【速報】年収の壁178万円に引き上げ?いくら減税される?168万円案も

2025年12月12日、政府と自民党は、所得税の年収の壁を、現在の160万円から178万円へ引き上げる方針を固めた、との報道がありました。

一方で、168万円へ引き上げる方針であるとの報道もあります。

年収の壁引き上げについて、現状わかっている範囲で整理し、いくら減税されるのかを、お伝えします。

1.「178万円の壁」「168万円の壁」への引き上げとは

(1)「160万円の壁」とは

2025年12月現在、給与年収160万円以下であれば、所得税はかかりません。そのため、「160万円の壁」と呼ばれています。

基礎控除95万円と給与所得控除65万円を足した金額が、160万円です。

基礎控除95万円+給与所得控除65万円=160万円

年収の壁 160万円の壁

(2)「178万円の壁」「168万円の壁」とは

2025年12月11日、政府は、年収160万円の壁を、168万円の壁に引き上げる案を検討していると、報道がありました。

さらに、2025年12月12日、政府と自民党は、所得税の年収の壁を、現在の160万円から178万円へ引き上げる方針を固めた、との報道がありました。

どちらが正しいのか、現状、不明ですが、両方の内容を紹介します。

168万円の壁

まずは、168万円の壁からです。基礎控除額(上限)と給与所得控除(最低ライン)を次のように引き上げます。

  • 基礎控除:95万円→99万円(4万円引き上げ)
  • 給与所得控除:65万円→69万円(4万円引き上げ)

両方足すと、168万円です。

基礎控除99万円+給与所得控除69万円=168万円

年収の壁 168万円の壁

178万円の壁

次に、178万円の壁です。基礎控除額(上限)と給与所得控除(最低ライン)を次のように引き上げます。

  • 基礎控除:95万円→109万円(14万円引き上げ)
  • 給与所得控除:65万円→69万円(4万円引き上げ)

両方足すと、178万円です。

基礎控除109万円+給与所得控除69万円=178万円

年収の壁 178万円の壁

2025年12月現在の、基礎控除額の上限95万円は、本来の58万円と特例の37万円上乗せの合計ですが、これをそれぞれ引き上げます。

  • 本来の基礎控除:58万円→62万円(4万円引き上げ)
  • 特例の基礎控除:37万円→47万円(10万円引き上げ)

特例の上乗せが、さらに10万円引き上げられるのが、168万円の壁との違いです。

2.年収の壁の引き上げの経緯:160万円の壁の課題

2025年に、年収の壁は、103万円→160万円に引き上げられたばかりですが、なぜ、また、年収の壁を引き上げるのでしょうか?

これまでの経緯を簡単に説明しながら、現在の、160万円の壁の課題点を解説します。

(1)2024年11月、国民民主党が、年収の壁の引き上げを提案

年収の壁の引き上げの議論が始まったのは、2024年11月に国民民主党が、178万円の壁への引き上げを提案したときです。

給与所得者全員の基礎控除額を一律で123万円に引き上げ、10~20万円くらいの大幅な減税を図ることを提案しました。

年収の壁 178万円の壁

(2)2025年3月、与党が、160万円の壁で決定

年収の壁の引き上げについて、政府・与党と国民民主党の間で何度か協議が交わされたものの、政府・与党は、財源を確保できないことを理由に、国民民主党の178万円の壁引き上げ案を拒んでいました。

そして、2025年3月、与党が、160万円の壁引き上げ案を国会に提出し、法案を可決させました。

年収の壁 160万円の壁

(3)所得制限つきで、低所得者以外、ほとんど恩恵なし

2024年までの年収の壁は「103万円」でしたので、「160万円」という数字だけ見ると、一見して、57万円も大きくあがったように見えます。

実際、年収160万円までは所得税がかからなくなったため、低所得者は少しだけ働きやすくなりました。

ただ、課題点は、所得制限があるため、低所得者以外、ほとんど恩恵がないということです。

基礎控除が高いのは、年収200万円以下の人だけ

2024年までは、基礎控除額は、ほぼ全員一律で48万円でしたが、2025年から、下図のように、年収によって金額が異なるようになりました。

年収の壁 160万円の壁 基礎控除

基礎控除額は、本来は58万円ですが、年収によって上乗せ額があります。

年収200万円以下の人は、37万円の上乗せがあり、合計で95万円です。これは恒久的です。

ところが、年収が200万円を超える人は、上乗せ額が減額され、しかも、2025年と2026年の2年間限定です。2027年からは58万円に戻ります。

このことにより、ほとんどの人の減税額は、当初の2年間は約2万円、それ以降は、わずか5,000円~1万円という非常に少ない金額となっています。

年収の壁の、見た目の数字だけ大きくなったものの、多くの現役世代にとって、ほとんど恩恵がないことが課題です。

そのため、国民民主党は、継続して、年収の壁の引き上げを提案しています。

3.「178万円の壁」で、いくら減税される?

さて、与党が提案した、新しい「178万円の壁」案で、いくら減税されるのか気になるところです。

詳細な内容が発表されていないため、現在と同様に、「基礎控除額の上乗せは所得制限あり」という条件のもとで、2024年に対して、いくら減税されるのか、計算してみました。

(160万円の壁については、2027年以降の、基礎控除額の臨時上乗せがない状態で計算)

給与年収
(万円)
現状
160万円の壁
の減税額
改正案
178万円の壁
の減税額
 減税額の 
増加分
150 22,600 26,500 3,900
200 24,000 28,300 4,300
300 5,100 6,800 1,700
400 5,100 6,700 1,600
500 10,200 13,400 3,200
600 10,200 13,300 3,100
700 20,400 26,800 6,400
800 20,500 26,800 6,300
900 20,500 26,400 5,900
1,000 20,400 26,100 5,700
1,200 23,500 29,500 6,000
1,500 33,700 41,600 7,900
2,000 33,700 40,200 6,500

見てわかるように、178万円の壁への引き上げによる、減税額の増加分は、1,600円~8,000円程度です。

しかも、年収300~400万円の、最も多い層が、約1,600円程度と、最も恩恵が少なくなっています
年収500~600万円でも、約3,200円と恩恵が少ないです。

4.「178万円の壁」案も、所得制限ありなら、ほとんど恩恵なし

(1)基礎控除額アップはわずか4万円だけ

上記の試算は、現状と同じく、基礎控除額の上乗せに、所得制限ありで計算したものです。

すでに述べましたが、現状、基礎控除額が上限95万円となるのは、年収200万円以下の人だけであり、それを超えると、原則、58万円となります。

年収の壁 基礎控除 所得

仮に、基礎控除額の上限が109万円となっても、そのうち、上乗せ37万円→47万円が適用されるのは、年収約203万円以下の人だけであり、それ以外は、上乗せはありません。

年収約203万円を超える人は、基礎控除額が58万円→62万円に、4万円だけアップすることによる恩恵だけです。そのため、わずか、数千円しか減税されないことになります。

(2)給与所得控除も変わらず

給与所得控除の最低額が65万円→69万円に増えたとしても、恩恵があるのは、年収約203万円以下の人だけです。

年収203万円を超える人は、給与所得控除額は今までと変わらず、特に何も変わりません。

年収の壁 給与所得

5.国民民主党の「178万円の壁」と与党の「178万円の壁」は似て非なるもの

国民民主党が以前から提案している「178万円の壁」と、今回、与党が案としてあげた「178万円の壁」は、見た目の金額は同じですが、似て非なるものです。

(1)国民民主党の「178万円の壁」

国民民主党の案では、次のように引き上げます。

  • 基礎控除を48万円→123万円に引き上げ(所得税と住民税の両方)
  • 給与所得控除は55万円のまま

基礎控除123万円と給与所得控除55万円を足した金額が178万円です。

基礎控除123万円+給与所得控除55万円=178万円

年収の壁 178万円の壁

(2)年収ごとの減税額

国民民主党の「178万円の壁」案の、年収ごとの、2024年時点(103万円の壁)に対する減税額です。

給与年収
(万円)
2024年の
税金負担
178万円の壁の
税金負担
  減税額   年収に対する
減税割合
150 44,700 5,000 39,700 2.64%
200 88,800 5,000 83,800 4.19%
300 170,600 57,300 113,300 3.78%
400 261,000 147,700 113,300 2.83%
500 383,500 249,600 133,900 2.68%
600 513,200 361,600 151,600 2.53%
700 689,100 499,100 190,000 2.71%
800 924,900 696,700 228,200 2.85%
900 1,199,300 971,100 228,200 2.54%
1,000 1,487,000 1,258,900 228,100 2.28%
1,200 2,102,600 1,851,500 251,100 2.09%
1,500 3,247,600 2,919,900 327,700 2.18%
2,000 5,387,600 5,059,900 327,700 1.64%

国民民主党の案では、

  • 年収が多い人ほど減税額が大きくなる
  • 所得税だけでなく住民税も減税される

ことが特徴です。

金額を見ても、与党案の2024年時点に対する減税額が、数千円~2万円程度であるのに対して、国民民主党の案は、数万円~20万円程度と、1桁くらい違うことがわかります。

東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
税理士試験 財務諸表論 科目合格。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を10年以上担当。
税金やお金に関することが大好きで、関連記事を2000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
著書「届け出だけでもらえるお金大全
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