軽減税率の対策でコンビニのイートインコーナーが飲食禁止になる?
2018年10月3日、衝撃のニュースが報じられました。
政府は、酒類を除いたすべての飲食料品を軽減税率の対象にする方向で調整に入ったのです。
これを受けて、持ち帰りと、イートインスペースでの飲食の両方が考えられるコンビニでは、税率をどう区別するかについて、大きな問題が生じました。
※結局、イートインコーナーの飲食禁止はなくなりましたが、その当時(2018年10月3日時点)の状況を記載しています。
目次
1.コンビニでの飲食は消費税率8%と10%が混在
コンビニの軽減税率の取り扱いが大きな問題となっている理由が、「イートインコーナー」です。 近年のコンビニはこのイートインコーナーを設置している店舗を多く見かけます。
実は、コンビニで購入した飲食料品をそのまま持ち帰るのか、またはイートインコーナーで食べるのかによって消費税の適用税率が異なるのです。詳しくみていきましょう。
1-1.軽減税率の対象内容について概説
軽減税率の対象となるのは、飲食料品(外食と酒類を除く)と新聞です。
どのような行為がここでいう外食に該当するのかというと、テーブルやカウンター、椅子などの飲食設備ある場所で食事をした場合であり、テイクアウトや出前などは外食にはなりません。
軽減税率8%(「外食等」に当たらない) | 標準税率10%(「外食等」に当たる) |
---|---|
牛丼屋・ハンバーガー店のテイクアウト | 牛丼屋・ハンバーガー店の店内飲食 |
そば屋の出前 | そば屋の店内飲食 |
ピザ屋の宅配 | ピザ屋の店内飲食 |
屋台での軽食 (テーブル・椅子等の飲食設備がない場合) |
フードコートでの飲食 |
寿司屋のお土産 | 寿司屋での店内飲食 |
コンビニ等の弁当・惣菜 | コンビニ等のイートインコーナーでの飲食 |
1-2.イートインコーナーでの飲食は10%、持ち帰りは8%
コンビニのイートインコーナーの多くは、飲食するためのテーブルと椅子が設置されており、レジで購入した飲食料品をイートインコーナーで食べる行為は外食に該当し、消費税は10%となります。 これに対してイートインコーナーに寄らずにそのまま持ち帰った場合には、テイクアウトと同様で8%となります。
問題は、その消費税の計算はイートインコーナーに行く前のレジの時点で行われるという点です。
消費者がイートインコーナーで食べるか否かをレジの時点で店側が知るには、消費者に直接意思確認するしかなく、イートインコーナーで食べると答えた場合には10%、持って帰ると答えた場合には8%で会計することになります。
1-3.混乱が生じることは予測されていた
日頃コンビニをよく利用する人なら分かるかと思いますが、コンビニのレジは時間帯によっては大混雑します。会計のたびに消費者の意思を確認することは非常に大変で、混乱が生じるのではないかという心配は当初からされていました。
これについては、コンビニはほとんどの飲食料品は持ち帰られることが前提で営業しているため、すべての消費者に意思確認する必要はなく、「イートインスペースで召し上がられる方は、お申し出ください。」などの張り紙をすることで意思確認をしたものとみなしてもらえるようになっています。
また、持ち帰ると答えて8%で会計を済ませた後にイートインコーナーで食べたとしても、コンビニにも消費者にも罰則規定はなく、単純に消費者のモラルに任せる形となっていることも問題でした。
これでは税金の絶対ルールである「課税の公平」が守られているのか疑問です。
2.イートインコーナーを休憩施設に
コンビニが取り扱っている飲食料品(酒類を除く)がすべて軽減税率の対象となるためには、イートインコーナーで外食サービスが提供されていないことを明らかにする必要があります。
そこで、コンビニ業界では、イートインコーナーを「休憩施設」と位置づけ、飲食禁止にすることで、外食と取り扱われないようにする方針の検討を開始しました。
要するに、イートインコーナー利用の有無を消費者1人1人に確認したり、「イートインスペースで召し上がられる方は、お申し出ください。」などの張り紙をして複数税率に対応するよりも、飲食禁止としてしまえば、すべて8%で計算できるので手間がない!ということです。
財務省や国税庁の理解も得られており、今後は運用ルールの具体化に向けて進んでいくと報道されました。
3.想定される影響
3-1.他の外食産業の反発
コンビニのイートインコーナーと似たような形態の店舗を持つ外食産業は、ファーストフード店をはじめとして数多くあります。
ファーストフード店でハンバーガーを買って店内で食べた場合には10%で、コンビニでハンバーガーを買って飲食禁止のイートインコーナーで食べた場合には8%。
仮に購入金額が500円だった場合には10円(2%)の消費税額の差が出ます。 この税率差に対して、ファーストフードなど他の外食産業から反発が出るのは当然と予想されます。
3-2.飲食禁止に対する消費者の反発
近年、イートインコーナーは多くのコンビニで普及しており、外食産業がそのあおりを受けているほどです。 朝食や仕事の合間など日々の日課として利用している消費者も多く、飲食禁止への突然の変更は反発を招くと予想されます。
コンビニ各社のイートインコーナー設置状況
コンビニ名 | 集計日 | 国内全店舗数 | イートインコーナー設置店舗数 |
---|---|---|---|
セブンイレブン | 2018年9月末 | 20,600 | 約2,000 |
ファミリーマート | 16,715 | 約4,000 | |
サークルKサンクス | |||
ミニストップ | 2,237 | 原則として全店舗 | |
ローソン | 2018年2月末 | 13,992 | 非公表 |
3-3.禁止しても飲食する客がいたらどうする?
コンビニで購入した飲食料品を、イートインコーナー改め飲食禁止となった休憩コーナーで飲食した場合にはどうなるのでしょうか。脱税として逮捕されるのでしょうか。
まだ明確な法律はできていませんが、恐らくコンビニと消費者どちらに対しても何のおとがめもないでしょう。消費者のモラルに任される形となると予想されます。
3-4.脱税意識の薄れ
「レジてテイクアウトと答えれば、イートインコーナーで食べても8%で済む。」、
「イートインコーナーが飲食禁止となっているコンビニでは、何も聞かれず8%で購入できるし、イートインコーナーで食べても罰則はない。」
本来10%支払うべき消費税を8%しか支払わない行為は立派な脱税です。脱税を単なる節約感覚で捉えてしまう人が出てくると、後々大きな問題に発展する可能性があります。
4.結論:飲食禁止ではなく、お客様からの申し出
2019年4月8日、大手コンビニ業界では、イートインスペースを飲食禁止にすることはせずに、お客様から「イートインを利用します」という申し出があった場合のみ10%を適用し、申し出がなければ軽減税率8%を適用する方針を決定しました。
店内に「イートインスペースを利用する場合は、お申し出ください」というような貼り紙をしておき、お客様が申し出るかどうかによって税率を決定します。
申し出なかったお客様がイートインスペースを利用するリスクはありますが、イートインスペースを飲食禁止にするというのは本来の利便性から考えると的外れであり、結局は、コンビニ側がお客様を信頼して会計をするしかないのでしょう。
まとめ
コンビニ弁当をイートインスペースで食べれば消費税が10%、食べずに持ち帰れば8%。
どちらになるかは、原則、会計時の購入者の意思で決まります。
この場合、混乱が予想されるため、コンビニ業界では、一時期、イートインコーナーを飲食禁止にして、一律8%にする方向で調整したこともありました。
しかし、結局は、お客様から申し出があった場合のみ10%を適用し、そうでなければ、原則、軽減税率8%とする方向になりました。