他の飲食店からの出前を顧客に提供する場合の軽減税率

出前 配達

バーなど調理設備がないお店では、他の飲食店から出前を仕入れて顧客に提供するケースがあります。

この場合、提供するお店で調理していないため、テイクアウトになるのかイートインになるのか難しいケースです。

そこで、他の飲食店からの出前を提供する場合の軽減税率の扱いについて解説します。

1.出前の受け取りは8%、顧客への提供は10%

1-1.バー

バーなどはお酒を提供しますが、ナッツなど軽いおつまみしか提供せず、調理施設を設けていないことがあります。

ただ、顧客のことを考えて他の飲食店からの出前をお店が受け取り、顧客に提供しているお店もあります。この場合の軽減税率は、次の2つのパターンで考えます。

  1. 飲食店 → バー
  2. バー  → 顧客

1の場合では、バーが飲食店からテイクアウトで料理を購入しています。そのため、1の場合は軽減税率が適用されますので、消費税率は8%となります。
一方、2の場合はバーが仕入れた料理を顧客へ提供することになり、軽減税率が適用されず消費税率は10%になります。

バーの多くは出前で提供する料理にいくらか上乗せして提供します。例えば、2,000円の料理に10%上乗せして販売する場合を考えてみます。

まず、仕入れについては軽減税率8%ですので、仕入れ費用は2,000+税160円となります。
ここへ10%上乗せして提供しますので、税抜価格は、2,200円(税抜)となります。
さらに、消費税が10%課税されますので、実際に顧客が支払う料金は、2,200+税220円=2,420円(税込)となります。

また、顧客が直接出前を注文できるような場合は、バーで提供した料理ではありません。
しかし、バーが飲食可能な設備を提供したと認められる場合には、出前の料理でも10%の課税が行われる可能性があります。

店舗間の取り決めなどによって異なることもありますので、軽減税率が適用されるかどうか複雑な問題です。

1-2.インターネットカフェ

客席数を増やすためにインターネットカフェなども、調理設備がなく他店からの出前による料理を提供している場合があります。
この場合も、バーと同じように店舗が受けとる場合は軽減税率が適用され、顧客へ提供する場合には軽減税率が適応されません。

また、冷凍食品やペットボトルなど、市販の製品を調理して提供したり販売したりしている場合があります。
市販品の提供となると軽減税率が適用されるように見えますが、実はこの場合には適用されない可能性があります。

軽減税率が適用されるかどうかの基準となるのは、飲食設備がある場所で飲食料品を飲食させるサービスがあるかどうかです。
つまり、販売するものではなく、飲食できる設備(イスやテーブル)があり、その場で食べることを目的として提供する場合には軽減税率が適用されません。

そのため、調理された冷凍食品やペットボトルなども10%の課税が行われます。少し分かりづらいですが、顧客にとってはその場で食べるために購入したものには、製品の内容に関わらず10%の課税が行われると考えておきましょう。

2.まとめて仕入れた弁当を社員に販売する場合

工場などで、あらかじめ集金し会社が弁当をまとめて仕入れ従業員に振る舞う場合には、弁当はテイクアウトや宅配と同じように扱われるため軽減税率が適用されます。

ただし、会社が弁当を仕入れて従業員に販売する場合で、飲食できるスペースがありその場で食べさせる目的があると、従業員が会社へ支払う料金には軽減税率が適用されない可能性があります。

さらに、仕入れた弁当を社員食堂などで盛り付けて提供する場合には、10%の税率で課税されます。
従業員に振る舞う場合にも、出前を注文した業者が取り分けたり盛り付けたりする場合には、ケータリングとして扱われるため軽減税率は適用されません。

そのため、弁当を仕入れる場合には、どのように提供するのか飲食店の提供方法まで確かめておくことで、消費税の負担を抑えられます。

3.ホテルのルームサービスと備え付け販売

出前とは少し異なりますが、ホテルでの料理の提供はテイクアウトになるのかどうか判断が難しいです。

例えば、ホテルの会議室で料理を提供してもらったり、ルームサービスを利用したりする場合です。
一見するとこれらの料理は、テイクアウトのように見えます。
しかし、料理の提供先がホテルやホテルに入っているテナントである場合には、食事の提供に該当し軽減税率は適用されません。

一方で、客室に備え付けられた冷蔵庫内で自由に飲料を購入できるサービスがあります。
この販売方法では、顧客が必ずしも客室内で飲むために注文して購入するわけではありません。この場合は、食事の提供には該当せず、軽減税率が適用されます。

ホテルでの食事は、これらのポイントに基づいて軽減税率が適用されるのかを考えるようにしましょう。

まとめ

食事を顧客に提供する場合には、どこから仕入れたのかに関わらず、イスやテーブルなど飲食設備を整えている場合には軽減税率が適用されません。顧客にとっては、店内で食べる場合には全て10%の税率で課税されるのだと覚えておきましょう。

また、会社が大量に仕入れた場合やホテルのイートインなど、テイクアウトに見えるものでも食事の提供に該当し軽減税率が適用されない場合があります。

そのため、メニューや振る舞い方などを細かくチェックし、想定外の税率で課税されないように注意して注文しましょう。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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