【速報】年収の壁178万円に引き上げ?いくら減税される?

2025年12月18日、自民党総裁の高市早苗首相と、国民民主党の玉木雄一郎代表は、国会内で党首会談し、年収の壁を、現行の160万円から178万円へ引き上げることで合意しました。

ただ、所得制限が665万円以下、2年間限定の引き上げがあるなど、非常に複雑な内容となっています。

年収の壁引き上げについて、現状わかっている範囲で整理し、いくら減税されるのかを、お伝えします。

1.「178万円の壁」への引き上げとは

(1)「160万円の壁」とは

2025年12月現在、給与年収160万円以下であれば、所得税はかかりません。そのため、「160万円の壁」と呼ばれています。

基礎控除95万円と給与所得控除65万円を足した金額が、160万円です。

基礎控除95万円+給与所得控除65万円=160万円

年収の壁 160万円の壁

(2)「178万円の壁」とは

2025年12月11日、政府は、年収160万円の壁を、168万円の壁に引き上げる案を検討していると、報道がありました。

そして、2025年12月18日、自民党総裁の高市早苗首相と、国民民主党の玉木雄一郎代表は、国会内で党首会談し、年収の壁を、現行の160万円から178万円へ引き上げることで合意しました。

ただし、基礎控除の引き上げは所得税のみで、住民税は対象外です。

基礎控除が最大104万円に

基礎控除額(上限)と給与所得控除(最低ライン)を次のように引き上げます。

  • 基礎控除:95万円→104万円(9万円引き上げ)
  • 給与所得控除:65万円→74万円(9万円引き上げ)

両方足すと、178万円です。

基礎控除109万円+給与所得控除69万円=178万円

年収の壁 178万円の壁

基礎控除:本来62万円+上乗せ最大42万円

ただ、細かく見ると、基礎控除には、本来分と上乗せ分があります。

2025年12月現在の、基礎控除額の上限95万円は、本来の58万円と特例の37万円上乗せの合計ですが、これをそれぞれ引き上げます。

  • 本来の基礎控除:58万円→62万円(4万円引き上げ、恒久的)
  • 特例の基礎控除:37万円→42万円(5万円引き上げ、2026年・2027年限定)

さらに、給与所得控除についても、期間限定の上乗せができます。

  • 本来の給与所得控除:65万円→69万円(4万円引き上げ、恒久的)
  • 特例の給与所得控除:(現在なし)→5万円(5万円引き上げ、2026年・2027年限定)

年収の壁 178万円の壁

2.年収の壁の引き上げの経緯:160万円の壁の課題

2025年に、年収の壁は、103万円→160万円に引き上げられたばかりですが、なぜ、また、年収の壁を引き上げるのでしょうか?

これまでの経緯を簡単に説明しながら、現在の、160万円の壁の課題点を解説します。

(1)2024年11月、国民民主党が、年収の壁の引き上げを提案

年収の壁の引き上げの議論が始まったのは、2024年11月に国民民主党が、178万円の壁への引き上げを提案したときです。

給与所得者全員の基礎控除額を一律で123万円に引き上げ、10~20万円くらいの大幅な減税を図ることを提案しました。

年収の壁 178万円の壁

(2)2025年3月、与党が、160万円の壁で決定

年収の壁の引き上げについて、政府・与党と国民民主党の間で何度か協議が交わされたものの、政府・与党は、財源を確保できないことを理由に、国民民主党の178万円の壁引き上げ案を拒んでいました。

そして、2025年3月、与党が、160万円の壁引き上げ案を国会に提出し、法案を可決させました。

年収の壁 160万円の壁

(3)所得制限つきで、低所得者以外、ほとんど恩恵なし

2024年までの年収の壁は「103万円」でしたので、「160万円」という数字だけ見ると、一見して、57万円も大きくあがったように見えます。

実際、年収160万円までは所得税がかからなくなったため、低所得者は少しだけ働きやすくなりました。

ただ、課題点は、所得制限があるため、低所得者以外、ほとんど恩恵がないということです。

基礎控除が高いのは、年収200万円以下の人だけ

2024年までは、基礎控除額は、ほぼ全員一律で48万円でしたが、2025年から、下図のように、年収によって金額が異なるようになりました。

年収の壁 160万円の壁 基礎控除

基礎控除額は、本来は58万円ですが、年収によって上乗せ額があります。

年収200万円以下の人は、37万円の上乗せがあり、合計で95万円です。これは恒久的です。

ところが、年収が200万円を超える人は、上乗せ額が減額され、しかも、2025年と2026年の2年間限定です。2027年からは58万円に戻ります。

このことにより、ほとんどの人の減税額は、当初の2年間は約2万円、それ以降は、わずか5,000円~1万円という非常に少ない金額となっています。

年収の壁の、見た目の数字だけ大きくなったものの、多くの現役世代にとって、ほとんど恩恵がないことが課題です。

そのため、国民民主党は、継続して、年収の壁の引き上げを提案していました。

3.「178万円の壁」で、いくら減税される?

さて、今回、自民党と国民民主党の党首会談で合意した、新しい「178万円の壁」案で、いくら減税されるのか気になるところです。

国民民主党の資料を参考に、減税前の2024年に対して、2026年(令和8年)はいくら減税されるのか、計算してみました。

【出典】国民民主党「【「年収の壁」178万円に引き上げで合意】玉木代表が高市自民党総裁と会談」

2026年(令和8年)の減税額

[前提]
・給与所得のみ
・社会保険加入:協会けんぽ・東京
・介護保険なし(年齢40歳未満)
・控除は基礎控除・社会保険料控除のみ
・税率・保険料は2025年12月時点
給与年収
(万円)
現状
160万円の壁
の減税額
改正案
178万円の壁
の減税額
 減税額の 
増加分
150 22,600 31,500 8,900
200 24,000 33,300 9,300
300 20,400 28,300 7,900
400 20,500 28,200 7,700
500 20,400 48,600 28,200
600 20,400 56,200 35,800
700 30,600 37,000 6,400
800 30,700 37,000 6,300
900 20,500 26,400 5,900
1,000 20,400 26,100 5,700
1,200 23,500 29,500 6,000
1,500 33,700 41,600 7,900
2,000 33,700 40,200 6,500

見てわかるように、年収500万円、600万円くらいの、中間所得層の減税幅が最も大きくなっています。

それ以外の年収では、2025年(令和7年)よりも約5千円から9千円程度、減税されます。

年収700万円から、突然、減税額が減っているのは、665万円の所得制限があるからです。これについては、次の箇所で説明します。

社会保険料の保険料率等がやや異なる可能性があり、国民民主党の資料とは、金額がやや異なっています。

4.所得制限あり:年収665万円

(1)「年収665万円の壁」が登場!

自民党と国民民主党が党首が合意した今回の案では、年収665万円以下(正確には、6,655,556円以下)の場合、基礎控除額は104万円となりますが、それを超えると、基礎控除額は67万円となります。

なんと、年収665万円前後で、基礎控除額が37万円違います

年収の壁 178万円の壁 基礎控除

ある意味、「665万円の壁」または「665万円の崖」が登場します。
この壁を超えることによる、手取り額の減少は、約37,000円です。かなり大きいですね。

ただ、年収665万円程度の給料をもらっている人は、正社員で、給与や賞与をもらっている人ですが、残業手当や賞与を自分で調整することは難しく、壁を超えないようにするのは困難でしょう。

(2)2年間限定の基礎控除

今回の案では、基礎控除の本来の分(本則)は、58万円→62万円に4万円だけアップします。これは、過去2年間の物価上昇率が約6%であり、それに相当する金額を引き上げるものです。2年に1回、物価上昇に合わせて引き上げるとしています。

一方、2025年の所得税改正で設けられた、基礎控除の特例に追加して、さらに特例が設けられます。それが、上記の図の緑色の部分です。2つの特例を合算して、年収200万円から665万円までの人は、基礎控除が104万円になります。

ただし、これは、物価高対策として、2026年・2027年の2年間限定であり、2028年以降は、62万円に戻ります
また、年収200万円以下の場合、基礎控除額は99万円になります。

年収の壁 178万円の壁 基礎控除

(3)2028年以降の減税額

2年間限定の基礎控除引き上げがなくなった後の、2028年以降の減税額を、それまでと比較してみます。

給与年収
(万円)
2025年
の減税額
2026/2027年
の減税額
2028年以降
の減税額
150 22,600 31,500 26,500
200 24,000 33,300 28,300
300 20,400 28,300 6,800
400 20,500 28,200 6,700
500 20,400 48,600 13,400
600 20,400 56,200 13,300
700 30,600 37,000 26,800
800 30,700 37,000 26,800
900 20,500 26,400 26,400
1,000 20,400 26,100 26,100
1,200 23,500 29,500 29,500
1,500 33,700 41,600 41,600
2,000 33,700 40,200 40,200

年収300万円~600万円くらいの人は、2028年以降は、減税額が大幅に減ります。特に、年収300万円・400万円の人は、わずか6,000円程度と、かなり悲惨な結果になります。

そのときになって、また特例として、基礎控除の引き上げをするのかもしれませんが、毎回、特例を設けるのではなく、本則として設定すべきではないでしょうか。

(4)中間所得者の給与所得控除は変わらず

給与所得控除の最低額が65万円→74万円に増えたとしても、恩恵があるのは、年収約220万円以下の人だけです(現在の給与所得の計算式が同じと仮定した場合)。

年収220万円を超える人は、給与所得控除額は今までと変わらず、特に何も変わりません。

5.国民民主党の「178万円の壁」と今回の「178万円の壁」は似て非なるもの

国民民主党が以前から提案している「178万円の壁」と、今回、与党が案としてあげた「178万円の壁」は、見た目の金額は同じですが、似て非なるものです。

(1)国民民主党の「178万円の壁」

国民民主党の案では、次のように引き上げます。

  • 基礎控除を48万円→123万円に引き上げ(所得税と住民税の両方)
  • 給与所得控除は55万円のまま

基礎控除123万円と給与所得控除55万円を足した金額が178万円です。

基礎控除123万円+給与所得控除55万円=178万円

年収の壁 178万円の壁

(2)年収ごとの減税額

国民民主党の「178万円の壁」案の、年収ごとの、2024年時点(103万円の壁)に対する減税額です。

給与年収
(万円)
2024年の
税金負担
国民民主党案
178万円の壁の
税金負担
  減税額   年収に対する
減税割合
150 44,700 5,000 39,700 2.64%
200 88,800 5,000 83,800 4.19%
300 170,600 57,300 113,300 3.78%
400 261,000 147,700 113,300 2.83%
500 383,500 249,600 133,900 2.68%
600 513,200 361,600 151,600 2.53%
700 689,100 499,100 190,000 2.71%
800 924,900 696,700 228,200 2.85%
900 1,199,300 971,100 228,200 2.54%
1,000 1,487,000 1,258,900 228,100 2.28%
1,200 2,102,600 1,851,500 251,100 2.09%
1,500 3,247,600 2,919,900 327,700 2.18%
2,000 5,387,600 5,059,900 327,700 1.64%

国民民主党の案では、

  • 年収が多い人ほど減税額が大きくなる
  • 所得税だけでなく住民税も減税される

ことが特徴です。

金額を見ても、今回の案の2024年時点に対する減税額が、2万円~5万円程度であるのに対して、国民民主党の案は、数万円~20万円程度と、数倍違うことがわかります。

東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP®(日本FP協会認定)、日商簿記検定1級。
税理士試験 財務諸表論 科目合格。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を10年以上担当。
税金やお金に関することが大好きで、関連記事を2000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
著書「届け出だけでもらえるお金大全
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