消費税ポイント還元制度の最新情報まとめ
【9/1更新】 マイナポイント25%還元が2020年9月1日より開始されました。 【7/1更新】 キャッシュレス・ポ…[続きを読む]
消費税率10%への増税にかかる景気対策として、中小企業の店舗でキャッシュレス決済を利用した消費者に対して、購入額の最大5%のポイントが還元されます。
このポイント還元制度の導入には、数千億円程度の予算が必要となる見通しで、国民の税金がつぎ込まれます。
「いったい何のためにやるの?問題点はないの?」と疑問がわくのが正直なところです。
今回は、このポイント還元制度の目的と問題点について徹底解説していきます。
ポイント還元制度の内容詳細については、下記の記事をご覧ください。
目次
そもそも、ポイント還元制度を導入する目的は何なのでしょうか?
2014年4月の消費税8%増税時には、その前後で消費の大幅な駆け込みと反動が生じ、その後2015年から2016年にかけて低迷しました。
今回の10%への増税でも同様の消費低迷期を迎えることがないようにするために、消費税の実質的な負担額を8%時よりも軽くすることで、増税前の消費を維持することができ、場合によっては増税前より促進することができます。
主要各国のキャッシュレス決済比率の多くが50%前後であるのに対して、日本は18.4%とキャッシュレス化が遅れています。
政府はこれを2027年までに40%程度まで倍増させることを目指しています。
注:キャッシュレス比率18.4%というデータについて、実態よりも低すぎるのでないかという議論もあります。
「クロヨン」や「トーゴーサン」などの言葉に見られるように、わが国では従来から、自営業者の所得捕捉率が比較的低いという問題点がありました。
しかし、キャッシュレス化が進むことで、売買の履歴が電子的に記録されます。
決済額が確実に記録されるため、売上をごまかすことが難しくなります。
その結果、税金の徴収漏れの回避、納税の公平性を確保というメリットが生じます。
【出典】キャッシュレス・ビジョン|経済産業省(P10図表4各国のキャッシュレス決済比率の状況(2015年))
2020年の東京五輪開催は、日本に爆発的な経済効果を生み出すチャンスです。
世界各国から訪れるキャッシュレス決済に馴染み深い外国人観光客が、日本での支払いに戸惑わないように、多くの店舗でのキャッシュレス決済導入が望まれます。
政府は今回の増税時に消費税還元セールを認めるガイドラインを作成しています。
よって、百貨店やショッピングモールなどの大手小売り店では、増税後でも増税分2%は自社負担で値引きして、消費税8%のときと同様の金額で販売するような消費税還元セールが行われることが予想されます。
しかし中小店舗はこのようなセールに対応する資金力がないことが多いです。そのため、ポイント還元制度を設けることで、国が支援できます。
ポイント還元制度には多くの問題点があります。
ポイント還元制度に対応するためには、キャッシュレス決済の「決済端末」を用意しなければなりません。キャッシュレス化が進んでない事業者への決済端末導入を支援をするために、補助金が用意されます。
また、制度で付与するポイントは政府(税金)が負担しますし、制度を運営する施設にかかる費用もかかります。
これらに必要な財源は数千億円になると見込まれています。
現在のところ約4,000億円の財源を確保しているとされていますが、まったく足りなくなる可能性も指摘されています(※)。
※ 家計の消費は約300兆円あり、そのうち約50兆円分がポイント還元の対象だとしても、仮に2%還元なら1兆円、5%還元なら2.5兆円の財源が必要になります。
キャッシュレス決済に関しては、現状、「保護すべき人たちが恩恵を受けにくい構造」になっている問題もあります。
日本では、特に資金力のない若年層(20代)や後期高齢者を中心に「現金派」が多く、キャッシュレス決済に抵抗感のある人が少なくありません。可処分所得が少ない低所得者層や年金のやり繰りをしている世帯など、消費税増税の影響が大きい世帯には積極的にポイント還元制度を活用して欲しいところですが、「現金でないと不安」「使い過ぎが怖い」「やり方を変えるのが面倒」といった理由から、こうした世帯でのキャッシュレス決済の導入が進みにくいという現状があります。
また店舗側も、規模の小さい零細企業(個人商店など)の中には、制度の変化に対応する余力のないところも多いです。この場合、ポイント還元できない結果、顧客離れが生じる恐れもあります。
他方、普段からクレジットカードの利用に慣れている富裕層や、資金力があり、制度の変化に柔軟に対応できる企業などは、ポイント還元制度の活用にも積極的です。
保護すべき人たちが変化に柔軟に対応できない結果、優遇制度の恩恵を受けられずに終わってしまうという問題が生じています。
キャッシュレス化の不安を払拭するための制度やサービスの設計が、官民両方の立場から求められます。
ポイント還元制度が開始される10月まで、期間はあまりありません。
まず軽減税率対応のために、複数税率対応の「POSレジ」を購入しなければなりません。
さらにポイント還元制度の対応のために、キャッシュレス決済端末も必要です。
それぞれの新しい端末をミスなく使いこなせるように、社員教育・研修なども行わなければなりません。
これらの金銭的・時間的な負担が小さくないため、システムの切り替えコストも考えながら、POSレジ等の導入を検討する必要があります。
もともと、政府は、ポイント還元率5%の方向でしたが、コンビニや外食のフランチャイズチェーン(FC)から、「還元率5%の負担は重過ぎる」という反発があがりました。
このような反発が上がる理由は、フランチャイズの経営上の構造に由来します。
フランチャイズチェーン(FC)では、FC本部の「直営店」と、主に個人や中小企業が営むFC「加盟店」の2種類が存在します。しかし、国が還元費用を負担するのはFC加盟店のみであり、FC直営店は対象外です。
ここで、直営店と加盟店のすべての店舗で同じ還元率を実現するためには、直営店のポイント還元費用をFC本社が負担する必要があります。この負担が重すぎる、という反発です。
そのため、フランチャイズチェーン全体で還元率2%に調整することになりました。
しかしながら、フランチャイズチェーン(FC)に属さない個人や中小企業の店舗の還元率は5%のままであり、消費者の混乱が予想されます。
もともとは税抜価格に対してポイントを付与することを検討していましたが、クレジットカード会社の多くが税込価格に対してポイントを付与するシステムを採用しており、事業者の負担を減らすため、税込価格に対するポイント付与をメインとする方向になっています。
しかし、一部の事業者では税抜価格に対してポイント付与をしているところもあり、混在する可能性もあります。
ポイント還元制度導入後は、ほとんどの消費者がカード決済を利用すると考えられるため、企業側の手数料負担は大きなものとなります。
これに関して、経済産業省が国内のクレジットカード会社に対して、手数料率の上限を3.25%以下にするように条件をつけました。さらに、3分の1を国が補助するとしています。
ただ、カード決済を導入している企業における手数料率の平均値は3.09%となっていますので、まだ高いという印象は残ります。
法人カードの使用によって法人にポイントが付与された場合、会計処理としては、通常のクレジットカードのポイントなどと同様の取り扱いになるのではないかと思われます。
しかし、それはポイント還元制度の趣旨(消費者の負担軽減)に対して妥当か、という問題があります。
自民党はポイント還元制度の他にも、消費税増税による経済への影響を軽減するため、次のような対策を検討しています。
マイナンバーカードの取得者に対して、買い物で使えるポイントを国が上乗せ給付し、地域の商店街などで使えるようにします。
既存の自治体ポイント制度(※)に、国が全国一律でポイントを給付する制度を加える方向で検討中です。導入は2020年4月予定です。
低所得者や子育て世帯を対象としたプレミアム付き商品券が発行されます。
ポイント還元制度やマイナンバーカードのようにややこしい仕組みではなく、紙の券面による発行の予定で、増税と同時の2019年10月1日に開始し、有効期限は半年の予定です。
所得の少ない年金生活者に対しては、すでに給付されている年金にプラスして給付金が支給されます。
支給される金額は、年金の種類によって異なりますが、基本は月額5,000円になります。
住宅ローン減税の税額控除を受けられる期間を、現在の10年から13年に3年延長します。
ただし延長される3年間の控除額は、建物価格の2%と借入残高の1%のいずれか少ない方の金額となります。
現在の自動車取得税に代わって「環境性能割」が導入され、最大2%減税されます。 税率は1年半かけて段階的に引き上げ、元に戻す計画です。
店頭での価格表示は本来消費税を含めた総額で記載しなければなりませんが、8%への増税時に税抜表示を特例で認めていました。 その期限が2018年9月だったのですが、更に2年半延長されました。
景気対策というのが本来の目的であったはずですが、キャッシュレス決済やマイナンバーカードの普及など、ついでの目的も合わせてしまっていることで、複雑さを増しています。
まだまだ変更される余地があり、目が離せない制度です。