副業で経費はどこまで認められるの?

副業 経費

「副業の経費」を計上すれば、所得税や住民税の金額を減らすことが可能です。「経費」の計上は節税の基本ということですね。

ただし、経費として認められる費用は副業の種類によって異なり、副業を始めたばかりの人は「何が経費になって」「何が経費にならないのか」不明な点が多くあると思います。

この記事では「副業の経費」について徹底的に解説します。

1.経費が認められる副業とは?

多くの企業が「副業解禁」をしており、巷では「副業時代突入」などと言われています。「副業解禁」に伴い「副業」も多様化してきており、現在では副業は次の3つに分類されます。

  • ①インターネット系副業
    クラウドワーキングやYoutubeへの動画投稿、アフィリエイト、ホームページ制作、せどりなど、インターネットを使用して行う副業のことです。
  • ②投資系副業
    株式投資、金投資、不動産投資、FX、仮想通貨など、資金を投資することで利益を得る副業のことです。
  • ③労働系副業
    主業の他にアルバイトなどで給料を得る副業のことです。

上記の3タイプの副業の中で「経費」が認められるものは、①インターネット系副業と②投資系副業の一部です。

②投資系副業については、株式投資や金投資など「譲渡所得」に該当するもの以外で、FXや仮想通貨など「雑所得」に分類されるものと、不動産賃貸業など「不動産所得」に該当するものは「経費」が認められています。株式投資など「譲渡所得」に該当するものについては、「取得費用」と「譲渡に要した費用」のみを収入から控除することができます。

③の「労働系副業」は、「給与所得」になるため経費は原則認められません。例外として「特定支出控除制度」を利用すれば一定の経費が認められます。しかし、「会社からの業務に必要であるとの証明書をもらう必要があり、その条件が厳しい」など利用しづらい制度ですので、ほとんど利用されていません。

ここでは、①のインターネット系副業についての「経費」を中心にご紹介します。

(1)副業の確定申告が必要ない場合

副業の「経費」についてご紹介する前に、副業の収入を確定申告する必要があるのかどうかをご紹介します。普段は会社員をしていて給料収入がある人で「副業」を行っている方のうち、「給料以外の所得が20万円以下」であれば確定申告をする必要はありません。

これを「確定申告不要制度」と言います。

ここで注目して頂きたいのが「所得」という言葉です。「所得」とは、収入から必要経費を控除したものです。つまり、副業の収入が20万円を超えていても「経費」を控除(差し引き)して20万円以下になれば確定申告の必要はありません

所得

例えば、会社からの給料収入がある人で、副業で年間収入が24万円ある場合、「経費」が無ければ副業の収入24万円を「給料所得」と合計して確定申告をしなければなりません。しかし、「経費」になるような支出が4万円以上あれば「確定申告」をする必要が無くなるのです。

住民税の申告は必要

1つ注意して頂きたいのが「給料以外の所得が20万円以下」の場合は、「所得税の確定申告」は不要になります。しかし、「住民税の申告」は必要です。なぜなら、「確定申告不要制度」は「所得税」のみの制度であり、「住民税」にはこの制度がありません。副業の所得が20万円以下の場合でも「住民税の申告」は忘れずに行いましょう。

(2)その副業は事業所得? それとも雑所得?

インターネット系副業は、確定申告をする際に「事業所得」または「雑所得」として申告を行います。

どちらの所得区分も収入から「経費」を控除することができます。

「事業所得」に該当すると、最大65万円の青色申告特別控除など、様々な税制上の優遇措置を得ることができます。ただし、副業を「事業所得」として申告するためには、次のような基準があります。(国税不服審判書平成26年9月1日裁決より)

  • ①自己の危険と計算において独立して行う業務であること
    収入を得るために労力を費やしているかどうかの判断です。仕事を行って報酬を得る場合は、該当する項目です。
  • ②営利性・有償性を有する
    利益を追求しているかどうかの判断です。少しの売上で経費が多くある仕事は、事業所得として認められません。
  • ③反復継続して業務を遂行する意思
    事業は繰り返し、継続して行わなければなりません。1度きりの仕事は事業所得とは認められません。
  • ④社会的地位が客観的に認められるもの
    「社会通念上、それが事業と認められるか」の判断です。①~③を総合的に見て事業かどうかの判断を行います。

上記の基準をクリアして、副業を「事業所得」として申告することは決して簡単ではありません

例えば、会社員が休日を利用してお小遣い稼ぎの副業や、ブログなどを執筆し広告収入を得ている場合は「雑所得」になります。

休日等の少しの時間を利用して行う副業は「事業所得」として認められることは難しいでしょう。「副業」に時間と労力を十分に費やし、継続して行い、利益を出し、社会的に事業と認識されてから始めて「事業所得」になるのです。

(3)事業所得になるメリットとは?

副業を「事業所得」で確定申告することは決して簡単なことではありませんが、副業が「事業所得」に該当する場合、税制上の優遇措置を受けることができます。どんな優遇措置があるか簡単に見ていきましょう。

青色申告ができる

青色申告承認申請書を税務署に提出することで、「青色申告」で確定申告することができます。

青色申告のメリットは以下の通りです。

  • 「青色申告特別控除」の適用があり、帳簿要件によって10万円・55万円・65万円のいずれかの特別控除を受けることができる
  • 事業で損失が出た場合にその損失を翌年以降3年間繰り越すことができる
  • 青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することで、家族に支払った給料を経費として計上することが可能で

赤字の場合は、他の所得から差し引くことができる

「事業所得」に該当すると「損益通算」をすることができます。

「損益通算」とは、事業所得が赤字の場合に「他の所得」から差し引くことを言います。「他の所得」には給与所得も該当しているため、副業が事業所得として認められ、赤字がでた場合は給与所得と「損益通算」し、給料で納めている所得税の還付を受けることができます。

ただし、前述したとおり、「事業所得」なのかどうかの判断には「営利性」が求められるため、赤字の副業が「事業所得」になることは難しいと考えられます。

2.副業で認められる経費とは?

「経費」とは、「その事業を行うためにかかったお金」です。原則的に、事業に関する支出は全て経費になります。ただし、個人で支出している場合、次の3つの支出に区分されます。

  • ①明らかに経費になる支出
  • ②経費か個人的な支出か曖昧な支出
  • ③個人的な支出

①と③に該当する場合の処理は簡単です。①は支出額の100%が経費になりますし、③は全て経費になりません。判断が難しいのが②の「経費か個人的な支出か曖昧な支出」です。

(1)副業で明らかに経費になる支出

「副業」で明らかに経費(100%経費として認められる支出)になる支出は、事業だけに利用するものであり、以下のものが考えられます。

【明らかに経費になる支出】
科目 経費
仕入 ・商品の購入費用(副業で物販を行う場合など)
租税公課 ・個人事業税(年間所得が290万円超の場合課税される)
荷造運賃 ・物販などを行う場合の送料
・梱包に使う消耗品
水道光熱費 ・オフィスを借りている場合の水道代や電気代
旅費交通費 ・副業で使用した公共交通機関の料金、タクシー代
・出張が必要な場合の宿泊費
通信費 ・オフィスを借りている場合のインターネット利用料、
プロバイダー料金
広告宣伝費 ・副業で使用する名刺の作成料
・オンライン広告費用、チラシ広告費用など
消耗品費 ・パソコンやカメラ、プリンターの購入費用
(副業専用として使用する場合、10万円未満)
・文具代など
地代家賃 ・オフィスを借りる場合の家賃

物販やせどり以外の「インターネット系副業」は仕入れが無い場合が多く、専用のオフィスを借りている場合も少ないため100%経費にできる支出はあまりありません。

パソコンの経費

「インターネット系副業」にとって必要不可欠であるパソコンは、プライベートでも使用している場合については全てが経費になりません。パソコンを2台持っている場合は、1台を副業用、もう1台をプライベート用にすることで1台分のパソコンの購入費用を全て経費にすることができます(10万円未満の場合)。

10万円以上のパソコンを購入した場合は、減価償却の対象となり4年に分けて経費を計上することになります。(青色申告であれば「少額減価償却資産の特例」を利用して30万円未満であれば全額経費することが可能)

(2)経費か個人的な支出か曖昧な支出

「経費か個人的な支出か曖昧な支出」とは、「副業に使っているし、プライベートでも使っている」ものへの支出です。このような支出を「家事関連費」と言います。具体的には、次のような支出が該当します。

  • 自宅の一室を副業で作業場として使用している場合の家賃、電気代、インターネット利用料
  • 持ち家の場合は、自宅の減価償却費
  • 副業でも利用している携帯料金
  • 副業で車両を使用する場合の車両の減価償却費やガソリン代

「家事関連費」に該当する経費は、「何割を副業に利用しているか」を算出し、その割合で経費処理を行います。具体的な計算方法は、次章でご紹介します。

(3)経費でないものは税務調査で指摘される

副業で経費になる代表的な支出をご紹介しましたが、時代の流れにより「副業が多様化」するとともに、「経費の種類も多様化」しています。

例えば、YouTuberの経費は動画に投稿するために購入した備品などの購入費が経費になりますし、料理のチャンネルでは使用した食材の購入費用が経費になります。つまり、一般的に経費として認められないものでも、副業の形態によって経費になる可能性があります。

経費になるかどうかは、確定申告書を提出する時には判断されることはありません。「税務調査」が入った時に、経費かどうか判断されることになります。プライベートの費用と認定されないように、なぜ「経費」にしているか説明できる資料を準備しておくと良いでしょう。具体的には、レシートの空いている部分に用途や適用を記入することで「副業についての支出」を明確にしておくなどの方法があります。

3.家事関連費の計算方法

副業でもプライベートでも使用する支出は「家事関連費」です。ここでは、「家事関連費」の計算方法についてご紹介します。

(1)家賃を経費にするには?

「家事関連費」の代表的なものとして、自宅の一部を副業の作業場として使用している場合の家賃があげられます。自宅としても使用しているため、家賃の全てを経費にすることはできませんが、事業部分を合理的に計算することができるのであれば、家賃の一部を経費にすることが可能です。

よく使用される合理的な計算方法に、面積按分で計算する方法があります。例えば、総面積60㎡の自宅(家賃12万円)のうち、1部屋(10㎡)を副業で使用している場合は、次の計算式により副業の経費部分を算出します。

家賃12万円×作業場10㎡÷総面積60㎡=2万円

月に2万円が副業の経費になります。年間を通して作業場として使用している場合は年間24万円が経費となります。

(2)持ち家の場合

持ち家の一部を副業の作業場としている場合についても一部を経費として計上することができます。ただし、持ち家の場合は賃貸の場合と異なり、「減価償却費」という方法を使って経費にしていきます。考え方は「家賃を経費にする方法」と同じです。

まず、自宅の取得価額の計算を行います。売買契約書などに記載されている価格を計算基礎として、仲介手数料の支払いなどの付随費用を加算した金額が取得価額となります。次に、取得価額に「償却率」を乗じて年間の減価償却費を算出します。「償却率」とは、建物の構造によって決められている耐用年数に応じた率のことを言います。算出した減価償却費に、副業で使用している面積(事業割合)を乗じて副業で経費になる減価償却費を算出します。計算式に表すと次のとおりです。

自宅の取得価額×償却率×事業割合=副業で経費になる減価償却費

具体例)
木造造り(取得価額3,000万円、総床面積140㎡、耐用年数22年、償却率0.046)の一部(20㎡)を副業の作業場として使用している場合の減価償却費

建物の取得価額3,000万円×償却率0.046×事業割合20㎡/140㎡=減価償却費197,142円

持ち家をローンで購入し、「住宅ローン控除」を受けている場合は、事業に使用している面積部分について「住宅ローン控除」の適用を受けられませんので注意が必要です。

(3)住宅に付随する費用も経費にすることができる

自宅の一部を副業で使用している場合、家賃や減価償却費以外に、火災保険料や住宅ローンの利息部分、固定資産税、電気代、インターネット利用料、プロバイダー料などの支出も経費にすることができます。これらの費用も「家事関連費」に該当しますので「事業割合」を乗じた金額が経費となります。

(4)自家用車も経費にすることができる

自家用車を副業で使用している場合についても「家事関連費」に該当します。「持ち家の場合」と同様に、自家用車の取得価額、償却率を求め、事業割合を乗じることで「副業で経費になる自家用車の減価償却費」を算出することができます。

自家用車の減価償却費以外にガソリン代や車検費用、自動車税、保険料など「車両に付随する費用」についても事業割合を乗じて経費にすることができます。

4.まとめ:副業を確定申告する時のポイント

「副業の経費」についてご紹介しました。副業で経費を計上することはとても重要で、所得税額、住民税額を大幅に減らすことができます。

自宅で副業をしている場合や、自家用車を副業で使用している場合は「家事関連費」として副業の経費にすることができます。副業の確定申告をする上で、以下の点を注意して申告することをおすすめします。

①経費の領収書は全て保管する。

経費になりそうな領収書は全て保管し、領収書の空きスペースにどのような用途で支出した費用なのかを記載しておくことをおすすめします。

②「家事関連費」の事業割合を計算した基礎を保管しておきましょう

自宅や自家用車の「事業割合」を計算した根拠になるもの(計算式など)は、税務調査時に質問されるおそれがあるので保管しておきましょう。

③副業が小規模のうちは「雑所得」で確定申告する

副業を「事業所得」で申告するには、ある程度の規模や基準が必要になります。副業を始めたばかりで規模が小さいうちは、その要件を満たすことは簡単ではありません。副業の規模が小さいうちは「雑所得」で申告した方がいいでしょう。副業の規模が大きくなってきたら「事業所得」に所得区分を変更し、「青色申告」にすることをおすすめします。

④さらに事業規模が大きくなったら法人化を視野に入れましょう

副業の規模がさらに大きくなり、副業ではなく「主業」で利益が出るようになった場合は、法人化を視野に入れることをおすすめします。

法人を設立することで、役員報酬を支給することができるようになり、節税対策をすることができます。また、法人の経費と個人の支出を明確に分けることで、税務署に経費として認められやすくなります。ほか、一般的に個人よりも法人のほうが信用力が上がり、銀行からの資金調達も行いやすくなります。

よくある質問

経費が認められる副業にはどんなものがある?

アフィリエイト、ホームページ制作などインターネット系副業や、株式投資など投資系副業では、経費が認められます。アルバイトなどの労働系副業は経費が認められません。詳しくは、こちらをご覧ください。

副業ではどんな経費が認められる?

明らかに経費になる支出は経費として認められます。、また、家賃など経費と個人的な支出の両方に該当する場合でも、適切な割合で按分することで経費として認められます。詳しくは、こちらをご覧ください。

監修
ZEIMO編集部(ぜいも へんしゅうぶ)
税金・ライフマネーの総合記事サイト・ZEIMOの編集部。起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)を中心メンバーとして、税金とライフマネーに関する記事を今までに1300以上作成(2024年時点)。
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