消費税の仕入税額控除とは?計算方法をわかりやすく解説
売上で受け取った消費税から、仕入で支払った消費税を差し引くのが、仕入税額控除。概要と、対象となるのはどのような取引か…[続きを読む]
学校の授業料は非課税なので、一般的には消費税増税の影響を受けることはないと言われています。
しかし、非課税であるために学校法人の経理が厳しいものになることが予想され、授業料が値上がりするとも言われています。
なぜそのようにも言われているのか説明します。
「学校の授業料が非課税であるにも関わらず、授業料が値上げされる」という理屈を理解するため、まずは消費税の計算の仕組みを知っておきましょう。
原則的に消費税の計算は、仕入先に支払った消費税と、売上時に得意先から預かった消費税とを相殺して求めます。
消費税の計算イメージ
図を見ていただければわかるように、一般の事業者であれば仕入先に支払った消費税を控除できるため、理論上は損をすることはありません。
しかし、学校法人は少し事情が異なります。
消費税という税の性格上、商品の販売やサービスの提供などあらゆる取引を課税の対象としています。
しかし、学校教育に関するサービスの提供については、社会政策的配慮からそのほとんどが非課税とされているのです。
なお、ここでいう学校とは「学校教育法に規定された学校」であるため、一般の塾や予備校等は含まれません。
学校教育関係の消費税 | |
非課税 | 課税 |
授業料 | 学校給食 |
入学検定料 | 市販の補助教材費 |
入学金 | 公開模擬試験等 |
施設設備費 | 外部から委託されたの調査・研究等 |
在学証明書等手数料 | |
検定済教科書などの教科用図書 |
「消費税が非課税なら増税の影響を受けないのでは?」と一見思えてしまいますが、実際には増税は学校法人に多大な影響を及ぼすものと思われます。
前節で解説した通り、学校法人の主要な売り上げのほとんどが消費税非課税の対象とされています。
要するに、増税が実施されても学校法人が売上時に受け取る消費税は増えることはありません。
一方、備品代や設備維持にかかる費用、行事にかかる費用など、学校経営にかかる費用は人件費以外のほとんどが課税仕入となり、消費税を支払う必要があります。
したがって学校法人にとっては、支払う消費税が増えるのみであり、その分利益を圧迫してしまうことが考えられるのです。
ここで、するどい方は「受け取った消費税が0円なら、支払った消費税の全額が還付されるのでは?」と思われたかもしれません。
しかし残念ながら学校法人は消費税の還付を受けることはできないのです。
より詳しく消費税の仕組みを説明すると、課税仕入れは課税売上に対応する分だけしか控除できないというルールがあります。
したがって非課税売上の割合が大きい学校法人では、控除できる金額はかなり少額となり、結果として納める消費税が増えてしまうことが予想されます。
仕入税額控除については、以下の記事を参考にしてください。
ここまで解説してきたように、学校法人は増税の影響を免れることはできません。
こうした状況に対応するべく、実際に授業料の値上げを表明している学校法人もあります。
一方で政府は消費税増税分を財源として、2020年4月から「修学支援制度」の実施を予定しています。
この制度により授業料や入学金の減免、給付型奨学金の拡充が図られていますが、世帯年収による制限もあり、効果は限定的なものではないかとも言われます。
今後各学校法人がどのような対応をとっていくのか、注視しておく必要があるでしょう。
消費税の計算の仕組みの解説と、授業料の値上げとの関係について解説してきました。
増税により学校法人の財政が圧迫され、授業料の値上げが懸念されています。
教育費の増加は子供を抱える家庭にとっては小さくない問題です。
もし値上げされるとしても、その理由は適正なものか、妥当な値上げ額であるか、一人ひとりがしっかり検討する必要があるでしょう。