのか確認してみましょう。
また、支給されるのは「世帯主」ですが、給付金は誰のものになるのが適切なのかも見ていきましょう。
(1)経済的に困窮している世帯の支援が目的
今回の「特別定額給付金」が支給される目的には、新型コロナウイルスの影響によって収入減や失業、廃業など経済的に困難な状況に陥っている人々への支援が挙げられます。
当初はケース別に分類して「本当に必要な人」に対してピンポイントで最大30万円の給付を行う案が出ていましたが、線引きが難しく、制度策定に時間がかかることから、スピーディーな対応が可能な全員支給を行う結果となりました。
そのため、特別定額給付金の目的としては「経済難に陥った人への支援」が中心となり、給付金を使うことで冷え込んだ消費を支えるという目的も含んでいます。
(2)給付金は誰のもの?
給付金の支給対象は「2020年4月27日時点で住民基本台帳に記録されている者」と定められています。言い換えれば「国民全員」と解釈して差し支えないでしょう。
これを見る限り、国民一人ひとりに支給される定額給付金と解釈できます。
しかし、給付金の受給権を持つのは「世帯主」で、世帯主が家族分の給付金をまとめて受け取ります。
もちろん、スピーディーに支給するために、受給権者を「世帯主」とした部分もありますが、「家計への支援」「収入源や失業に対する支援」といった目的を考えると「世帯主への支援」という解釈も可能です。
制度の内容では、支給された給付金が「個人」と「世帯」どちらに属すのか法的な見解が定まっているわけではありません。
判断は支給を受ける各個人に委ねられています。
しかし、そうなると「世帯主が家族分の給付金をまとめて使う」「子供が『自分の10万円だから』使いたい」と言うなど家族間でトラブルが生じる可能性もあるでしょう。
2.パターン別、子供の10万円の使い方
特別定額給付金は年齢を問わず国民一人ひとりに10万円が支給されます。当然、子供にも10万円が支給されるわけですが、子供の分の10万円はどうすればいいのでしょうか。
ここでは、家庭の状況に応じて子供の分の10万円をどのように使うのかについての考え方を紹介します。
ただこれは正解ではありませんので、あくまでも考え方の一つとして捉えていただき、それぞれの家庭の事情に応じて考えるヒントにしてください。
(1)生活が苦しい場合
新型コロナの影響などで「収入減」「失業」「廃業」などによって生活を送るのが苦しい状況になっている場合、「子供の分の10万円も生活費に充てる」のが適切です。
そもそもの生活を送るのが困難になっている以上、給付金の本来の目的である「家計への支援」を最優先に考えるべきです。
子供が小さいと、そういったことを理解するのが難しく、「僕も10万円もらえるよね?」と無邪気に迫ってくるかもしれませんが、家計を優先して説得してください。
また、新型コロナ終息後、余裕が残っていれば埋め合わせてプレゼントをするなど交換条件をつけるのもいいですね。
(2)子供が独立している
子供が社会人になって独立している場合、子供の方も経済的に困難な状況になってかもしれませんので、給付金10万円の使い道は子供に決めさせるべきでしょう。
もちろん各家庭の状況に応じて、子供の了承を得た上で親の家庭に給付金を回すという選択肢もありますが、まずは子供に決定権を委ねてください。
ただ、親子で同居している場合、生活に支障をきたすほどの影響が生じているのであれば、「給付金を家に入れる」という選択肢を話し合った上で決めるのもいいでしょう。
(3)扶養している子供が未成年の場合
次に、子供がまだ独立しておらず親が扶養している場合です。
子供が未成年の場合、基本的に子供の財産を管理する権利は親権者である親に帰属します。
そのため「使い道は親が自由に決める」と解釈もできますが、一方的に決めるのは子供とはいえ納得がいかないでしょう。
子供によっては10万円が入るという情報を聞いて「あれが欲しい」「これ買って」とせがまれるかもしれません。
こういったケースでは以下のような選択肢が考えられます。
- 『貯金する』:子供の口座に貯金して、将来の学費に備える。必要なときにおろして使う。
- 『一部を使う』:一部を使って、子供が欲しいものを買ってあげる。
- 『子供に渡す』:子供が中学生、高校生、大学生くらいであれば、使い方の計画を決めさせたうえで、全額、本人に渡す。無駄使いをしていないか確認する。
もちろんどれを選ぶかは各家庭の事情によって異なるでしょう。
しかし、この支援策が「家計への支援」と同時に「消費の冷え込みを支える」という目的も含んでいると考えるならば、「貯金」よりも「消費」に回すのが適切かもしれません。
(4)扶養している子供が成人の場合
大学生など、扶養している子供が成人の場合には、子供本人に財産を管理する権利が帰属するため、給付金は原則、子供に全額渡すのが適切です。
しかし、学生であれば生活費や学費を親が負担していることが多いでしょう。
家計が苦しく、子供を支えるためのお金に困っているのであれば、子供に事情を説明して給付金を家計に入れてもらうよう説得してください。
3.お金について考えるきっかけに
新型コロナウイルスという未曾有の感染症によって、あらゆるところに深刻な影響が及んでいます。
そんな中、普通だったらありえない「国民1人あたり10万円の給付金」。
家族4人であれば合計40万円が急に振り込まれることになります。
使い道について各家庭の判断に委ねられているため、今回の給付金について「どういった目的で支給されたのか」を改めて考えてみましょう。
「家計を支える」のはもちろんですが、お金を使って消費を促すことで経済対策にもなります。
子供を説得するのは大変かもしれませんが、今回の給付金をきっかけに「お金」について子供と一緒に考えてみると、お金の勉強をする良い機会になるでしょう。
【参考】相続の扱いから類推すると、個人の財産
最後に、少し発展的な話題ですが、世帯主の方が亡くなられた場合、給付金は相続の対象になるのか?という問題があります。
特別定額給付金コールセンターに問合せたところ、申請後に世帯主の方が亡くなられた場合、給付金は相続の対象となり、場合によっては相続税がかかります。ただし、相続の対象となるのは、その世帯主1人分の10万円のみで、他の家族の分は対象にならないとのことでした。
この考え方から類推すると、給付金は一人一人個人が受け取るものであると解釈することもできそうです。