年末調整の間違いに気づかないとどうなる?
年末調整は1年に1回だけなので、書類の記入で間違えてしまうこともよくあります。
もし、その間違いに気づかないとどうなってしまうのでしょうか?
具体的なケースをあげながら、間違いに気づかない場合にどうなるかを紹介します。
目次
1.会社が間違いに気づけば修正する
年末調整書類の間違いに気づかずに会社に提出してしまっても、会社が間違いに気づけば、修正のうえ再提出を依頼されるでしょう。
会社が間違いに気づくことができるのは以下のようなミスの場合です。必ず間違いに気づくかどうかはわかりませんが、年末調整の担当者の人が、念入りにチェックをしていれば気づくかもしれません。
年末調整の書類から間違いに気づくケース
まずは、会社の年末調整の担当者が書類を見て、間違いに気づくケースです。これらの間違いについては、クラウドサービスを利用してWEB画面で入力する場合は、間違いが自動的にチェックされることが多いです。
記入箇所が間違っている
そもそも記入箇所が間違っている場合です。記入箇所の間違いの典型パターンは以下のようなものです。
- 扶養している子供・親を「源泉控除対象配偶者」の欄に記入している
- 扶養している配偶者を「控除対象扶養親族」の欄に記入している
- 16歳未満の子供を「控除対象扶養親族」の欄に記入している ⇒ 16歳未満は対象外
- 16歳以上の子供を「16歳未満の扶養親族」欄に記入している ⇒ 記入不要
- 国民年金保険料、国民健康保険料を「生命保険料控除」欄に記入している ⇒ 社会保険料控除欄に記入
記入漏れがある
年末調整の書類の一部に記入漏れがある場合です。
- 扶養控除等申告書の「源泉控除対象配偶者」の欄に記入されているが、配偶者控除等申告書には記入がない
- 上記の逆のパターン
- 源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族の欄に氏名や生年月日は記入されているが、「所得の見積額」には記入がない
- 基礎控除申告書に記入がない
- 年収850万円を超えていて、23歳未満の子供がいるのに、所得金額調整控除欄に記入がない
記入内容に矛盾がある
年末調整の書類全体を通して、記入内容に矛盾がある場合です。
- 扶養控除等申告書の「配偶者の所得」欄の所得と、配偶者控除等申告書の所得の金額が異なる
- 基礎控除申告書の「区分Ⅰ」の選択を間違っている
- 基礎控除申告書の「基礎控除の額」を間違えて記入している
- 配偶者控除等申告書の「区分Ⅱ」の選択を間違っている
- 配偶者控除等申告書の「配偶者控除の額」「配偶者特別控除の額」を間違えて記入している
- 配偶者の年収が201.6万円を超えているのに、配偶者控除等申告書に記入されている ⇒ 対象外
- 生命保険料控除の新・旧の区分が異なる
- 基礎控除申告書の「本人定額減税対象」に対象なのにチェックが入っていない(2024年のみ)
- 配偶者控除申告書の「配偶者本人定額減税対象」に対象なのにチェックが入っていない(2024年のみ)
給与計算ソフトを利用している場合、基本的に、チェック欄にチェックを入れていなくても、本人と配偶者の所得から勝手に減税対象にしてくれることが多いはずですが、必ずしもそうとは言えませんので、注意が必要です。
計算が間違っている
自分および配偶者の所得金額の計算、また、保険料控除の控除金額の計算が間違っている場合です。
- 基礎控除申告書の所得金額の計算ミス
- 配偶者控除等申告書の所得金額の計算ミス
- 生命保険料控除の合計控除金額の計算ミス ⇒ 上限がある
- 地震保険料控除の合計控除金額の計算ミス ⇒ 上限がある
他の書類から間違いに気づくケース
家族手当・子供手当などを会社が独自に支給している場合、それらの手当の申請書などの書類と、年末調整書類での矛盾を発見して気づくケースです。
かなり意識的に見ないと気づけませんので、こちらは発見が難しいでしょう。
- 配偶者を扶養にしていることで会社から家族手当が支給されているのに、配偶者控除等申告書に記載がない
- 配偶者を扶養にしていることで会社から子供手当が支給されているのに、扶養控除等申告書に記載がない
- 結婚お祝い金が支給されているのに、扶養控除等申告書の配偶者欄が「無」になっている
2.会社が間違いに気づかなければ、そのまま税務署に提出される
会社が間違いに気づかなければ、間違ったそのまま税務署に提出されることになります。
ここまであげた事例では、気をつけて年末調整書類を確認すれば会社が気づくことができますが、以下のような内容は本人しかわからないため、会社は気づきようがありません。
- 配偶者の年収が103万円以下なのに、扶養控除等申告書の「源泉控除対象配偶者」の欄に記入されていない
- 子供や親の年収が103万円以下なのに、扶養控除等申告書の「控除対象扶養親族」の欄に記入されていない
- 家族に障害者がいるのに、「障害者」欄に記入されていない
- 離婚または死別して「ひとり親」「寡婦」に該当するのに、チェックされていない
- 勤労学生に該当するのに、チェックされていない
- 株の売却益は分離課税のため申告不要なのに、基礎控除申告書の「給与所得以外の所得の合計額」に記載してしまっている
- 23歳未満の子供がいるのに、配偶者の扶養に入れているため、所得金額調整控除の記入が漏れている
- 控除対象の生命保険料や地震保険料の記載が漏れている
- 配偶者名義だが自分が払った保険料の記載が漏れている
- 自分が払った子供の分の国民年金保険料の記載が漏れている
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金を払ったのに記載が漏れている
このような内容は、本人や家族の収入や家族構成、本人が支払った保険料を知らない限り、間違いに気づくことができませんが、会社としてはこれらの個人情報を知る方法はありません。
本人が間違いに気づかなかれば、間違ったまま税務署に提出され、所得税の計算がされてしまいます。また、その情報は市区町村に通知され、住民税も計算されます。
3.後で間違いに気づいたら確定申告を
年末調整の期間に間違いに気づけば良いのですが、年末調整の期間を過ぎてしまってから間違いに気づいたら、税務署で自分で確定申告をして修正します。
3月15日までの確定申告の期限内であれば、確定申告書を提出するだけで終わりです(3月15日が土日に該当する場合は、翌営業日が期限)。
期限を過ぎてしまってから間違いに気づいた場合は、確定申告は可能ですが、期限後申告となります。
もし、それによって、税金が増える場合は、延滞税と無申告加算税の対象となります。逆に、税金が減る場合は、還付されます。還付(更正の請求)は、申告期限から5年以内なら可能です。
4.税務署で間違いに気づいたら
本人も会社も間違いに気づかず、後で、税務署で間違いに気づいたらどうなるのでしょうか?
追徴課税が発生する場合
収入の記載漏れなどで、本来の所得税の金額より低くなっていて、追徴課税が発生する場合には、税務署からお尋ねや税務調査がある可能性が高くなります。
必ずそうなるわけではありません。金額にもよりますが、ごくわずかの金額であれば、何もないかもしれません。しかし、かなりの金額ということになると、税務調査を受けることになるでしょう。
そこで、単に間違いであったということであれば、通常のペナルティ(延滞税+無申告加算税)だけですみます。一方、故意に記入しなかったということであれば、悪質なケースとして重加算税が課されることもあります。
還付金が発生する場合
逆に、保険料の控除などが漏れていて、本来の所得税の金額より高くなっていて、還付金が発生する場合には、残念ながらほとんどのケースでは、税務署から何も通知されないでしょう。
こちらで気づいて還付の手続き(更正の請求)を行わないかぎり、所得税・住民税を払いすぎた状態になります。