マイナンバーカードの返納方法、デメリットはある?
マイナンバー(個人番号)に関連するトラブルが相次ぎ、マイナンバーに対する不信感が高まっています。
なかには、作成済みのマイナンバーカードを自主返納したいという方もいらっしゃいます。
そこで、マイナンバーカードの返納方法をお伝えします。また、マイナンバーカードを返納の注意点やメリット・デメリット、返納が必要なケースについても紹介します。
目次
1.マイナンバーカードの自主返納の方法
マイナンバーカードを自主返納する方法は簡単です。
お住まいの市区町村の窓口に行き、「個人番号カード返納届」に記入して、身分証と合わせて提出します。
(1)返納届の書き方
下図は、春日井市の個人番号カード返納届の例です(それぞれの市区町村によってフォーマットは違いますので、役所に備え付けてある届出書を利用してください)。
「返納理由」という欄がありますが、「不要なため」などと記載しておけば良いでしょう。記入しなかったからといって、返納が拒否されることはありません。
デジタル庁に対する不信感や思いの丈を記載しても良いのですが、記載してもデジタル庁の担当者にその声が届くことはなさそうですので、時間の無駄になってしまうだけでしょう。
電子証明書の失効
マイナンバーカードには電子証明書が入っていますので、単純に物理的なカードを返納するだけでなく、「電子証明書の失効」という手続きも必要になります。返納の手続きと合わせて行います。
電子証明書には大きく分けて次の2種類があり、両方を失効させます。
- 利用者証明用電子証明書(本人の認証に利用する、4桁の数字のパスワード)
- 署名用電子証明書(確定申告などで電子署名に利用する、6~16桁のアルファベット数字のパスワード)
春日井市のフォーマットの場合、「失効の理由」欄がありますので「サービス利用の自発的な取り止め」のほうに「◯」をします。
(2)必要書類(必要な持ち物)
マイナンバーカードの返納に必要な書類は、市区町村によって違いがありますが、だいたい次のようなものになります。
本人(15歳以上)が提出する場合
- マイナンバーカード(個人番号カード)
- 本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
※マイナンバーカードがない場合
法定代理人(15歳未満の子の親権者など)が提出する場合
- 本人のマイナンバーカード(個人番号カード)
- 法定代理人の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、健康保険証など)
- 法定代理人であることが確認できるもの(戸籍謄本など)
※住民基本台帳により親子関係を確認する場合もあり
任意代理人が提出する場合
- 本人のマイナンバーカード(個人番号カード)
- 任意代理人の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、健康保険証など)
- 本人からの委任状
どの場合も、基本的には、返納するマイナンバーカードと、手続きに来た人の本人確認書類になります。
マイナンバーカードを紛失してない場合はカードは不要です。
2.マイナンバーカード自主返納の注意点
再発行時に1000円の手数料がかかる
マイナンバーカードを一度返納してしまうと、そのカードの復活はできません。再度、マイナンバーカードを持ちたい場合には、再発行の手続きになります。
再発行では、自主返納の場合、1000円の手数料が必要になります。
マイナンバーは消えない
マイナンバー(個人番号)とマイナンバーカード(個人番号カード)は別ものです。
マイナンバーそのものは日本に住んでいる国民全員に付与されていますので、マイナンバーカードを作成していない人にも番号はついています。
マイナンバーカードを返納しても、マイナンバーが消えてなくなるわけではありません。
マイナンバーで健康保険証の情報が別の人に紐付けられたようなトラブルは、マイナンバーカードがなくても起こりえます。
3.マイナンバーカード返納のメリット・デメリット
いろいろと問題になっているマイナンバーカードですが、現時点では、マイナンバーカードの使い道はあまりなく、返納することのメリット・デメリットもそれほどないでしょう。
いちおう、考えられるものをあげておきます。
(1)返納のメリット
カードの紛失・盗難による個人情報漏洩のおそれがない
マイナンバーカードの紛失・盗難で、第三者に悪用され、4桁のパスワードでマイナポータルにログインされてしまうと、所得や年金などの個人情報が漏洩するおそれがあります。
そもそもマイナンバーカードを持っていなければ、そのような心配も不要になります。
獲得したマイナポイントはそのままでなくならない
メリットではないですが、マイナンバーカードを作成してもらえるマイナポイントは、返納しても、そのままでなくなりませんので、安心です。
ただし、マイナポイントの申請をまだしていない人は、マイナンバーカードを返納してしまうとマイナポイントをもらえなくなります。
(2)返納のデメリット
確定申告などオンラインでの各種手続きができなくなる
マイナンバーカードを返納してしまうと、オンラインでの各種手続きができなくなります。
たとえば、確定申告では、「確定申告書等作成コーナー」で、マイナンバーカードを利用して確定申告書を作成し送信することができますが、カードがないと、オンラインで手続きを完了することができず、税務署に行くか郵送する必要があります。
ほかにも、マイナンバーカードがないとマイナポータルにログインできないため、マイナポータルでできる各種のオンライン手続きができなくなります。
将来、病院の受診時に資格証明書を持参する必要がある
2024年秋(実際は1年間延長して2025年秋)に紙の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードに統一されます。
マイナンバーカードがない人には資格証明書が発行されます。ただ、この資格証明書は、1枚もののA4くらいの大きさの用紙であり、小さく折りたたまないと財布には入りませんので、持ち運びには不便です。
将来、行政手続きで不利益を被る可能性がある
政府は、運転免許証をマイナンバーカードに統合したり、マイナンバーカードを学生証がわりに利用したりすることも検討しています。
まだ検討段階であり実際にどうなるかわかりませんが、将来的に、マイナンバーカードがないと行政手続きで不利益を被る可能性はあります。
4.マイナンバーカードの返納が必要なケース
マイナンバーカードの自主返納が話題になっていますが、そもそも、「マイナンバーカードの返納」の制度自体は、以前からあります。
マイナンバーカードの返納が必要なケースがあり、次のとおりです。
- 海外に住所を移すとき
- マイナンバーカード(個人番号カード)の有効期間が満了したとき
- 再交付を受けた後で、以前のマイナンバーカード(個人番号カード)を発見したとき
- 他市区町村からの転入で転出予定日を30日経過しているとき、または転入日から14日を経過しているとき
- 上記期間内に転入届の手続きをしたが、マイナンバーカード(個人番号カード)を持参せず、転入届出日より90日を経過したとき
- 住民票が削除されたとき
- その他、返納を求められたとき
海外転勤や留学で、長期間、海外に転居するときは、マイナンバーカードの返納が必要になります。
これらの返納が必要なケースでの返納の場合は、再発行時には手数料はかかりません。
なお、亡くなられた方のマイナンバーカードは失効しますが返納する必要はありません。
有効期限が切れると失効!
マイナンバーカード(個人番号カード)の有効期間は10年間(18歳未満は5年間)であり、その期間が過ぎたら返納が必要になります。
返納しなくても罰則はありませんが、マイナンバーカードは失効しますので、利用できなくなります。
報道によると、7年前の発行から2023年6月までで、47万件のマイナンバーカードが失効したとのことです。
今後は失効が増えるかもしれません。
電子証明書の有効期限は5年間
注意点ですが、カード自体の有効期限は10年でも、電子証明書(パスワード)の有効期限は5年間です。
つまり、5年経つと、健康保険証として利用したり、マイナポータルにログインできなくなります。
有効期限が切れる前、または期限が切れたら、市区町村の窓口に行って、パスワードを再設定する必要があります。
よくある質問
マイナンバーカード返納運動で、実際どのくらいの人が返納しているの?
都道府県庁所在地と政令指定都市の計52市区を対象とした共同通信の調査によると、マイナンバーカードの自主返納が5月以降、少なくとも計318件あったとのことです。
ただ、マイナンバーカードの発行件数は、約9233万枚(2023年6月18日時点)(人口の約73%)であり、そのうちの、わずか318件ですので、返納したのはごく一部の人といえます。
マイナンバーカードを返納したほうがいいの?
マイナンバーに絡むトラブルが問題になっていますが、どちらかというと、マイナンバーカードそのものではなく、マイナンバーと個人情報の紐づけの作業ミスによるトラブルです。
マイナンバーカードを返納したとしても、何かが変わるわけではありません。
逆に、現時点では、マイナンバーカードを所持していても、身分証明書以外にあまり使い道がありませんので、マイナンバーカードを返納してもデメリットもないでしょう。
よって、返納したほうがいいとはいえませんし、逆に、返納しないほうが良いという理由もありません。
返納する/しないは、ご自分で決められたら良いでしょう。
マイナンバーカードの自主返納は意味がないという意見もあるが、どうなの?
連日続くマイナンバー関連のトラブルは、マイナンバーカードそのものではなく、マイナンバーと健康保険証の情報の紐づけミスによって起こっています。
そのため、確かに、マイナンバーカードを自主返納したとしても問題が解決するわけではなく、意味がないとはいえます。
一方で、マイナンバーカードを持ち続けたとしても、利用する予定がない人にとっては、今のところ、使い道がありません。
2024年に紙の健康保険症が廃止されますが、その後も、資格確認書が発行されますので、マイナンバーカードがなくても保険を適用することは可能です。
紛失・盗難で悪用されるおそれを考慮したら、自主返納するという選択もありうるでしょう。