電子マネー、ゲーム内通貨、ビットコインに相続税はかかるの?
日本において正式に通貨として出回っているのは、紙幣であり硬貨ですが、最近では電子化が進みつつあり、SuicaやEdyといった電子マネーやビットコイン(仮想通貨)など、これまでは存在していなかったものが出現し始めています。これらの電子マネーや仮想通貨を所有している人が死亡した場合、相続税はかかるのでしょうか?
目次
1.電子マネーと相続税について
まず電子マネーについてですが、これについては相続の対象となります。例えば被相続人がSuicaカードに1万円チャージしていた場合は、1万円相当の資産として遺産分割の対象となりますし、相続税も課税されます。電子マネーは買い物の際の決済をしやすいように金銭を電子化しているだけですので、その資産価値自体は現金となんら変わりません。
要するに、銀行にお金を預金しているのと、SuicaやEdyにチャージしているのは同じ意味合いで捉えられます。
そのため、相続が発生した際には、被相続人が所有していた電子マネーについても、もれなく確認する必要があります。ただ、電子マネーは残高の上限(チャージできる上限)が決まっていますので、それほど大きな金額にはならないでしょう。参考までに、2016年4月時点で、Suica、ICOCAの限度額は2万円、楽天Edyの限度額は5万円となっています。
2.ゲーム内通貨と相続税について
最近ではスマホを活用したいわゆる「ソシャゲー(ソーシャルゲーム)」が大人気で、さまざまなゲームが発売されていますが、従来までのゲームと違うのは、ゲームソフトそのものを有料で販売するのではなく、ゲーム内でアイテムやガチャを回すためのゲーム内通貨として「ジェム」などといった独自の単位を作り、ゲーム内課金をして楽しむものが増えています。
ゲームの攻略サイトの掲示板などを見ると、本当かどうかはわかりませんが、「超激レアアイテムを手に入れるために、1000万円課金した」などといった書き込みも見かけるようになりました。
こういったゲーム内通貨として用いられている「ジェム」や、ゲーム内課金によって手に入れた超激レアアイテムなどは、相続財産となるのでしょうか?
2-1.遺産分割協議は自由
まず、遺産分割上についてですが、これらのゲーム内通貨や超激レアアイテムを誰が相続するのかを遺産分割協議によって話し合うかどうかは、相続人の自由です。そもそもゲームに興味がない人からすれば何の価値もありませんし、相続人全員がゲーマーであれば取り合いになるかもしれません。
この点に関しては相続人の中で解決すれば済む話です。問題は相続税の課税上の問題です。
2-2.経済的価値があれば相続財産になりうる
相続税の課税については、これらのゲーム内通貨や超激レアアイテムなどに「経済的価値」があるのかどうかという点がポイントとなってきます。
物理的に存在はしていなくても、実在する通貨に換金が可能であれば経済活動として利用することができますから経済的価値があると言えます。ビットコインなど仮想通貨の場合は、円に換金ができますから経済的価値があると言えるかもしれませんが、ゲーム内通貨については現状のところ任意に換金はできないようですので、基本的には経済的価値があるとは言えないでしょう。
また、ゲーム内の超激レアアイテムについても、市場において売買されるようにならなければ、その資産価値を見出すことはできないため、相続税が課税されることはないでしょう。
ただし、オンラインゲームはゲームのサービスの提供が終了する際に、チャージしていたゲーム内通貨を払い戻すことがあります。この際、大量の現金が払い戻されることになれば、それは現金資産になりますから、相続税が課税される可能性が出てきます。
また、超激レアアイテムについても、アイテムそれ自体の売買は難しくてもゲームアカウントの売買は一部では行われているようです。ゲームアカウントの売買が禁止されているかどうかは別として、仮にこれによって現金を受け取れば課税対象となります。
3.ビットコインと相続税について
ビットコインとはいわゆる「仮想通貨」のことです。あくまで仮想ですので、日本国内においてビットコインは正式な通貨としては認められていません。
現金決済を容易にするために、円やドルなどの実在する通貨を電子化している電子マネーとは違い、ビットコインの場合は目に見える貨幣はないものの、独立した通貨として機能しているため、そもそもの存在意義が電子マネーとは異なります。
さて、ではビットコインには相続税がかかるのでしょうか?
これについては、議論がありますが、2016年2月に金融庁がビットコインに貨幣機能があるとの見解を示したため、今後ビットコイン所有者が死亡した場合、相続税の課税対象となる可能性は高いと思われます。
ただ、これにはいくつかの課題が山積しており、簡単にはいかないかもしれません。
3-1.問題点その1:ビットコインの価値
ビットコインに相続税を課税するとなると、ビットコインの資産価値を日本円に換算する必要性が出てきます。
ただ、ビットコインは1ビット=1円ではなく、その価値は相場によって変動しているため、相続税を課税するとなると、どのようなレートで仮想通貨の価値を評価するのかが問題となります。
例えば上場株式については、評価通達によって評価方法が示されていますが、ビットコインにはこのような評価通達は出されていないため、相続税を課税するにしても課税評価額の算出が現実的にできないという問題に直面する恐れがあります。
参考までに、2016年4月14日時点で、ビットコインの価格は1ビット=約420USドルであり、日本円では1ビット=約46,000円となっています。ちょうど1年前は、1ビット=約26,000円でしたので、1年で約2万円も高くなっています。
3-2.問題点その2:相続人がビットコインを使えない可能性がある
ビットコインはあくまで仮想通貨です。そのため、通常ビットコインを保管しているウォレットと呼ばれる仮想の財布は、被相続人が設定したパスワードによってロックされています。
つまり、このパスワードが分からなければたとえいくらビットコインが貯まっていたとしても、相続人はそれを日本円に換金することができないのです。
まとめ
電子マネーについては、通貨ではなく、あくまで「決済方法」であるため、電子マネーとしてチャージされているお金については、相続税の課税対象財産となります。
ゲーム内通貨や超激レアアイテムなどについては、現状のところそれ自体では経済的価値がないと見られるため、課税対象とはならないと予想されますが、仮にゲーム内通貨が払い戻しされたり、ゲームアカウントの売買によって利益を得るようなことがあれば、それらは課税対象となる可能性があるでしょう。
ビットコインなどの仮想通貨については、その経済的価値をどのように見るかによって、課税評価額が変わるため、仮に課税されるとしてもいくらの財産として評価されるかについては未知数の部分があります。