風俗業でも確定申告は必要なの?申告しないとどうなる?
風俗業では「個人事業主」として働いている方が多いでしょう。個人事業主の場合、確定申告という手続きによって所得税や住民税などの税金を支払います。
そして確定申告をしないと、最悪「脱税」と認定され、重いペナルティを課せられる可能性もあります。
この記事では、確定申告の基礎知識を解説したうえで、風俗で働いていることを会社や家族に「バレない」ようにする方法も紹介します。
1.確定申告とは
風俗で働いていることに後ろめたさを感じていたり、「税務署が風俗嬢を調査するわけがない」と思っていたりすると、つい、確定申告を無視したい誘惑に駆られるかもしれませんが、確定申告をしないことは、違法行為になります。
確定申告をして税金を支払うことは国民の義務であり、確定申告をしないと重い罰を受けることになります。
税務署には「この間まで会社員だったから、確定申告が必要だなんて知らなかった」といった言い訳は通用しません。
そもそも確定申告とは「何か?」について解説します。
(1)支払うべき税金を自分で計算して税務署に申告すること
確定申告は、個人が税務署に行って、手続きします。確定申告で具体的に「すること」は次の4点です。
- 支払うべき税金を自分で計算する
- 税金の計算の根拠になる領収書などの資料を用意する
- 税金の計算内容を確定申告書に記載して、資料と一緒に税務署に提出する
- 税金を支払う
確定申告は、税務署から郵送されてくる「所得税及び復興特別所得税の確定申告書」(以下、確定申告書)に必要事項を記入することからスタートします。
確定申告書には、収入や経費、控除額などの金額を記入していきます。
税務署から確定申告書と一緒に「確定申告の手引き」が送られてくるので、それにしたがって金額を記入すると、税金の額が算出されます。
最終的にその金額を、税金として支払う(納付する)ことになります。
税務署から書類が送られてこない場合には、税務署に行けば入手することができますし、国税庁のサイトからダウンロードも可能です。
【参照】国税庁:確定申告特集
(2)必要書類
個人事業主は、確定申告書に記載した収入や経費などが間違いないことを証明しなければなりません。そのため、給与明細書や領収書などが必要になります。これらが「税金の計算根拠になった資料」になり、その一部は確定申告書と一緒に税務署に提出しなければなりません。
税務署に、すべての「資料」を提出するわけではありませんが、提出しない「資料」も手元に保管しておかなければなりません。確定申告を行ってからしばらくして、税務署から確定申告の内容が正しいかどうか、問い合わせがくるかもしれないからです。そのとき「資料」がないと、確定申告書に「嘘を書いた」と類推される可能性があります。
(3)申告手続きは翌年の2月中旬~3月中旬の1カ月間
確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得について行います。
手続きをする期間は、翌年の2月16日から3月15日までの1カ月間で、個人事業主の登録をしている税務署で行ないます(土日の関係により、日程は年によって少し変わります)。
(4)会社員から風俗に転身した方は注意して
会社員から風俗に転身した方は、そもそも確定申告がどのような手続きなのか知らないかもしれません。会社員は確定申告をしなくても済むことが多いからです。
会社は、毎月の給料から税金を差し引いて、会社員にお金を支給しています。これを「源泉徴収」といいます。
さらに会社は、年末に、税金の額を確定させて精算する「年末調整」を行います。
会社は、会社員から受け取った税金を税務署に納めます。会社員は、会社に源泉徴収と年末調整をしてもらえるので、確定申告をしなくてよいのです(一部の方を除きます)。
風俗で働いている人は、個人事業主として風俗店と業務委託契約を結んでいることが多いと思います。この場合は、風俗店に年末調整をする義務が生じません。
そのため、個人事業主である本人が確定申告という、税金を精算する手続きをしなければならないのです。
(5)確定申告をしないと重いペナルティが課される
確定申告をしないと、脱税という罪を犯したとみなされることがあります。
確定申告をしなくても、しばらくは「バレない」かもしれません。しかし税務署の調査能力をあなどってはいけません。かなりの高い確率で、脱税者を見つけます。
2019年に、お笑い芸人が3年間にわたって確定申告していないことがわかり、マスコミが大々的に報じました。申告していなかった額は1億円にもなりました。さらに、4年間にわたって個人的な旅行や洋服購入などの費用を「仕事の経費」と偽っていました。その額は2,000万円にものぼります。
このお笑い芸人は罪を全面的に認めて、税金を3,400万円も支払いました。この額は、ルールどおりに税金を支払っていた場合の額をかなり上回ります。ペナルティが上乗せされているからです。
しかもこのお笑い芸人は、芸能界から「干される」という社会的制裁も受けました。
税金は、確定申告をしてルールどおりに支払ったほうが「絶対にお得」です。
2.確定申告が必要なケースと不要なケース
風俗店によっては、働いている人を正式に雇用して「年末調整」をしています。この場合は、確定申告は必要ありません。
自分が店と雇用契約を交わしているかどうかわからない場合は、早めに店の経営者に確認したほうがよいでしょう。そのとき、次の3つを尋ねてください。
- 「私と店は、雇用契約を交わしていますか」
- 「源泉徴収と年末調整はしてくれていますか」
- 「私は確定申告をする必要はない、と理解して大丈夫ですか」
この3つに、店の経営者がすべて「YES」と答えたら、確定申告をする必要はないでしょう。
(1)ほとんどの場合は確定申告が必要
風俗店が、働く人と雇用契約を交わしていることはまれです。
次の条件に当てはまる人は、確定申告が必要になります。
- 個人事業主で、店と業務委託契約を結んでいる
- 店に年末調整をしてもらっていない
店によっては、上記の2点に当てはまっても、源泉徴収をしていることがあります。しかし、源泉徴収をしていても、年末調整をしていなければ、確定申告が必要になります。
源泉徴収されている人が確定申告をすると、税金の一部が戻ってくることもあります。
(2)所得額が年48万円を超える人は確定申告が必要
確定申告が必要な条件がもうひとつあります。それは所得額が年48万円を超える場合です。したがって、所得額が48万円以下なら、確定申告をする必要はありません。
48万円は「基礎控除」の額です。
確定申告では「所得から48万円を基礎控除として差し引く」というルールがあります。
所得が48万円以下であれば、基礎控除の48万円を差し引くと、所得は0円またはマイナス金額になります。所得が0円またはマイナス金額のときは、税金はかかりません。
※2020円所得税改正で、基礎控除が38円万円から48万円にアップしましたので、確定申告が必要な所得の基準も上がりました。
(3)所得は収入ではない
上記でいう「所得」は収入ではありません。店から支給されるお金が、収入です。所得は、収入から経費を差し引いたもので、次のような計算式になります。
この計算式から、経費の額が大きくなると、所得が減ることがわかります。所得が減ると税金も減ります。そして所得が0円またはマイナス金額になると、税金はかかりません。
そのため経費は、個人事業主にとってとても重要なものになりますので、後で詳しく解説します。
(4)確定申告は不要でも住民税の申告が必要なケースがある
確定申告は所得税などの手続きですが、その情報は税務署から市区町村に通知されます。確定申告をすれば、市区町村に納める住民税の手続きをする必要がありません。
しかし、確定申告をしないと、情報は市区町村に通知されません。そのため、所得税は支払わなくてよいが、住民税は支払わなければならない人は、確定申告は不要でも、市区町村で住民税の申告をする必要があります。
均等割と所得割
住民税には
- 所得割:所得が45万円(給与収入100万円)を超えると、所得に応じてかかる
- 均等割:所得がある金額を超えると、一律でかかる
の2種類があります。
所得割の非課税の基準は全国どこでも同じですが、均等割の非課税の基準は自治体によって異なります。
一般的には、所得45万円(給与収入では100万円)が基準の自治体が多いですが、最も低いところでは、所得38万円(給与収入では93万円)が基準となります。そこで、所得38万円(給与収入では93万円)を超えた人は、お住いの自治体にご相談されたほうが良いでしょう。
また、住民税が非課税にある人も、住民税の申告をされることをオススメします。住民税の申告をすれば非課税証明書をもらうことができるからです。非課税証明書は、児童手当の申請や公営住宅の家賃の減免申請などに必要になります。
3.事業所得と雑所得の違い
風俗店から受け取る報酬は、確定申告では「事業所得」になる場合と「雑所得」になる場合があります。
事業所得のほうがメリットが多いのですが、事業所得と雑所得には次のようなルールがあります。
開業届を提出していれば「事業所得」になります。
副業で風俗の仕事をしていたり、本業であっても「開業届」を税務署に提出していなかったりすると「雑所得」になる可能性があります。
4.青色申告と白色申告の違い
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。
確定申告をするには「帳簿」をつけなければなりません。帳簿をつけることを「簿記」といったり「経理」といったりします。帳簿づけは、青色申告でも白色申告でも必要です。
白色申告は、単式簿記という、簡単な方法で帳簿をつけることができるので、経理作業が楽です。ただ、控除額はありません。
青色申告は、複式簿記という、複雑な方法で帳簿をつけなければならず、経理作業が大変です。ただ、特別控除というものがあり、控除額は最高65万円(e-Tax利用か電子帳簿利用の場合、それ以外では55万円)になります。
青色申告でも、単式簿記(簡単な簿記の方法)で申告することもできますが、特別控除額は10万円になってしまいます。ただ、青色申告には、赤字を繰り越せるなどのさまざまな特典があります。
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5.経費を計上すると税金が安くなる?
所得は「所得=収入-経費」で計算します。所得の額が大きくなると税金が高くなります。つまり、確定申告書に多額の経費を記入すれば、所得の額が小さくなり、税金が安くなります。
しかし、本来は経費にすべきでないお金を経費として記入すれば、それも「脱税」になってしまうかもしれません。
「正しい経費」しか確定申告に計上できません。風俗で働いている人の場合、次のような費用は経費になる可能性があります。
- 仕事で使っているスマホ代
- 店と自宅の往復の交通費
- 仕事で使う衣類代
- 仕事のときに使う化粧品代
- 検査代
- お客さんへのプレゼント代
確定申告書に経費として記載するには、領収書やクレジットカードの利用明細書などが必要ですので、保管しておいてください。
また、スマホや衣類、化粧品などは、仕事とプライベートで兼用することがあると思います。その場合、仕事とプライベートの使用割合を「明確な基準」を設けて、そのうち、仕事で使っている分の代金だけを費用にしてください。
時間や面積といった数値的な根拠があるとよいでしょう。スマホ代金であれば、例えば、ある1カ月の使用時間を計測して、仕事での使用時間が4割、プライベートでの使用時間が6割という結果が出たとします。これを基準にして「毎月のスマホ代金の4割を経費に計上した」と説明することができます。
6.会社や家族にバレないようにするには
会社に勤めていて、副業として風俗で働いている人は、「確定申告をすると会社にバレるのではないか」と心配になるかもしれません。
会社が本格的に調査に乗り出せば、バレてしまうでしょう。ただ、会社にバレにくくすることはできます。
(1)住民税の納付書を自宅に送ってもらうようにする
会社が従業員の副業を知るきっかけのひとつが、市区町村からの通知です。
副業をしている従業員が確定申告をすると、その情報が市区町村に通知されます。市区町村はその従業員の住民税を計算して、追加で住民税を徴収しなければならないとき、その分の金額を追加して会社に通知します。通知を受けた会社は、その従業員の給与から住民税分を差し引き、それを市区町村に納めます。
会社の担当者は「会社で支払った給与の分の住民税の金額よりも多いので、この従業員は副業をしているのだろうか」と疑うことができます。
そこで、市区町村に、会社に通知させない方法があります。
確定申告書の「第二表」という書類に「住民税に関する事項」欄があります。ここの「自分で納付」の選択肢に「○」をつけると、市区町村は会社に通知しません。
その代わり、住民税の納付書が、本人に届きます。その納付書を使って住民税を支払えば、会社に知られることはありません。
(2)確定申告をしていることを家族に知られないようにする
会社員が副業として風俗で働いていて、そのことを家族に知られないようにするには、確定申告をしていることを「隠す」必要があります。これは単純なようでいて、意外に大変です。
税務署は毎年1月下旬ごろになると、個人事業主に確定申告書を郵送します。その封筒を家族に見られないようにしましょう。
また、確定申告をするには、大量の事務作業が必要になります。領収書を集めたり、その金額を帳簿に記載したりすることも必要です。こうした作業を、同居家族に知られないようにする必要もあります。
まとめ
風俗で働いている人のなかには「もう何年も確定申告をしていないが、税務署から何か言われたことはない」と平気に口にする人がいるかもしれません。それは、脱税行為の可能性が高く、いずれ重いペナルティが課せられるでしょう。絶対に真似しないでください。
所得が年48万円を超えている人は、確定申告が必要です。
青色申告を使ったり、経費をしっかり計上したりすることで、税金を合法的に安くすることができます。