賞与(ボーナス)の源泉所得税の計算方法、高額など特殊ケースも解説

賞与 ボーナス

賞与(ボーナス)が支給されるとき、源泉所得税と、社会保険料が、額面の金額から引かれて振り込まれます。

賞与の源泉所得税の計算は、やや複雑ですので、計算方法を、具体例を利用してわかりやすく解説します。

1.賞与(ボーナス)から、源泉所得税と社会保険料を差し引く

賞与(ボーナス)を支給するとき、額面の金額から天引きするのは、「源泉所得税」と「社会保険料」です。

賞与の手取り額を、計算式で表すと、このようになります。

[賞与の手取り額] = [額面の金額] – [源泉所得税 + 社会保険料]

賞与 ボーナス 手取り

(1)賞与から引かれる源泉所得税

源泉所得税」とは「所得税」のことです。会社が、給料や賞与を従業員に支給する際、所得税を差し引いて支払います(これを「源泉徴収」といいます)。

その所得税のことを、特別に「源泉所得税」と呼んでいます。会社が給与から天引きして、代わりに納税するというだけで、中身は、通常の「所得税」と同じです。

毎月の給料や賞与から差し引く源泉所得税は、仮の金額です。実際の金額は、年末調整や確定申告で確定します。
もし、事前に徴収しすぎていた場合は、還付され、逆に不足がある場合は、追加で徴収します。

なお、賞与から引かれるのは所得税のみで、住民税は引かれません

(2)賞与から引かれる社会保険料

賞与から引かれる社会保険料には、次の4種類があります。

  • 健康保険料
  • 介護保険料(40~64歳)
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料

それぞれ、割合が決まっており、額面金額にその割合をかけて計算します。

社会保険料の計算方法の詳細は、こちらの記事をご覧ください。

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2.賞与(ボーナス)の源泉所得税の計算方法

賞与(ボーナス)の源泉所得税の計算方法は、次の2ステップです。

  1. 賞与の額面金額から社会保険料を差し引く(社会保険料控除後の金額)
  2. 前月の給料から求めた税率を、社会保険料控除後の賞与額に乗じる

式で表すと、このようになります。

[所得税] = [賞与の額面金額 - 社会保険料の合計額] × [源泉徴収税率]

次の例を基に、それぞれのステップを解説していきます。

[例]
賞与の額面金額:40万円
前月の給与の額面金額:30万円
年齢:40歳(介護保険料あり)
扶養家族なし
加入組合:協会けんぽ東京
雇用保険の事業区分:一般の事業
(税率・保険料率は2025年12月時点)

(1)賞与の額面金額から社会保険料を差し引く

まず、社会保険料を計算します。賞与の額面金額に、それぞれの保険料率をかけます。雇用保険料以外は、労使折半(会社が半分負担)ですので、2分の1をかけます。

健康保険料:[50万円]×[健康保険料率9.91%]×[1/2]=19,820円
健康保険料:[50万円]×[介護保険料率1.59%]×[1/2]=3,180円
厚生年金保険料:[50万円]×[厚生年金保険料率18.3%]×[1/2]=36,600円
雇用保険料:[50万円]×[雇用保険料0.55%]=2,200円
合計:61,800円

賞与の額面金額から、社会保険料の合計を差し引きます。

50万円―61,800円=338,200円 → 社会保険料控除後の金額

(2)前月の給与額から求めた源泉徴収税率をかける

ここで、前月の給与額を利用します。

前月の給与額から、その給料に対する社会保険料を差し引いた金額を利用します(前月の給料ですので、給与明細に記載されています)。

たとえば、月給30万円だった場合、通常の保険料率で社会保険料を計算すると、社会保険料の合計は46,350円ですので、社会保険料控除後の金額は、このようになります。

30万円―46,350円=253,650円 → 社会保険料控除後の金額

次に、国税庁サイトに掲載されている「賞与に関する源泉徴収税額の算出率の表」を参照し、「源泉徴収率」を求めます。

源泉徴収税額表 令和7年分

社会保険料控除後の給与額と、扶養親族の人数によって決まります(※)。

※「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合、甲欄を使用します。提出されていない場合、乙欄を使用するため、金額が高くなります。

一覧表の一部を抜粋しておきます。

賞与の金額の
乗ずる率
前月の給与
(社会保険料差引後)
扶養親族の人数
  0人 1人 2人
0% ~67,999円 ~93,999円 ~132,999円
2.042% 68,000円~
78,999円
94,000円~
242,999円
133,000円~
268,999円
4.084% 79,000円~
251,999円
243,000円~
281,999円
269,000円~
311,999円
6.126% 252,000円~
299,999円
282,000円~
337,999円
312,000円~
368,999円
8.168% 300,000円~
333,999円
338,000円~
364,999円
369,000円~
392,999円
10.210% 334,000円~
362,999円
365,000円~
393,999円
393,000円~
420,999円

今回の例の場合、扶養親族0人、社会保険料控除後の給与額:253,650円ですので、その該当する箇所を参照し、一番左列の「賞与の金額に乗ずべき率」を参照すると、6.126%です。

源泉徴収税額表 令和7年分

社会保険料控除後の賞与の金額に、この率を乗じます。

所得税:338,200円×6.126%=20,718.132円 → 20,718円(1円未満切り捨て)

手取り額も計算しておきます。

手取り額=50万円―(61,800円+20,718円)=317,482円

3.前月の給与の10倍を超える場合の計算方法

特殊ケースの計算方法を紹介します。その1つ目とは、高額な賞与の場合です。

具体的には、前月の給与(社会保険料を差し引いた金額)の10倍を超える賞与(社会保険料を差し引いた金額)を支払う場合です。

従業員ではあまりありませんが、役員の場合、月給を低く抑えて、高額な賞与を支給するケースがあり、その場合に発生します。

次の2ステップです。

  1. 賞与から社会保険料を差し引いた金額を6(または「12」※)で割る
    (※賞与の計算期間が6か月を超える場合には、「12」を使って計算します。)
  2. 上記1の金額に、前月の給与から社会保険料を差し引いた金額を足す
  3. 上記2の金額を月額表に当てはめて税額を求め、前月の給与に対する源泉所得税額を差し引く
  4. 上記3の金額に、6(または「12」)をかける

前月の給料が低い場合、高額な賞与に対する源泉徴収税額が低く計算されてしまうため、それを補正するような計算となっています。

具体例

ややこしいため、具体例で解説します。

[例]
賞与の額面金額:500万円(半年ごとに支給)
前月の給与:50万円
年齢:40歳(介護保険料あり)
扶養家族なし
加入組合:協会けんぽ東京
雇用保険加入なし
(税率・保険料率は2025年12月時点)

まず、社会保険料を計算します。

健康保険料:[500万円]×[健康保険料率9.91%]×[1/2]=247,750円
健康保険料:[500万円]×[介護保険料率1.59%]×[1/2]=39,750円
厚生年金保険料:[150万円(※)]×[厚生年金保険料率18.3%]×[1/2]=137,250円
合計:424,750円

※1回あたりの賞与額が150万円を超える場合、厚生年金保険料を計算するうえでの上限は150万円

賞与の額面金額から、社会保険料の合計を差し引きます。

500万円―424,750円=4,575,250円 → 社会保険料控除後の金額

半年ごとに支給のため、計算期間は6ヶ月ですので、6で割ります。

4,575,250円÷6=762,541円(1円未満切り捨て)

前月の給与50万円に対して、社会保険料の合計は74,500円ですので、社会保険料を差し引いた金額は、425,500円です。この金額を足します。

762,541円+425,500円=1,188,041円

給与所得の源泉徴収税額表」(下図は一部)から税額を求めます。

源泉徴収税額表 令和7年分

扶養親族0人、1,188,041円の場合、税額は201,683円です。
また、前月の給与425,500円(社会保険料を差し引いた金額)に対する税額は、同じく「税額表」から、18,710円です。

201,683円から、18,710円を引いて、これに6をかけます。

(201,683円―18,710円)×6=1,097,838円 → 所得税額

4.前月の給与がない場合の計算方法

特殊ケースの2つ目として、前月の給与の支払いがない場合の計算方法です。次の2ステップです。

  1. 賞与から社会保険料を差し引いた金額を6(または「12」※)で割る
    (※賞与の計算期間が6か月を超える場合には、「12」を使って計算します。)
  2. 上記1の金額を月額表に当てはめて税額を求め、6(または「12」)をかける

具体例

こちらも具体例で解説します。

[例]
賞与の額面金額:80万円(半年ごとに支給)
前月の給与:(なし)
年齢:40歳(介護保険料あり)
扶養家族なし
加入組合:協会けんぽ東京
雇用保険の事業区分:一般の事業
(税率・保険料率は2025年12月時点)

まず、社会保険料を計算します。

健康保険料:[80万円]×[健康保険料率9.91%]×[1/2]=39,640円
健康保険料:[80万円]×[介護保険料率1.59%]×[1/2]=6,360円
厚生年金保険料:[80万円]×[厚生年金保険料率18.3%]×[1/2]=73,200円
雇用保険料:[80万円]×[雇用保険料0.55%]=4,400円
合計:123,600円

賞与の額面金額から、社会保険料の合計を差し引きます。

80万円―123,600円=676,400円 → 社会保険料控除後の金額

半年ごとに支給のため、計算期間は6ヶ月ですので、6で割ります。

676,400円÷6=112,733円(1円未満切り捨て)

給与所得の源泉徴収税額表」から税額を求めます。

扶養親族0人、112,733円の場合、税額は1,340円です。これに6をかけます。

1,340円×6=8,040円 → 所得税額

 

監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を10年以上担当。
税金やお金に関することが大好きで、関連記事を2000本以上、執筆・監修。
エンジニアでもあり、賞与計算ツールなど各種ツールも開発。
著書「届け出だけでもらえるお金大全
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