給与所得者と個人事業主の税金・社会保険料の違いを計算してみました

仕事 フリーランス

 2018年現在、フリーランスとして働く人の数は1119万人となっています。(ランサーズ株式会社の調査)

働いている人のおよそ17%がフリーランスということになりますから、学校で40人のクラスだったとすると、そのうちの6人~7人は学校卒業後には企業に属さず働いている人ということになりますね。

今回は、給与所得者と個人事業主では税金や社会保険の負担でどちらのほうが有利なのか?について、詳細なシミュレーションをしてみます。
本文がやや長くなりますが、ご了承ください。

1.給与所得者と個人事業主の税金・社会保険料の比較

具体例を想定して、給与所得者として働いた場合、個人事業主としてた働いた場合の両方で税金や社会保険料の負担がどのように変わるのかについてシミュレーションをしてみます。

1-1.具体例① 年収400万円、独身のケース

仕事内容、経費、年収等の条件は下記のとおりと仮定します。

仕事:プログラマー
経費:100万円と仮定(パソコン、家の家賃、光熱費、交通費、通信費、書籍代等)
年収:400万円
年齢、家庭構成:30歳独身
住所:東京在住

1-1-1.給与所得者として働いた場合の税金負担

給与所得者(サラリーマン)として働いた場合には、以下のような税金や社会保険料を負担する必要があります。

所得税

年収400万円-給与所得控除134万円-所得控除合計額96万7280円=169万2000円(1000円未満は切り捨て)
169万2000円×所得税率5%=8万4600円

※所得控除の内訳:基礎控除38万円+社会保険料控除58万7280円=96万7280円

復興特別所得税

所得税額8万4600円×2.1%=1700円(100円未満は切り捨て)

住民税

年収400万円-給与所得控除134万円-所得控除合計額91万7280円=174万2000円(1000円未満は切り捨て)
174万2000円×10%=17万4200円(所得割の金額)
均等割の金額=年額5000円
合計=17万4200円+5000円=17万9200円

※所得控除の内訳:基礎控除33万円+社会保険料控除58万7280円=91万7280円

健康保険料

年収400万円÷12か月=月収およそ33万3000円と仮定
標準報酬月額34万円×健康保険料率9.90%÷2=1万6830円(月額)
月額1万6830円×12か月=20万1960円

厚生年金保険料

年収400万円÷12か月=月収およそ33万3000円と仮定
標準報酬月額34万円×健康保険料率18.30%÷2=3万1110円(月額)
月額3万1110円×12か月=37万3320円

雇用保険料

給与総額400万円×雇用保険料率0.3%=1万2000円

税金、社会保険料の合計額

税金の合計額:8万4600円+1700円+17万9200円=26万5500円
社会保険料の合計額:20万1960円+37万3320円+1万2000円=58万7280円

合計:26万5500円+58万7280円=85万2780円

1-1-2.個人事業主として働いた場合の税金負担

次に、個人事業主(フリーランス)として働いた場合の税金、社会保険料の負担額をシミュレーションします。

所得税

年収400万円-必要経費100万円-青色申告特別控除65万円-所得控除合計額81万5900円=153万4000円(1000円未満切り捨て)
153万4000円×5%=7万6700円(所得税額)

※所得控除合計額=基礎控除38万円+社会保険料控除43万5900円=81万5900円

復興特別所得税

7万6700円×2.1%=1600円(100円未満切り捨て)

住民税

年収400万円-必要経費100万円-青色申告特別控除65万円-所得控除合計額76万5900円=158万4000円(1000円未満切り捨て)
158万4000円×10%=15万8400円(所得割:100円未満切り捨て)
均等割の金額=年額5000円
合計:15万8400円+5000円=16万3400円

※所得控除合計額=基礎控除33万円+社会保険料控除43万5900円=76万5900円

国民健康保険料

年収400万円-必要経費100万円-青色申告特別控除65万円=235万円
235万円-基礎控除33万円=202万円
202万円×(医療分7.47%+支援金分1.96%)=19万400円(所得割:100円未満切り捨て)
医療分均等割3万8400円+支援金分1万1100円=4万9500円(均等割)
合計:19万400円+4万9500円=23万9900円

国民年金保険料

1万6340円×12か月=19万6000円(平成30年)

税金、社会保険料の合計額

税金合計:7万6700円+1600円+16万3400円=24万1700円
社会保険料合計:23万9900円+19万6000円=43万5900円

合計:24万1700円+43万5900円=67万7600円

1-1-3.比較

給与所得者と個人事業主の税金と社会保険料を比較して並べてみます。

  給与所得者 個人事業主
所得税+住民税 26万5500円 24万1700円
社会保険料 58万7280円 43万5900円
合計額 85万2780円 67万7600円
差額 +17万5180円  

このケースでは、給与所得者のほうが個人事業主よりも17万5180円、負担が重いことになります。

1-2.具体例② 年収600万円、扶養家族ありのケース

次に、以下のような条件の人についてもシミュレーションしてみます。

仕事:プログラマー
経費:100万円と仮定(パソコン、家の家賃、光熱費、交通費、通信費、書籍代等)
年収:600万円
年齢、家庭構成:40歳(介護保険あり)、配偶者と小学生の子供2人を扶養
住所:東京在住

1-2-1.給与所得者として働いた場合の税金負担

所得税

年収600万円-給与所得控除額174万円-所得控除額合計167万1100円=258万8000円(1000円未満切り捨て)
258万8000円×税率10%-控除額9万7500円=16万1300円(100円未満切り捨て)

※所得控除合計=167万1100円(基礎控除38万円+配偶者控除38万円+社会保険料91万1100円)

復興特別所得税

16万1300円×2.1%=3300円(100円未満切り捨て)

住民税

所得割:年収600万円-給与所得控除額174万円-所得控除額合計167万1100円=258万8000円(1000円未満切り捨て)
258万8000円×税率10%=25万8800円(100円未満切り捨て)
均等割の金額=年額5000円
合計額:25万8800円+5000円=26万3800円

※所得控除合計=157万1100円(基礎控除33万円+配偶者控除33万円+社会保険料91万1100円)

健康保険料

年収600万円÷12か月=50万円(月給)→標準報酬月額:50万円
標準報酬月額50万円×健康保険料率11.47%÷2=2万8675円
2万8675円×12か月=34万4100円

厚生年金保険料

年収600万円÷12か月=50万円(月給)→標準報酬月額:50万円
標準報酬月額50万円×厚生年金保険料率18.30÷2=4万5750円
4万5750円×12か月=54万9000円

雇用保険料

賃金支払額600万円×雇用保険料率0.3%=1万8000円

税金、社会保険料の合計額

税金合計:16万1300円+3300円+26万3800円=42万8400円
社会保険料合計:34万4100円+54万9000円+1万8000円=91万1100円

合計:42万8400円+91万1100円=133万9500円

1-2-2.個人事業主として働いた場合の税金負担

所得税

600万円-必要経費100万円-青色申告特別控除65万円-所得控除合計額182万1300円=252万8000円(1000円未満切り捨て)
252万8000円×税率10%-控除額9万7500円=15万5300円(100円未満切り捨て)

※所得控除合計額=基礎控除38万円+配偶者控除38万円+社会保険料106万1300円=182万1300円
配偶者の社会保険料を代わりに支払った場合、その分も社会保険料控除に含めることができます。

復興特別所得税

15万5300円×2.1%=3200円(100円未満切り捨て)

住民税

所得割:600万円-必要経費100万円-青色申告特別控除65万円-所得控除合計額172万1300円=262万8000円(1000円未満切り捨て)
262万8000円×税率10%=26万2800円(100円未満切り捨て)

※所得控除合計額=基礎控除33万円+配偶者控除33万円+社会保険料106万1300円=172万1300円

国民健康保険料

所得割:600万円-必要経費100万円-青色申告特別控除65万円-基礎控除33万円=402万円
402万円×(医療分7.47%+支援金分1.96%+介護分1.52%)=44万100円(100円未満切り捨て)

均等割:世帯数4人×(医療分3万8400円+支援金分1万1100円)=19万8000円
均等割:世帯数2人×介護分1万5600円=3万1200円
均等割合計額:22万9200円

国民健康保険料合計:44万100円+22万9200円=66万9300円

国民年金保険料

1万6340円×12か月×2人分=39万2000円(平成30年)

※配偶者の国民年金保険料も支払ったとします。

税金、社会保険料の合計額

税金合計=15万5300円+3200円+26万2800円=42万1300円
社会保険料合計=66万9300円+39万2000円=106万1300円

合計=42万1300円+106万1300円=148万2600円

1-2-3.比較

給与所得者と個人事業主の税金と社会保険料を比較して並べてみます。

  給与所得者 個人事業主
所得税+住民税 42万8400円 42万1300円
社会保険料 91万1100円 106万1300円
合計額 133万9500円 148万2600円
差額    +14万3100円

こちらのケースでは、個人事業主のほうが給与所得者よりも14万3100円、負担が重いことになります。

1-3.比較結果

上記のシミュレーションでは、
年収400万円独身のケースでは、給与所得者のほうが個人事業主よりも税金・社会保険料の負担が高く、
逆に年収600万円扶養家族ありのケースでは、個人事業主のほうが給与所得者よりも税金・社会保険料の負担が高くなりました。

給与所得者と個人事業主では、税金の金額にはそれほど差がありませんが、社会保険料で差がついていことがわかります。
一般的には、独身の場合は、給与所得者のほうが社会保険料が高くなりがちですが、扶養家族ありの場合は、個人事業主のほうが社会保険料が高くなる傾向にあります。

1-4.注意点

ただし、上記の計算例は、あくまでも一例です。
家族構成(扶養している家族の人数や年齢)や必要経費の参入金額によっては異なった結果となることがありますので注意してください。

ご自分の状況に当てはめて具体的な試算をしてみたいという方は一度税理士やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談してみることをおすすめします。

2.税金や社会保険料の負担の仕方の違い

日本国内で収入を得た場合、その収入のうちの何割かは必ず税金や社会保険料を負担する必要があります。

負担しなくてはならない税金や社会保険料の種類は以下の通りです。

  • 所得税
  • 復興特別所得税
  • 住民税
  • 医療保険(国民健康保険または健康保険)
  • 年金保険(国民年金または厚生年金)
  • 雇用保険(給与所得者のみ)

以下ではフリーランス(個人事業主)として収入を得た場合と、サラリーマン(給与所得者)として収入を得た場合の税金や社会保険料の負担の仕方の違いについてみていきます。

2-1.給与所得者の場合

給与所得者の場合、所得税、復興特別所得税、住民税の3つの税金と、健康保険、厚生年金、雇用保険料の3つの社会保険料を負担する必要があります。

2-1-1.給与所得者の所得税の計算方法

給与所得者は以下の計算式に基づいて所得税を計算して納付します。

(給与収入額-給与所得控除-所得控除)×所得税率-税額控除

なお、給与所得者の場合は勤務先企業が毎月のお給料から勤務先の会社が所得税や住民税の概算額を天引きし、納付を代行してくれます。

以下では言葉の意味について簡単に説明させていただきます(所得控除や所得税率、税額控除については給与所得者、個人事業主ともに共通です)

給与収入額とは

給与収入額は月給とボーナスの支給額の合計をいいます。
実際に銀行口座に入金される金額ではなく、税金や社会保険料を天引きされる前の金額であることに注意してください。
勤務先の会社から渡される給与明細や源泉徴収票でいうと「支払金額」や「総支給金額」がここでいう「給与収入額」に該当します。

給与所得控除とは

給与所得控除というのはサラリーマンにとっての「必要経費」のようなもので、収入額に応じて法律で金額が決まっています。

例えば、給与収入額180万円以下の人であれば「収入金額×40%(最低65万円)」、360万円の人であれば「収入金額×30%+18万円」といったように、収入が大きい人ほど給与所得控除の金額も大きくなる仕組みになっています。

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労働集約的な事業を行っている方(事業にかかる経費のほとんどが人件費という方)であれば、給与所得者として働いたほうが所得が小さくなる傾向があります。

しかし、それ以外の事業(商品販売業のように人件費以外の必要経費が多く発生する事業)の場合には必要経費を法律で決まった金額しか参入できないことは税負担上不利に働く可能性が高いです。

具体的にはデザイナーやライターのような仕事をされている方は給与所得者として働くほうが有利になる可能性が高いでしょう。

所得控除とは(給与所得者と個人事業主で共通)

まったく同じ収入を得ている人であっても、それぞれの家庭の事情によって生活の負担は大きく異なります。
例えば、同じ年齢や収入でも独身者と、奥さんと子供が3人いる…という人では生活の負担はまったく異なりますよね。

こうした差が不平等感につながらないために設けられている仕組みが所得控除です。

所得控除というのは「税金を負担する人それぞれの事情に合わせて所得から差し引きしてくれる金額」のことで、例えば医療費の支出に関する医療費控除や、収入のない配偶者や家族を養っている人に適用される配偶者控除、扶養控除などがあります。

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所得税率はどう決まる?(給与所得者と個人事業主で共通)

日本の所得税では、所得の多い人ほど所得税率が高くなる「累進課税」の仕組みが採用されています。

実際には、所得税率は上記の3つの数字を差し引きした金額(これを「課税される所得金額」といいます。「給与収入額-給与所得控除-所得控除」で計算します)に応じてその人の所得税率が決まります。

例えば、課税される所得金額が195万円以下の人の場合は所得税率は5%、195万円~330万円以下の人であれば10%という具合です(最大45%)

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税額控除とは(給与所得者と個人事業主で共通)

税額控除というのは、特定の種類の支出をしたときに、一定の計算額を税額からそのまま差し引きしてもらえる仕組みのことを言います。

所得控除と似ていますが、所得控除については計算上「控除額×税率」の金額だけ負担が小さくなるのに対して、税額控除の場合は「控除額そのもの」だけ負担が小さくなるという違いがあります(当然、税額控除の方が有利です)

代表的な税額控除としては住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合に適用される住宅ローン控除や、寄付をしたときに適用される寄付金控除などがあります。

2-1-2.復興特別所得税

平成25年~49年の間までは、所得税に加算する形で復興特別所得税を負担する必要があります(給与所得者、個人事業主共通です)

復興特別所得税は、「計算した所得税の金額×2.1%」で計算して納付します。

2-1-3.給与所得者の住民税の計算方法

住民税は所得金額に応じて計算される「所得割(しょとくわり)」と、所得の金額によらず一定額が課税される「均等割(きんとうわり」の2つの合計額を負担します。

住民税所得割の計算式

上で所得税の計算方法について解説させていただきましたが、所得税と住民税所得割の計算方法は基本的に同じです(所得控除の金額が微妙に異なります)

念のために計算式を再掲すると以下のようになります。

(給与収入額-給与所得控除額-所得控除)×税率-税額控除

なお、住民税の税率は所得の金額によらず一律で10%(市区町村民税6%+都道府県民税4%)となっています。

住民税均等割の計算式

住民税均等割の金額は所得の金額にかかわらず一定です。
例えば、東京都世田谷区であれば5000円(区民税3500円+都民税1500円:平成30年)となっています。

2-1-4.給与所得者の健康保険料の計算方法

給与所得者は、勤務先の会社と折半(半分ずつ)で健康保険料を負担します。
社会保険料に関しては、給与所得者はこの「労使折半」のルールがあるためにフリーランスよりも有利といわれます。

フリーランスとして働いた場合には保険料の全額を支払わなくてはなりませんが、給与所得者の場合には半分を勤務先が負担してくれるためです。

実際に負担する健康保険料は「標準報酬月額×健康保険料率÷2」で計算します。

例えば、東京都の会社に勤める23歳の人で、月給20万円の人であれば、標準報酬月額(意味については後述)は17等級で20万円、健康保険料率は9.90%ですから、負担する健康保険料は20万円×9.90%÷2=9900円ということになります。

標準報酬月額とは

標準報酬月額というのは、社会保険料計算のための等級のことで、例えば月給35万円~37万円の人であれば「25等級:36万円」、月給135万5000円以上の人であれば「50等級:139万円」というように決まっています。

健康保険料率とは

健康保険料率は都道府県によって異なり、例えば平成30年度の大阪府の健康保険料率は10.17%、東京都で9.90%となっています。

なお、40~64歳の人(介護保険第2号被保険者に該当する人)は健康保険料率に介護保険料率を上乗せして負担しなくてはなりません。
大阪府の場合、介護保険を負担する人の健康保険料率は11.74%、東京都で11.47%となります。

2-1-5.給与所得者の厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料の計算方法は、上で説明させていただいた健康保険料の計算方法と基本的に同じです(保険料率のみが異なります)

厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率÷2

平成30年の厚生年金保険料率は18.30%となっています。

2-1-6.給与所得者の雇用保険料の計算方法

雇用保険料は「毎月の賃金額×雇用保険料率」で計算します。
一般的な事業での従業員が負担する雇用保険料率は平成30年3月31日までは0.3%(1000分の3)となっています。
なお、農林水産業や建設業の場合には雇用保険料率は0.4%(1000分の4)です。

2-2.個人事業主の場合

次に、個人事業主の方の税金や社会保険料の計算方法についてです。

個人事業主は所得税、復興特別所得税、住民税、消費税の4つの税金と、国民健康保険、国民年金の2つの社会保険料を負担する必要があります。
個人事業主の場合、1年に1回自分で確定申告を行い、納付期日までに自分で税金を納めなくてはなりません。

2-2-1.個人事業主の所得税の計算

個人事業主の人は、1年間を通して得た総収入金額から必要経費の金額を差し引きし、さらに「青色申告特別控除」を差し引きした金額で所得(事業所得)の金額を計算します(計算式にすると以下のようになります)

事業所得=総収入金額-必要経費-青色申告特別控除

事業所得を計算した後の計算は給与所得者の場合と同じです。
※念のために計算式を再掲すると以下の通りです。

所得税額=(事業所得-所得控除)×所得税率-税額控除
総収入金額とは?

総収入金額とはいわゆる「売上高」のことで、事業に関連して得た収入のすべてが含まれます。

メインとなる事業の売上に加えて、それに付随して得た収入についても雑収入として総収入金額に含める必要があります。

ただし、年金による収入や、事業をしながら別の企業に雇用されて得た収入については事業所得とは異なる所得(雑所得や給与所得)として計算しますから、事業所得の計算に含める必要はありません。

必要経費とは?

また、必要経費とは事業で売上を立てるために必要になった支出のことで、社長個人のプライベートな支出とは区別する必要があります。

例えば、得意先の担当者を接待するために飲みに行ったという場合の飲食代は「接待交際費」として必要経費に含めることができますが、休日に家族と外食したという場合の飲食代は必要経費には含めることができません。

青色申告特別控除とは?

青色申告特別控除は事業年度開始前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、会計ソフトなどを使って簿記のルールに基づく経理作業を行う場合に適用してもらうことができる控除制度です(総収入金額-必要経費で計算した金額からさらに65万円を控除してもらえます)

2-2-2.復興特別所得税

復興特別所得税については、給与所得者と同様、「所得税額×2.1%」で計算して納付します。

2-2-3.個人事業主の住民税の計算

個人事業主の住民税も、給与所得者と同様、所得金額に応じて計算する「所得割」と、所得の金額によらず一定額が徴収される「均等割」の2つに分かれます。

住民税所得割の計算

個人事業主の住民税所得割の計算式は、基本的に所得税の計算式と同じです(税率は一律10%です)

住民税所得割額=(事業所得の金額-所得控除)×10%-税額控除

なお、所得控除の金額が所得税の場合とやや異なるのは給与所得者の場合と同様です。

住民税均等割の計算

住民税均等割は所得の金額によらず一律の金額が徴収されます(給与所得者の場合と同様です)

2-2-4.個人事業主の消費税の計算

個人事業主の場合、事業から得ている課税売上高(消費税がかかる売上高:輸出売上や住宅の貸付による売上については消費税はかかりません)が一定額を超える場合には消費税を納付しなくてはなりません。

具体的には前々年度(2年前)の課税売上高が1000万円を超える場合には消費税の納付を行う必要があります。

前年や今年から事業を始めた人(事業開始から2年が経過していない人)や、課税売上高が1000万円に達していない事業者の方は消費税を負担する必要はありません。

消費税の計算方法

消費税の計算は、以下の計算式で行います。

納付する消費税額=課税売上高に含まれる消費税額-課税仕入高に含まれる消費税額

例えば、1000円のものを8%の消費税を上乗せした場合には、「課税売上高に含まれる諸費税額は1000円×8%=80円、そのための仕入れを800円に8%を上乗せして払ったという場合には800円×8%=64円が課税仕入高に含まれる消費税額ということになります。

上の場合、80円-64円=16円を消費税額として納付しますが、もしこの計算式で計算した金額がマイナスとなる場合には、その金額を税務署から還付してもらうことが可能です(輸出事業などを行っている事業者の方はほとんどのケースで消費税は還付となります)

2-2-5.個人事業主の国民健康保険料の計算

個人事業主の方の場合、国民健康保険料を負担しなくてはなりません。
(いくら負担すればよいのか?の計算は市役所が行って通知してくれます。たいていの場合、納付書の形で郵送されてきます。)

国民健康保険料も住民税と同じように「所得割」と「均等割」の2つに分けて計算を行います。

国民健康保険料所得割の計算方法

所得税の計算時に計算した総所得金額(事業所得や給与所得、雑所得などをすべて合算した数字)から基礎控除額33万円を差し引きし、所得割の税率を掛け算して保険料を求めます。

税率については「医療分と後期高齢者支援金分の2種類」または「医療分、後期高齢者支援金分、介護分の3種類(40歳~64歳の人は介護保険料も負担します)」に分けられます。

保険料率は市区町村によって異なります。
平成29年度の東京都各区の国民健康保険料率は以下の通りです。

  • 医療分:7.47%
  • 後期高齢者支援金分:1.96%
  • 介護分:0.76%(千代田区)~1.59%(墨田区や北区)
国民健康保険料均等割の計算方法

国民健康保険料の均等割は、加入者1人ごとに医療分、後期高齢者支援分、介護分(40歳~64歳の人のみ)を定額で計算し、この3つを合算した数字が均等割の金額ということになります。

例えば、医療分の均等割年額3万8400円、後期高齢者支援分の均等割1万1100円、介護分の均等割15600円を合算し、合計で6万5100円を負担するといった具合です。

2-2-6.個人事業主の国民年金の計算

国民年金保険料の金額は、所得金額によらず一律で決まっています。

平成30年度は1万6340円(月額)が国民年金保険料となります。

3.自営業者とサラリーマンでどちらが有利?

所得税は自営業者、サラリーマン問わず、所得のある人のすべてが負担しなくてはならない税金です。

よく話題になることとして「自営業者とサラリーマンでは、どちらが税金の負担が大きいのか?」という問題がありますので、ここではこの点について考えてみましょう。

3-1.自営業者は必要経費を計上できる

上で説明させていただいた給与所得控除は自営業者の方にとっては必要経費に該当しますから、収入金額が同じだったとして、給与所得控除の金額よりも必要経費の方が大きい場合には自営業者のほうが有利で税金の金額は少ないということになります。

自宅を事務所にしている自営業者の人であれば家賃や光熱費の一部を必要経費に加えることができますし、車両や設備の購入費用などを減価償却費として必要経費に含めることも可能になりますから、節税のための対策は自営業者のほうがとりやすいといえます。

(サラリーマンの方の場合、給与所得控除以外で所得を減らす方法としては上で説明させていただいた特定支出控除ぐらいしかありません)

3-2.場合によっては給与所得のほうが有利なことも

ただ、日本の所得税では海外と比較して給与所得控除の金額が多いため、場合によってはサラリーマンの方のほうが税負担が少なくなるケースもあります。

実質的にフリーランスのような形で働いている雇用者の方で、必要経費がほとんどない事業(デザイナーやライターなど)に従事している人であれば、給与所得控除によって所得計算を行うほうが税負担上有利になるということも考えられるでしょう。

3-3.サラリーマンは所得を把握されていて節税が難しい

加えて、サラリーマンの方は源泉徴収という形で毎月のお給料の金額から自動的にお給料を前払いすることになります(1年に1度前払いした合計額と正確な税額との差額を年末調整で調整します)。
そのため、税務当局側(税務署)に所得の正確な金額を把握されやすいという傾向もあります。

自営業者の場合は年に1回の確定申告をするまでは税務署もその人の所得の金額を正確には把握できませんから、節税対策をやりやすいという側面があります。

3-4.クロヨン(9:6:4)、トーゴーサンピン(10:5:3:1)

それぞれの職業で、課税対象となる所得をどのぐらい国に把握されているのか?(これを捕捉率といいます)を表すものとして、「クロヨン」や「トーゴーサンピン」という言葉を聞いたことがある方もおられるかもしれません。

「課税対象となる所得」というのは「収入から必要経費を差し引きした金額」のことですから、サラリーマンの方であれば「給与収入-給与所得控除」、自営業者の方であれば「売上-経費」ということになります。

クロヨンというのは「9:6:4」という割合のことで、「サラリーマン:自営業者:農林水産業者」の捕捉率の割合を一般的に表したものをいいます。

サラリーマンの人は源泉徴収という形で毎月のお給料から国が税金を補足していますから、もっとも高い割合で捕捉されているというわけです。

また、このクロヨンをより誇張して言うときにはトーゴーサンピンという言葉が使われることもあります。

トーゴーサンピンというのは「10:5:3:1」という割合で「サラリーマン:自営業者:農林水産業者:政治家」の所得が捕捉されていることを意味します。

政治家の収入や所得というのは政治資金して課税対象から逃れる方法がたくさんあるため、1割(ピン)程度しか把握されていないというわけです。

まとめ

今回は、給与所得者と個人事業主で税金や社会保険料の負担はどのように異なるのか(どちらが有利なのか?)について解説させていただきました。

少し前まではフリーランスというと完全に企業から独立して仕事をしている人を指しましたが、近年では「雇用的自営」の形で仕事をしているフリーランスの人も少なくありません。

元の勤務先から仕事を得ているエンジニアの人や、いわゆる「一人親方」として働く運送業の方も広い意味ではフリーランスに含まれます。

フリーランス(個人事業主)という働き方は今後どんどん増加していくものと思われますので、どのようなメリット、デメリットがあるのかはしっかりと理解しておきましょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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