新型コロナでオンライン授業に~学費の返金や通信費の支援は?~

コロナ オンライン授業

コロナウイルスの感染拡大を受けて、全国の学校では一斉休校・授業開始の延期など大きな影響が出ています。

そんな中、大学を中心にインターネット活用したオンライン授業が行われています。

オンライン授業によってコロナ感染のリスクは低くなりますが、ネット環境整備にかかる費用や、学費はどうなるのかといった新たな問題も生じてきそうです。

このような問題に対する政府の支援、大学の支援など最新情報をまとめていきます。

1.オンライン授業の実施状況

文部科学省が6月1日時点での、授業の実施状況を発表しました。

6月1日時点で授業を実施していると回答した1066校のうち、約6割が遠隔授業のみで対応しています。
面接(対面)授業と遠隔授業を併用している学校が全体の約3割、面接授業のみ行っているのが約1割となっています。

以下がその内訳です。

  面接授業 面接・対面の併用 遠隔授業
国立大学 0校 23校 63校
公立大学 5校 29校 66校
私立大学 96校 256校 471校
高等専門学校 2校 14校 41校
(全体) 103校(9.7%) 322校(30.2%) 641校(60.1%)

 

‣6月1日時点で授業を実施していると回答した、1066校を母数とする
‣公立大学・私立大学にはそれぞれ専門職大学・短期大学を含む

【参考】文部科学省:大学等の実施状況について

(1)オンライン授業はどうやって受けるのか?

大学の例ですが、学生がオンラインで授業に参加する方法は大きく分けて3つあります。

  • オンデマンド:収録済みの授業動画を好きなタイミングで視聴する
  • リアルタイム:授業の映像と音声が生中継され、視聴する
  • 講義資料:スライドなどの資料を各自ダウンロードして閲覧する

この他にも、学生が自分でリサーチし課題を提出する形など様々な方法が検討されています。

【参考】早稲田大学

メリット・デメリット

オンデマンド、リアルタイム、講義資料配布のメリット・デメリットをまとめてみます。

講義形式 メリット デメリット
オンデマンド ・好きな時間に授業を見れる
・わからなかった部分は映像を停止し自分のペースで進められる
・視聴を忘れたり、未視聴分が溜まっていく可能性がある
・疑問点をその場で解消できない
リアルタイム ・質問にリアルタイムで回答をもらえる
・学生の理解度に合わせて進められる
・学生同士の議論も可能
・視聴人数が多いと通信環境が不安
・意図的に授業を妨害される可能性がある
講義資料 ・データ通信の負担が軽い
・映像よりも準備が簡単で導入しやすい
・個人作業になり、授業の質が低下する

(2)オンライン授業を受けるための準備

オンライン授業を受けるために学生側が準備する必要があるのは、端末とインターネット通信の環境です。

端末は、パソコンやタブレット、スマートフォンなどが必須となります。授業内で発言が求められる場合などは、マイク付きのイヤフォンなども必要になるでしょう。

インターネット通信の環境は、家庭のWi-Fiやスマートフォンのデータ容量が必要になります。

各大学は、オンライン機器の貸し出し支援を行っています。

ネット環境整備の支援について詳しくは、「3.自宅のネット環境を整備するには?」で解説しています。

(3)対面授業の再開はいつ?

文部科学省の調査では、各大学は一部の授業で対面授業を再開すると回答しています。
対面授業の再開時期については、6月前半が約3割、6月後半が約2割、7月中が1割となっています。

全面的な対面授業の再開については、半数以上がまだ検討中とのことです。

2.オンライン講義になると授業料は返金される?

授業開始が延期となりオンライン授業に変わったことで、授業回数が変化することも考えられます。

授業数が減ったり、十分な授業が受けられなかったとき授業料は返金されるのか、疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

一般的に大学の学則には「授業料は返還しない」と明記されていることが多いです。

例を挙げると、上智大学や早稲田大学の学則には以下の項目があります。

  • 既納の授業料等諸納付金は返還しない(上智大学学則66条)
  • 既に納めた授業料等は、事情のいかんにかかわらず、これを返還しない(早稲田大学学則58条)

しかし、この免責規定が無効になったり、学生と大学との間で合意が成立していないと判断されたりする場合が考えられます(消費者契約法10条、民法548条の2第2項)。
新型コロナウイルスによる特殊な状況ではありますが、授業料返還の可能性はあるでしょう。

下記記事で「法的な観点」から詳しく解説していますので、ご覧ください。

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(1)学費には何が含まれる?

私たちが払っている学費に含まれているのは、入学金、授業料に加え施設維持費、実験実習費、保険料などの諸費用です。

コロナウイルスの影響で授業数が減ったり、十分な授業が受けられなかったとき授業料は返金されるのか疑問に思う方もいると思います。

また、学校施設が使えないとなると、施設維持費や実習費を返してほしいという思いが出てくるのも当然かと思います。

ただ学校側も、教授の給料支払いや毎年の固定費である設備維持費などを見込んで学費を設定しており、返還は学校の運営にも影響を与えるため厳しいという見方もあります。

実際に学校に問い合わせた学生も、大学からは「現時点で学費の減額は考えていない」といった回答を受けています。

早稲田大学総長、学費を減額しない方針を発表

早稲田大学総長は5月5日に発表した「早稲田大学の学費に関する考え方について」の中で学費を減額しないこととその理由を説明しています。

発表の中で、早稲田大学の学費の考え方は次の通りです。

  • 大学の学費は4年間(学士課程)もしくは2年間(修士課程)・3~6年間(博士課程)の教育に対して、必要とされる総額を年数で等分して納めていただいているものなのです
  • (図書館・体育施設等についても)何年度の入学生に、どの建物の費用をご負担いただく、というものではありませんので、どの年度に入学された方にでも、同じように学費をいただいております
  • 実験実習料につきましても、2020年度の春学期のためだけの実験実習料ではなく、卒業までに必要とされる実験実習料なのです

つまり、学費は卒業や学位の取得までにかかる費用の合計を、分割して納付するものという考え方です。

各期に起こった出来事で学費が変わることはないということです。

一方で、この考え方に従って、オンライン授業実施のための設備投資に関する費用を今期の学費に上乗せしないことも述べています。

早稲田大学の総長が発表したコメントの影響は大きく、賛否の声が上がっています。
他の大学でも、学費の考え方を発表する大学が出てくるなど、影響を与えています。

明治大学:本学の学費に対する考え方についての学長メッセージ
法政大学:本校の学費についての考え方

(2)各大学の対応

大学は独自の支援策で学生の生活を支えています。

学生一律の学費減額が行われている大学は少ないですが、新たな奨学金枠の設定やオンライン環境整備費を支給するなど様々な支援が行われています。

放送大学の返金措置

既に授業料の返金措置をとっているのが放送大学です。
放送大学は通信制の授業がメインですが、一部科目では面接授業(対面授業)を行っています。

コロナウイルスの影響を受けて、放送大学は面接授業を中止しており、これに伴った返金措置として授業料と教科書代の返金を決定しています。

  • 閉講により受講できなかった面接授業については、授業料を返金します。返金の時期については、2020年度第1学期が全て終了した後(10月~11月)を予定しています。
  • 面接授業で指定された教科書を既に購入済みで、教科書購入代金の返金を希望する方に対しては、教科書と引き換えで買い取りを行います。

出典:放送大学 令和2(2020)年度第1学期面接授業における新型コロナウイルス感染症の対応について 

ただ、放送大学が一般的な大学と違うのは、1科目ごとに授業料が設定されている点です。
一般的な大学のように半年・年間ごとに学費を設定している場合はいくら返金するのか算定が難しいため、大学の学費返金のハードルは高いと言えます。

明治学院大学、全学生にオンライン授業経費「5万円」

4月22日、明治学院大学はオンライン授業に必要な環境整備のため在学生全員に1人当たり5万円を支給することを決定しました。
同時に、特別な奨学金の検討や、学費の延納についても知らせてあります。

ただ、今回支給された5万円はパソコンなどの購入費用の支援です。
発表された文章では、授業料や設備維持費の返還や減額は考えていないことを明記しており、学費の返金はやはりハードルが高そうです。

【参考】明治学院大学:新型コロナウイルス禍に対する明治学院大学の対応について

芝浦工業大学、全学生に「6万円」

芝浦工業大学も、「オンライン環境整備の補助として、返還不要の臨時奨学金6万円を支給する」と発表しました。

芝浦工大では、臨時奨学金について今年度の後期の学費から6万円を減額して相殺すると発表しています。

京都芸術大学、「施設・設備費」の一部返金

京都芸術大学では全国の大学に先駆けて、施設・設備費の返金を決定しています。

返金額は、以下の式で算出されます

施設設備費(年間)× 77% ÷ 12ヶ月 = 1ヵ月あたりの返金額(千円未満切上げ)

77%というのは、学生が利用できる施設面積割合です。
年間100,000円の施設設備費がかかる学部では、1か月あたり7,000円が返金されます。

まず、大学への入構を禁止している4~5月の2ヵ月分の返金を口座振込にて行うと発表しています。

【参照】京都芸術大学

(3)今後どうなる?

すでにオンライン授業を行っている海外では、「授業の質の低下」や「学校設備を利用できないこと」を理由に授業料引き下げを主張する学生も出てきています。
特に実習が実施される美術系の学校や理系学部などでは、学費に見合った授業になっていないという声があります。

日本でもSNSで「学費減額を求める署名運動」が行われており、この運動は今後も多くの大学で起こるものと考えられます。下記は署名運動を行っている大学の一部です。

  • 青山学院大学
  • 多摩美術大学
  • 同志社大学
  • 日本大学
  • 立命館大学
  • 早稲田大学・慶応義塾大学(合同)

【参照】新型コロナウイルスよる早稲田大学・慶應義塾大学のキャンパス閉鎖とオンライン授業への移行を受けた、学費減額を求める署名活動

(4)コロナの影響で家計が急変し、学費が払えない時は?

コロナの影響で収入が不安定になり、学費を一刻も早く返金してほしいという声もあるかと思います。
しかし現時点では、学費の返金の議論まで進んでいません。

各大学は独自の奨学金や延納制度を発表していますので、それぞれホームページにアクセスしてご確認ください。

その他、政府の支援策をまとめます。

【5/19閣議決定】政府、困窮学生に最大20万円支援

政府はコロナウイルス感染拡大を受けて、経済的に困窮する学生に最大20万円を給付する支援策を決定しました。

アルバイト収入等の減少で学業の継続が困難になった大学生、大学院生43万人を対象とします。

詳細や、支給時期は未定ですが、新たな情報が入り次第追記します。

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高等教育の就学支援新制度

2020年4月1日より始まった制度で、「住民税非課税世帯・それに準ずる世帯」の学生が、授業料の減免と給付型奨学金の支給を受けられます。

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【参考】文部科学省:高等教育の就学支援新制度

貸与型奨学金による支援(緊急採用・応急採用)

家計の急変により、緊急の奨学金の貸与が必要となった学生に対応する制度です。
新型コロナウイルスの影響で支援が必要となった学生についても、日本学生支援機構が奨学金の支払いを受け付けています。

また、生計維持者の収入に変化がなくても、学生本人のアルバイト収入の減少によって、奨学金を希望する場合は「在学採用」に申し込むことができます。

学費の支援については以下の記事で詳しく説明していますのでご覧ください。

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2020年2月ごろから猛威を振るっている、新型コロナウイルスの影響でアルバイト代が減少し、学費を支払うことができない…

【参考】日本学生支援機構:緊急採用・応急採用

3.自宅のネット環境を整備する費用は?

自宅でオンライン授業を受けるためには、パソコンやスマートフォンなどのデバイスが必須になります。それだけでなく、毎日の講義を受けるためには十分なWi-Fi環境も必要でしょう。

独り暮らしであったり経済的に余裕がない場合は、通信費やパソコンの費用が負担となってしまう可能性が考えられます。

(1)携帯3社は学生の通信料金を負担すると発表

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯3社は、25歳以下の学生の通信費負担を軽減する支援策を導入すると発表しました。

これにより、2020年4月1日から8月31日の期間は毎月50ギガバイトまで追加のデータ購入にかかる費用が無料になるとされています。

なお、NTTドコモとソフトバンクは、8月末日を超えての支援策の延長はしない予定であると発表しています。

各社の発表は以下をご覧ください。

【参考】NTTドコモ:新型コロナウイルス感染症の流行に伴うU25向け支援措置」の実施 -25歳以下の「1GB追加オプション」および「スピードモード」を50GBまで無償化-

【参考】KDDI:新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴う支援について~学生 (25歳以下) のお客さまのauデータチャージご利用料金を無償化~

【参考】ソフトバンク:25歳以下の“ソフトバンク”と“ワイモバイル”の利用者へ 50GBの追加データを無償提供~テザリングオプションは無償~

(2)文部科学省、10万人にモバイルルーターを貸し出し

以前、政府は学生がいる低所得者世帯にモバイルルーターを貸与する方針を固めたという報道もされていましたが、その後続報はありません。

政府の支援はあくまでモバイルルーターの貸与のみで、通信費については個人負担となる可能性もあることから、一部反対の声も上がっています。

一方で、政府は「GIGAスクール構想」の一環として「1人1台ICT端末」の実現を目指し、その支援に147億円の予算を組み込んでいます。

各学校が独自で通信機器の貸し出しを行う場合もあるので、気になる方は問い合わせてみましょう。

(3)大学側が一部教室やPCルームを開放する

例として東北大学では、自宅でのオンライン環境が不十分等の理由でオンライン授業が受けられない学生にむけて、学校がスペースを用意しています。

あくまで、オンライン環境が整っていない学生の支援が目的でありそれ以外の目的で利用はできません。

またコロナウイルスの状況次第では、教室が閉鎖されることもありますので、情報確認をお願いします。

【参照】東北大学

(4)各大学によるWi-Fiルーターやノートパソコンの貸出

全国の大学では、ネット環境整備が困難な学生に対して、ネット機器の無料貸与や特別価格での貸し出しによる支援を行っています。
例として、上智大学ではモバイルWi-Fiルーターを5月中旬から3か月貸与します(台数には限りあり)。

その他、桜美林大学、東京大学、明治大学、龍谷大学など様々な大学でも同様の学生支援策が取られています。

詳しくは各大学のホームページをご覧ください。

【参照】上智大学

4.海外の事例

現時点でオンライン授業を導入している海外の状況を紹介します。

(1)フランス

フランスでは3月16日の一斉休校の発表以降、オンライン授業が導入されています。

もともと導入されていたシステムを活用し授業のまとめや質問対応を行うほか、各テレビ局が朝から教育コンテンツを放送したりもしています。

やはり問題となっているのは家庭環境による格差の問題です。
フランスのブランケール国民教育相は「家庭環境が整わないために全体の5~8%は教師の指導が行き届いていない」と発表しており、政府の支援を継続して行うとしています。

(2)アメリカ

アメリカでは以前からインターネットで学習する環境が整備されていました。

慣れない授業形式に戸惑う声もありますが、授業前のオフィスアワーなどもオンラインで柔軟に対応しています。
ただ、学生に占める留学生の割合が高い学校では、授業料や寮費の返還請求の対応に追われ、財務状況が厳しくなっている学校も多いです。

小中校では、成績の管理や授業スケジュールの把握など、保護者と学校のやり取りが日常的に行われていたため、抵抗感なく対面授業からオンライン授業へと移行できた例が多いです。

一方でタイピングやパソコン操作に慣れていない小学生は親の助けが必要なことや、特殊学級の生徒までネット環境が整備されていないこと、画面を見続けることによる悪影響なども報告されています。

(3)韓国

韓国では4月9日から中学3年生と高校3年生のオンライン授業が始まり、4月下旬には小学校やほかの学年へと拡大していく方針です。

もともとは4月6日からオンライン授業が開始される予定でしたが、準備の遅れもあり3日延期されました。

韓国政府は低所得者層に向けて、機器の貸し出しなどの対策をとっていますが十分にいきわたっていません。

4月9日のオンライン授業開始日は、アクセスの集中で通信障害が起こるなど混乱が生じています。

5.まとめ

学校教育の場への新型コロナウイルスの影響はかなり大きくなっています。
日本の場合、海外と比べてオンライン講義の環境整備が遅れているということもあり、今後も問題が生じてきそうです。

特に学費の返金についてはSNSでかなり活発になっており、実際に学校に問い合わせる人も多くなっています。

しかし、新型コロナウイルス関連で学校側も様々な対応に追われているため、緊急の支援が必要な方以外は落ち着いた対応が求められるでしょう。

新たなニュースが入り次第こちらに追記していきます。

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