補聴器の購入は医療費控除の対象になる?

補聴器

補聴器の購入には高額な費用がかかりますが、医療費控除を受けることで負担を軽減することが可能です。

この記事では「補聴器の医療費控除」について、申請の手順などを詳しく解説していきます。

1.医療費控除

1-1.医療費控除とは

「医療費控除」は、入院や診察料といった医療費の一部を確定申告することで、税金を安く抑える制度です。

確定申告をする際に、所得税の対象となる所得の計算をしますが、控除によって所得から一部を差し引くことができます。

医療費控除の対象となる金額については下記のように定められています。

医療費控除
=「実際に支払った医療費の合計額」ー「保険金などで補てんされる金額」-10万円
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額

【参照】国税庁:所得税 No1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

このようなルールで医療費が控除の対象になるので覚えておきましょう。

1-2.医療費控除の対象となる補聴器とは?

補聴器は医療費控除の対象になりますが、全ての補聴器が控除の対象になるわけではありません。医療費控除として認められるためには一定の用件を満たす必要があります。

補聴器相談医による診察

まず、購入する補聴器に関する基準についてです。
医療費控除を受けるには購入前に耳鼻咽喉科に在籍する「補聴器相談医」の資格を有する医者に診察を受ける必要があります。
「補聴器相談医」の資格に関しては、「日本耳鼻咽頭科学会(http://www.jibika.or.jp)」の公式サイトから資格保有者を調べることができます。

【参照】日本耳鼻咽頭科学会:補聴器相談医名簿

認定補聴器専門店での購入

耳鼻咽喉科での受診後、補聴器販売店で実際に利用する補聴器を選ぶことになりますが、その際には「認定補聴器専門店」で購入する必要があります。
「認定補聴器専門店」とは、公益財団法人テクノエイド協会から認定された専門店のことで、「認定補聴器技能者」という専門家が常勤しています。

医療費控除の対象となる補聴器を選ぶためには、このようなお店で購入してください。「認定補聴器専門店」についてはお店の中などにステッカーなどが貼られているので探してみてください。

補聴器の価格

購入する補聴器の価格については「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」が医療費控除の対象となります。金額の基準については最終的に各税務署の判断に委ねられます。

また、片耳でも両耳でも、それぞれの補聴器が基準を満たせば医療費控除として認められます。

1-3.補聴器を医療費控除の対象にするための手順

補聴器の購入費用を医療費控除の対象とするための手順を詳しく解説します。
正しい手順を経ないと控除を受けることができないので要チェックです。

  1. 「補聴器相談医」の診療を受け、必要な問診・検査を受ける
  2. 補聴器相談医から「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を受け取り、必要事項を記入する
  3. 「認定補聴器専門店」に行き「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を提出、補聴器を試用後、購入する
  4. 購入店から「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」の写しと補聴器の領収書を受け取る
  5. 確定申告を行う際に医療費控除対象として申請する

病院で補聴器相談医の診療が必要なことや、領収書を保管しておく必要があることなど注意してください。

2.医療費控除の申告方法

医療費控除は領収書を持っているだけでは受けられません。医療費を支払ったことを証明する領収書などの書類を元に確定申告を行う必要があります。

補聴器の購入費用の確定申告に必要な書類は以下のようになります。

  • 補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)
  • 領収書
  • 確定申告書
  • 医療費控除の明細書
  • 保険などから補填された金額のわかる書類
  • 医療費通知の書類
  • 源泉徴収票の原本
  • 印鑑・還付金振り込み口座番号・マイナンバー

2017年の確定申告から医療費の領収書を添付する必要はなく、医療費の明細書に転記する方式に変更されています。しかし、領収書については税務署から照会がある可能性も考えて5年間は保管しておきましょう。

確定申告書の用紙や医療費控除の明細書は、税務署または国税庁のホームページからダウンロードできます。

提出方法ですが、お住いの管轄の税務署あてに必要書類を郵送または持参して提出します。e-Taxを利用すればネットで申告手続きが行えます。

確定申告書の提出期限は2月16日から3月15日までとなっているので忘れないようにしましょう。

申告書や明細書の詳しい書き方は、こちらをご覧ください。

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3.補聴器の医療費控除のよくある質問

補聴器の購入費用の医療費控除について、よくある質問をまとめていきます。

家族の補聴器も医療費控除の対象になる?

生計をともにしている家族の補聴器についても医療費控除の対象になります。

医療費控除の対象は、本人だけではなく「生計をともにする家族や親族の医療費」も控除に適用されます。生計を一緒にしていることが要件で、必ずしも同居している必要はありません。

補聴器の修理費、電池代、買い物時の交通費も医療費控除の対象になる?

補聴器の修理費、電池代、購入店までの交通費などは医療費控除の対象にはならないと考えられます。

「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」には「補聴器の購入費用については医療費控除の対象になる」と記載しているのみです。修理費や電池代といった購入費用とは別に分けられるため、通常、医療費控除の対象には該当しないと考えられます。

ただし、最終的な判断はそれぞれの地域の税務署が行いますので、お住まいの管轄の税務署にご相談ください。

補聴器の購入で助成金をもらったら医療費控除はどうなる?

補聴器の購入の際、障害者総合支援法で給付される助成金を受け取ることがあります。この助成金を受け取った分については、医療費控除の対象とはならず「自己負担金」のみが控除の対象となります。

まとめ

補聴器の医療費控除について解説しました。

補聴器の購入費用を医療費控除にするには、「補聴器相談医への受診」と「認定補聴器専門店での購入」が必要となります。確定申告のルールや控除となる金額、申告方法などよく理解しておきましょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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