2024年は5年に一度の年金改正、改正案で年金の支払いが100万増加? 改悪の実現はいつ?

この記事では、「2024年は年金のルールが大きく変わる?」ということで、現在検討されている年金改正案について解説します。年金改正では、知らないうちに年金保険料が上がったり、貰える年金が減ったりなどなど、気をつけておかないと危ないケースもあるので、ぜひ最後までご覧ください。

年金の改正はいつ、何故行われる?

まずは年金改正がいつ、何故行われるのかについてお話しします。

公的年金については少なくとも5年に一度、財政検証が行われます。

年金保険料がどのくらい集まっていて、これからどのくらい国民に年金を払うことになるのか、そのつじつまを合わせていくためにルールなどを見直す必要があるわけですね。そして2024年はこの5年に一度の検証の年に当たります。

今年の夏、検証が行われ、それに基づいた年金法改正は来年、2025年に実施される見込みです。

現在検討されている年金改正案

2024年は5年に一度の年金制度の検証年であることをお伝えしました。

続いては、今年検証される見込みの改正案の中に含まれている「ヤバイ年金改変」について紹介します。

重要なポイントは以下の通りです。

  1.  国民年金保険料の納付期間の延長
  2.  国民年金の減額
  3.  厚生年金の加入者拡大
  4. 厚生年金保険料の支払い期間延長

1つずつ見ていきましょう

 国民年金保険料の納付期間の延長

まずは国民年金の支払い期間延長について。

現状、国民年金保険料の支払い義務は20歳から60歳の40年間で、これをきっちり払っていれば国民年金が満額支給されるようになります。

ですが現在、国民年金の支払い期間を5年間延長することが検討されています。

この案が通れば、今後は国民年金を20歳から65歳まで支払い続けなければいけなくなるという事ですね。

国民年金の保険料は毎年変わるのですが、仮に月額1万6000円として計算すると、年間の支払いは約20万円です。現状では、年20万×40年で総額800万円支払う事で、年金を満額受給できる仕組みになっています。

もしも支払い期間が45年に延長となれば、年間約20万円×5年で、今までよりも100万円多く年金保険料を収めなければならなくなります。

専業主婦・パート主婦への影響

特に注意が必要なのが、専業主婦やパート主婦の皆さんです。年金制度において、専業主婦はある意味特権階級みたいなところがあります。例えば、専業主婦の場合、夫の扶養に入っていれば国民年金保険料を支払わなくても老齢基礎年金を受け取ることができますよね。

でも今回の改正が実現したらどうなるでしょう?

まず、専業主婦のみなさんも、60歳になれば年金制度上、夫の扶養から外れます。

その状態で、国見年金保険料の支払い期間が65歳まで延長になるわけです。つまり夫の扶養から外れてから65歳になるまでの5年間、国民年金の支払い義務が発生するわけですね。

5年分の年金保険料は約100万円。これを、専業主婦が支払うのはかなりの負担と言えるでしょう。

会社員への影響

この他、注意が必要なのは会社員の皆さんのうち、60歳で仕事を辞めようと考えている方ですね。

60歳でリタイアする場合、65歳までの5年間、約100万円の保険料の支払いを貯金などから捻出しなければいけませんから、定年後のやりくりについてある程度考えておく必要が出てきます。

ただ、最近では、定年の60歳から年金支給開始の65歳まで再雇用、再就職などで会社員として働き続ける方も多いと思います。この場合、現在の制度でも給料から厚生年金保険料が天引きされます。厚生年金保険料を支払っていれば国民年金保険料も納めたことになりますので、こうしたケースでは今回の改正による影響はありません。

いってしまえば会社員の方は現在の制度でも45年間年金保険料をきっちり納めている人が多いわけですね。

国民年金の減額

続いて、国民年金の支給額の減額についてお話しします。

公的年金の支給額も、正確には毎年微妙に変わるのですが、現状、国民年金の支給額は、満額で年間約80万円です。

それが今回、年額60万まで引き下げようという事が検討されています。

判断は人によりますが、現役時代に800万払って老後死ぬまで年80万もらえるなら保険としてそこそこ有用と言えるのではないでしょうか。65歳から10年以上生きれば一応は元が取れるわけですからね。

ですが今回の改正案が通るとかなり雲行きが怪しくなってきます。

現役のうちに支払う年金保険料は100万アップで総額約900万。一方、支給される年金は年60万円に減額。ということは、80歳以上長生きしないと年金の元がとれなくなってしまいます。

さらに、これはあくまで額面の話で、物価が上がっていくことを考えれば、80歳の寿命でも実質的には払った保険料の元を取ることはできないと言えるでしょう。年金改正が実現した場合、年金保険料の払い損になってしまうケースは決して少なくないのではないかと思われます。

年金に頼らない老後資金を作っていくことが今後は今以上に重要になっていくでしょう。

厚生年金の加入者拡大

続いて、厚生年金の加入者の拡大について。

現在、厚生年金に加入しているのは主に会社員や公務員の方ですが、今回の改正が通れば、パートで働いている人でも厚生年金に加入する人が多くなるでしょう。

厚生年金に加入するという事は、パートのお給料から年金保険料が天引きされるという事です。

厚生年金保険料はお給料の約18%。半分は職場が負担してくれますが、それでもお給料の約1割は毎月天引きされてしまいます。

会社員や公務員の給料からはこの厚生年金保険料が天引きされますが、パートの皆さんの場合、現状は夫の扶養内で働いていて社会保険料の自己負担がないという方も多いでしょう。

現在、パートタイマーで社会保険への加入が必要なのは、こちらの5つの条件を全て満たしているケースです。

  • 週の所定労働時間が 20時間以上
  •  月額賃金が8万8000以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない
  • パートの所属する社員数が100人超え
    (2024年10月からは100人⇒50人に変更)

この条件を変えて、パートタイマーの皆さんにも社会保険料を払ってもらおうということが現在検討されています。

そのため、年金改正後はパートの皆さんの給料からもこちらの保険料が天引きされるかもしれないということですね。その場合、今までは夫の扶養に入っていたという方も、ご自分のお給料から厚生年金保険料や健康保険料を払わなければならなくなってしまいます。

もちろんm社会保険に加入することは必ずしもデメリットばかりではありません。厚生年金に入る分、将来受け取る年金は多少なりとも増額しますし、社会保険による保障もつきます。ただそれでもパートの給料の手取りが1割減るというのはかなりの痛手だと言えるでしょう。

厚生年金保険料の支払い期間延長

最後に、厚生年金保険料の支払い期間延長について解説します。

現在、厚生年金には最長で70歳まで加入できますが、これを5年間延長し、75歳まで加入できるようにする改正案が検討されています。定年後、頑張って働き続けるとしても、75歳までは厚生年金の天引きが続いてしまうという事ですね。

年金改正の実現はいつ?

ここまでお伝えした通り、現在検討されている年金の改正案は、多くの人にとって「改悪」に近いものが多いわけですが、いつから実現するのでしょうか。記事の冒頭でもお伝えしましたが、改めてスケジュールを確認しましょう。

2024年夏、公的年金の財政検証が行われます。そして2025年の通常国会に提出され、年金法改正の実施も2025年の見込みです。

まだ確定というわけではありませんが、年金保険料の負担が増える未来は実はもう目の前まで来ているということですね。

老後資金の計画や公的制度についての理解が今後は一層重要になると言えるでしょう。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2024年時点)。
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