関税とは?米中貿易戦争の問題点からTPPまで、わかりやすく解説
関税という言葉は多くの人が聞いたことがあるでしょう。同時に輸入、貿易などのイメージが浮かぶかと思いますが、関税がどのような税金なのか、その仕組みまで知っているでしょうか?
話題の関税について、とにかく分かりやすく解説していきます。
また、最近の大きなテーマである米中貿易戦争の問題点についても触れていきます。
目次
1.関税って何?
1-1.関税とは
関税とは、輸入品にかかる税金です。税率は輸入先の国や、輸入品の種類などにより細かく定められており、無税の場合もあります。
1-2.関税の計算の仕組み
関税の基本的な計算方法は次の3つです。簡単に解説します。
(1)従価税
輸入品の価格に対して関税がかかる、最も一般的な方法です。
輸入価格と関税が比例するので、価格の変動による影響をそのまま受けます。
(2)従量税
輸入品の個数、容積、重量などに対して関税がかかります。
関税の計算が簡単であり、輸入価格の変動にも影響されず一定の関税収入を得られます。例えば、酒やタバコなどが該当します。
(3)混合税(従価税+従量税)
上記2つの方法を組み合わせたもので、選択税と複合税に分かれます。
選択税は、従価税と従量税のどちらも計算してみて高い方を選択する方法で、現在は毛織物、卵黄、魚油などに適用されています。
複合税は、従価税と従量税の両方をかけるもので、現在は一部の乳製品に対して適用されています。
【出典サイト】関税のしくみ|税関 Japan
1-3.誰がどこへ払う?
関税は、日本へ商品を輸入する人が、日本の税関へ支払います。
ネットショッピングが普及した今、商品が外国から送られてくることもありますが、関税を支払った覚えはないのではないでしょうか。
それは配送業者や通関業者が税関に対して、関税を代理納付しているからです。購入明細書などを見てみると、内訳に記載されているでしょう。
1-4.日本の関税
日本の最新の関税率はこちらから確認することができます。
【参考サイト】実行関税率表(2019年4月1日版)|税関 Japan
2.なぜ関税があるの?
輸入するときには、一旦手続きで立ち止まらなくてはならない関税。なぜそのような手間な税金があるのでしょうか?
実は、日本経済を守る重要な役目があります。
2-1.目的
関税は安い輸入品に押されて、国産が売れなくなることを防止するために設けられています。どういうことか具体例で簡単に解説します。
安い輸入品として代表的なものを挙げると牛肉です。スーパーに売られている牛肉は、国産と外国産では価格が大きく違います。筆者が今日、スーパーで見たステーキ100gあたりの値段は、国産900円、アメリカ産400円と倍以上の違いでした。
このアメリカ産の400円には、仕入れ業者が支払った関税も、当然含まれているわけなので、もしも関税がなかったとしたら、国産と外国産の価格差は更に開くことになります。
そうなると消費者は、「倍くらいの差なら美味しい国産を買ったけれど、それ以上の価格差なら外国産でいいや。」となる人も出てくるでしょう。
関税をかけることで輸入品の販売価格を上げ、国産品や国内産業が市場競争から外れないようになっているのです。
2-2.関税をあげたらどうなる?
関税は自国の産業を守る重要な役割があります。ただ、必要以上に税率を上げてしまったらどうなるのでしょうか。次のような連鎖が起こります。
↓
輸入品の販売価格が高くなる
↓
消費者は買わなくなる
↓
輸入国の経済が衰退
↓
その輸入国に輸出していた国の経済も衰退
関税の操作は自国だけではなく、世界に影響してしまうことなのです。
2-3.「GATT」、「WTO」って何?
貿易といえば、GATT、WTOです。
GATTとはガットと読み、「General Agreement on Tariffs and Trade」の略称で、「関税及び貿易に関する一般協定」と訳されます。 貿易が第二次世界大戦の一因となったという反省をもとに、無差別で自由な貿易を目指して1948年発効・発足した国際協定です。日本は1955年に加盟しました。
その後、GATTの機能を引き継ぎ、更に強化したWTO(世界貿易機関)が1995年に設立され、同年末にGATTは廃止されました。
GATTが一般協定であったのに対して、WTOは正式な国際機関であり、貿易対象に金融やサービス、知的財産権なども含まれたこと、紛争解決能力の向上など機能がパワーアップしました。 2016年12月時点でのWTO加盟国は164あり、もちろん日本も加盟しています。
3.米中貿易戦争の問題点とは?
2018年7月にアメリカ中国間で貿易戦争がはじまりました。これに関するニュースは、ほぼ毎日、目にするのではないでしょうか。
米中貿易戦争について、今更聞けない基本的なことを解説します。
3-1.米中貿易戦争って何?
貿易戦争とは簡単には、関税を上げることでお互いを攻撃し合うことです。これが今アメリカと中国との間で起こっています。
米中貿易戦争の発端は、アメリカが中国の関税を引き上げたことです。
引き上げた理由としてアメリカのトランプ大統領は、知的財産権の侵害や、国内産業の保護を挙げていますが、真意はアメリカの貿易赤字と、近年における中国の急成長でしょう。
アメリカは長年、中国との貿易赤字を抱えており、反対に中国は2,700憶ドル以上の大きな貿易黒字を出し、急成長を続けています。 アメリカは関税を上げることで、中国からの輸入量を減らし、貿易赤字の改善と中国の経済成長を食い止めようとしているのです。
ただ、アメリカの関税引き上げに対して、中国が黙っているはずはなく、「アメリカが上げるなら、こっちも上げてやる!」、「中国が上げるなら、こっちも更に上げてやる!」という、報復し合う状況が続いています。
3-2.何が問題?
「米中貿易戦争は、アメリカと中国の問題だから関係ないよね。」というのは大間違いです。
今や貿易は、世界各国でなければならないものです。貿易戦争により、アメリカや中国の経済が衰退してしまったら、これらに輸出していた国にも輸出量減などの影響が出てきます。
直接アメリカや中国に輸出していなくても、影響した国に輸出していれば影響があります。連鎖的に影響が出るため、厄介な問題なのです。
今回は特に、世界経済の1位2位に君臨している大国同士が争っているので、その影響は莫大なものになります。
3-3.日本への影響
日本の最大貿易相手国は、2007年以降、一貫して中国であり、中国経済の衰退は日本経済へ多大な影響をもたらします。
特に、中国工場で日本から輸入した部品を使って製品を作り、アメリカに輸出している日本企業には大打撃です。
2019年5月現在、アメリカは中国からの輸入品のほぼすべてに高い関税をかける手続きに入っており、日本企業は製品の生産を日本での生産に切り替えるといった動きが相次いでいます。
4.TPPが遂に発効
長らく協議が続いていたTPPですが、2018年12月30日についに発効しました。 TPPとは何なのか、基本的なことを簡単に解説します。
4-1.TPPって何?
TPPは、「Trans-Pacific Partnership Agreement」の略称で、日本語では「環太平洋パートナーシップ協定」、「環太平洋経済連携協定」と呼ばれます。
協定の目的を簡単にいうと、太平洋の周りの国々(日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの計11ヵ国)で、関税をできるだけかけないようにして、自由で開かれた貿易をしていきましょう。というものです。
今後、関係各国で少しずつ関税が引き下げられていきます。
ちなみに、もともとアメリカも加盟して12ヵ国になる予定でしたが、アメリカのトランプ大統領が2017年にTPP離脱を表明し、結局、加盟しませんでいた。
4-2.日本への影響
関税がなくなるまたは低くなれば、日本は他国で安く日本製品を売ることができ、安くなった日本製品はよく売れるようになります。
これにより、日本経済の成長や雇用の増加が生まれます。輸入品も安くなり、消費者は助かります。
ただ、高い国内製品は安い輸入品に押され売れなくなるでしょう。
そこで日本政府は、5品目(米、小麦、乳製品、砂糖、牛豚肉)については関税撤廃しないように求めましたが、米のみ認められる結果となってしまいました。
日本の農産業の衰退が懸念されますが、一方で、日本の輸出を支える自動車や電気機器などの工業品の輸出量増加が期待されます。
まとめ
関税とは輸入品にかかる税金で、輸入する人が支払います。関税があることで安い輸入品と国内品の価格差を小さくし、輸入品ばかりが売れることを防止しています。
最近毎日のようにニュースしている米中貿易戦争は、アメリカと中国の泥沼の争いとなり、エスカレートしていっています。
TPPを含め、日本経済のみならず世界経済全体へ影響する貿易問題の今後の動向が注目されます。