マイナンバーカードを利用した自治体ポイントのため方・使い方
消費税10%増税の対策として、マイナンバーカードを利用した自治体ポイント制度(以下、自治体ポイント)があります。 そ…[続きを読む]
2019年10月1日になされた消費増税では、所得が少ない人ほど税負担が重くなる問題が指摘されています(これを「逆進性」といいます)。
そこで逆進性対策として「プレミアム付商品券」という制度が実施されます。
プレミアム付商品券を購入すると「25%」お得に買い物できますが、購入できる人(対象者)は限られており、上限額や有効期限も設けられています。
「お得」を取りこぼさないように、誰が対象で、いつから使えるかなど、プレミアム付商品券に関する最新情報をまとめて紹介します。
目次
まずは「そもそもプレミアム付商品券とはどのような制度なのか」を解説します。
プレミアム付商品券の仕組みはこうです。
例えば、地方自治体が25,000円の額面のプレミアム付商品券を発行し、住民は20,000円で購入します。最大5,000円のプレミアム(お得)が付くので購入者は購買意欲が高まります。
そしてプレミアム付商品券は、発行した地方自治体内でしか使うことができなので地元にお金が落ちます。
このようにプレミアム付商品券は、経済の押し上げ効果と地域振興を同時に達成できます。
ただ、プレミアム分は政府が支出しているので、税金が使われています。そのため、プレミアム付商品券を使った人は実質的な減税となり、所得税などを支払っていながらプレミアム付商品券を使わなかった人は増税になります。
2019年10月に実施するプレミアム付商品券は、この「使う人は減税、使わない人は増税」になる性質を利用して、子育て世帯と低所得者を救済しようとしています。
2019年版のプレミアム付商品券を購入できる人(対象者)は、次の2つの条件どちらかに当てはまる人です。
※2016年4月2日から2019年9月30日までに生まれた子供がいる世帯が対象。
対象者は、大きく分けると2種類で、①住民税非課税区分者と②子育て世帯に分かれます。
対象者の総計は2450万人とされており、国民の約5人に1人の割合です。
注:政府は、2019年4月2日、対象者となる「小さな子供がいる世帯」の範囲を拡大しました。従来は、2019年9月30日時点で2歳児までが対象でしたが、3歳半の子供までが対象となりました。
①②の要件それぞれに該当する場合は、両方の立場で商品券が購入できます。
つまり、2019年度の住民税が課税されていない方(※)で、かつ、2016年4月2日から2019年9月30日までに生まれた子供がいる世帯であれば、それぞれの資格で商品券が購入できます。
内閣府の専用WEBサイトで、支給者判定チェックのチャートが公開されていました。
自分が支給対象者になるか、気になる方は一度確認してみましょう。
【出典】 内閣府プレミアム付商品券ホームページ | 対象者判定チェック
判定チェックの「⑤」が住民税非課税対象区分者、「⑦」が子育て世帯に該当し、支給対象者に該当するというチェックのようです。
プレミアム付商品券は、1枚「額面500円、価格400円」、10枚1セットで販売されます。対象者一人あたり、最大5セット(50枚)まで購入可能です。
つまり、対象者一人あたりの上限は20,000円分(額面25,000円)です。
プレミアム付商品券の購入方法も、大きく分けると2種類あります。
住民税非課税の世帯の場合、まず住民票のある市区町村から「申請書」がとどきます。
市区町村によって形式に差があるようですが、申請書が届くようです。
書類のタイトルにもある通り、この書類は「商品券購入引換券」の「交付申請書」です。
申請書に必要事項を記入し、市区町村に提出する必要があります。提出後、商品券の「購入引換券」が配送されるという流れです。
子育て世帯の場合、申請は不要です。
特別な申請をしなくても、市区町村から自宅宛てに、自動的に購入引換券が配送されます。
現状、7/27(金)頃から、自治体ごとに順次配送されているようです。
なお、2019年8月1日~9月30日までに生まれたお子様に係る引換券は、まだ判定が出来ないため、配送が少し遅くなります。
内閣府によると、この世帯に対する配送は11月頃を予定しているそうです。
引換券が届いたら、10月以降、市区町村が指定する窓口で購入します。
購入代金と引換券、本人確認書類が必要なので、忘れずに持参しましょう。
なお、要件重複する世帯などは、大きな金額を一度に用意出来ないかもしれません。その場合、分割購入が有効です。
購入に当たっては、5,000円単位(10枚1セット)での分割購入ができます。
現金の用意が難しい場合には、面倒ですが分割購入を利用しましょう。
これも内閣府の専用サイトに、市区町村名から検索して窓口や受付期間を確認する機能が用意されています。
「横浜市」「名古屋市」などと入力するか、県名、市名をプルダウンから検索すると確認できます。気になる方は一度確認してみると良いでしょう。
※現在はプレミアム商品券の特設ページが終了し、確認したい方はこちらの内閣府のページからご確認ください。
参考:内閣府|プレミアム商品券
プレミアム付商品券の有効期間は2019年10月1日 ~ 2020年3月31日までの「半年間」です。
プレミアム付商品券を購入も、消費も、この期間内に行わなければなりません。
プレミアム付商品券を使える場所は、プレミアム付商品券を発行している地方自治体のエリア内の小売店です。
使用場所をこのように限定することで、大都市圏でプレミアム付商品券の使用が集中することを回避します。地域振興策としての側面も、多少あるということです。
ただ、過疎化が進んで中心市街地の商業施設が少ない地方自治体の場合、例外的に周辺の自治体の小売店でも使えるようにします。
プレミアム付商品券には、問題点を指摘する声もあります。
「0~3歳半の児童がいる世帯」は、住民税の課税・非課税に関係なくプレミアム付商品券の対象となります。
確かにこの世帯への支援は必要ですが、3歳半~大学生の子育て世帯もお金がかかるため支援が必要です。子供の年齢条件を「0~3歳半」としていることは、3歳半~大学生の子育て世帯には納得できないかもしれません。
なお、子供の生年月日で制限するのは、対象者の絞り込み(特定)のためです。
例えば、2019年10月1日に生まれた子供のいる世帯もプレミアム付商品券を購入できるとしたら、10月1日になった時点で、地方自治体は急遽その人にもプレミアム付商品券を販売しなければなりません。それでは現場が混乱してしまうので、どこかで線引きをするのです。
ただ、子供の誕生日が1日ずれただけでもプレミアム付商品券を利用できません。「線引き」は必要ですが、1日違いで対象外となった世帯の不満は高まるでしょう。
プレミアムの額が最大5,000円「でしかない」ことも、施策の実効性として問題視されています。消費税が8%から10%に上がるインパクトに比べ「5,000円は少なすぎる」ということです。
たとえば税別250,000円の買い物をすると、税率8%なら消費税は20,000円、税率10%なら消費税は25,000円で、差額が5,000円です。
今回のプレミアム付商品券による消費税増税緩和効果は、税別250,000円分の買い物をした段階で使い切ってしまう計算になります。
児童がいる世帯の平均家計支出は「28.3万円(月額)」という厚労省の調査(※)もありますので、何かと支出の多い出産直後世帯などであれば、1ヶ月程度で消費しきってしまう程度の恩恵に留まります。
※ 【参考】平成29年 国民生活基礎調査の概要 統計表|厚生労働省
そして貧困世帯には、「最初に商品券を買う」というルールが支障になりかねません。
例えば、「非課税」「子育て」両方の要件を満たす4人家族(成人2名、3歳未満2名)を想定しましょう。
この場合、「非課税」枠で4人分、「子育て」枠で2人分の購入が出来るので、
(4+2)人 × 2万円 = 12万円 分のプレミアム付商品券が購入できます。
しかし、そもそも住民税が非課税な世帯なので、一度に12万円分を現金で購入することは難しいかもしれません。
一応、5,000円単位で分割購入することも出来ますが、その場合、何度も窓口に行く手間が発生します。窓口が開いている時間に、時間を取って何度も足を運ぶのは、正直大変です。
またプレミアム付商品券にはお釣りが出ません。
お釣り目的で低額商品をプレミアム付商品券で購入し、貯蓄に回さないようにするためです。
プレミアム付商品券を実際に発行するのは地方自治体ですが、その財源は政府(国)が負担します。内閣府は1,723億円の予算案を財務省に提出しています。
発行・販売にかかる事務費用等が巨額になるため、「費用対効果が十分にある施策なのか」を問題視する声もあがっています。
プレミアム付商品券に似た制度として、自治体ポイント制度というものもあります。
自治体ポイントとは、マイナンバーカード所有者が利用できる制度で、クレジットカードのポイントや航空会社のマイレージなどを、自治体ポイントに交換・合算し、一定の買い物にそのポイントを使用することができます。
期間は2020年4月~2021年3月の1年間です。
ただ、参加している自治体が100くらいしかなく、日本のすべての自治体のわずか5%にすぎません。
詳細はこちらの記事をご覧ください。
プレミアム付き商品券の申請率は、全国平均で4割程度でした。
低調となった理由には次のようなものがあります。
実は、プレミアム付商品券は、今回が初めてではありません。政府は2015年にも、プレミアム付商品券制度を実施しています。
2015年のプレミアム付商品券制度は「低所得者対策」ではなく、「消費刺激策」として実施されました。したがって対象者は限定していません。
このときは全国で97%の自治体がプレミアム付商品券を発行しました。プレミアムは2~3割の上乗せが多かったようです。
事業費は1,589億円でした。つまり1,589億円分のプレミアムが国民に配られ、1,589億円分の税金が使われたのです。
ところが経済効果は640億円程度しかなかったといわれています。では差額の949億円(=1,589億円-640億円)はどこに消えてしまったのかというと、貯蓄などです。
例えば、ある人が25,000円のプレミアム付商品券を20,000円で買い、それで25,000円分の生活必需品を買ったとします。生活必需品はプレミアム付商品券がない場合でも購入しなければならないので、この人はプレミアム分の5,000円を「貯蓄したようなもの」と考えられるのです。
したがってこの人の25,000円の買い物は、プレミアム付商品券による経済効果に貢献していない、と評価されてしまいます。
ただ、プレミアム付商品券を実施しなければ640億円の経済効果は生まれなかったので、差額の949億円が消えたからといって、それだけで「よくない制度」とはいえません。