アルバイトで留学生を雇う時は時間制限に注意を!
現在来日留学生が増えている中、アルバイト応募者にも留学生が多くなっていますよね。受け入れたいけど、法律上注意すべきことがあるのかわからない…とかあるのではないでしょうか。
実は留学生のアルバイトは、日本人学生と違い、法律で特別なルールがあるのです。
例えば、多くの留学生は原則週28時間しか勤務できません。
この記事では、留学生を雇う際の注意点、万が一時間制限を超過したらどうなるのかやさしく説明していきます。
1.雇う前に知っておくべきこと
外国人留学生をアルバイトで雇用する場合は、通常の労働基準法以外に特別なルールがあります。
このルールを知らずに違反してしまうと外国人を働かせた雇用主側にも罰則規定があり、「知らなかった」では済まされない事態になってしまいます。
まず、「在留資格」とは何かを見ていきましょう。
1-1.ビザと在留資格はどう違うの?
日本人が海外旅行などで外国に行く場合は、大部分の国が日本に対してビザ免除措置をしているためパスポートだけあれば外国へ入国することができます。
しかし、日本に来る外国人はビザが必要なケースがほとんどです。なぜかというと、日本がビザ免除措置を実施している国は68ヶ国しかありません。日本に留学している外国人の60%を超える中国・ベトナムはビザ免除の国ではないため、入国の際にビザが必要になります。
一方、「在留資格」は、外国人が日本に住むための資格になります。日本へ学業のために大学や専門学校などに留学している外国人の場合、在留資格は「留学」となります。
在留資格が「留学」の場合、日本滞在の目的が学業のため「就労」は原則認められていません。(後程認められる条件を説明します)
1-2.外国人留学生の種類とは?
外国人留学生には滞在目的や、就学先などでビザや在留資格などが違います。その違いによって、時間制限などが変わってきます。
居住者or非居住者?
「居住者」か「非居住者」かはその留学生が今の住所で一年以上居住したかで判断します。
- 「居住者」・・・国内に住所があり、1年以上居住する人のこと
- 「非居住者」・・・「居住者」以外の人
この「居住者」「非居住者」は、給料の支払い時に発生する「源泉徴収」の金額に違いがあります。
「居住者」の場合は、日本人アルバイトと同じように源泉徴収がされますが、「非居住者」の場合は、一律20.42%で源泉徴収が行われます。
例外として、中国や韓国などからの留学生に支払う給料は、国同士の租税条約により源泉所得税は一定額まで免税となりますので注意が必要です。
私費留学生 or 国費留学生?
- 「私費留学生」・・・留学生自身、又は家族などが学費を負担して留学している場合
- 「国費留学生」・・・政府からの奨学金の支給により留学している場合
国費留学生の雇用は各教育機関から推奨されていません。理由については「3-1.まずは「資格外活動許可」の確認を!」で説明します。
家族滞在ビザ
「家族滞在ビザ」とは、就労している外国人の配偶者や子供が日本に滞在するためのビザのことです。このビザで在留している場合、就労は原則認められません。
あとで紹介する「資格外活動許可」を申請することで制限付きの就労が可能になります。
特定活動
「特定活動」とは、日本人の配偶者や永住者などに該当しない、「その他の在留資格」のことを言います。
具体的にはインターンシップやワーキングホリデーなど様々な活動があります。活動によって就労出来るか出来ないか定められています。
1-3.外国人アルバイトが必要な「資格外活動許可申請」
在留資格が「留学」の外国人留学生は、アルバイトが原則認められていません。
しかし、「資格外活動許可」を出入国在留管理局に申請することでアルバイトが認められます。
外国人留学生を雇用する場合は、この「資格外活動」の許可を受けていることを確認する必要があります。
確認方法は、在留資格を持つ留学生の在留カードの裏面の「資格外活動許可欄」に「許可」と記載されているかどうか確認しましょう。また、この「資格外活動許可欄」に、週に何時間の就労が許可されているのかも記載されています。
1-4.「資格外活動許可」があれば週に28時間以内の就労が可能!
資格外活動許可を持っている外国人留学生は週に28時間の就労が可能になります。
なぜ週に28時間かというと「留学生の場合は学業に支障がない範囲でのアルバイトを認めます」という趣旨で作られた制度だからです。
また、1日あたりの就労時間に規制はありません。
なお、大学などに籍をおかない聴講生の場合は短く、週に14時間以内の就労が可能になっています。
1-5.長期休暇時は1日8時間、週40時間以内の就労が可能!
資格外活動許可での就労は通常、週28時間以内の就労になりますが、夏休みや冬休み(GWや試験期間は対象外)などの長期休暇時は就労時間の制限が大幅に増えます。
この場合1日8時間以内、週40時間以内の就労が可能になります。
この長期休暇とは、「学則による長期休業期間」と規定されていますので、いつからいつまでが長期休暇になるのか各教育機関に確認が必要です。
2.週28時間以上就労した場合のペナルティは?
外国人留学生は資格外活動許可があれば週28時間以内の労働が可能です。
もし、週28時間を超えてしまうと不法就労になり、外国人留学生本人だけではなく雇用主も不法就労助長罪に問われる場合があります。
どのような罰則規定になっているのでしょうか。
2-1.外国人留学生本人に課されるペナルティ
在留資格を持っている外国人留学生でも、その在留資格で認められる範囲を超えて就労すると「不法就労」になります。
罰則規定は次回の在留資格の更新が認められなくなります。
悪質と認められれば強制送還の対象になり、最低5年間の日本入国が認められなくなります。
2-2.雇用主に課されるペナルティ
雇用主は不法就労助長罪に問われる可能性があります。
3年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはその両方が対象になります。
雇用主とは会社だけではなく、店長などの人事責任者も含まれており、罰則の対象になります。
2-3.2ヶ所以上アルバイトして週28時間を超えている場合
資格外活動許可は通算で週28時間以内と決まっています。
2ヶ所以上アルバイトを掛け持ちしている外国人留学生の場合は、他のアルバイトの就労時間を確認するなどして合計で週28時間以内にする必要があります。
雇用主が確認を怠った場合は、不法就労助長罪に問われるおそれがあります。
全ての事業所には「外国人雇用状況の届出」をハローワークへ提出することが義務付けられています。
しかし、2ヶ所以上アルバイトを掛け持ちしているかどうかは、事業主がハローワークで外国人留学生の他の事業所での雇用状況を確認することができないため、外国人留学生本人に確認する方法しかありません。
2-4.なぜ週28時間以上働いたことが発覚するの?
全ての事業所は「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出しなければならないため、外国人留学生がアルバイトをしていることは簡単に確認できます。
働いた時間の算出は、事業所が市町村等に提出した源泉徴収票から年間に支給された給料の金額がわかるため、時給で割るとおおよその勤務時間数を逆算することができます。
現在は、マイナンバー制度が導入されたため、以前より簡単に外国人留学生の就労時間が発覚します。
それ以外でも、警察による外国人留学生本人への職務質問により発覚するケースもあるようです。
3.これで解決!事前対策
外国人留学生を雇い入れる場合は、確認と管理を徹底して行う必要があります。
確認・管理を怠ってしまうと雇用主側も不法就労助長罪に問われるおそれがありますので念入りに行いましょう。
3-1.まずは「資格外活動許可」の確認を!
「資格外活動許可」がなければ1時間働いただけでも不法就労となってしまいます。
まず、必ず在留カードの裏面を確認して「資格外活動許可」の有無をまず確認しましょう。
外国人留学生が大学等を卒業後に日本で就職活動を行うため「特定活動」に在留資格を切り替えている場合があります。その場合は、新たに「資格外活動許可」の申請が必要になるため注意しましょう。
また、国費留学生を雇い入れる場合は注意が必要です。国費留学生は奨学金で生活上の心配なく学業に専念できる環境が整えられているため、資格外活動許可を得て貯金などの目的でアルバイトをすることが禁止されている場合があります。
3-2.アルバイトの時間管理を徹底しよう!
週28時間以内(長期休暇時は週40時間以内)になるようにアルバイト時間の管理を徹底しましょう。
外国人アルバイトが複数人いる場合は大変かもしれませんが、管理を怠ると外国人留学生本人も雇用主にも厳しいペナルティが待っていますので、管理を徹底しましょう。
また、外国人留学生が2ヶ所以上アルバイトをしている場合は、他のアルバイト先の勤務時間を随時報告させるなどの対策が必要です。
まとめ
今回は、外国人留学生を雇用する場合のルールについてご紹介しました。
資格外活動許可や就労時間の制限など、日本人アルバイトを雇用する場合と違う規制が多くあります。マイナンバー制度の導入により、違反している場合はすぐに発覚してしまいます。
外国人留学生、雇用主ともに働きやすい環境を作るため、確認と管理を徹底して行いましょう。