消費増税後も電気・ガス・水道・電話・灯油などは8%の場合も

電気メーター

2019年10月1日から消費税が8%から10%に上がりました。

消費税は物を購入したりサービスを受けたときに課せられる税金ですが、すべての場合で、消費税が2019年10月1日から10%になるわけではありません。急にルールを変更すると混乱することが予想されるものについては、期間を限定して旧税率の8%を適用することがあります。これを経過措置といいます。

この記事では、電気、ガス、水道、電話、灯油などの料金に関する経過措置を解説します。

1.電気料金等の経過措置について

電気、ガス、水道、電話、灯油などの料金に関する経過措置のことをまとめて「電気料金等の経過措置」と呼びます。
電気料金等の経過措置の最も大きなルールは、10月1日をすぎても一定期間は旧税率(8%)を適用するという内容です。

1-1.旧税率(8%)を適用するルール

電気、ガス、水道、電話、灯油などの料金は、1カ月契約や2カ月契約といったように月単位で支払いをしています。
そうなると、例えば月単位の支払いの期間が「21日から翌月20日」までの場合、2019年9月21日から10月20日の支払い期間は、その間に増税開始日の10月1日が含まれることになります。

もし増税ルールを厳格に適用すると、9月21日~9月30日までの料金には8%で、10月1日~10月20日までの料金には10%の消費税ということになります。これでは、電力会社やガス会社や市の水道局などの事務作業が煩雑(はんざつ)になります。

そこで、2019年10月1日を含む期間の支払いは8%で計算することにしたのです。

電気料金等の経過措置が適用される条件は次のとおりです。

  • A:2019年10月1日前から継続供給の契約をしている
  • B:2019年10月1日から10月31日までの間に料金の支払いを受ける権利が確定する

1-2.継続供給の契約

条件Aをクリアするには例えば、一般家庭と電力会社が電気使用契約を、2019年10月1日前から結んでいる必要があります

したがって、ガソリンスタンドで灯油を18リットル購入するような場合は電気料金等の経過措置を受けることはできません。

1-3.2019年10月1~31日の間に料金が確定する必要がある

条件Bは、2019年10月1日を含む支払い期間が10月31日までに終了しなければならない、という意味です。

例えば電気やガスなどは、使用量を計量する検針を行って料金を確定させます。支払い期間が1カ月であれば、2019年10月1~31日の間に必ず検針(使用量の確定)があるので、電気会社やガス会社では「2019年10月1日から10月31日までの間に料金の支払いを受ける権利が確定する」ことになります。

1-4.2カ月に1回の検針(単位期間2カ月)の場合の経過措置

水道料金の場合、支払い期間を2カ月に設定している自治体もあります。その場合、使用者によっては、2019年10月1~31日の間に検針が訪れません。

この場合電気料金等の経過措置を受ける部分は次のように算出します。

・電気料金等の経過措置を受ける部分=
10月1日以後初めて支払いを受ける権利が確定する料金 ×
前回確定日から10月31日までの期間の月数(*) ÷
前回確定日から10月1日以後初めて料金の支払いを受ける管理が確定する日までの期間の月数*

*月数は暦にしたがって計算し、1カ月に満たない端数を生じたときは1カ月とする。

例えば支払い期間が2カ月で、2019年10月1日を含む期間が9月15日~11月14日までだとします。そしてこの期間の料金が10,000円だったとします。

前回確定日は9月14日ですので、「前回確定日から10月31日までの期間の月数」は約1カ月半ですが、「月数は暦にしたがって計算し、1カ月に満たない端数を生じたときは1カ月とする」というルールがあるので「2カ月」となります。

次に、「前回確定日から10月1日以後初めて料金の支払いを受ける管理が確定する日までの期間の月数」ですが、こちらも2カ月になります。

したがって上記の計算式は「10,000円×(2カ月÷2カ月)」となり、10,000円の料金全額が電気料金等の経過措置を受ける部分となるので税率8%が適用されます。

2.インターネットの光回線やスマホ料金は経過措置なし?

インターネットの光回線の使用料やスマホ料金は月末締めのところが多いので、そもそも電気料金等の経過措置の対象にならないことが多いでしょう。
ただ念のため、従量制と定額制について解説しておきます。

電気料金等の経過措置の対象となるのは従量制の料金だけで、定額制の料金は経過措置が適用されず10%になります。従量制とは使用量に応じて料金が変わる仕組みで、定額制は使用量が多くても少なくても料金が変わらない仕組みです。

つまり、もし月末締め以外で従量制契約している光回線やスマホの料金は、電気料金等の経過措置の対象になります。また基本料金(定額制)と従量制が組み合わさっている料金プランの場合も経過措置の対象になります。

3.増税で電気代はあがるのか?

東電力は2019年4月現在、消費増税に伴って増税分を電気料金に上乗せするかどうかアナウンスしていません。

ただ前回の5%から8%に増税したときは、増税が行われた2014年5月分から増税分の値上げを行っています。

4.キャッシュレスで払えばポイント還元制度の対象になるのか?

政府は消費増税による国民の税負担増を減らすために、キャッシュレス決済を対象としたポイント還元制度を実施します。

これは2019年10月1日から2020年6月30日までの9カ月間に、消費者が中小・小規模事業者からモノやサービスを購入し、その支払いをキャッシュレス決済で済ませた場合、消費税込みの支払い金額の最大5%を消費者にポイントとして還元する仕組みです。

しかし電気料金やガス料金をキャッシュレス決済しても、ポイントは還元されません。なぜなら電力会社やガス会社は中小・小規模事業者ではないからです。

まとめ

電気、ガス、水道、電話、灯油などの料金のうち、2019年10月1日をまたぐ期間の料金は「少し」お得になります。

ただその効果は実質的に「半月分ぐらい」です。生活者にとってのありがたみはさほど大きくはなさそうです。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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