【2024年版】医療費控除の明細書の書き方(記入例つき)
医療費控除を受けるには、領収書を提出する代わりに「医療費控除の明細書」を提出します。書類の書き方について、記入例を利…[続きを読む]
医療費控除の申請がしたいのに、確定申告の時期になっても「医療費のお知らせ」が届かないと、「いつ来るの?」と不安になってしまいますよね。
この記事では、医療費のお知らせが届かない場合の対処方法を解説します。
目次
医療費のお知らせとは、病院などで健康保険を利用して支払った医療費の一定期間分が集計された明細書で、健康保険組合などの医療保険者から勤務先を通して手元に届きます。ハガキのような形をしているか、封筒に入っている場合が多いです。
ご覧のように、加入している家族分の医療費が一覧で記載されているため、医療費を集計する手間が省けます。 ただし、記載対象となる期間は健康保険によって異なりますので注意が必要です。
多くのサラリーマンなどが加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)は、前年10月~対象年度9月の約12カ月分が記載されており、今回届くのは、令和4年10月~令和5年9月の間の受診分となります。
国民健康保険である東京都北区の場合は、その年の1月~12月の12カ月分が2回に分けて通知されます。
発送される時期についても健康保険によって異なり、毎月発行するところもあれば、年1回のところ、送付自体しないところもあります。
協会けんぽの場合は、年1回「2月」に会社に届きます。今回の送付については、協会けんぽのHPに下記のように記載されています。
東京都北区の場合は、年2回「9月」と「3月」に届きます。
どのようなタイミングで通知が届くのか知りたい場合には、加入している健康保険や勤務先に確認してみましょう。
保険者とは健康保険事業の運営主体のこといい、大まかには次の種類があります。
区分 | 保険者 |
---|---|
社保 | 協会けんぽ |
組合けんぽ | |
共済組合 | |
国保 | 国民健康保険 |
後期 | 後期高齢者医療保険 |
「協会けんぽ」は、会社に健康保険組合がない中小企業のサラリーマンとその扶養者を対象として、都道府県別に存在します。
「組合けんぽ」は、会社に健康保険組合がある大企業のサラリーマンとその扶養者を対象としており、組合別、企業別に存在します。
「共済組合」は、公務員とその扶養者を対象としたものです。
「国民健康保険」は、自営業者など、社保に加入しない人を対象としており、市区町村ごとに存在します。
「後期高齢者医療保険」は、75歳以上の人(65歳以上の寝たきりの人の含む)を対象としたもので、こちらも市区町村ごとに存在します。
医療費控除は年末調整で受けることはできず、確定申告の必要があります。その際の注意点を解説します。
確定申告に利用できる医療費のお知らせは、次の事項が記載されているものに限られます。
【引用】国税庁:医療費を支払ったとき(医療費控除)|所得税
医療費のお知らせが利用できない場合には、以下の医療費控除の明細書の「2医療費(上記1以外)の明細」に必要事項を記入し提出すること及び領収書を保存することで、医療費控除を受けることができます。
世田谷区が発行する国民健康保険の医療費のお知らせについては、確定申告に利用できない旨を前もって周知しています。
このように、医療費のお知らせのフォームは保険者によって異なりますので、利用可能かどうかを知りたい場合には、保険者に直接確認すると確実です。
ドラッグストアで購入した薬や、通院するための交通費なども医療費控除の対象となりますが、健康保険を利用することはできないため、医療費のお知らせには記載がありません。また、対象期間から外れている医療費についても記載はありません。
このような医療費も、上記「(2)利用不可の場合」と同様に「2医療費(上記1以外)の明細」に必要事項を記入して提出し領収書を保存することで、医療費控除を受けることができます。
協会けんぽの医療費のお知らせには、前年10月~対象年度9月までの医療費が記載されています(一部、対象年度の10月分も記載されていることがあります)。
よって、前年10~12月の医療費が記載されていることと、対象年度の10、11、12月の医療費は記載されていない点に注意が必要です。 前年分は年度が違うため控除対象外であり、対象年度である10、11、12月分は、上記(2)(3)と同様に、「2医療費(上記1以外)の明細」への記入及び提出と領収書の保存が必要です。
医療費のお知らせに記載されている期間は、対象年度1~12月とは限りません。他の保険者の場合でもこのような期間のズレには注意しましょう。
医療費のお知らせが、確定申告期限である3月15日に間に合わない場合には、どうすれば良いのでしょうか。
医療費のお知らせが届かないからと確定申告を待っていても、お知らせ自体が発送されないのであれば無駄になってしまいます。
加入している保険者(「協会けんぽ」などの健康保険組合)に確認するか、会社員であれば勤務先に送付されてくるので担当部署に確認しましょう。
医療費のお知らせに記載される期間内に健康保険を一度も使っていない場合には、そもそも記載する内容がないため発送されません。 また、保険者によってはレセプトの医療費が〇円以上の場合に発送するなどの条件がある場合もあります。
書面として手元に届く方法以外にも、インターネット上でIDやパスワードを入力して閲覧する方法もあります。Web閲覧のみでお知らせする保険者の場合には、お知らせは届きません。
通常通り、領収書を元に医療費控除の明細書を作成し、領収書を保存します。 医療費控除の明細書の「2医療費(上記1以外)の明細」は、医療費のお知らせに記載されていない部分を領収書で補おうというものです。
お知らせが届かないことも考えて、領収書は確定申告時期まで捨てずに保管しておきましょう。
マイナンバーカードをお持ちであれば、e-Taxでマイナポータル連携を利用するのがおすすめです。
マイナポータル連携を利用すると、医療費通知に記載されている医療費情報が自動で確定申告書、医療費控除の明細書に反映されるのでとっても便利。医療費通知の原本が不要なだけでなく、保管の必要もなくなります。
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医療費控除の申告は、払いすぎた税金が戻ってくる、いわゆる「還付申告」になります。
還付申告だけであれば、申告期限は、3月15日ではなく申告可能な日から5年間です。(令和4年分申告では、2027年12月31日)
還付金を急いで手に入れたいなどの理由がなければ、医療費のお知らせが手元に届くのを待ってから確定申告をしても問題ありません。
もともと、医療費のお知らせは確定申告のために作られたものではありません。自分が使った医療費を確認することで、健康や医療に対する理解を深めてもらうことを第一の目的として発送されています。だからこそ、保険者ごとに対象期間や発送時期が異なるのです。
それが平成28年税制改正によって、急に医療費のお知らせが確定申告に使えるようになったため、保険者の対応が間に合っていないのが、発送が遅れている大きな原因です。各保険者の対応やレセコンなどのシステム改修等を待つしかないでしょう。
医療費のお知らせを確定申告書に添付した場合は、お知らせに記載されている医療費については領収書の保存は不要です。ただし、医療費のお知らせに記載されていない医療費分を記載した「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付する場合には、該当の領収書を5年間保存しなければなりません。
医療費のお知らせには、対象期間に医療機関を受診した分が記載されています。ただし、対象期間中であっても、医療機関によっては記載されていない場合もあります。
各保険者ごとに対象期間があり、記載されていない月はその保険者の対象期間外であるためです。医療機関から保険者への請求時期のズレなどによって記載されていない場合もあります。
(たとえば、協会けんぽでは、10月,11月,12月の医療費は記載されていません。)
利用できません。
この場合には上記「利用不可の場合」に該当し、医療費控除の明細書の「2医療費(上記1以外)の明細」に必要事項を記入し提出すること及び領収書を保存することで対応します。
医療機関の通称名と、保険者に登録されている医療機関名が異なっている場合が考えられます。受診した医療機関へ確認しましょう。
次のような払い戻しを受けた場合には、実際の自己負担額が医療費のお知らせへ反映されない場合があります。そのような場合には、払い戻し分を差し引いた申告者自身の負担額を申告します。
利用できません。
電子的に発行された医療費通知を印刷したものは、医療費のお知らせの代わりにはなりません。確定申告に利用できるのは、保険者が紙で発行する医療費のお知らせの原本のみです。
利用できません。
3割分の自己負担額の記載がなく、10割分の医療費総額のみが記載されている医療費のお知らせは、上記「利用可能な条件」のうち「被保険者等が支払った医療費の金額」が満たされていないので、確定申告書に添付して医療費控除を受けることはできません。
【参照】国税庁:医療費控除に関する手続きについて(Q&A)
最後に、医療費控除の改正内容について簡単に説明しておきます。
医療費控除の改正前(平成28年分以前)と改正後(平成29年分以降)で比較しています。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
医療費の領収書 | 提出または提示が必要 | 不要 |
明細書の提出 | あくまで集計表としての サブ的位置づけ |
「医療費控除の明細書」 の提出が必要 |
「医療費通知」 (医療費のお知らせなど) |
利用不可 | 利用可能 |
従来は、確定申告書と一緒に医療費の領収書を提出または提示する必要がありましたが、平成29年分以降はそれが不要になりました。
ただし、確定申告期限の翌日から5年を経過する日までは、その領収書を保管することが義務となりました。5年経過後は破棄して大丈夫です。 これは、税務署から領収書についての確認要請があった場合や、税務調査が行われる場合に備えるためです。
(後述の「医療費通知」を添付する場合は、その分については、領収書の保管は必要ありません。)
従来は、集計表のようなサブ的位置づけとして「医療費等の明細書」というものを作成できましたが、平成29年分以降は、これが「医療費控除の明細書」となってメインに昇格しています。
ただし、平成31年分(令和元年分)までは従来の方法での提出も可能です。その場合には、申告書に領収書を添付して提出します。
従来は、「医療費通知」(「医療費のお知らせ」と呼ぶことが多いです。)は利用することができませんでしたが、平成29年分以降は積極的に利用されます。
これを確定申告書に添付する場合には、記載されている医療費については明細書への記載が合計額のみで済み、その内容を細かく記載する必要がなくなります。
今までは一目確認して破棄していた人も、これからは大切に保管しておくようにしましょう。