確定申告の他に、住民税の申告も必要なの?

住民税

一般的に「確定申告」というと「所得税の確定申告」を意味します。しかし、「確定申告」は所得税にだけ存在するのではなく、「住民税」にも存在します。住民税の場合、正式には「確定申告」ではなく単純に「申告」と呼びます。

「確定申告は毎年提出しているけど、住民税の申告はしたことがない」という方もいらっしゃると思います。その理由としては、所得税の確定申告に基づき、住民税は自動的に計算されるからです。別途、住民税だけを申告する方はあまり多くはありませんが、住民税の申告が必要になるケースもあります。

今回は、「所得税の確定申告」と「住民税の申告」との関係や制度についてご紹介します。

1.所得税の確定申告と、住民税の申告の仕組み

「所得税の確定申告」と「住民税の申告」は、どちらも所得(収入-経費)に対して課税される税金です。

税務署などで「所得税の確定申告」を提出すると、提出した確定申告の情報が税務署から市町村へと伝えられ、その情報を基に市町村で住民税の計算を行い、納税者に通知するという仕組みになっています。(専門的な用語で「賦課課税方式」といいます。)

1-1.所得税と住民税の申告の違い

所得税と住民税は、「申告の目的」が異なります。所得税の確定申告では、1年間の所得(収入から経費を差引いた金額)を確定し、税務署に届け出ることを言います。納めた所得税は、「国税」として取扱われます。

一方、住民税の申告では、居住している地方自治体に1年間の所得を届け出ることを言います。納めた住民税は、「地方税」として取扱われます。

「国税」と「地方税」の違いは、使われ方です。「国税」が、主に医療費や警察消防費、道路の建設費用に使われているのに対し、「地方税」は、公立学校の教育費やゴミ処理費、公園などの整備に使われています。

1-2.住民税は後払いの税金

所得税」は、1年間の所得を計算し毎年3月15日までに申告を行い納税する「リアルタイムで課税される税金」です。会社員の方にとっては毎月の給料から源泉所得税が差し引かれるため、「前払いの側面」が強い税金です。

一方、「住民税」は、確定した所得に基づいた「後払いの税金」です。所得税の確定申告後に住民税の税額が算出されるため、納付する(税金を納める)のは、課税時期(1月~12月)の翌年6月~翌々年5月までとなり、所得税と比べると1年近く遅く納税することになります。

つまり、今年の所得(収入)が無くても、前年に所得が多ければ多額の住民税の納付が必要になります。年によって所得が大きく異なる方は、計画的に納税資金を確保する必要があります。

2.住民税の申告は必要/不要?

2-1.住民税の申告が不要な場合

まず、わかりやすくするために、住民税の申告が不要なケースを簡単に紹介しますと、次のような場合です。
ほとんどの人がこちらに当てはまるでしょう。

  • 確定申告を行っている場合
  • 会社員・公務員の場合、勤務先で年末調整を行っている場合
  • 年間の所得が一定金額以下の場合(金額がやや複雑なため、後で解説)

会社員・公務員の場合、年末調整を行えば、通常、勤務先から各従業員の住民票のある市区町村に給与支払報告書を提出しますので、住民税の申告は不要です。

また、それ以外の方でも、確定申告を行えば、申告した情報が税務署から市町村へと伝えられますので、住民税の申告は不要です

2-2.住民税の申告が必要な場合

問題となるのは、所得税の確定申告は不要だが、住民税の申告は必要になるケースです。
次に該当する人は「住民税の申告」が必要です。

(1)給与所得以外の20万円以下の所得がある人

会社員や公務員などの給与所得者が年末調整を行っている場合で、副業の収益などの雑所得が20万円以下の場合は「所得税の確定申告」は必要ありません(確定申告不要制度)。
しかし、この制度は「住民税」には適用されません。つまり、給与所得者に20万円以下の副業での所得がある場合は、「所得税の確定申告」は必要ありませんが、「住民税の申告」が必要になります

例えば、年末調整を行っている会社員が仮想通貨の売買を行い、20万円以下の利益を得た場合は「所得税」の確定申告は必要ありませんが、「住民税」の確定申告をしなければなりません。ここは、意外に知られていないポイントですので、注意しましょう。

(2)公的年金受給者のうち、年金以外の20万円以下の所得があった人

年金所得者で、1年間の公的年金収入金額が400万円以下の人が、その他の雑所得金額が20万円以下であるときは、「所得税の確定申告」は必要ありません。しかし、①と同様にこの制度は、「住民税」には適用されません。年金以外の雑所得がある方は、「住民税の申告」が必要です。

(3)前年中の収入がなかった場合

前年中の収入が全くなかった場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。お住まいの地方自治体によって異なりますが、前年中の収入が全く無い場合でも、住民税の申告が義務付けられている地方自治体もあります(例:横須賀市)。

また、前年中の収入が全く無い場合でも、申告しないと以下の問題が発生するため、住民税の申告を勧めている地方自治体もあります。

  • 非課税証明書を発行することができない
  • 公営住宅の更新等で必要となる住民税に関する証明を発行することができない
  • 国民健康保険料や介護保険料、後期高齢者医療保険料などの保険料の算定ができない

収入がないのに申告が必要というのが意外だと思いますが、非課税の証明を受けたり、自治体の各種の減免制度を活用するためには、住民税の申告を行う必要があります

詳しくは、後述の「4.住民税が非課税でも申告をした方が良い場合」で解説しています。

3.住民税の金額の計算方法

一般的に所得税の確定申告を行った場合は、住民税の申告をする必要がないため、住民税の計算方法はあまり知られていません。「住民税の申告」は、「所得税の確定申告」の仕組みと骨組みは同じですが、細かい部分が異なります。ここでは、住民税の計算方法をご紹介します。

住民税の計算方法は、

  • ①所得割:一律、所得の10%(市区町村6%、都道府県4%)
  • ②均等割:一律、5,000円

から構成されています。(税率と金額は、自治体によって異なる場合もあり。)

3-1.①住民税の所得割

所得割は「所得税の確定申告」と同様に、所得金額に応じて税額が異なります。所得税と違い、「累進課税(所得が多くなるほど税率が高くなる)」ではなく、一律10%(市区町村6%、都道府県4%)になります。一部の自治体では、独自の税率を設けているところがあります。

所得割の税額は、以下の算式により計算します。

(所得金額-※所得控除額)×税率10%-税額控除額=所得割

所得控除

※所得控除額は、所得税の確定申告と同様に生命保険料控除や扶養控除などが該当します。しかし、所得税の確定申告と控除額が異なります。住民税と所得税の所得控除額の違いは、次のとおりです。

所得控除額の違い(人的控除)
所得控除(人的控除)住民税所得税
基礎控除43万円48万円
配偶者控除33万円38万円
老人配偶者控除(70歳以上)38万円48万円
配偶者特別控除の限度額33万円38万円
一般の扶養控除(16歳以上)33万円38万円
特定扶養控除(19歳以上23歳未満)45万円63万円
老人扶養控除(70歳以上)38万円48万円
同居老親等扶養控除45万円58万円
障害者控除26万円27万円
特別障害者控除30万円40万円
同居特別障害者控除53万円75万円
寡婦控除26万円27万円
ひとり親控除30万円35万円
勤労学生控除26万円27万円
所得控除額の違い(物的控除)
所得控除(物的控除)住民税所得税
生命保険料控除限度額7万円12万円
【内訳】一般・介護医療・個人年金分 限度額各2万8千円各4万円
地震保険料控除限度額2万5千円5万円
【内訳】地震保険料分 限度額2万5千円5万円
【内訳】(旧)長期損害保険料分 限度額1万円1万5千円

※雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除は住民税と所得税の所得控除額は同じです。

非課税限度額

所得税がかからない限度額

所得控除の金額は、所得税と住民税で大きく異なります。特に「基礎控除」は、納税が必要になるか判断する重要な部分です。給料所得者の所得税の納税の要否は、給与所得控除額(65万円)に基礎控除額(48万円)を合計した103万円となります。つまり、給与収入が103万円未満の人は所得税の納税が発生しません。

2020年度から基礎控除の金額が改正され所得税の基礎控除が38万円から48万円(住民税の基礎控除は33万円から43万円)に引き上げられました。ただし、給与所得者の場合は、給与所得控除が10万円減額されたので実質的には影響はありません。(年収850万円以下の人)

  • 【改正前】給与収入103万円-基礎控除38万円-給与所得控除65万円=課税所得金額 0円
  • 【改正後】給与収入103万円-基礎控除48万円-給与所得控除55万円=課税所得金額 0円

住民税の所得割がかからない限度額

住民税の所得割については、所得税の計算と異なります。総所得金額が45万円(お住まいに地域によって異なります)を超えない場合には、住民税の所得割が課税されないというルールがあります。次の算式により年間給与収入が100万円を超えなければ住民税の所得割は発生しません

給与所得控除55万円+住民税所得割の課税基準45万円=給与収入100万円

2020年度(令和2年度)の改正により給与所得控除額が減額されます。その対応として「住民税所得割の課税基準35万円」に10万円加算しますので、実質的な影響はありません。

  • 【改正前】給与所得控除65万円+住民税所得割の課税基準35万円    =給与収入100万円
  • 【改正後】給与所得控除55万円+住民税所得割の課税基準35万円+10万円=給与収入100万円
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3-2.②住民税の均等割

住民税の「均等割」は、所得の金額に関わらず定額で課税される住民税です。市町村や都道府県によって独自の税額を設けている場合がありますが、一般的には、市町村民税及び特別区民税3,500円、都道府県民税1,500円の合計5,000円となっています。

ただし、2014年~2023年までは、復興財源確保の税制措置として市町村民税と都道府県民税それぞれに500円がすでに上乗せされています。

3-3.住民税が非課税になる場合

住民税が非課税となる金額は、所得割と均等割でそれぞれ設定されています。以下の条件を満たすと、住民税は非課税になります。(自治体によって異なる場合がありますので、お住いの自治体への確認が必要です。)

<東京都練馬区の場合>
所得割:所得金額 ≦ 45万円 × 世帯人員数 + 32万円
均等割:所得金額 ≦ 45万円 × 世帯人員数 + 21万円

また、「生活保護を受けている場合」「未成年者、障がい者、寡婦、寡夫で所得金額が125万円以下(給与収入が204万4千円未満)の場合」も住民税は非課税になります。

4.住民税が非課税でも申告をした方が良い場合

上記要件に当てはまり、住民税が非課税になった場合、扶養家族も含めて「住民税非課税世帯」となります。「住民税非課税世帯」には、低所得者を救済する目的による恩恵が多く用意されています。

ただし、収入が少なくても、住民税の申告をしなければ「住民税非課税世帯」になりません。「住民税非課税世帯」に当てはまる方は、恩恵を受けるためにも「住民税の申告」を行いましょう

恩恵①国民健康保険料の減免

「住民税非課税世帯」には、国民健康保険料の減免があります。所得に応じて国民健康保険の保険料が2割から7割が減免されます。

恩恵②高額療養費の自己負担限度額

医療機関での医療費の支払いが高額になった場合、申請することで自己負担限度額35,400円を超えた額が払い戻される「高額療養費制度」を受けることができます。

恩恵③NHKの受信料が免除

「住民税非課税世帯」に障がい者がいる場合は、NHKの受信料が免除されます。

その他、次のような恩恵があります。

  • 入院中にかかる食事の自己負担額の減額
  • がん検診料金の免除
  • 予防接種が無料
  • 保育料の減額

5.住民税の申告方法

市役所や町役場などの市民税課や市民税担当窓口に住民税の申告書を提出します。住民税の申告書の提出場所は各市町村によって異なりますので、事前に市町村のホームページで確認することをおすすめします。

住民税の申告書は、市民税課の窓口か、市町村のホームページからダウンロードすることで入手できます。住民税の申告書の他に必要になる書類は、以下のとおりです。

  • 収支内訳書(事業所得や不動産所得のある人)
  • 源泉徴収票(給料収入がある人)
  • 生命保険料控除証明書や地震保険控除証明書
  • 医療費の領収書(医療費控除を受けられる人)
  • 印鑑
  • 身元確認書類(マイナンバーカード、または通知カード+運転免許証など)

住民税申告書の提出期間は、所得税の確定申告と同様に2月16日~3月15日までになっています(年によって、土日の関係により少し異なります)。
期限内に申告できるように早めに準備しましょう。

6.住民税の納税方法

住民税の納付方法は、次の2種類です。

①特別徴収

給与支払者(雇用主)が従業員(給与所得者)に支払う給与から、住民税を毎月天引きして、「納税義務者の代わりに」まとめて納税する方法です。一般的な公務員や会社員は、「特別徴収」により住民税の納付を行っています。各市町村でも給与所得者については「特別徴収」を推奨しています。

②普通徴収

区市町村から送付される納税通知書により、年4期に分けて「納税義務者自身」が納税する方法です。個人事業主や年金受給者の方を対象としています。納税通知書とともに届く「納付書」で、銀行振込やコンビニ払いで納付することができます。

まとめ

今回は、「住民税の申告」についてご紹介しました。

あまり馴染みのない「住民税の申告」ですが、副業で20万円以下の利益を得ている方は申告漏れになっているケースが多くあるため注意が必要です。

また、収入がないからと言って無申告にしていると「住民税非課税世帯」に該当せず、低所得者を救済する目的による恩恵を受けられない場合もあります。ご自身が住民税の申告をする必要があるのかどうか確認しましょう。

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