現金給付と消費税減税の違い、誰がいくらお得?メリット・デメリット

給付金 2025年 減税

各政党が表明している、現金給付または減税(消費税・所得税)について、その違い、メリット・デメリット、誰がいくらお得になるのか?を、具体的なデータを利用してわかりやすく解説します。

1.各政党の見解

4月9日、国民全員に一律5万円の給付金を支給することを、政府が検討しているという報道がありましたが、
4月11日、林官房長官が、「新たな給付金や減税を検討している事実はない」として打ち消すなど、情報は錯綜しているようです。

毎日新聞による世論調査によれば、現金給付を評価しない人が半分以上で、「給付より減税を」という意見が多くあります。

与党の見解

自民・公明の与党内でも意見は一致していません。自民党内では、国民全員に、3万円から5万円の現金給付の案と、消費税減税の案が出ています。

公明党は、現金給付10万円という意見があるほか、減税については、来年度からという認識を示しています。

野党の見解

野党に目を向けてみると、立憲民主党の一部の議員からは、食料品の税率、現在8%を、一時的に0に引き下げる案が出てきています。

日本維新の会は、食料品の税率を2年限定で、0にするべきと主張しています。

国民民主党は、消費税を一律5%に引き下げることを、政府に要請したほか、4月10日、30歳未満だけ所得税を減税する、「若者減税法案」を国会に提出しました。

れいわ新選組は、もともと、消費税廃止を訴えています。

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現金給付と減税

このように、大きく分けて、現金の給付と、減税の案が出てきています。

減税については、さらに、多くの政党が主張する、消費税の減税と、国民民主党が主張する、所得税の減税があります。

  • 現金給付
  • 減税(消費税・所得税)

いったいどの案がいいのか、恩恵を受ける人、その金額、必要な財源などの観点から、比較していきます。

2.現金給付

対象者

現金給付は、恩恵を受ける人は、国民全員です。金額はいろいろな案があるようですが、今のところ一番有力と思われる、1人当たり5万円で想定してみます。

金額

金額は誰がみてもわかりやすいです。独身の人であれば5万円ですし、家族であれば、その人数分、もらえます。

世帯の人数 金額
1人 5万円
2人 10万円
3人 15万円
4人 20万円

財源

財源については、発表されていませんが、前回、10万円の給付金を支給したときの、事業費総額は、12兆8802億円、うち、かかった費用は、1458億円でしたので、今回、5万円とすると、諸費用を含めて、その約半分、6.5兆円程度が必要になると想定されます。

3.消費税の減税

対象者

消費税の減税についてみていきます。ご存知のとおり、消費税は、物やサービスを購入するときにかかる税金です。日本に住んでいて物を買わない人はいないでしょうから、消費税減税で恩恵を受ける人は国民全員です。

金額

減税で恩恵を受ける金額を把握するには、消費額を知る必要があります。そこで、総務省統計局による、家計調査2024年の結果を参照します。

【出典】総務省統計局:家計調査

2024年の、1世帯、1ヶ月当たりの支出は、この表のようになっています。独身の世帯だと約17万円、2人世帯は約26.9万円、3人世帯は約31万円、4人世帯は約34.1万円です。

2024年、1世帯・1ヶ月の支出
  単身世帯 2人世帯 3人世帯 4人世帯
食料 43,941 75,374 87,876 96,328
住居 23,372 19,385 19,278 15,120
光熱・水道 12,816 21,120 24,340 24,593
家具・家事用品 5,822 11,885 13,302 13,029
被服及び履物 4,881 7,366 9,970 13,093
保健医療 8,394 15,893 15,604 14,022
交通・通信 20,418 35,314 42,780 51,087
教育 9 571 12,216 30,030
教養娯楽 19,519 26,776 28,045 33,980
その他の消費支出 30,375 55,070 56,684 50,116
合計 169,547 268,755 310,096 341,400

(1)食料品のみ消費税0%に減税のケース

ここで、食料品だけ消費税をゼロにする案を考えてみます。食料の金額は、消費税8%が含まれた金額です。

さらに厳密にいうと、食料には外食、消費税10%の分も含まれていますので、これを除いて、純粋に、食料、消費税8%の分だけにします。

そして、ここから、消費税を計算すると、下の表の金額になります。この金額が、1ヶ月当たりの減税される金額です。

12をかけると、1年間の減税される金額になります。独身の世帯だと約3万円、2人世帯は約5.8万円、3人世帯は約6.6万円、4人世帯は約7万円です。

食料品のみ消費税0%に引き下げのケース
  単身世帯 2人世帯 3人世帯 4人世帯
食料(全体) 43,941 75,374 87,876 96,328
外食(消費税10%) 10,284 10,316 13,865 17,422
食料(消費税8%) 33,657 65,058 74,011 78,906
消費税 2,493 4,819 5,482 5,845
年間の減税額 29,916 57,828 65,784 70,140

財源

必要な財源についてですが、個人以外に、飲食店やホテルなどの事業者も食料品を購入しますので、単純に求めるのは難しいのですが、報道によると、約5兆円必要とされています。

(2)食料品のみ消費税5%に減税のケース

次に、食料品だけ消費税5%に減税するという案もあります。ということは、消費税3%分だけ減税するわけですから、減税額はこのようになります。

食料品のみ消費税5%に引き下げのケース
  単身世帯 2人世帯 3人世帯 4人世帯
食料(全体) 43,941 75,374 87,876 96,328
外食(消費税10%) 10,284 10,316 13,865 17,422
食料(消費税8%) 33,657 65,058 74,011 78,906
消費税3%分 935 1,807 2,056 2,192
年間の減税額 11,220 21,684 24,672 26,304

必要な財源は、約2兆円といわれています。

(3)消費税を廃止

さらに、消費税を廃止するという案もあります。支出全体のうち、学校の授業料、贈与、仕送りなど、消費税が非課税のものがありますので、それらを取り除きます。

そのうえで消費税を計算し、年間の減税額を計算すると、このようになります。独身世帯でも約17万円、3人以上の世帯だと約30万円の減税になりますので、これは大きいですね。

消費税廃止のケース
  単身世帯 2人世帯 3人世帯 4人世帯
支出(全体) 169,547 268,755 310,096 341,400
食料(消費税8%) 33,657 65,058 74,011 78,906
支出(消費税10%) 110,858 181,570 201,964 224,160
非課税のもの 25,032 22,127 34,121 38,334
消費税8% 2,493 4,819 5,482 5,845
消費税10% 10,265 16,812 18,700 20,756
消費税合計 12,758 21,631 24,182 26,601
年間の減税額 153,096 259,572 290,184 319,212

ただし、2025年の消費税の税収が、まるごとなくなりますので、必要な財源は24.9兆円と、莫大な金額です。

4.現金給付と消費税減税の比較

ここで、給付と減税の金額を比較してみましょう。給付の場合は、金額が大きく、かつ、世帯の人数が多いほど恩恵が大きいです。ただし、1回のみです。

食料品だけ消費税を減税の場合は、1年間の金額で見れば、そこまで大きなインパクトはないものの、毎年ずっと続くと考えると、大きな金額になってきます。減税の割合で見ると、単身世帯と2人世帯のほうが、恩恵を受けるかもしれません。

消費税の廃止は、金額のインパクトは大きいです。

(1)財源の比較

財源を比較してみます。現金給付は1回だけ、約6.5兆円が必要です。食料品だけ減税の場合は、約2兆円、または約5兆円です。消費税廃止は、約24.9兆円と大きすぎて、今となっては非現実的かもしれません。

財源
現金給付(1回のみ) 約6.5兆円
食料品だけ消費税5%(年間の減税額) 約2兆円
食料品だけ消費税0(年間の減税額) 約5兆円
消費税廃止(年間の減税額) 約24.9兆円

(2)現金給付のメリット・デメリット

メリット

現金給付のメリットとデメリットをまとめてみます。メリットは、早く支給できることです。国会で補正予算案が通れば、早ければ3ヶ月くらいで支給できます。また、5万円、10万円など、一度に多額を渡せます。もらった人が自由に使えるのも嬉しいです。

  • 早く支給できる
  • 一度に多額を渡せる
  • 自由に使える

デメリット

デメリットは、1回だけで終わってしまい、効果が持続しないことです。また、現金を配るわけですので、物価高をさらに加速させる方向にいきます。もしくは、貯金されて消費に回らず、経済が活性化しない可能性もあります。富裕層など必要ない人にも支給されてしまうことを、デメリットとして言及する人もいます。

  • 1回だけで終わり
  • 物価高を加速させる
  • 貯金される可能性
  • 富裕層にも支給される

(3)消費税減税のメリット・デメリット

メリット

消費税の減税のメリットとデメリットです。メリットは、国民の負担が軽くなり、消費が増えることです。また、消費税分だけ価格が下ることで、物価高を一時的に抑えられます。さらに、毎年、恒久的に続きます。

  • 国民の負担が軽くなる →消費が増加
  • 物価高を抑えられる
  • 恒久的に続く

デメリット

デメリットは、実施までに時間がかかることです。消費税法の改正が必要であり、少なくとも半年から1年くらいかかると思われます。また、税率が変更されることで、値札の変更や、会計処理の変更など、企業の負担が大きいです。低所得者ほど、もともと消費額が少ないため、減税額が小さく恩恵を受けにくいという課題もあります。

ちなみに、こちらは政府側のデメリットですが、税収がずっと減ってしまうことと、元の税率に戻しにくいというのがあります。

  • 時間がかかる
  • 企業の負担が大きい
  • 低所得者の減税額が小さい
  • 税収が減る
  • 元の税率に戻しにくい

5.所得税減税

ところで、最近あまり話題になりませんが、減税には、消費税だけでなく、所得税の減税の議論もあります。国民民主党が、178万円の壁で、大幅な減税をする提案をしていますが、与党は、160万円の壁を検討して、衆議院で可決されました。

178万円の壁と、160万円の壁の減税額では、非常に大きな差があります。大きいところでは10倍くらい違います。

給与年収
(万円)
160万円の壁
の減税額
178万円の壁
の減税額
150 22,600 39,700
200 24,000 83,800
300 20,400 113,300
400 20,500 113,300
500 20,400 133,900
600 20,400 151,600
700 30,600 190,000
800 30,700 228,200
900 20,500 228,200
1,000 20,400 228,100
1,200 23,500 251,100
1,500 33,700 327,700
2,000 33,700 327,700

必要な財源は、178万円の壁が、約7.6兆円、160万円の壁が、約0.6兆円です。

詳しくは、こちらの記事で解説していますので、ご覧ください。

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6.財源は本当に足りないのか?

さて、給付金や減税のテーマでは、必ず、財源が足りないという話が出てきますが、財源は本当に足りないのでしょうか?

下の図は、1990年度と2024年度の国の税収の比較ですが、2019年10月に消費税が10%に増税されてから、大きく税収が増えました。2024年度は定額減税をしたことで、所得税が減り、もともと69.6兆円の予定でしたが、3.8兆円増えて、73.4兆円になりました。

一般会計税収 2024年

次の図は、財務省の資料ですが、2025年はさらに税収が増える見込みです。定額減税がないため、所得税が3兆円程度増えるほか、インフレで消費税も増えて、税収は77.8兆円の予想です。

財務省 税収推移

2020年、コロナ禍のときと比較すると、17兆円も税収がアップしています。割合でみると、約30%アップ、年間では約6%アップです。

インフレ率は3%程度ですから、インフレよりも遥かに大きな税収アップとなっています。

新たな財源を作り出さなくても、税収が増えすぎた、つまり、国民からとりすぎたので、その一部を国民に戻すと考えれば、成り立たないでしょうか。

動画でも解説

同様の内容をYouTube動画でも、さらに多くの図を使って解説していますので、ご覧ください。

監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を1000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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