仮想通貨にはどんな税金がかかるのか?

仮想通貨 ビットコイン

 今年2017年は、ビットコインをはじめとする仮想通貨に注目が集まっています。すでに仮想通貨を購入した人もいるでしょう。
では、仮想通貨の取引により生じた利益にはどんな税金がかかるのでしょうか。所得税、消費税や相続税はどうなっているのでしょうか。仮想通貨にかかる税金について解説します。

1.所得税・住民税

仮想通貨の取引により生じた利益にかかる税金については、これまで明確な指針が出ていませんでした。急スピードで拡大する仮想通貨に対し、税制が後手に回っていました。

しかしながら国税庁は、今年2017年9月に、「仮想通貨の取引により生じた利益は、雑所得に該当する」との見解を出しました。国税庁のタックスアンサーには、以下のように記されています。(なお、「ビットコイン」と記されていますが、ビットコイン以外の仮想通貨である「アルトコイン」についても、同様に適用されるものと思われます)

1-1.国税庁の見解

【引用】国税庁タックスアンサー No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係

[平成29年4月1日現在法令等]
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨または外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種取得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。

では次に、雑所得について見てみましょう。

1-2.雑所得とは

雑所得とは、給与所得や事業所得、不動産所得、譲渡所等、一時所得など他の所得に該当しない所得のことをいいます。雑所得の代表例は公的年金です。生命保険の保険金や退職金を年金形式で受け取る場合も雑所得になります。

他にも、例えば、作家(および著述家)以外の人が受け取る印税や原稿料、講演料、放送謝金などや、外貨預金の為替差益も雑所得に該当します。

1-2-1.雑所得の計算方法

公的年金等以外の雑所得については、「総収入金額 - 必要経費」で計算します。

1-2-2.雑所得の課税方法

雑所得は、一部を除き原則、他の所得と合算して総合課税されます。例えば会社員の人であれば、給与所得と合算され、所得に応じた累進税率(5%~45%)がかかることになります。

なお、雑所得のうち、差金決済による先物取引にかかる雑所得については特例が設けられており、一律20.315%(所得税および復興特別所得税・住民税)の税率で申告分離課税扱いとなります。この先物取引には、株価指数先物取引(日経225先物、日経225ミニ、TOPIX先物など)、外国為替証拠金取引(FX)、商品先物などが含まれます。

ビットコインはこの特例の対象外ですが、将来的には対象に含められる可能性もあります。

1-3.利益が生じるパターンにはどんなものがあるか

仮想通貨の取引により利益が生じるパターンには、次のようなものが考えられます。

  • 仮想通貨で商品を購入(店舗で仮想通貨により支払う場合、円など法定通貨に変えてから支払う場合等)
  • 仮想通貨が値上がりし売却(円など法定通貨に交換)
  • 仮想通貨から仮想通貨への交換(ビットコインから、イーサリアムやリップルに変える等)

3つの場合いずれも、発生した利益が課税対象になると思われます。
しかしながら、最後の仮想通貨から仮想通貨への交換によって生じた利益については、取引が複雑な場合は、その算定が困難になることも考えられます。

1-4.注意点:損益通算できない

仮想通貨の取引により発生した利益については、雑所得として確定申告する必要があります。このため、今後年末にかけて、納税を意識した仮想通貨の売却が活発化する可能性があり、注意が必要です。

なお、仮想通貨の取引により損失が発生した場合でも、公社債や上場株式の譲渡損益と異なり、損益通算の対象にはなりません。同様に、損失の繰り越し控除もできませんので注意しましょう。

2.消費税

2-1.購入時の消費税は非課税に

仮想通貨の購入時にかかる消費税については、2017年7月1日より非課税とされました。これにより、仮想通貨の購入時と利用時にいずれも消費税が課税される二重課税状態は解消されたことになります。

【引用】国税庁タックスアンサー No.6201 非課税となる取引

[平成29年4月1日現在法令等]
2 主な非課税取引
(3)支払手段の譲渡(注)
銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、約束手形などの譲渡
ただし、これらを収集品として譲渡する場合は非課税取引に当たりません。
(注)平成29年7月1日以降、資金決済に関する法律第2条第5項に規定する仮想通貨の譲渡は非課税となります。

仮想通貨の購入・譲渡にかかる消費税が非課税になったことで、購入時に消費税を支払う必要はなくなりますが、一方で、事業者は仕入税額控除ができなくなります。

2-2.経過措置

「平成29年7月1日以降」という境界があるということは、6月30日以前に購入した仮想通貨は仕入税額控除の対象で、7月1日以降に売却したら消費税を受取りません。つまり、受け取った消費税(0円)よりも支払った消費税のほうが大きいため、支払った消費税がまるまる還付されることになります。

たとえば、6月30日に税込で108万円分の仮想通貨を購入し、7月1日に108万円で売却した場合には、8万円の消費税が還付されます。

これを防ぐため、経過措置が設けられました。具体的には、消費税法施行令附則(平成29年3月31日 政令第109号)に、次のように定められています。

平成29年6月30日(施行日の前日)に税抜100万円以上の仮想通貨を有しており、同日の仮想通貨の保有数量が、平成29年6月1日から平成29年6月30日までの間の各日の仮想通貨の数量の合計数を30で除して計算した数量に対して増加した場合には、その増加した部分に係る消費税には仕入税額控除を認めないとしています。

平成29年6月30日時点で税抜100万円以上の仮想通貨を所有している場合には、次のような条件があります。

  • 平成29年6月1日~6月30日の平均保有数量>平成29年6月30日の保有数量
    →6月30日までに購入した仮想通貨に対して、まるまる税額控除が認められる。
  • 平成29年6月1日~6月30日の平均保有数量<平成29年6月30日の保有数量
    →平均保有数量より多い部分については、税額控除が認められない。

2-3.7月1日より前に購入した人は損なのか?

お店を経営している人のように、消費税の納税義務者(事業者)であれば、7月1日より前の仮想通貨の購入に対して仕入税額控除を受けられるので良いのですが、通常の個人の場合は、購入時に消費税を支払い売却時に消費税を受け取れないため、損をしているように見えます。

しかしながら、7月1日0時前後の実際のビットコインの購入価格の推移のグラフを見ますと、特に目立った価格の変動は見られませんでした。7月1日より前に仮想通貨を購入した個人が損をしているとはいえないようです。

3.相続税

最後に、相続税について見てみましょう。

3-1.国税庁の見解は示されていない

相続税については、2017年10月24日現在、国税庁の見解は示されていません。上場株式などと同じく、時価が変動しますので、何らか一定の評価方法が定められるべきですが、財産評価基本通達にも特段示されていません。

仮想通貨が急拡大してまだ日が浅いですが、仮想通貨の保有者が死亡し、相続がすでに発生している事例もあるでしょう。そのような場合、現在は事例毎に個別対応になっているものと推測されます。このため、消費税、所得税に続き、早晩何らかの見解が示されるものとは思われます。

3-2.問題点

仮想通貨は、相続税法上の取扱いについて、いくつかの問題点があります。

時価評価の方法が難しい

まず、時価評価の問題です。時価の変動があまりにも激しいため、いつの時点の時価を用いるかにより、相続財産としての仮想通貨の価値が大きく変わってきます
取引時間が24時間365日のであり同じ1日の中でも値動きが激しいため、株価のように15時00分の時価を利用するのか、23時59分の時価を利用するのかでも変わってきます。

仮想通貨所有の把握が難しい

また、仮想通貨は秘匿性が高いので、被相続人が仮想通貨を保有していたという事実を相続人が把握できない可能性があります。加えて、被相続人が相続人の秘密鍵(いわゆる暗証番号)を知らなければ、たとえ仮想通貨を保有していたことが判明しても、そもそも仮想通貨を引き出せないという問題もあります。
要するに暗証番号がわからなければ、1円の価値もないということです。

隠されても追及が難しい

仮想通貨は読んで字のごとく仮想的な通貨であり実体がありません。FacebookやGmailのようにアカウントを作成し、パソコンやスマートフォンで利用します。
もし、被相続人と相続人が結託して、相続税申告書に記載しなければ誰もわかりません(ただし、これは脱税行為になる可能性がありますのでご注意ください)。

税務調査官といえども、被相続人/相続人が利用しているパソコンやスマートフォンの中身まで捜査することは現時点ではハードルが高いのではないかと思われます。

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いずれにしても、仮想通貨の相続税法上の取扱いについては、早急な対応が求められています。

まとめ

以上見てきたように、仮想通貨の課税については、徐々に整いはじめているものの、まだ十分とはいえません。仮想通貨の急スピードの拡大に、税制の整備が追いついていないのが現状です。

しかしながら重要なことは、「課税逃れ」につながるような抜け道がもしあったとしても、遅かれ早かれ、必ず是正されるということです。また、仮想通貨で節税することも基本的には難しいといえます。

仮想通貨を取引する目的は人それぞれ異なりますが、現在の税制については最低限理解しておいたほうがよいでしょう。仮想通貨の特徴を正しく理解し、ライフプランが豊かになるよう賢く取引したいものですね。

服部
監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関することが大好きで、それらの記事を2000本以上、執筆・監修。
「マネー現代」にも寄稿している。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
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